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幕末――― その言葉だけは知っています。 歴史の授業でも繰り返し習ったし。 でも、何故か今まで私は全然魅力を感じなくて・・・ これまでなんとなくその世界に接することがなく過ごしてきました。 最近、文庫化された「風光る」を読み始めて、 そこに描かれる人たちの生き生きとした様子と、 いとも簡単に命が断ち切られる様に、慄然としました。 たかだか150年前。 けれど、私が生きる”今”とは、何かが明らかに異なる時代。 命の重さが。 生きるスピードが。 架せられた足かせが。 求める強さが。 そして、抱く想いが。 改めて、それを感じた舞台でした。 劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎☆號「IZO」 2008.1.26 ソワレ 青山劇場 1回S列20番台 出演:森田剛、戸田恵梨香、田辺誠一、千葉哲也、粟根まこと、池田鉄洋、山内圭哉、 木場勝己、西岡徳馬、逆木圭一郎、右近健一、河野まさと、磯野慎吾、中谷さとみ 他 物語の舞台は幕末の土佐、そして京都。 武市半平太(田辺誠一)率いる土佐勤王党に加盟し、 主に暗殺の場で活躍した一人の男がいました。 岡田以蔵。 人斬り以蔵と恐れられたその男の半生を、物語は丹精に紡いでいました。 以蔵を演じたのは森田剛くん。 なんというか、独特の勢いのある方だなあ、と思いました。 劇中、以蔵はいろいろな意味で「犬」に喩えられましたが、 森田くんの以蔵のイメージはまさに”犬”! しかも、柴犬系だけどちょっと雑種な仔犬、という感じでした(笑)。 ちっちゃいけど元気が良くて、 大好きなご主人様のためにはいつだって真正面から全力疾走で、 そっぽを向かれると悲しくてしゅんとしょげてしまって、 その勢いで暴走して、 でも、いつだって、どんな時だって、ご主人様を純粋な目で見つめている仔犬――― 以蔵は、半平太が命じるがままに、京で暗殺を続けます。 半平太を自らの天と心酔し、その天が命じる殺戮は、暗殺ではなく「天誅」であると信じ、 彼のために、彼の傍に居るために、必要以上の血を流し続けた以蔵。 剣で時代を変えるのだと、 その中心に居るのは半平太であると信じ続け、 ただひたすらに彼の後を追い続けた以蔵。 その懸命な、ある意味愚かしくも見えるその姿は、見ていてなんだかとても辛かった。 以蔵を支えていたのは、その剣の腕と、半平太への想いだけだった。 半平太の言葉が、半平太の行動が、以蔵の足場を支えていた。 彼の行動の全てを決めたのが半平太であるなら、 半平太は間違いなく彼の”天”であったのでしょう。 でも、人は、自分の足でなけれは歩いては行けないのです。 そのことに、以蔵が気づいたのは、本当に最後の最後だった。 天は、動くものなのだと。 変わらないものはないのだと。 でも、それに彼が気づくチャンスは、そこまでにも幾つもあった。 同郷の坂本竜馬(池田鉄洋)が彼に見せようとした世界。 僅かに交差した勝海舟(粟根まこと)が彼に問うたこと。 田中新兵衛(山内圭哉)が彼に見せ付けた覚悟。 寅之助(木場勝己)が示した受容と否定。 そして、ミツ(戸田恵梨香)が望んだ、共に歩む未来――― それらを全て凌ぐほどの以蔵の半平太への執着が何であったのか。 半平太から離れることを、 武士ではない生き方をすることを、 あんなにも恐れ拒絶したのは何故だったのか。 ―――そういう時代だったから、なのかもしれません。 それまで当然であった全てが、あっという間に変わってしまう激動の時代。 生きていく場所を、生きていた証を、容易く奪われ踏みにじられてしまう時代。 自分の力以外の理由で、自分の未来を切り開く道を閉ざされていた時代。 そんな時代の中で、確固とした意思を持つ半平太は、 きっと、とても輝いて見えたのではないか。 確かなもののなにもない時代に、 どんな荒波にも負けない、大きな船のように見えていたのではないでしょうか・・・ けれど、半平太も時代に翻弄される一人の男でしかなかった。 彼自身も、惑い、傷つき、苦悩し、 山内容堂(西岡徳馬)という”天”を足場とする男でしかなかった。 そのことを理解した時、初めて以蔵は自分の足で立ったのかもしれません。 自分の足で立つことを、自分自身で歩む未来があることを知った時、 既に以蔵の手の中には何も残っていませんでした。 血に染まった剣はその手になく、 共に闘った同志は全ての暗殺の罪を以蔵にかぶせ、 そして、ミツは―――ままごとのような祝言の場で二人で飲んだ、 半平太から送られた酒に盛られた毒で、既に彼岸へと旅立っていました。 けれど最後。 斬首の場へと歩く以蔵に、満作の黄色い花びらが降り注ぎました。 柔らかな黄色い花。 彼との未来を望んだミツの名前の由来となった花。 光溢れる春を一番に告げる花。 降りしきる花びらの中でしばし佇み、そして奥の闇の中へ消えていく以蔵の小さな背中には、 けれど、それまで感じられなかった明るさがありました。 そして一瞬の暗転の後。 舞台を満たした皓い光が私に見せたのは、 一面に敷き詰められるように積もった、黄色い花でした。 全体を通して暗いトーンの照明に抑えられた物語の、 最後の最後に目の前に広がった、光溢れる場所――― そこが、以蔵が最後にたどり着いた場所であって欲しいと、 何故だか祈るような気持ちで想いました。 うーん、またしても訳のわからない観劇記録になっちゃいましたねー(笑)。 見ている最中は、登場人物と一緒に翻弄され、 見終わってから、いろんなことを沢山沢山考えてしまった舞台でした。 「吉原御免状」といい、新感線のこういう真正面からの舞台には、 本当にやられたなあ、と思います。 もう1回見れば、またもっと何かを受け取れるのかも知れないけれど、さすがに無理!!(涙) この舞台も、ゲキ×シネ化、DVD化を期待するばかりです。 最後にキャストの方のことをちょこっとずつ。 ミツ役、戸田恵梨香ちゃん。 以蔵の幼馴染で、淡い恋のお相手なのですが・・・ なんというか、この物語の中で、一番現実を見ていたのはミツだったように思います。 彼女は、血を流すことを恐れ、嫌悪し、 以蔵と共に殺戮とは無縁の生活をすることを望み、 けれど、以蔵が剣を捨てられないことを、きっと一番理解していた。 彼女の凛とした姿と、はっきりとした物言いが、 「ミツ」という少女にとても合っていたように思います。 これが初舞台とのことですが、 また別の舞台でも活躍も見てみたいな、と思います。 半平太役、田辺誠一さん。 うーん、実は私この人あんまり好きではなかったのですが(え)、 この役は凄く好きでした。 半平太の理想とか、立場での苦悩とか、とても良く見えたように思います。 ただ、立ち回りが殆どなかったせいか、 どうしても剣の達人には見えなかったんですよねー(笑)。 どっちかっていうと、策士系? 山内容堂役、西岡徳馬さん。 和物だからでしょうか、「ヴェニスの商人」ほど濃くは感じませんでした(笑)。 裏のあるしたたかな藩主、という感じ。 この方がこのあとどうなってしまうのか、ちょっと気になりました。 寅之助役、木場勝己さん。 ミツの叔父で、京都で料理屋さんをやっている、という役。 そのお店は、武市たちの会合の場になっていました。 始終傍観者、という立場の役柄なのかな。 でも、木場さんの佇まいや、見つめる視線がとても雄弁でした。 「氷屋来る」のときもそう思いましたが、 この方の動きではない演技って、とっても豊かだなあ、と思います。 やっぱり、とても好きな役者さんですv 勝海舟役、粟根まことさん。 ものっすごくツボだったんですけど!! 出は少ないけれど、個人的にとても印象的で魅力的な勝海舟でした。 以蔵とのシーン、とっても良かった。 ああ、ほんとにもう一回観たいです・・・(涙) 鶴役、中谷さとみさん。 ミツの同僚(?)で寅之助のお店で働いている女性の役。 思いっきり笑い担当でデフォルトされた演技なのですが、 ミツとは違った意味で、現実的、というかリアリティがあって、 鶴がいることで、物語の流れのスピードが、 予想のつかないカタチで動くような気がしました。 坂本竜馬役、池田鉄洋さん。 「医龍2」で何回か見たことがありますが、生は初めて。 この方も、独特の動きと雰囲気のある方ですねー。 よさこいの踊りのシーンのテンションと、 シリアスなシーンの繊細な様子のギャップが素敵でしたv これまで持っていた坂本竜馬のイメージとちょっと違いましたが、 こういう竜馬もありかなあ、という説得力がありました。 でもって、照明はもちろん原田保さん!! 上でも書きましたが、全体的に抑えたトーンの照明の最後の最後で、 あの溢れるような光には、ほんとにやられてしまいました。 もちろん床に描かれる文様は相変わらず美しくv この方が表現される”光”と”闇”の照明は、本当に素晴らしいと思います。 |
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いのうえ歌舞伎☆號 『IZO』 二回目 感想2
新感線プロデュース いのうえ歌舞伎☆號 『IZO』 感想続きです。 一度目ももち ...続きを見る |
酒と芝居の日々 2008/02/02 02:35 |
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こんばんは。 |
花梨 2008/02/02 02:33 |
こんばんは。 |
恭穂 2008/02/02 20:00 |
恭穂さま |
スキップ 2008/02/27 01:54 |
スキップさん、こんばんは! |
恭穂 2008/02/28 21:15 |
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