瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2008/02/05 22:51   >>

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「リア王」、今日が東京公演の千秋楽でしたね。
お昼ごはんを食べながら、
ああ、そろそろ幕が開く頃だなあ、と心は与野本町に飛んでいました(笑)。
本当に、素晴らしいお芝居を見せていただきました。
蜷川さん、平さんをはじめとした役者さんたち、そしてスタッフの方々に、
心からの感謝をしながら、最後の観劇記録に突入しようと思います。


彩の国シェイクスピア・シリーズ第19弾
「リア王」

2008.2.3. 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 1階L列下手側

出演:平幹二朗、内山理名、とよた真帆、銀粉蝶、池内博之、高橋洋、山崎一、
    吉田鋼太郎、瑳川哲朗 他


私の最後の「リア王」は雪の中での観劇でした。
静かな朝だなあ、と思いつつ、朝カーテンを開けたら、外は真っ白!
あの時点で車の上には10cmぐらい雪が積もっていました・・・
それでも、「行かない」という選択肢は全然浮かびもしなかった私(笑)。
きちんと、開演前のライブに間に合いましたよ。
というか、少し早く着いちゃって、ライブ会場の脇の椅子に座ってぼーっとしてたら、
目の前を吉田鋼太郎さんが横切りました!!
2メートルほどの距離でみた吉田さんは、凄くスレンダーでかっこよかったです!
ぼーっと見惚れてしまいました(笑)。
戻ってこられるときにお声をかけてみよう!と思っていたのですが、
演奏がはじまってしまい、ここで前を横切るのは演奏者の方に失礼だなあ、と思い断念。
でも、グロスター親子の荒野のシーンはほんとに大好きなので、
そのことだけでもお伝えできれば良かったなあ、とちょっと後悔しています。
ので、この点については、あとで思いっきり書こうと思います(笑)。
私の座っていた位置からはちょうど楽屋口が見えたのですが、
ライブを聞きに、俳優さんたちが何人かで入りされてました。
私が気づいたのは、瑳川さん、妹尾さん、横田さんくらいかな。
とても素敵な演奏だったし、聞きにきたくなっちゃう気持ちもわかりますね。

この日のライブは「おかわり団」というサックスとトランペットとチューバとピアノとドラムのユニット。
とっても楽しい演奏でした。
一番お気に入りだったのは「ダッタン人の踊り」。
トランペットの音があんなに滑らかなものなのだと、初めて知りました。
またちょっとピアノが弾きたくなってしまいましたよ(笑)。


そして、「リア王」。

平さんは、この日もまさに「リア」でした。
1幕を観るのは2週間ぶりでしたが、
最初に観たときには気づくことの出来なかったリアの弱さや惧れが、
豪奢で一番権力を握っているはずの最初のシーンで、何故か見えたように思いました。
その後の、怒りや狂乱のシーンも、
これは平さんにしか出来ないだろう、と思わせられるぐらいのパワーでしたが、
私の中に何より残ったのは、雑草の冠をかぶり、盲目のグロスターと語り合うシーン。
全てを忘れてしまったかのような明るい声音に明るい笑顔。
なのに、その眼には、全くといっていいほど光がない。
力が、ない。
どこを見ているのかわからないような、底知れぬ怖さがあった。
それが、グロスターを認識したその瞬間、
笑顔が消えたと同時に、その眼がすっとクリアになったことが、
後ろの席からでもしっかりとわかりました。
優しい狂気の中、一瞬取り戻した正気の自分。
けれど、それは忘れていた胸を抉る痛みと怒りをも立ち返らせて・・・
その、痛みを耐えるような表情に、胸が苦しくなりました。

強く、偉大な王であったリア。
傲慢で、身勝手であったリア。
愛情を、眼に見え、耳に聞こえるカタチでしか受け取ることの出来なかったリア。
愛することの代償に、愛されることを望んだリア。
狂気に堕ちながらも、王であり続けたリア。

平さんの紡ぎだした「リア」は、
余りにもリアルで、そして圧倒的な存在感だった。
もう、私の中では「リア王」は平さんとイコールでインプットされてしまったような気さえします。
そんなリアに出会えたことが、今は本当に幸せだなあ、と思うのです。


そして、そんなリアに寄り添い続けた山崎さんの道化。
これまでは平さんに目を奪われ、洋さんに目を奪われ、
恥ずかしながら気づいていなかったのですが、
1幕後半、グロスターの屋敷でのシーン、
道化はリアとまったく同じリアクションをしているのですね。
道化、というとどうしても笑いを期待してしまうのですけれど、
この物語の中の道化は、リアの怒りを、苦悩を二重写しにすることで、
あるいは、リア自身にリアの姿を見せ付けることで、
リアに何かを伝える役割だったのかもしれないなあ、と思いました。
だからこそ、リアが正気を失った後には、その姿が出てくることはなかったのかな。
だって、リアにはもう自分自身を見る必要はなくなっちゃったんだから・・・
最初から最後まで、不可解な存在だったけれど、
道化がいたことで、リアの姿は更に鮮明になったように思います。


ゴネリルとリーガンは、やっぱりとても魅力的でした。
私にとって魅力的、というのは、その背景が感じられる、というのと同義なのかなあ、
と最近思ったりもしているのですが、
この姉二人にはああなる理由がきちんとあった、と思わされるお芝居でした。
1幕は2週間ぶりなのですが、初日と比べると、
リーガンもゴネリルも、リアへの罪悪感や、消しきれない愛情のようなものが、
1幕最後のシーンで感じられたように思いました。
リーガンの一瞬の逡巡。
そして、父を見送るゴネリルの表情。
二人の中には、憎悪や嫌悪だけではなかったのだと、そう思いました。

内山さんのコーディリアからも、初日よりも受け取ったものは多かったように思います。
コーディリアは、内山さんが演じるとおりの、まっすぐで純粋で強い女性だったのでしょう。
姉たちと、対等に渡り合うだけの強さとしたたかさのある女性。
けれど、リアの目で見ると、コーディリアは小さくて可愛い少女でしかなかった。
それは、彼女がリアの前で態度を変えていたとかではなくて、
リアが、コーディリアに亡き妻の面影を見ていたのではないかなあ、と。
最後捉えられた二人が語り合う(というかリアが一方的に語る)シーンを見て、そう思いました。
そういう意味では、彼女も、リアに真実を見てもらえてはいなかったのかもしれません。
「牢屋へ行こう」と、優しく嬉しげに語る父に、彼女はただ泣くばかりでした。
それは、自分たちを待つものが、そんな和やかな時間ではないことを知っていたからかもしれないし、
最後の最後で、自分を見てはくれなかった父への嘆きだったのかもしれません。
そんなふうに、感じました。


グロスター役、吉田さん。
1幕最後、リアが娘たちと決別するシーンでの、
心配ではらはらしている表情がとっても印象的でしたv
眉毛とかハの字になっちゃって、ほんとうに心配で狼狽しているのが良くわかりました。
このシーン、ケントもグロスターも道化も騎士も、みんな泣いているのですね。
下手側の通路を使ってはけていくので、
私の席から去っていく皆さんの表情がとても良く見えたのですが、
リアはカッと目を見開いていて、
後に続く男たちはみんな目を真っ赤にして泣いているのです。
それをみて、ちょっと一緒に泣きそうになってしまいました(笑)。

グロスターは、息子のエドガーと同じように、
本当に真っ当で、そして善良な人であったと思います。
けれど、グロスターもリアと同じように、目に見えるものでしか愛情をはかれない、
そして、与えた分だけ愛情を求める父でもあった。
エドガーに対しても、エドマンドに対しても。
だから些細な、けれど(彼にとって)決定的な何かがあることで、すぐにその存在を否定してしまった。
そんな伯爵が目を失い、その耳と、その手触りとで世界を知り、
そして、そうとは知らずにエドガーに手を引かれて歩くシーンは、
重く、静謐で、そして痛いほどの切なさに満ちていました。

眩暈がするほど遠く、遠く、澄んだ青い空。
その下に広がる、荒れた地面。
風の音のように、時に鋭く、時に優しく響く笛と鼓。
そして、斜めに当たる光は、
絶望に食い尽くされ、死への旅路を望む父親と、
嗚咽を抑えながら、ただ静かに父の手を引く息子の姿に深い陰影を刻み―――

本当に、泣きたくなるくらい美しいシーンでした。
この日、このシーンで、上手側の客席から小さな拍手が起きました。
すぐに場面が変わってしまうのがわかっていたので、
その拍手に乗ることはできませんでしたが、
拍手をしたくなる気持ちは、私も一緒でした。
もうちょっと板戸が閉まるのが遅ければ、きっと私も拍手をしていた。

そう思わされた一端は、エドガーの嘆きにあったと思います。
狂いゆくリアを見つめることで、装った狂気が剥がれ落ちていくその様。
そして、変わり果てた父の姿を見たときの激しい嘆き―――
その嘆きは、父自身への同情もあったでしょう。
リアの境遇とあわせて、悲惨なこの世界への悲嘆もあったでしょう。
けれど、一番大きかったのは、自分自身への後悔だったのではないかと思うのです。
あずかり知らぬところで父の怒りを買い、命を狙われ、
生き延びるためにトムになっていたエドガー。
それはもちろん生きながらえるための手段でもあったけれど、明らかに「逃げ」だった。
否定され、拒絶された自分自身からの「逃げ」。
そして、自分がそうやって逃げている間に、父も陥れられ、両目を失った―――
もし自分が傍にいたら・・・
逃げずに、父ときちんと向き合うことが出来ていたら・・・
自分ではどうにもならなかったとわかっていても、
そう感じずにはいられなかったのではないかな、と思うのです。
だからこそ、彼は父に名を明かさず、ただ父に生きる力を取り戻させようと思ったのではないかと。
そんな切実な嘆きと決意が、あのシーンのエドガーからは感じられたように思いました。

洋さんのエドガーは、初日からあまり印象は変わりません。
とても安定したお芝居で、そしてあの嘆きも最初からとてもとても深かった。
物語の中で、一番成長したのもエドガーという役だったと思います。
1幕のエドガーと、トムを経てのエドガーでは、眼の強さが違っていました。
1幕のエドガーだったら、きっとエドマンドには勝てなかったと思います。
どん底を経験し、絶望と狂気を間近で見つめ、
その中にあるひとの脆さと強靭さを知ったからこそ得られた彼の強さ。
その強さは、エドマンドの命を奪い、そして残された重荷を背負うことになったけれど、
エドガーのもつ優しさとまっとう過ぎるほどの善良さ、そして彼が得た強さは、
深い闇に沈む物語の中で、微かな希望となるのではないか・・・そう思いました。


・・・結局、最初から最後までエドガーでしたね(笑)。
もう開き直るしかないかも(え)。
でも、リア一家にしろ、グロスター一家にしろ、
背景を考える(というか妄想する?/笑)余地が凄く沢山あるなあ、と思います。
うん、こういう深い背景を感じさせる舞台は、本当に大好きです!

最後なので、他の役者さんのことも少しずつ。

池内さんのエドマンドは、やっぱり見るごとに色気と凄味が増していきます。
でも、なんだか最後のほう可愛く思えちゃったんですよねー。
自分でも謎です(笑)。

瑳川さんのケント伯。
1幕最後にはけるシーンでの泣き顔にやられました。
嵐のシーンでグロスター伯爵が「ああ、ケント!」と叫んだシーンでの、
キョドっぷりが微笑ましかったです。
というか、物語の中で一番ほっとする役だったかも。

廣田高志さんのコーンウォール公爵。
観るたびに極悪非道っぷりが増していきました・・・
グロスターをいたぶるシーンは、ちょっと本気で怖かったです。
「カリギュラ」の時の怯えっぷりとは全然違ってて・・・役者さんって凄いですよね。

渕野俊太さんのオールバニー公爵。
ゴネリルと一緒に、何気に笑いを取っていました(笑)。
真面目で真っ当であるということは、
決して現状打破に直接繋がるものではない、という役?(え)
この正確では、ゴネリルはやきもきしただろうなあ、と思います。
私もすると思います(笑)。

塚本幸男さんの老人。
エドガーに一番いい服をくれる人ですね(笑)。
観るたびに年をとっていかれたような気がします。
この日は、台詞の溜めが更に長くなっていたような・・・?
というか、この老人、先代、グロスター伯爵に引き続き、エドガーにも仕えそう・・・
もしかして、この舞台の中で一番長生きはこの方ですか?(笑)

横田栄司さん、この日もめいっぱい癒し系でございましたv
横田さんの騎士がでてくると、ほんとに和みます(笑)。


でもって、カーテンコール。
平さんの穏やかで明るい笑顔に、やっぱり泣いてしまいました。
あれだけのお芝居をして、その上であの笑顔。
ほんとに凄い役者さんだなあ、と思います。
逆に、洋さんは全く笑顔がありませんでした。
役に入り込みすぎてたのかなあ・・・?
エドマンドの死を知った後の嘆きもとてもとても深かったし。
今日の千秋楽は、みなさん笑顔だったのでしょうか。
全力で走り抜けたような2週間ちょっとの舞台。
本当にお疲れさまでした。
そして、ありがとうございました。
今月後半には大阪公演もありますね。
どうぞお体に気をつけて、頑張ってください!



観劇のあと、ぴかちゅうさん、sakuramaruさん、玲小姐さんとおしゃべりさせていただきました。
すっごく楽しかったです!!
舞台の話に映画の話に海外の話・・・
雪でなければ、もっともっと沢山お話したかったです!
舞い上がっていてテンション高くて遠慮がなくて申し訳ありませんでした(汗)。
これに懲りずにまた付き合いくださいねv

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08/02/03 平幹二朗×蜷川幸雄ラストの「リア王」
{/kaeru_snow/} 昨日から少し微熱が出てきて大人しくしている土曜日。午後から雪がちらついたが、夕方は小休止?本格的な寒さにさきほどから今冬初めて床暖房を入れてしまった。明日は歌舞伎だし、2/3に観た「リア王」の感想を書いてしまおう。 ウィキペディアの「リア王」の項はこちら 彩の国シェイクスピアシリーズ第19弾。蜷川幸雄にとっても平幹二朗にとってもラストの「リア王」になるということで、S席を奮発してメンバーズ先行でとったら前から2列目!3列目くらいまでは舞台に敷かれた土の埃がすごいと聞... ...続きを見る
ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記
2008/02/09 20:07

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「リア王」の感想をようやくアップしたのでTBさせていただきましたm(_ _)m感想を書き始めたら入れ込みすぎて長くなってしまいました。
平幹二朗一世一代のリア王だったと思うし、蜷川さんもこの作品はラストというにふさわしい舞台だったと思います。
観劇後に松岡さんの翻訳本も読みながら脳内再現もしましたが、ホントによくできた芝居をキャスト・スタッフも揃えて見せてくれたんだなぁとあらためて思いました。しかし恭穂さんはこのお芝居を4回もご覧になったんですよね。華奢なお体のどこにそんなタフさが潜んでいるのかと不思議にも思えます。あまりの重量感もあり、またこんなにいい舞台はしばらくないだろうから、「リア王」は私的にしばらく封印でいいなぁという気がしてるくらいです。次の彩の国シェイクスピアシリーズは喜劇なのでお気楽に観たいです。あ、その分コクーンの方でドーンとくるでしょうけれどね(^^ゞ
ぴかちゅう
2008/02/09 23:30
ぴかちゅうさん、こんばんは!
松岡さんの翻訳本を読むと、キャストン声で脳内再現しちゃいますよね(笑)。本当に素晴らしい舞台に出会えて、幸せだなあ、と思います。SSS、次は秋の「から騒ぎ」ですね。こちらも楽しみですv もちろん、コクーンもめちゃくちゃ楽しみですが(笑)。洋さん、お坊さん役かな・・・?

あ、私、全然体力ないんですよー。とりあえず、情熱だけで動いてます(笑)。
恭穂
2008/02/10 23:52

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