瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2008/03/14 22:40   >>

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1ヶ月ぶりのシアターコクーンは、ロビーも客席も、紅い光で満たされていました。
鮮やかな模様の描かれた、沢山の紅い提灯。
それを照らす、紅い照明。

柔らかいのに、何故か鋭い。
暖かいのに、何故か落ち着かない。
そんな、紅。

役者さんたちが身体を慣らしている舞台の奥。
開かれた扉から見えるコンクリの駐車場は、私の居る日常そのもので。
なのに、僅かな距離を隔てただけの劇場の中は、空気の重さすらも違うような異世界。

その、蜷川さん独特の演出に、開幕前から引き込まれ―――
でも、舞台そのものは、とても淡々としたものでした。



「さらば、わが愛 覇王別姫」

2008.3.9 ソワレ シアターコクーン 2階A列10番台

原作:李碧華
脚本:岸田理生
演出:蜷川幸雄
音楽:宮川彬良
出演:東山紀之、遠藤憲一、木村佳乃、西岡徳馬、中村友也、沢竜二、戸井田稔 他


物語の舞台は、中国が大きく揺れ動いた1960年代。
舞台「覇王別姫」での共演で人気を博していた2人の役者がいました。
項羽を演じる段小樓(遠藤憲一)と、虞姫を演じる女形・程蝶衣(東山紀之)。
二人は同じ科班(京劇俳優養成所)で育ちました。
娼婦の子であり、男の子だから娼館では育てられないと言う理由で9歳の時に科班へ売られ、
心にも身体にも深い傷を負った蝶衣を幼いときから庇い、
そして、女形として生きることを受け入れられなかった蝶衣の手を引いた小樓。
彼を兄と慕う蝶衣は、舞台の上でも、舞台の外でも、
常に二人ともに在りたいと願っていました。
けれど、小樓は娼婦である菊仙(木村佳乃)を愛し、結婚してしまいます。
残された蝶衣は、彼の虞姫を褒め称える京劇の実力者・袁世卿(西岡徳馬)との関係を深めていきます。
それでも、舞台の上での二人の関係に執着する蝶衣。
そんな彼を置き去りに、愛情を深めていく小樓と菊仙。
愛する人の子を授かるという、蝶衣が決して手にすることのできない幸せを、
まざまざと彼に見せ付ける菊仙。
そして、怒涛のように変遷する政局に翻弄される京劇の世界―――

伝統的な京劇への弾圧と、それに殉じた袁世卿。
蝶衣が育てた若い役者小四(中村友也)の共産党への傾倒と、
母と慕っていたはずの蝶衣への裏切り。
保身のために、蝶衣を告発し、菊仙への愛を否定した小樓。
命を賭けて愛した小樓の裏切りを、何も言わず受け入れ、自らの命を絶った菊仙。
そして、菊仙の亡骸を抱きしめて泣く小樓の前で、
虞姫の台詞を言いながら、虞姫と同じように自刃した蝶衣。

一人取り残され、そして老いていった小樓が、
最期に観たのは、幼い日の自分と蝶衣。
そして、かつて自らが演じた「覇王別姫」の幻―――


というような物語でした。
私は元の映画を観ていないので、正確な時代背景や、
登場人物の背景は良くわからないまま観ていたのですが・・・

最初に書いた劇場全体を使った演出は素敵だったし、音楽も素晴らしかった。
京劇の衣装は目を見張るほど華やかだったし、
京劇の舞台の明るい照明と、舞台の下の現実での押さえられた照明の対比は鮮やかだった。
開幕直後、暗い舞台の奥から、鉈を持った母と、母に追われ逃げる幼い蝶衣の、
スローモーションのような動きはとても印象的だったし、
透けた薄布越しに繰り広げられる人間模様は、とても美しかった。

けれど・・・実はこの舞台、私にはとても淡白なものに見えてしまったのです。
それは、私が「音楽劇」というものを理解しきれていないせいかもしれない。
だから、役者さんにミュージカルばりの歌唱力を求めてしまった。
簡単な粗筋だけを読んで、もっと叙情的なものを勝手に期待していたからかもしれない。
でも、何より私とこの舞台を隔てたのは、役者さんによるものが大きいかなあ、と思います。


東山紀之さんの蝶衣は、とても美しかったです。
けれど、私にとって彼の美しさは、まっすぐに伸びた青竹のような美しさだった。
強くしなやかで、迷いのない美しさ。
たおやかさや柔らかさとは無縁の美しさ。
だから、菊仙への嫉妬も、袁世卿との退廃的な関係も、小四に自分を母と呼ばせることも、
なんだかとても現実味がなく感じられてしまったのかもしれません。

そして、彼の抱えた小樓への愛情も、それと同じだったように思うのです。
「女として生まれ…」という台詞を言うことがなかなか出来なかった蝶衣。
小樓の励ましで、その台詞を言えるようになった蝶衣は、
けれど、やはりその芯にあるのは「男である自分」だったのではないかと思うのです。
男として生まれたために、母に売られた蝶衣。
生まれつきあった6本目の指を、母に切り落とされた時、彼と母の絆も断ち切られた。
無理やりに断ち切られた絆は、求める強さのみを彼の中に残し、
そしてその想いは、次に自分を守ってくれた小樓へとまっすぐに向かっていった。
その愛情は、私には、いわゆる男女の愛情とは思えませんでした。
むしろ母への、何があっても自分を守り、
何があっても自分の傍に在る存在への愛情、そして希求―――

映画の蝶衣が、どんな風に描かれているのか、私は知りません。
けれど、感情移入はできなかったけれど、納得もできなかったけれど、
東山さんと蜷川さんが創り上げた「蝶衣」もありかもしれないなあ、とも思うのです。

正直、東山さんの歌声は、音楽に負けてしまって聞き取れないところも多かったし、
台詞も、彼の美しさと同じようにまっすぐな感じだったけれど、
その分虞姫の剣舞のシーンは見惚れるほど美しかったし、
自刃の直前の虞姫の台詞は息を呑むほどの緊迫感がありました。
それを観れただけでも良かったかもなあ、と思っています。


段小樓役、遠藤憲一さん。
初見だったのですが・・・えーと、台詞とか歌とか、殆ど聞き取れませんでした・・・
席のせいなのか、私の耳の問題なのか、役者さんの声量なのか?
小樓という男そのものも、主体性がないというか、甘えすぎというか・・・
ちょっとどつきたくなるような男でした(汗)。
まあ、蝶衣や菊仙みたいに愛に命をかけられる人のほうが少ないですよね。
そう思えば、小樓の選択は物語的には許せないけど納得できるものなのかも。
でも、あの二人にあそこまで想われる魅力は感じられなかったんだよなー。
結局好みの問題なのかな?(笑)


菊仙役、木村佳乃さん。
この方の凛とした佇まいは、とても好きです。
菊仙も、小樓へのまっすぐな視線がとても綺麗でした。
台詞も聞き取りやすかったし、歌もコンスタンツェのときよりずっと良かった。
そして何より、阿片の悪夢に溺れる蝶衣を抱きかかえ、
母を呼ぶ彼に、「お母さんはここにいるわ」と囁く姿は、
彼女の中にある蝶衣への複雑な想いが、すっと伝わってきたように思います。
菊仙と蝶衣は、とてもよく似ていました。
もし蝶衣が本当に女性だったら、
間に小樓がいなかったら、
二人は無二の親友になれたんじゃないかなあ・・・って、
やっぱり諸悪の根源は小樓なのか?(爆)


小四役、中村友也くん。
「恋の骨折り損」の時は、お姉さま方(笑)に押されがちな印象でしたが、
今回の小四役は、とても深みがあったように思います。
師を亡くし、その遺言で蝶衣のところを訪れた時の心細げな風情も、
共産党に傾倒し蝶衣を攻め立てる冷酷な声も、
虞姫の衣装で蝶衣と対峙するときの挑戦的な視線も、
舞台の上でとても映えていたように思います。
秋のオールメールにも出るのかなあ。
他の舞台で拝見するのを楽しみにしておりますv


そして、東山さんの美しさや存在感と対極の雰囲気を醸しだしていたのが、
袁世卿役の西岡徳馬さん。
「ヒガシをベッドに誘ってもいやらしくない人」という基準で選ばれたらしいのですが、
ほんとにいやらしい感じはまったくありませんでした。
しかも、色っぽさもなかったのは、ヒガシによるところが大きいのか・・・?(え)
結構しっかりラブシーンしてたんだけどなー。
それはともかく、袁世卿という人は、
自分の求めるものを確実に手にし、そして、求めたものを束縛することなく、
手にしたもののために殉じることも辞さない究極のロマンチストなんだろうな、とおもいました。
そういう男の姿が、西岡さんにとーっても似合ってたんですよねー。
存在感の希薄な登場人物の中で、深く濃い色合いを見せていただきましたv


あと、子役のみなさんも、とーっても頑張ってました!
科班の訓練のシーンも、皆さん見事な足の上がり方で。
下手すると、大人よりも声がしっかりでていたかも・・・?(え)
ダブルキャストとは思っていなかったので、
この日の細かなキャストはわからないのですが、
蝶衣の幼少期役の男の子、母から逃げるときも、
母の衣を焼き捨てるときも、とても張り詰めた空気を纏っていました。

そして、アンサンブル(という言い方でいいのかな?)のみなさん。
みなさん、素晴らしい身体能力で!!
舞台の上を駆ける、跳ねる、飛ぶ、回る!
ちょっと冷や冷やするところもあって、スリル満点でした!(何か違う?/笑)


そんなこんなで、個人的にはちょっと期待はずれな舞台でしたが、
でも、ある意味期待以上な舞台だったかもしれません。
もう一回観ることは出来ないので、映画の方を観てみることにしました。
レスリー・チャンが形作った蝶衣、とても楽しみですv

そして、最後まで私は「音楽劇」がどんなものなのか理解できませんでした・・・
「ガラスの仮面」も理解できないかもしれないなー。
だって真澄さまが踊っちゃうらしいですよ?!
とりあえず、日程的に洋さんが真澄さまをやる可能性はゼロなので、まあいいか(え)。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
一番肝心なユアンの西岡コ馬が素敵だったことを書き忘れていたので補筆してTBさせていただきましたm(_ _)m
私の場合、「音楽劇」の場合はミュージカルほど歌唱力を重視して観ないことにしています。さらに映画のプログラムの予習段階で段小樓という男が器の小さい男だと思ってしまったのでこの人物には大して期待して観なかったので遠藤憲一の歌が壊滅的でもどうでもいいと思ってしまってました(^^ゞ
連動企画の映画も4/10に玲小姐さん、sakuramaruさんと一緒に観に行く予定です。まぁ映画と舞台は全く別物として楽しめるだろうと期待しているところです。
ぴかちゅう
2008/03/31 23:57
ぴかちゅうさん、こんばんは。
コメントとTB、ありがとうございます!
そうか、小樓は器の小さい男だったんですね。
そういうリアリティは確かにありました(え)。
映画も楽しんできてくださいね。
恭穂
2008/04/01 20:35
恭穂さま
さらっと美しいという印象の舞台でしたね。
私も映画の方の観てみたいと思いました。
恭穂さんのレビューを読ませていただいて、菊仙の蝶衣との
シーンの感想が私ととてもよく似ていることに気づきましたが、
菊仙と蝶衣の二人がよく似ていて、女性同士だったら親友に
なれたのに、というところまでは思い至りませんでした。
そうですね、二人はよく似ています。よく似ているから反発
し合い、小樓の相容れないところで理解しあったのでしょうね。
スキップ
2008/04/18 03:34
スキップさん、こんばんは!
本当に美しい舞台でしたね。
菊仙と蝶衣、反発を乗り越えれば、
とても近しい存在になったのではないかと思いました。
そもそも、小樓に惚れるところが似ています(笑)。
映画は結局まだ見れていないのですが、
いつか観てみたいと思います。
恭穂
2008/04/18 22:00

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