瓔珞の音

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zoom RSS 逃避・・・かも?(笑)

<<   作成日時 : 2008/04/21 23:19   >>

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怒涛の新年度続行中!(涙)ではございますが、
ちょっと気分転換も含めて、観劇記録その2に突入いたします。
前振りを考える気力もありませんが(え)、
日々衰える記憶に挑戦!ということで(笑)。
どうぞお付き合いくださいませv


「どん底」

2008.4.12 ソワレ シアターコクーン 1階H列20番台

原作:マクシム・ゴーリキー
上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:段田安則、江口洋介、荻野目慶子、緒川たまき、大森博史、大鷹明良、マギー、皆川猿時、
   三上市朗、松永玲子、池谷のぶえ、黒田大輔、富川一人、あさひ7オユキ、大河内浩、
   犬山イヌコ、若松武史、山崎一

一軒の木賃宿。
雑然としたその宿の中央には一つの古びたテーブル。
それを囲むように壁沿いにばらばらに並んだ住人たちの寝床。
ある寝床は、上から色とりどりの布を下げ。
ある寝床は、商売道具で埋もれ。
ある寝床には、命の消えようとする一人の女が眠り・・・
そんな「家」に住むのは、どん底の生活の中でも、
それなりの矜持を持ち続ける、一癖も二癖もある住人たち。

大家の妻(ワシリーサ)と関係を持ちながら、その妹(ナターシャ)に心惹かれる色男の泥棒(ペーペル)。
大好きだった台詞を思い出せない、アル中の元役者。
死にかけた妻に依存しながらも、それを認めない錠前屋と、
そんな夫を受け止める妻。
恋愛小説を読みながら泣くのが日課の娼婦。
その娼婦をからかってばかりの元男爵という男。
飄々とした佇まいを崩さない帽子屋。
きっぷのいい饅頭売りのバツイチ女。
いろんな人に金をたかりながら、いつも楽しそうないかさま師。
その住人を取り囲む面々も、決して一筋縄では行かず・・・

日々の生活に不満を言いながらも、
何故かその場所を離れられない、
何故かその場所でそれなりに上手くやっている。
けれど、何かのきっかけで、たぶん急激に崩れ落ちる危うさを持った、
足場の不確かな生活・・・

そんな彼らの元に、年老いた一人の巡礼が新しい住人としてやってきます。
彼は、穏やかな口調で、そこに住む人たちすべてに優しく親身に接します。
最初は胡散臭く思いながらも、徐々にそのペースにはまっていく周囲の人々。
そして、ある事件をきっかけに、彼らの保っていた危うい均衡は崩れ落ちます。
その騒動のさなか、巡礼はいつの間にか姿を消していました。
残された人たちの生活に、生き方に、未来に、小さくはない波紋を残して。


と言うような物語でした。・・・って意訳しすぎ?(笑)
どん底の生活に甘んじる人たちの中に、異分子が紛れ込み、
それによって変化が起きる、という物語は、
去年の夏に観た「氷屋来たる」を彷彿とさせます。
けれど、その変化の後に、残された住人たちが選んだ道は全く異なりました。

「氷屋来たる」では、異分子であったヒッキーによって目を背けていた現実に向き合わされた人々は、
彼が去ったあとに、それを全て「狂気」による「幻」であったかのように振舞います。
変わらないはずはない自分たちから目を背けて、
変わってしまった自分たちの中の何かを拒絶して、
何事もなかったかのようにそれまでと同じ生活を繰り返しました。
けれど、そこにある違和感は決してぬぐうことは出来ず・・・
先の見えない崖っぷちに立たされているような不安を掻き立てられる終わり方でした。

けれど、「どん底」の住人たちは違った。
巡礼ルカーによってもたらされた変化を、なんともしなやかに受け止めた。
その受け止め方は人それぞれで、
自分の気持ちに正直になったために破滅を招いた男もいれば、
まるでルカーを代弁するかのように振舞う男もいた。
全てを受け止められる心地よさに酔った女もいれば、
優しい言葉の底の意味に、死への不安を掻き立てられた女もいた。
自らの命にピリオドを打つことを選んだ男もいれば、
新しい生活に踏み出した女もいた。

底によどみを隠したまま、静かな水面を見せる沼に石を投じれば、
澱は一瞬にして舞い上がり、そしてまた静かな水面にもどっていく。
でも、一度舞い上がった澱は、決して同じ形によどむことはない。
新たな形で、新たな場所で、全く違った文様を描く。
けれど、沼は沼。
変化すら柔軟に受け止め、変化こそを生きることと知っている・・・
そんな強さを感じた物語でした。


うーん、思ったことをちょっと上手く書けませんでした。
でも、なんというか、とーっても明るい舞台だったんですよね。
扱っていることも、描かれていることも、かなり悲惨で容赦がないのですが、
どん底の生活の中で生まれるのが闇だけではなくて、
そこからも光を見出せるしたたかさみたいなものを感じたのです。
ケラリーノさんの演出は初めて観たのですが、
こんな風に人の「明るさ」を感じさせる舞台を創られる方なのでしょうか。
他の舞台も観てみたくなりました。


さてこの舞台、セットがとっても凄かったです!
1幕は木賃宿の中だけで物語が進むのですが、
上に書いたみたいに、雑然とした室内がとーっても私好みv(笑)
いえ、きっとこういう空間の中では生活できないとは思うのですが、
隅っこに布を張り巡らせた秘密基地みたいな空間、好きなんですよね〜。
で、そのつぎはぎだらけの屋根の上に、遠くの木が見えて、
その上でもお芝居が演じられるのですが、
2幕はまさにその上の空間が舞台の上となっていました。
えーと、わかりにくいかな?
つぎはぎだらけの屋根とそこから続く丘やその向こうの大家の家が2幕のセットなのですね。
で、全てが崩壊する事件―――ペーペルがナターシャに気持ちを伝え、
それを知ったワシリーサがナターシャを虐待し、
それを止めようとしたペーペルが誤って大家を殺してしまい、
自分を捨てた男を殺人者としてワシリーサが警察に訴え、
けれど、ナターシャが、ワシリーサとペーペルが共謀して自分を苦しめたと告発したことで、
ワシリーサとペーペルは逮捕されてしまう―――という事件なのですが、
その事件は、降り積もる雪の中で起こるのですね。
最初は少しずつ振っていた雪が、大家が死に、ワシリーサが叫び、
そしてナターシャが全てを拒んで泣き叫ぶ間に、
舞台の上の空間が真っ白になるほどに降り積もるのです。
淡い早春の色をした野原が、木が、そして人々が真っ白に染まっていく様子は、
恐ろしいほどの迫力がありました。

そしてそのシーンの後、楽隊が生演奏をしているその後ろで、
屋根がゆっくりと持ち上がり・・・どん底の木賃宿が姿を現したのです!
いやー、びっくりしました(笑)。
そういうつくりかなあ、とは思っていましたが、
それを全部見せての場面転換をやってしまうとは!
そして、何も変わらないように見える木賃宿の中に、小さな変化が沢山あって・・・
そんな細かな演出にも、かなり心惹かれましたv


さて、既にとっても長くなっちゃったので、役者さんについてちょこっとずつ。

今回はなんといってもルカー役、段田安則さん!!
もう惚れ直しましたよv
得体の知れないルカーの魅力全開!という感じ(笑)。
ルカーの言葉はとても穏やかで優しくて、相手を決して否定することはない。
その言葉はとても心地いいのだけれど、
聞いているうちに、なんだかとても怖くなってきたのです。
彼の言葉には、”熱”がない。
のどこしのいい強い酒のような酩酊感を相手に与えながら、
その実少しずつ命を蝕む毒を含んでいるような印象。
彼は善人なのか悪人なのか、そもそも生きて、実際にその場にいたのかどうか・・・?
それこそ夢のようなそんなあやふやさを持ちながら、
けれどとんでもない存在感を放つ人物でした。


もう一人とんでもなく怖かったのが、ワシリーサ役の荻野目慶子さん。
とっても華奢で、とってもお美しいのですが、あの凄味のある笑顔が・・・(汗)
抱き合うペーペルとナターシャを、半分開いた2階の窓から静かに見つめる時の表情というか雰囲気は、
本当にめちゃくちゃ怖かったです(汗)。
でも、TVで観るよりも、舞台の上の方が魅力を感じました。
広い舞台の上で、ぱっと目を惹く華のある役者さんて、ほんとに凄いと思います。


ついでにもう一人怖かったのが、セルゲイ役、大河内浩さん。
元男爵の元執事で、男爵の転落の原因を作った男なのですが、
いやー、笑顔笑顔なんですが、まったく目が笑っていない!
慇懃無礼、というか、冷血漢というか・・・
「笑うセールスマン」(でしたっけ?)をちょっと思い出しました(笑)。
この役、KERAさんのオリジナルなのだとか。
セルゲイがいることで、不可解な部分もありますが、
物語のやるせなさが明確になったような気がします。


ペーペル役の江口洋介さんは、危険な魅力満載でした(笑)。
ワシリーサを手玉に取りつつ、
ナターシャの前では好きな子をいじめるガキ大将みたいな態度(え)。
なんか可愛かったんですよね〜。
結局、ナターシャに信じてもらえないという可愛そうな役なのですが、
それでも、逮捕された後に拷問されても何も語らない、というのが、
この男の一番の魅力のように感じました。


役者役の山崎一さん。
おお!道化はこんなところにいたのね!!・・・と思いました(笑)。
仕草とか雰囲気とか、「リア王」の道化を彷彿とさせたのね。
途中でシェイクスピアの台詞とかも言っていたし。
物語の中で、一番夢見がちでありながら、
素直な魂のままに最後の道を選んだ役者に、なんだかとても心惹かれました。
でもって、実は、彼の寝床が一番好みでして(え)。


そのほかの役者さんもとっても素晴らしくて、
舞台のどこを見ていればいいのか迷うこともしばしば(笑)。
もう一回観るのは無理なので(ってこの台詞良く書くなあ・・・/笑)、
DVDが出たら、買ってみようかなあ、と思います。
でも、あのセットの素晴らしさは、舞台の方が良くわかるでしょうけどね。

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