瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2008/05/25 22:24   >>

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観劇な土日を無事終了いたしました。
昨日が2個、今日が1個の観劇だったのですが、
今日はそれに加えて観劇前に渋谷の東急での東山魁夷大版画展を見(偶然だったのです!)、
観劇後にザ・ミュージアムで「薔薇空間」を見てきました。

「薔薇空間」・・・素晴らしかったです!
質感さえも感じさせるような繊細な図譜に溜息ばかり・・・
その中に、白と赤の混じった”ヨークアンドランカスター”という薔薇がありました。
そして、ヨーク家の紋章であったといわれる薔薇も。
半八重の、白い、白い、薔薇。
清楚にすら見えるような花姿と小さく控えめな、けれど鋭い棘。
その薔薇を、自らの血の色に染め上げた男の物語を観てきました。


劇団AUN 第15回公演
「リチャード三世」

2008.5.24 マチネ 恵比寿・エコー劇場 B列10番台

翻訳:小田島雄志
演出:吉田鋼太郎
出演:吉田鋼太郎、松木良方、星和利、中井出健、谷田歩、岩倉弘樹、名越健一、松本光生、木村健吾、
    谷畑聡、飛田修司、長谷川祐之、福岡幹之、坂田周子、千賀由紀子、根岸つかさ、沢梅陽子、
    金子久美子、長谷川奈美、関川慎二、高橋努


エコー劇場は、初めて行く劇場でした。
思ったより駅から近くてびっくり。
外観のロマンティックさ(手すりとかね)にびっくり。
でもって、客席の狭さにびっくり!
舞台そのものも小さかったけれど、
その小さめなスペースを手前と奥に区切ることで、
とても多彩な空間になっていてびっくりしました。
が、2列目で見るのは、ちょっとキツイお芝居だったなあ、と思います。
なにがキツイって、その生々しさが。

蜷川さんの「リチャード三世」を観たのは、まだここまで舞台にはまるずっと前。
蜷川さんの舞台そのものも2作目で、
あまりの衝撃に拍手することすら出来ず、カーテンコールも泣き続けた記憶があります。
蜷川さんの舞台は、私のもの凄く深い部分に触れてくる印象があって、
観終わるといつもどっと疲れてしまいます。
でも、疲れる以上に得るものがある。
だから、それが欲しくていつも蜷川さんの舞台を観にいってしまう。

けれど、今回の「リチャード三世」は、
叩きつけるように繰り広げられる暴力の連鎖が生々しく描かれていて、
私は恐怖でずっと体をこわばらせていました。
終った瞬間、あんなに肩のこった舞台は、本当に初めてです。

「1600年代のイギリスの歴史劇が現代にどのような影を投じるのか」

吉田さんが私たち観客に投げかけた問いです。
私が得た答えは、目を背けずにはいられない恐怖と嫌悪でした。

固有名詞だけは原作のままに、現代に置き換えられる様々なもの。
衣装は薄汚れた白の上下。
死者が横たわる棺は白木作り。
悲嘆にくれるアンが纏うのは紋付の喪服。
神の御前にひざまづくリチャードが唱えるのはお経。
そして、剣や杖の代わりに持つのは金属バット。
そのバットが人を打つときの甲高い響き。

それらは、私にヨーク家とランカスター家の争いを、
暴力団か暴走族の抗争のように感じさせたのです。

理性や理論をかなぐり捨てて、
暴力から暴力へ、
復讐から復讐へ、
裏切りから裏切りへ、
疑心から疑心へ、
綿々と続いていく、連鎖。
その連鎖を更に加速させ、破滅への道をひた走った一人の男。

グロスター公(吉田鋼太郎)の独白で始まり、グロスター公の行く道を描いたこの物語。
だからこそ、グロスターの心情は、理解は出来ないまでも知ることが出来た。
権力を、愛情を―――常に何かを欲し続けたグロスター。
他者からの評価を求め続け、
それを表に出さないプライドの高さを持ち、
そして、悲しいほど自己評価の低い男。
彼の歩んだ道は、彼の引き起こした悲劇は、決して許容できるものではないけれど、
ヨーク家の白薔薇の下で、壊れた人形のように横たわるリチャードの姿は、
最後の安らぎに満ちているように感じました。

けれど、逆にまったく理解できない人もいた。
その筆頭がリッチモンド伯(長谷川祐之)。
そして、暗殺者(高橋努)。

リチャード三世の圧制に苦しむロンドンを開放するために攻め込んできたヒーローであるはずのリッチモンド。
言っていることは正しい。
その熱意も正しいものなのかもしれない。
けれど、赤い服に身を包み、金属バットを威嚇するかのように持ち、
そして、嗤う、リッチモンド。

ねえ、どうして人を殺すのに嗤っていられるの?
ねえ、そのバットで肉を打ちながら、どうして嗤っていられるの?
ねえ、どうして何かにとりつかれたように、何かに怯えるようにリチャードを打ち続けるの?

その目が、怖くて。
その歪んだ笑顔が怖くて仕方がありませんでした。

逆に暗殺者はその無表情が怖かった。
人を殺すのに、何の感慨も持っていないその無表情が怖かった。
グロスターの前で浮かべる無邪気な笑顔とのギャップが怖かった。


剥き出しの、まさに皮膚が裂け、肉が断たれ、骨が折られるような生々しさ。
それはもちろん文字通りではなくて、
描かれる感情が、人間関係が、まさに生々しい血を流していた。
それが、私がこのお芝居から感じたことでした。


蜷川さん以外のシェイクスピアは、実は初めてでした。
そもそも劇団AUNの舞台そのものも、今回が初めて。
だから、普段吉田さん率いる彼らが、どんな芝居をしているのかも知りません。
けれど、今回私が感じた剥き出しの生々しさがAUNの持ち味であるなら、
この劇団の舞台を観ることは、私にとってもの凄い覚悟がいるなあ、と、そう感じました。
でも、それだけの覚悟を持ってでも、次の舞台も観てみたいかもしれない、とも感じました。
それだけの芯のあるお芝居だったし、
そして何より役者さんが良かったのです!


タイトルロール、吉田鋼太郎さん。
登場シーンのダンディさに、ちょっとくらくらしてしまいました(笑)。
同じグロスター公で、同じに泣きの多い演技なのに、
受ける印象がこんなに違うところが素晴らしい!
アンが落ちる瞬間のちょっとした目の動き、
一瞬浮かべる笑み、
射すような殺気、
徐々に自身を追い詰めていく余裕のなさ・・・
そういった「リチャード」の生々しさが、極彩色に、けれどスタイリッシュに描き出されていました。
「俺は俺を哀れまない」
このリチャードの台詞が、彼のスタンスの根本であったように、私は感じました。

そして、カーテンコールでの笑顔も素敵でした!
あの笑顔で、こわばっていた体がふっと楽になって、そして現実に戻れたような気がしました。
さすが座頭!
吉田さんが演じるマクベス、やっぱり観たいかなあ・・・

バッキンガム公、中井出健さん。
策士系で、実はかなりツボな人物でした(笑)。
飄々とした冷めっぷりも魅力的v(え)
この物語のキーとなる、特別な存在感を感じました。
でも、決して重くならないところが、凄いなー、と。
降板された横田さんがやる予定だったのは、この役なのかな?
それともへースティング卿?
横田さんの演じる彼らも観てみたかったけれど、
そうすると、また違った印象の舞台になっていただろうな、と思います。

ケーツビー役、松本光生さん。
この役も、ある意味何を考えてるのかわからない雰囲気でした。
最後の最後にリチャードを裏切るだろうと、私最後まで思ってましたもの(笑)。
ポケットに手を入れて歩く姿がちょっと素敵でしたv

エリザベス役、千賀由紀子さん。
綺麗な方ですね〜。
激昂する姿が美しい人って、本当に綺麗な人なんだと思います。
前のほうで見たせいか、声の通りが平坦に聞こえてしまったのが残念。
冷淡になりきれない弱さのあるエリザベスだったなあ、と思います。

マーガレット役、金子久美子さん。
独特の怪しげな雰囲気が素敵でした。
というか、唯一17世紀の雰囲気をまとってらっしゃったように思います(笑)。

暗殺者役、高橋努さん。
実は初見なのですが、有名な方なのですか?
マイペース、というか、自分の色を決してなくさず、けれど強調はせず、
どちらかというと力みの目だったお芝居の中で、
その自然体な存在感は、かなり魅力的だなあ、と思いました。
もっと大きな舞台の上で、その存在感がどんな風に見えるのか、見てみたいです。


舞台の空間の使い方や、
影をたくみに使った照明も印象的でした。
ずっと後ろにある白薔薇も象徴的だったし。
残念なのは、最後、その白薔薇が血に染まるシーン。
使い勝手の関係であの薔薇はビニール製なのだと思うのですが、
流れる血が、まさに赤い色水!(涙)。
予算的に大変だったりするんでしょうけど(新感線のようには血糊は使えないよね)、
もう少しとろみのついた質感の方がいいのになあ、と思いました。
だってジャーって流れていくんだもの・・・
そこがとにかく残念だったです。


さて、劇団AUN第16回公演は12月に「マクベス」とのこと。
やっぱり怒涛の12月になっちゃうんですかね〜(笑)。

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2008/05/27 22:23

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは!24日マチネだったのですね。
恭穂さんの観劇日と知っていたら、当日券並んだのに…。残念。
千賀由紀子さん、良かったですよね!今までちょっと地味な印象で損しているなぁと思っていたのですが、今回はホント良かったです!
りゅーとぴあシリーズもぜひぜひ!谷田さんが堪能出来ます(笑)
花梨
2008/05/27 22:14
花梨さん、こんばんは!
劇団AUNは初めてだったのですが、
劇団自体も、役者さんお一人お一人も、
とても雰囲気と迫力があるなあ、と思いました。
りゅーとぴあシリーズも、ずっと気になってるんですよ。
8月も怒涛なんですが(汗)、でも観たいなあ・・・
谷田さん、堪能してみたいですv
恭穂
2008/05/27 22:30

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