瓔珞の音

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zoom RSS 刹那の火花

<<   作成日時 : 2008/08/02 20:31   >>

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ゆっくりと、揺らめきながら昇る、赤い大きな太陽。
その不確かな輪郭と、高く震えるような音楽を捉えた瞬間、
4年ぶりの私の「ミス・サイゴン」は、早速涙で始まってしまいました。
うーん、泣き虫にも程がある(笑)。
でも、その涙はまさに前奏に過ぎなかったのでした(え)。


「ミス・サイゴン」

2008.7.26 マチネ 帝国劇場 1階U列20番台

エンジニア:別所哲也
キム:知念里奈
クリス:井上芳雄
ジョン:岡幸二郎
エレン:RiRiKA
トゥイ:泉見洋平
ジジ:池谷裕子
タム:中西龍雅


実はこの「ミス・サイゴン」、私が始めて自分でチケットを買って行ったミュージカルでした。
「オペラ座の怪人」のCDで惚れこんだ市村さんを生で観たくて、
ドキドキしながら手にした一枚のチケット。
そこで見たのは、息を呑むような大掛かりなセットと、
そして、折れそうな細い身体から、魂の叫びを響かせる本田美奈子.さんの姿でした。

あれからもう16年。
2004年の再演のときも1度観てはいるのですが、
あの時はひたすら体調が悪くて、市村さんがとっても素敵だったのと、
キム役の知念里奈ちゃんが、あの細腕でタムを片手で抱き上げるのが凄い!と思ったことしか
記憶にありません・・・

ので、4年ぶりとはいえ、殆ど細かい記憶のなかった舞台としての「ミス・サイゴン」、今期初回は、
ひたすらストーリーに没頭し、翻弄された3時間になりました。


この物語、個人的には完全に納得がいくものではありませんでした。
クリスはかっこいいけどあんまりに無責任だし、
エレンはひたすらに保身的で偽善的だし、
なによりキムの”恋”への執着と、最後に選んだ道は、全然理解ができなかった。
なんで、子供の前で死ぬの?!って思った。
結局キムは子供ではなくて、自分の”恋”をとったのか、とも思った。

でも、今回観て、登場人物全員の立場や想いが、その想いゆえの選択が、
不幸なめぐり合わせやすれ違いの結果の、避けられないものであった、と
初めて思うことができたのです。
16年という時間の中で、私自身も変わっていった結果なのでしょうか。

そんな変化の中で、今回一番心に響いて、一番泣けたのは「世界が終る夜のように」でした。
明るい旋律、前向きな歌詞。
歌っている二人も、互いだけを笑顔で見つめている。
なのに、聴いていて、もの凄く悲しくなった。もの凄く、苦しくなった。
親の決めた婚約者と米軍の撤退という、二人に突きつけられた現実。
その現実に引き裂かれれば、二人の夢はそこで終わってしまう。
新しい世界への夢と、一人の少女を救うことができるという夢が。
でも、もしその現実を乗り越えて、共にアメリカに渡ったとしても、
二人を待っているのは、更に厳しい現実―――
一度自身を拒絶した母国と、母国を蹂躙した国での生活。
そんな状況にある二人が、互いに、不確かな”恋”という関係に、
すがりつき、沈み込んでいくような印象をもちました。

戦争という非日常な日常の中で、
戦争という抑圧された生活の中で、
戦争ゆえに奪われ、拒絶された経験の中で、
二人の間に生まれた、小さいけれど鮮やかな火花。
その光が刹那のものであることを、きっとこの時点で二人は知っていた。
この光を持続させることが、むしろいつか自分たちを苛むかもしれないことを、
たぶん、二人はわかっていた。
それでも、すがりつかずにはいられないほどの極限の状況―――

バルコニーから、外の喧騒に向かって高らかに歌い上げる二人の後姿が、
硬く抱き合い唇を交わす二人のシルエットが、
とても儚く孤独に思えて、涙で歪んで見えました。


他にもいろいろ新たに思ったことはあるのですが、それはおいおい。
だって2回分チケット追加しちゃったしー(笑)。
ので、役者さんの感想に突入いたします。


エンジニア役、別所哲也さん。
実は・・・市村さん以外の方のエンジニアは初めてでした。
見る前は、違和感があるかなあ、とちょっと不安だったのですが、
以前きいたとおり、全く違うアプローチで、とても楽しめました。
うーん、なんていうのかな、別所さんのエンジニアは、基本とっても人が良くて、
実はそれだけの力量は全然ないのに(え)、無邪気に自分の才能を信じていて、
ある意味とっても素直に「アメリカン・ドリーム」を夢見ている、という感じでした。
個人的には、少年のような印象?
胡散臭いけど微笑ましい、みたいな?
キムに対するアプローチが悉く裏目にでちゃうのも、さもありなん、と思っちゃった。
大柄な身体で、ちょこちょこ動き回ったり、しゃべりまくるのもとってもラブリーv(笑)
差し挟まれるいろんなアドリブ(だと後になって気づいた)が、とっても面白かったです。


キム役、知念里奈さん。
いやー、泣かされました!
歌声も素晴らしかったけれど、後半ひたすらに”母”であり続けたキムが良かった。
知念キムは、とても大人な印象だなあ、と思いました。
クリスに恋しているのは本当だけれど、
2幕は恋よりも母であることを選び続けていました。
エレンと対峙して、その存在を知った時も、
結婚の誓いを裏切られたという衝撃よりも、
じゃあ、どうすればタムを幸せに出来る?!と、即座に意識がすりかわっていた。
だから、自らの命を絶つことも、絶望の果てでは決してなくて、
タムにアメリカでの未来を与えるための手段だと、素直に思えました。
もちろん、思えただけで、受け入れることは出来ないんですけどね(笑)。
クリスとの場面は、クリスが井上くんだったので、
ステファニー、想いが通じてよかったねーってちょっと思っちゃった(笑)。


クリス役、井上芳雄くん。
初めて、クリスっていい男なんだ!と思いました(笑)。
成り行きからの愛情でも、自分の存在を確かにするための偽善であったとしても、
このクリスは、キムを受け入れて、彼女の全てを守る覚悟をきちんと持っていたと思う。
だからこそ、帰国してから言葉を失うほどに打ちのめされたし、
そこから立ち直るために、エレンという存在が必要だったのでしょう。
たぶんそうしなければ、彼は生きていくことが出来なかった・・・
そう感じさせられるほど、エレンへの告白は鬼気迫るものがありました。
そして、キムヘの愛情も、エレンへの愛情も、真実なのですよね。
歌声も凄いけれど、井上くんの演技はどんどん凄くなっていくなあ。
いい役者さんだな、と思います。


ジョン役、岡幸二郎さん。
一番のツボは「蓮ですかっっ?!」ですかね(笑)。
そんなシーンじゃないのに、爆笑しそうになりました。
岡さんのジョンは、上流階級のノーブルさがあるように思います。
だから、ちょっと独善的で、ちょっと上から目線。
「ブイ・ドイ」は素晴らしかったけれど、これも少しだけ偽善的な感じがしました。
無償の愛情ではなくて、それが義務であり、贖罪である、という意識の方が強い感じ。
まあ、でも、それが普通ですよね。
なので、クリスやエレンとのやり取りのなかでも、
全ての元凶はジョンなんじゃ(キムをクリスにあてがったのはジョン)、とか、
援助するのが現実的でないなら、じゃあどうすればいいのよ?!とか、
いろいろ突っ込みたくなりました(笑)。
それにしても、「ブイ・ドイ」の最初の男声合唱は素晴らしいですよねー。
暗闇の中に浮かび上がり、響き渡るあのシーンは、ほんと大好きです!


エレン役、RiRiKAさん。
とても澄んだ綺麗な声の方ですねー。
そして、とっても等身大。
キムを憎まない、というエレンの心情が、とても自然でした。
最後のシーンで、RiRiKAさんのエレンは、タムを抱きしめないのですね。
それも、とても自然な感じがしました。
だって、どうやったってタムにはキムの面影があるんだから。
同情だけで、この子供を引き取っていいのか、
この子を愛することが出来るのか・・・
そういう葛藤が、凄く良くわかった。
ゆっくりと伸ばされる腕がタムに届くのか、フェードアウトしてしまってわからないけれど、
それでも、このエレンとクリスなら、タムをどんな形であれ幸せにするだろうな、と思いました。


トゥイ役、泉見洋平さん。
トゥイって、クリスとキムを引き裂こうとする敵役なのですが、
はっきりいって、彼は全然悪いことしてませんよね?!
いや、タムを殺そうとするのは許せませんが、
それだって、母国を蹂躙したGIの子供を愛する女が産んだ、という、
あの国の、あの立場の彼からしたら絶対に受け入れられないことだったわけですし。
というか、こんなに誠実で、純で、一生懸命なトゥイにどうしてキムはなびかないんだろう?と、
ちょっと本気で思っちゃうくらい泉見さんのトゥイは素敵でしたv
親の決めた婚約者、というだけでなくて、
キムが本当に大好きで、大事だったんだろうなあ、って思う。
そのキムに殺されるトゥイは、自業自得ではあっても、本当に哀れで切ない。
化けてでちゃうのも納得です(え)。


というわけで、「レ・ミゼラブル」ほどははまらないはず、と思っていた「ミス・サイゴン」に、
やっぱりしっかりはまりそうな予感です(笑)。
とりあえず、キムは全員見たいなあ・・・
そうそう、レ・ミゼといえば、来年また上演されるんですね!
しかも、今回コゼットに神田沙也加ちゃん!!
1年以上先の話ですが、今からとっても楽しみですv

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。順調に「ミス・サイゴン」通ってますね。
私も最初観た時に、あの結末に納得いかなくて、リピートはしないだろうと思っていました。
でもやはり観れば観る程、ハマってしまう…。
とにかくキムとクリスは全キャスト制覇したいです!
花梨
2008/08/03 01:35
花梨さん、こんにちは!
はい、順調に(笑)。
このキャスト設定が曲者ですよね〜。
来年の「レ・ミゼラブル」といい、
なんだか東宝の思うがまま、という感じです(笑)。
でも、いいものはやっぱりいいですものね!
恭穂
2008/08/03 16:22

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