瓔珞の音

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zoom RSS 生きている、私

<<   作成日時 : 2008/11/23 16:28   >>

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「表裏源内蛙合戦」を見てから1週間。
今日は久々に目覚まし時計をかけずにいられた休日。
目が覚めた瞬間に、頭のなかに流れた曲がありました。
(普段は携帯アラームの「民衆の歌」で覚醒/笑)
「道元の冒険」の「波羅蜜多ソング」でした・・・
いや、それはそれでありがたいんですが、ちょっと衝撃・・・?(笑)

夏に、あんなにはまった「道元の冒険」。
ここしばらく忘れていたのに、今日いきなり思い出したのは、
井上+蜷川第4弾を観たからに違いなく・・・
でもって、観劇記録を書きなさい、という思し召しかもしれず・・・(誰の?/笑)
でもね〜。
1週間たったけど、私の中で全然整理できていないんですよ、この舞台。
わーっ!となっちゃうような沢山の情報が、
どーっ!と押し寄せてきて、
さーっ!とどこかに流れていっちゃったような、そんな舞台。
正直感想が書けるかどうか怪しいですが、
ちょっと挑戦してみようと思います。


「表裏源内蛙合戦」

2008.11.16 マチネ シアターコクーン 1階J列20番台

作:井上ひさし
演出:蜷川幸雄
音楽:朝比奈尚之
出演:上川隆也、勝村政信、高岡早紀、豊原功補、篠原ともえ、高橋努、大石継太、立石凉子、六平直政 他


江戸時代の鬼才、平賀源内の一代記であるこのお芝居。
まずは出演者全員での前口上から始まりました。
色とりどりの裃を着て、ずらっと2列に並んだ役者さんたちが、
次々にBunkamuraの場所や脚本家を揶揄した言葉を紡いでいきます。
これ、大阪でやるときにはきっと違う台詞になるんだろうなー。
そして、ただ一人黒子姿の勝村さんが、
ぼろぼろの定式幕を引いてがーっと走りぬけ・・・
史実と虚偽の入り混じった、エネルギーに満ちた舞台が始まりました。

4時間越えの舞台はやっぱり長くて、正直細かな部分は覚えていないのです。
源内の出生からその死まで、
彼を取り巻いた人と、文化と、時代と・・・沢山の要素が、
次から次へと舞台の上に現れ、歌い、笑い、嘆き、叫び、消えていく。
その雑踏の中で、見知らぬ全てに目を輝かせながらも、底知れぬ不安に戸惑っていたような気がします。
タイムマシーンとかができて、それでぽんっと見知らぬ時代の見知らぬ場所に放り込まれたら、
こんな気持ちになるのかもしれません。
・・・源内も、そうだったのかな?
長崎や江戸という、生まれ育った土地とは全く違う場所で、
新しく出会う沢山のことに心浮き立ちながら、彼は常に異邦人だったのかもしれないなあ、と思いました。


上川さん演じる表の源内と、勝村さん演じる裏の源内の関係は、
正直良くわかりませんでした。
自分の興味の赴くままに、いろいろなことに手を出し、それなりに成功し、
けれど、一番の望みである幕府への出仕は叶わなかった源内。
裏の源内は、表の源内を時に引きとめ、時に煽り、時に突き放し、時に見守り・・・
ヴィジュアルの上では二人は別々にあらわされていたけれど、
実際、自分の中で何かを決めるときに”別の自分”はいるのだと思う。
出仕を諦めようとする表の源内を鼓舞する裏の源内を見たとき、
「Mozart!」のヴォルフガングとアマデの関係が思い浮びましたが、
実際はあの二人よりも表と裏は密接に一つだったと思います。
自分の中で、冷静に自分自身を見つめる、別の自分。
幕府への出仕に続く出世の道を切望する源内と
民衆へ寄り添い、共に涙する源内は、きっとどちらも真実だった。
なんの迷いもなく、まっすぐに生きている人間なんてきっといない。
全てに絶望して死んでいった源内と、
その死を惜しんだ源内は、きっとどちらも存在していた。
それは、二重人格とかそういうものではなくて、
きっと誰もが持っている”迷い”であり、
その”迷い”があるからこそ、人は人で在り得るのかもしれない。
・・・うーん、やっぱり上手くいえませんね(汗)。


表の源内を演じられた上川さん。
生で観るのは「SHIROH」以来、かな?
「SHIROH」は最初から最後まで(まわりがどんなにギャグでも)しっかりシリアスでしたが、
今回はコメディもシリアスもしっかり見せていただきましたv
いやー、あの赤ちゃんには度肝を抜かれましたよ(笑)。
歌声も堪能いたしましたよー。
1幕の、舞台上に渦巻くエネルギーに巻き込まれることすら楽しむような、飄々とした存在感と、
2幕の、どんどん内に疑問を溜め込み、疑念を降り積もらせ、諦念に沈み込み、
そして、狂気に溺れていくような鬼気迫る演技の、どちら素晴らしいなあ、と思いました。
特に腑分けのシーンは、ちょっと鳥肌立っちゃいましたよ。
あれ、故意なのか、臓器の順番が微妙に間違ってたんですけど、
そんな冷静な感覚は、どんどん追いやられてしまいました。
一度はその手の中で愛した女の身体を、
学問という名の好奇心(だと私は思った)のもとに切り開き、刻んでいく男。
あの時点で、源内は一つのラインを飛び越えてしまったのかもしれないなあ・・・
みていた玄白たちが、戸惑い、恐怖し、逃げ出してしまうのも仕方ないかと思ってしまいました。

で、その裏の源内を演じられた勝村さん。
最初から「黒子」という形で、他の役者さんたちとはちょっと違った立ち位置だった裏源内。
ちょっと外れた場所から表源内を見守っていたり、
他とは違うテンポで違う次元を歩いているように見えたり、
要所要所で舞台を回す(文字通り回してるシーンもありました!/笑)狂言回し的な時もありましたが、
どのシーンでもその意味深な存在感が目を引きました。
笑顔でいることが多かったのだけど、
その笑顔がふっと考え込むように翳ったり、
鋭く何かを見つめたりすると、それだけで何かが起こるのでは?という気になりました。
2幕最初の講釈(?)も素晴らしかったですしねー。
あれは当然拍手が起きるでしょう!
そして最後のあの台詞。
裏の源内が”何”であったのか、それは私にはわからないけど、
あの短い台詞に込められた”何か”は、きっと聞く人毎に違うのだと思う。
私は、その中に後悔と子供のような疑問を聞き取りました。


青茶婆役、高岡早紀さん。
あの衣装がめちゃめちゃ好みだったんですけど!!
個性的な役者さんの中で、
灰汁の少ないすっと背筋の伸びた立ち姿は、ちょっとインパクトには欠けましたが、
個人的にはとても綺麗だったなあ、と思いますv

高井源之助、杉田玄白 他役、大石継太さん。
この方の佇まい、というか存在感って、
私的には凄い癒し系なんですよねー。
あの声の響きがそう感じさせるのかもしれませんが。
玄白の時の真っ当な怯えっぷりもよかったですが、
将軍家治の気負わない客観性というか、在り方が、
全然嫌味な感じがなくて好きでした。

女房お初、母 他役、立石涼子さん。
赤ちゃん源内の尋常でなさに戸惑いつつ、
しっかり受け止めているお母さんが素敵でしたv

松平頼恭 他役、高橋努さん。
劇団AUNの「リチャード三世」で暗殺者をやっていた方ですね。
あの暗殺者がめちゃくちゃ怖かったので、
今回どんな役なのかなあ、と思っていたのですが・・・最初分かりませんでした(笑)。
というか、今回の舞台、あまりに情報が氾濫していて、
どの役者さんがどの役をやっているのか、
観ている最中ははっきり言って全然わかんなかったんですよ。
なんかもう何処を見ればいいんだー!!っていう感じ?(笑)
どの役者さんも埋没せずに自己を主張してるし。
見所満載で面白かったけど、なんだか大切なところを見落としてしまっているのでは、という不安あり・・・

そもそもねー、私、下ネタって苦手なんですよ。
「藪原検校」が個人的に限界でした。
エロも暴力も差別も嘲笑も、直接的には観たくないなあ、というのが正直なところ。
でもこの舞台、明るい楽しいシーンの直後に、
そういう部分がぽんっと入ってくるのですよね。
だから、心構えのない状態でそういうシーンや言葉が来ると、衝撃も大きくって・・・
人間が生きる根源的なエネルギーなのかもしれないけど、
そういう意味では、たぶん4時間という時間以上に疲労したように思います。


そういう怒涛の舞台。
見ている最中から、この物語がどんな風に着地するのか、凄く興味がありました。
そして、その着地点は、思いもよらないほどに真っ直ぐな”問い”でした。
牢の中で死して倒れる表の源内を囲んで、
死んだはずの者も、生きている者も、全員で歌う「美しい明日」の中で、真正面から問いかける彼ら。
真っ直ぐに客席を、私たちを見つめ、何度も、何度も問いかけられる、問い。
「お前は、生きているのか」
その”生きる”とは、たぶん息をして命を繋いでいることではなくて。
何を見て、何を感じて、何を思って、
何のために、誰のために、今、ここに”生きて”いるのか、という問い。
本当に、お前は”生きて”いるのか、という問い。

やられた、と思いました。
この言葉のために、この4時間はあったのだ、と思いました。

もちろんそれは誤解なのかもしれないけど、
でも、青い照明の中から、真っ直ぐに問いかけられたその言葉は、
容赦なく私の中に飛び込んできて、瞬きをすることすら忘れさせました。
そして、その飛び込んできた”問い”は、
私の中でまだ落ち着かずに飛び続けています。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
舞台自体は見ていないし予定もないのですが、読んでいるうちに胸が熱くなって
一度見てみたいなあという気にさせられました。
恭穂さんの文章は、なぜだかわからないんですけど琴線に触れるというか
私のつぼにはまるみたいです。

またお邪魔させてくださいね。

みずたましまうま
2008/11/29 00:59
みずたましまうまさま。
こちらにもコメントありがとうございます!
悩みながら書いた観劇記録ですが、
みずたましまうまさんが観たいな、
と思ってくださったなら、
頑張って書いたかいがありました!
新感線の舞台とはテイストの異なる舞台ではありますが、
蜷川幸雄さんの演出は、本当にパワーがあります。
この作品もDVDになるのではないかな、と思いますので、
機会がありましたら是非ご覧くださいねv
恭穂
2008/11/29 19:20
恭穂さま
>やられた、と思いました。
>この言葉のために、この4時間はあったのだ、と思いました。
これこれ、ほんとに同感です。
記憶がおぼろげなのですが、「美しい明日を」の歌は
他の場面でも唄われたような気がしているのですが、
あの最後のコーラスは胸に迫りました。
そしてその問いに答えられないでいるのも恭穂さんと
おんなじ。
それにして見応えも聴き応えもあり過ぎて、
いささか疲れました(笑)。
スキップ
2008/12/20 01:01
スキップさん、こんばんは!
「美しい明日を」は、確か青茶婆たちが処刑されたときに、
彼らが歌っていたような気がします。
あのキャストが歌うと、本当に迫力があって、
胸に迫ってきましたね。
そうそう、最初の口上、やっぱり大阪は違っていたんですね!
両方聴きたかったなあ、とか思ってしまいました。
DVD化されるなら、是非両方入れて欲しいです(笑)。
恭穂
2008/12/20 23:28

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