瓔珞の音

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zoom RSS 虚構の中の真実

<<   作成日時 : 2008/12/14 22:24   >>

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ずっとずっと、観たかった舞台がありました―――「ラ・カージュ・オ・フォール」。
学生のころ、一度だけ観たその舞台。
細かいことは、何も覚えていません。
ただ、歌いながら、全く別の存在へと自分を変えていく見事さと、
脇の通路を駆け抜けていった彼女の厳しく切ない表情だけは、未だ脳裏に焼きついています。

市村さんの、ザザ。

ずっとずっと観たかったその舞台が、最後の公演の幕を開けました。
客電が消えていくその瞬間、胸が苦しくなるほどの期待に満たされました。
そして、鮮やかなライトの中で繰り広げられた虚構の舞台は、
その中に沢山の感情や沢山の真実を内包して、
期待以上の感動と、充実感を与えてくれました。


「ラ・カージュ・オ・フォール〜籠の中の道化たち」

2008.12.6 ソワレ 日生劇場 1階B列10番台
2008.12.7 マチネ 日生劇場 1階N列30番台

出演:鹿賀丈史、市村正親、島谷ひとみ、山崎育三郎、香寿たつき、新納慎也、真島茂樹、今井清隆、
    森公美子、花井京乃助、林アキラ、園山晴子、日比野啓一、大塚雅夫、石丸貴志、美濃良、
    香取新一、水野栄治、富山忠、附田政信、佐々木誠、杉山有大、加賀谷一肇  他


舞台は南フランスにあるとあるゲイクラブ ラ・カージュ・オ・フォール。
夜毎繰り広げられる華麗なショーに、客席はいつも満席。
オーナーのジョルジュ(鹿賀丈史)と看板女優のザザことアルバン(市村正親)は、
20年連れ添ってきた事実上の夫婦。
素晴らしい歌声を持つアルバンも、最近は年齢による容色の衰えや、
夜毎のショーの華やかさと平凡で暖かい家庭への希求との間で、気分も沈みがちでした。
そんなある日、ジョルジュの息子ジャン・ミッシェル(山崎育三郎)が旅行から帰ってきます。
帰ってきて早々、ジャン・ミッシェルから爆弾発言の連続!
恋人アンヌ(島谷ひとみ)と結婚する。
彼女の両親が、ジャン・ミッシェルの両親に会いにやってくる。
その両親はゲイクラブを目の敵にしているダンドン議員夫妻(今井清隆、森公美子)だというのです。
彼らに気に入ってもらうために、ジャン・ミッシェルは父に頼みこみます。
その24時間だけ、ジョルジュには外交官という虚構の姿を演じてほしいこと、
母親は、もう20年以上会っていない生みの母を呼んでほしいこと、
そして、アルバンにはどこかに行っていてほしいということ・・・
20年、母親代わりに愛情を注ぎ続けたアルバンの姿を知っているジョルジュは、躊躇います。
けれど、息子の願いに押し切られ、結局は了承・・・
自分から話すというものの、無邪気に息子の結婚にやきもちを焼いたり喜んだりするアルバンを前に、
ジョルジュはなかなか話を切り出すことができません。
そして、その日のショーの最中、業を煮やしたジャン・ミッシェルに急かされて、とうとう彼に告げてしまいます。
そのパーティーに、アルバンは参加することはできないのだと・・・
今までの自分の全てを否定するかのようなその言葉に、
アルバンは、悲痛なまでの歌で訴えかけます。
ありのままの私を見て、と―――

翌日、それでもジョルジュへの、ジャン・ミッシェルへの愛情を棄てられないアルバンは、
ジョルジュの説得に納得し、叔父としてその場へ臨むことを決心します。
けれど日ごろの立ち居振る舞いはなかなか直すことはできず・・・
不自然な動きのアルバンを見て、もう結婚は絶望的だ!と嘆く息子に、
ジョルジュは静かに語りかけます。
お前を愛し、慈しみ、お前のために全てを捧げた人は誰だ、と・・・
そしてアンヌの両親が到着。
けれど、呼んだはずの生みの母はくることができなくなってしまったのです。
そのことを知ったアルバンは、”母”として、その場に登場することを決意!
綱渡り的な会話の中で、それでもアルバンの機転と献身で、
親友ジャクリーヌ(香寿たつき)の店での彼らの晩餐は明るく盛り上がり大成功!と思いきや、
感極まったアルバンが、いつもの癖で鬘をとってしまいます!
全てがばれてしまった後、それでもジャン・ミッシェルとの結婚を望むアンヌ。
当然の如く反対したダンドン議員夫妻も、ジャクリーヌの計略で退路を断たれ、
その結婚を認めざるを得なくなります。
そして、全てが円く収まったその後―――明けてゆく海のほとりで、
ありのままの姿の、ありのままの愛情を、互いに差し出しあったジョルジュとアルバンは、
ゆっくりと互いの肩を抱きしめあうのでした。


というようなお話です。
うーん、こう書くと、なんだか全然面白くなさそうですが・・・
もうね、本当に手放しで絶賛することのできる舞台でした!!
最高のドラマと、絶品のエンターテイメント。
ミュージカルの醍醐味が全てつまった舞台だったと思います。

幸運にも初日を観ることができたのですが、
たぶん、客席の多くは以前にこの舞台を観ていた方たちだったのかな?
最初ちょっと躊躇いがちだった拍手もどんどん熱を帯びて、
ショーのシーンなんかは、舞台も客席も一体になって楽しむことができました。
あの瞬間、あの客席は日生劇場ではなく、ラ・カージュ・オ・フォールの客席だったのだと思う。

虚構の舞台、虚構の空間、虚構の存在―――
けれど、その中で確かに息づいていたアルバンの、ジョルジュの、カジェルたちの生き様。
こんなにも、終わってしまうのが寂しい舞台は久々でした。
最後のショーを観ながら、ああ、終わってしまう、もっと観ていたい、と心から願ってしまった。
楽しくて、面白くて、心から笑っているのに、同時に切なさに胸が痛み涙がこぼれる・・・そんな舞台でした。


市村さんのアルバンは、本当に可愛くて愛しい存在でした。
もちろん声も高めには作っているのだけど、髪型とか普段のままだし(え)、
決してビジュアルだけでアルバンやザザになっているわけではないのです。
なのに、ちょっとした仕草、ちょっとした目線・・・それだけで、
愛情深く情にもろい、けれど誰よりも真摯に生きているアルバンの姿が浮かび上がりました。
息子のために必死になる姿は時にちょっと滑稽で、
愛情からくる突飛な行動は時にちょっとイタくて、
ジョルジュの愛を確かめる言葉は時にちょっとうっとうしくて・・・
でも、だからこそ浮かび上がる等身大のアルバンの姿。

観ていてね、母を思い出してしまいました。
女装の時の後姿の体形が母に似てる、というのもあるのだけど(え)、
あのあけっぴろげなのにちょっと自信がなくて、
でも本当に心から差し出される愛情が、母と重なった。
その愛情をうっとうしく思った時期もあった。
素直に受け取れない時もあった。
そんな私の子供っぽい反抗や、甘えの裏返しの冷たさに、
怒ったりうろたえたりしながら、それでも母の手はいつだって私に伸ばされていた。
アルバンは、まさにそういう母の姿だった。
そう思ったら、なんだかとても切なくて、嬉しくて、幸せな気持ちになりました。

そして、ずっと聴きたかった、市村さんの「ありのままの私」。
呟くように、囁くように、振り絞るように、自分の生き方を語るその姿。
愛が全てで、情の塊のようなアルバンが持つ、決して譲ることのできない誇り。
他者と違う自分を認め、受け入れる―――それはたぶんとてもとても難しいこと。
そのありのままの自分をさらけ出し、その上で愛して欲しいと望む―――それは本当に怖いこと。
でも、アルバンは臆することなく自分を見せた。
決して激しくも、派手でもないこの曲に、
けれどアルバン=ザザの生きる覚悟が語られていました。
そして、そのアルバンを見つめるジョルジュの表情・・・
愛しさと、悔恨と、感嘆と―――二人の間の絆を感じた瞬間でもありました。

そして、ふと先日観たエリザベートの姿が思い浮びました。
二人ともありのままの自分を愛して欲しいと願いながら、
片方はその自分を鎧い隠すことで戦い守ることを選び、
片方はその自分をさらけ出し与えながら生きることを選んだ。
時代も身分も生い立ちも状況もまるで違う二人。
けれど、懸命に生きた、そのことは確かなんだろうな、と思いました。


ジョルジュ役、鹿賀丈史さん。
とても物腰が柔らかくて、洒落者な感じの、ちょっとへたれだけどかっこいいジョルジュでした。
以前見たときは、岡田真澄さんだったのかな・・・?
アルバンよりも年上で、彼を包み込む感じだったように記憶しているのですが、
鹿賀さんのジョルジュは、アルバンと全く対等な印象。
でもって、アルバンをめちゃくちゃ可愛いと思っていて、
彼(彼女?)の健気さゆえの暴走に振り回されるのを楽しむだけの懐の深さもあって、
彼の生き方や愛情の深さをきちんと見つめて尊敬している・・・そんなジョルジュ。
そして、父親として締めるところはきちっと締める。
正直惚れ直しました(笑)。
ショーの前口上の爽やかさや怪しさ(え)も素晴らしくv
普通の背広より、ラメの入った背広の方が似合うあたり、さすがだなあと思いました(笑)。


ジャン・ミッシェル役、山崎育三郎くん。
まるで高校生のような初々しさでしたよ!!
すねて口を尖らせている様子とか、なんだかめちゃくちゃ可愛いんですけど?!
マリウス以来だったので、ちょっとびっくりしてしまいました。
めいっぱい愛されて育った、甘えん坊で天真爛漫で、
でもちょっとずるさもある普通の男の子だったなー。
ジャン・ミッシェルの身勝手さは、アルバンの立場からすると許せなくて、
1幕最後の「ありのままの私」は、君が聴いてなきゃ駄目でしょう!と思ったし(でもきっと聴いてない・・・)、
アンヌとのカップルは可愛らしいけどちょっと危うい感じもしましたが、
娘の立場からするとちょっと頷けるとこともあったし、なによりなんだか憎めないんですよね〜。
でもって、歌声も素敵でしたv
二幕の「見てごらん」なんて、(ちょっと唐突だったけど)彼の素直さが良くわかって、
これは両親メロメロになるよ、と思いました(笑)。


ダンドン夫妻役、今井清隆さんと森公美子さん。
いやー、迫力のお二人でした!
体当たりで笑いをとってらっしゃいましたしねー。
自信満々で思い込みの激しいちょっとずれた旦那様と、
そんな旦那に不満を持っていて、どこかで発散したいと思いながらも抑圧されてる奥様の、
微妙な関係が良くわかりました(笑)。
この奥様とアルバン、仲良くなれると思うんだけどなー。
そして、そこにジャクリーヌが加わると最強だと思う(え)。


そのジャクリーヌ役、香寿たつきさん。
出はそれほど多くないのですが、とってもはじけてて印象的でした。
両手を広げて「ジャクリーヌ!」って私も一緒にやってみたいです(笑)。
細身の白のドレスもとてもお似合いで、スタイルの良さにもくらくらしちゃったv
もしかしたら、この物語の中で一番男前なんじゃないかと思うくらいかっこよかったです。


アンヌ役、島谷ひとみさん。
可愛らしかったです。
・・・えーと、歌は、全然聞こえなかったんですよねー。
そもそも歌うシーンも少ないし、歌うときはまわりがあのメンバーだし・・・
アルバンと挨拶のキスをする時の仕草がキュートでした。
次に観る時は、もっと彼女の歌声が聞こえるといいな。


ジャコブ役、花井京乃助さん。
いやー、楽しかったです!
ご本人もきっととても楽しんで演じてらっしゃるのでしょうね。
動きの一つ一つが決まっていて、観ていてなんだか清々しかったです(笑)。


そして、真島さん演じるハンナや新納くん演じるシャンタルが率いるカジェルたち!
もう、本当に最高のショーでした!!
歌も、タップも、カンカンも、ラインダンスも、もう全て見ごたえあり!
衣装も色鮮やかですが、長身の彼らが繰り出すこれでもか!というほどのダンスは、
もの凄い迫力と華やかさで、ショーのシーンはカーテンコール並みの拍手でした。
正直二日目は拍手のし過ぎでちょっと腕がだるかったです(笑)。
ぴたりと息のあったダンスは、きっとカンパニーの気持ちのまとまりも反映しているのでしょうね。
なんだか、とても仲の良いカンパニーな印象でした。
初日の幕が降りた後、厚い緞帳を通して彼らの歓声が聞こえたし。
なんだか、とても微笑ましくて、とても幸せな気持ちで劇場を後にすることができました。

それにしてもダンサーの方の脚って、どうしてあんなに綺麗なんでしょうねー。
新納くんとか、あんまりにも細くて綺麗なラインで、思わず見つめちゃいましたよ(え)。
真島さんとか、初演から参加されている方もいて、
正直なところ結構年も上の方もいると思うんですよね。
でも、みなさんそんなことは全然感じさせない美しさでした。
あ、もちろん市村さんのおみ足も美しかったですv(笑)
ショーの合間の短いシーンで、彼らの背景もきちんと見せていただいたし。
二幕冒頭やカーテンコールのシーンの彼らは、本当に普通のかっこいいお兄さんで・・・
そんな彼らが、あんなにも綺麗なカジェルになる―――役者さんって、本当に凄いなあ、と思いました。
みなさんあまりにもお綺麗なので、全員をきちんと判別できなかったのが残念でしたが(笑)。
あ、新納くんの音域の広さにもびっくりしました!
そうだよねー、歌のお兄さんだったんだもんねー。
「男のレッスン」のシーンで、後ろの方で不思議な動きをしていたのもちょっと気になったり。
花、食べてませんでしたか・・・?(笑)
その挙動不審さが彼の魅力ですかねー。
でも、確かにこういう系統の役が多いですよね。
いつか、男らしい役柄の新納くんも観てみたいなあ、と思いました。


この舞台、衣装や照明もとても見ごたえがありました。
セットそのものは、それほど数が多いわけではないのだけれど、
光の使い方や動きで、とても奥行きがあったように思います。
ラ・カージュ・オ・フォールの鮮やかできらびやかな照明と、
家の外の自然な光での時間の経過・・・
非日常と日常。
虚構と現実。
本当に、本当に大満足の舞台でした。

手持ちのチケットはあと2回分。
早く次の舞台を観たいような、
千秋楽の日がずっと来ないで欲しいような・・・そんな複雑な気持ちです。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
興味深く読ませていただきました。
私は来月北九州で観劇予定なのですが、ますます楽しみになりました。
盛り上がるといいなあ。
みずたましまうま
2008/12/15 00:27
みずたましまうまさん!
読んでいただいてありがとうございます。
北九州は日生劇場の次ですね。
この舞台は、思いっきり楽しんだ方が絶対いいと思います!
きっととても盛り上がりますよ。
私も休みが取れるなら飛んで行きたいくらいです。
ほんとに九州出張があるといいのになあ〜(笑)。
*重なっていたコメント、整理させていただきました。
恭穂
2008/12/15 22:30
はじめまして。
実は、時折、観劇の感想をそっと拝読させていただいておりました。
『ラカージュ』は未見の舞台で、私にとっては今年最後の観劇になる予定です。
恭穂さんの愛の溢れる観劇レポを読ませていただいて、心から楽しみになりました。早く市村ザザに会いたいです
秋生
2008/12/16 00:12
こんばんは。『ラ・カージュ〜』、本当に素晴らしかったですね。
笑いあり、涙あり、まさに王道!
私的には今年観劇した、国内のミュージカルの中で、一番おもしろかったです。
何といってもカジェルさんたちが凄い!しかも初演から出ている方もいる!
複数回観劇する恭穂さんが、心の底から羨ましいです。
花梨
2008/12/17 00:32
秋生さま、はじめまして!
お返事が遅れてしまってすみません。
以前からいらしていただいていたとのこと、
ありがとうございますv
「ラ・カージュ〜」本当にいい舞台です!
私もこの舞台の千秋楽が今年最後の観劇の予定です。
とても幸せな気持ちで新年を迎えられること間違いありません!
市村さんのザザ、どうぞ堪能してくださいねv
恭穂
2008/12/18 20:44
花梨さん、こんばんは!
本当に王道な舞台でしたね。
カジェルさんたちには、私も圧倒されました!
初演から出演で、あの美しさ・・・
本当に素晴らしいです!!
私は、この12月はこの舞台に費やします!
ので、「RENT」は1回しか観れなかったんですけどね・・・(涙)
恭穂
2008/12/18 20:46

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