瓔珞の音

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zoom RSS 見えない何か

<<   作成日時 : 2009/01/19 21:14   >>

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もともと私はあまり時代劇を見ません。
小説も、宮部みゆきさんはよく読むし、隆慶一郎さんはには「吉原御免状」の後にはまりましたが、
いわゆる大河的なものは殆ど読みません。
なので、忠臣蔵も大まかな筋は知っているけれど、
詳しいことは全然知りません。
昨年、平成中村座で「仮名手本忠臣蔵」を観て、
仁左衛門さんの加古川本蔵の生き様に魅了されましたが、
だからといって忠臣蔵関係の本を読むわけではなく・・・
嫌いというわけではなくて、縁がなかったんだろうな、と思います。

で、今回。
全然内容を知らないまま、じゅんさんが観たい!と思ってとった「冬の絵空」。
うーん・・・面白くなかったわけじゃないんですけど、
なんだか妙に私の中で納まりが悪いのです。
なんか納得できないというか・・・
日を置いてもあんまりすっきりしなそうなので、
もやもやしたまま観劇記録を書いちゃおうと思います(え)。


「冬の絵空」

2009.1.17  マチネ 世田谷パブリックシアター 1階K列6番

出演:藤木直人、橋本じゅん、中越典子、中村まこと、片桐仁、内田滋、粟根まこと、加藤貴子、生瀬勝久 ほか


時は元禄、所は江戸。
浅野内匠頭(中村まこと)が、吉良上野介(粟根まこと)に切りつけたその日。
人気役者の沢村宗十郎(藤木直人)は、
芝居小屋を後押ししてくれている天野屋利兵衛(生瀬勝久)の屋敷を訪れます。
身に纏うのは、真っ白な死装束。
それは、利兵衛に娘のおかる(中越典子)との結婚を認めてもらうため。
けれど、役者としての宗十郎は認めていても、娘を嫁にやるのはまた別と、
利兵衛はあっさえりその申し出を一蹴します。
その頃、仕える主君とお家を失った大石内蔵助(橋本じゅん)は、
吉良に働きかけることで浅野家の再興を図ろうとします。
けれど、それは逸る赤穂浪士たちが望む討ち入りとは間逆のこと。
そして、浅野内匠頭にひきたてられて今の地位を築いた利兵衛の望みもまた討ち入りだったのです。
大石らを招いた利兵衛は、大石に一つの真実を伝えます。
それは、浅野内匠頭が生きている、という事実。
潔い切腹を行ったのは、彼の影武者だったのです。
主君の生存を喜ぶと同時に、浅野内匠頭の語る刃傷沙汰と、討ち入りを望む理由に愕然とする大石。
そして、あくまで討ち入りを拒んで立ち去る大石。
後に残された利兵衛は、呼び出され、全てを聞いた宗十郎に、
ある条件を飲めば娘を嫁にやる、と言います。
その条件は、彼に大石を演じさせ、討ち入りをしないことで堕ちた赤穂浪士の評判を盛り立てること。
そして、その勢いで討ち入りを果たすこと・・・
利兵衛の思惑通りに、江戸の町で正義を貫く宗十郎の大石の評判は上がるばかり。
そして、あろうことかおかるまでもが大石に心を動かされてしまうのです。
その大石が、かつて恋仲であった宗十郎であることも知らずに、宗十郎を拒むおかる。
とうとう、おかるは大石と祝言を上げることになります。
そのめでたい日は、元禄15年12月14日。
けれど、その裏では、討ち入りの準備が着々と進んでおり・・・


といった、謎の多い忠臣蔵の一つの解釈を描いた物語でした。
個人的にはこういう解釈もあってもいいのかもなあ、とも思ったのですが、
一つの舞台としては、なんというか、とてもとても散漫な印象を得てしまったのです。

舞台美術も綺麗。
いくつかのパーツを組み合わせることで、各々の家をあらわすセットも滑らか。
空間の使い方も解かりやすいし、
照明は最高だし(だって原田さんですもの!)、
役者さんたちも、それぞれが個性的でいいお芝居をしているのは分かる。
一つ一つはとても印象的なのに、
まとまった舞台としてみると、どうにも私の中では薄い印象になってしまったのです。
利兵衛の策にのる形とはいえ、討ち入りという大仕事へ向かう熱のようなものが全然感じられなかった。
それは、きっとこの物語が”見えない何か”を求める物語だったから。

宗十郎が求めたのは、役者の衣と仮面を脱いだあとに残る本当の自分。
浅野内匠頭が求めたのは、他者の見る自分の姿と他者が自分へ向ける忠義。
おかるが求めたのは、一人の男が体現する正義。
安兵衛が求めたのは、自分たちを忠義の道へと導く誰か。
大石内蔵助が求めたのは、消されてしまった自分自身。
そして天野屋利兵衛が求めた、”人”の姿―――

誰もが見えない何かを求めていて、その視線は決して交わることがない。
自分の思いも、誰かとの関係も、目指した夢も、そして、自分自身の存在さえ、全て絵空事。
そういう寒々としたやるせなさが、この舞台の本質だったように、私は感じてしまったのです。
それが、たぶん私の波長には合わなかったんだろうな・・・

もっと忠臣蔵に知識があれば、もっと楽しめたのかもしれない。
逆に、なにも考えずに流れていく物語やギャグに反応していれば良かったのかもしれない。
でも、私はそのどちらでもなくて。
繰り返し観れば、何か違うものを見つけることができるのかもしれないけれど。
うーん、やっぱりちょっとすっきりしません(笑)。


そんな中で、とても印象に残ったのが、内田滋くん演じる安兵衛と加藤貴子さん演じるお順夫妻。
無邪気に姉さん女房(だと思う!)に甘える(ように見えた)安兵衛が、
今宵討ち入りの知らせを受け、すっと表情を変える瞬間。
二人とも、これが最後と解かっていながら、笑顔で寄り添い書き終える平仮名。
その半紙を胸に抱きながら、一人泣き崩れるお順・・・
どこかで引き返せたのかもしれない。
どこかで別の道を選べたのかもしれない。
けれど、安兵衛らは、討ち入りという未来に進んでしまった。
主君は切腹して死んだと、
姿形は全く違っていても、彼らが従う大石内蔵助は”彼”以外ではありえないと、
そう、決めてしまった赤穂浪士たち―――
理不尽に感じてしまうほどの別れが、とてもとても切なかったです。

そして、初見のおかる役中越典子さん。
良い声してますね〜vv
最初と最後の凛とした声、凄く素敵でした。
おかるの時の華やかで可愛らしい雰囲気も好きでした。
おかるという役柄も、ちょっと理解できなかったなあ。
彼女は本気で大石に惚れたのかな?
それとも、宗十郎へ発破をかけるためだったのかな?
真実を知って、何もかもをみることを拒んで、
そして、最後、大石内蔵助として死んでいった宗十郎に迎えられて死んでいくおかる。
目に見えるものが真実ではないこともある。
目に見えないから真実ではないとはいえないこともある。
そんな悟りにもにた境地に、彼女は立っていたのかもしれないなあ。

で、その宗十郎役、藤木直人さん。
うん。かっこよかったです。
ポニーテール(違います)があんなに似合う男前もそうはいないでしょう。
でもね〜、声が余りにも通らなくて(涙)。
役者役なんだよね?!と本気で突っ込みたくなりました(え)。
とても綺麗なのに、舞台の上で目を引く華がない、と思ってしまったのは、好みの問題なんですかね?

大石内蔵助役、橋本じゅんさん。
「吉原御免状」を彷彿とさせるような、笑いのない役。
自らの信念を、自らの正義を貫いた結果、自身の存在すら消されてしまった男の役。
見えない何かを証明することができずに、ただ一人時の外れで佇む男の役。
非常に真っ当な男なので、理性としては共感できるのですが、
何故か心情的には寄り添えず・・・
でも、最後、咲き誇る桜の下での後姿がとても雄弁で、さすがだなあ、と思いました。

浅野内匠頭役、中村まことさん。
猫の人(@「贋作・罪と罰」)の人ですねv
もの凄く理不尽な役柄で、結構救いのない男なのですが、
実は心情的には内蔵助よりもよっぽど共感できてしまったり。
自分がどうおもわれているのか。
自分のために泣いてくれる人はいるのか。
自分は、誰かに求められる存在なのか・・・
それが、なんだか痛いぐらいに伝わってきて、ちょっと厳しかったです。
普段考えないようにしていることを突きつけられたみたいで。
中村さんの飄々とした笑顔の合間に、ふっとみえる荒んだ表情がとても心に残っています。

吉良上野介役、粟根まことさん。
えーっと・・・とんでもなくデフォルメされてるんですが、
なんとなくこれもありかも?と思ってしまう妙なリアリティがありました。
大石、一回くらいお吉良って呼んでやれよ!とちょっと思っちゃった(笑)。

シロ役、片桐仁さん。
とんでもなく不思議な役柄でした。
シロで、島原の生き残りで、といったら、やっぱり天草四郎なんですかねー。
こまごまと笑いをとってらっしゃいましたが、それが浮くことがないんですよ。
でもって、垣間見せる表情に、彼の過去が透けて見える感じもあって。
彼が犬なのか、犬となってまで生きることを選んだかつての”誰か”なのか、
物語の中ではクリアにはされていないように思います。
ああ、それこそこの物語の象徴なのかもしれませんね。

そして、天野屋利兵衛役、生瀬勝久さん。
えーっと・・・主人公って、この方ですよね?
利兵衛の過去は殆ど明かされませんが、彼があそこまで討ち入りに、というか、
武士としての忠義にこだわる理由というのが、
1回の観劇では私にはちょっと理解することができなかったのですが、
きっとそれなりの理由があるはずだ、と思わせる奥行きのある天野屋利兵衛だったと思います。


あああ、やっぱりちょっとテンションの低い記録になっちゃいましたね。
ま、こういう舞台があってもいいかなあ、と思います。
他の方がどんな感想を持たれたのか、機会があればブログめぐりなどしてみようかな。

それにしても、久々の原田保さんの照明、堪能いたしましたv
夜の闇に沈むような、客席を満たす青い照明。
血の色を示唆するような、斜めに入る朱色の照明。
そして、舞台の上部を覆った桜の枝の奥から差し込む、
月の光のような、彼岸からもれる光のような、鮮烈な白い照明・・・
うん。
あの最後の桜を観れただけでも、満足かもしれません(え)。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
隆慶ファンの私が通りますよっと(笑)。

忠臣蔵関連でしたら池宮彰一郎『四十七人の刺客』が私のオススメです。単なる人情モノの仇討ちではなく、藩対藩の戦争として忠臣蔵を描いた作品。ただ好き嫌いはあるかも・・・。

ちなみに映画化もされましたが、その中では私の友人が高倉健さんに斬られています(爆)。
まさみつ
2009/01/23 10:24
まさみつさん、こんばんは!
「四十七人の刺客」、映画は知ってます。
小説が原作だったんですね(ほんとに無知・・・/汗)。
今度本屋さんで探してみようと思います。
映画も、先日友人に薦められたので、
ちょっと見てみたいなあ、と。
見た暁には、まさみつさんのご友人、探してみますね(笑)。

でもって、隆慶一郎さん!
私は劇団☆新感線の舞台「吉原御免状」から入りました。
続編は、誠一郎の娘に、剣士の兆しが見えたところで、
続編が終わっているのが本当に哀しくて・・・
続き、読んでみたかったです。
恭穂
2009/01/23 20:47

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