瓔珞の音

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zoom RSS 千本桜のその一人

<<   作成日時 : 2009/07/27 21:39   >>

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「義経千本桜」という演目はとても有名で、
歌舞伎を見始める前から名前だけは知っていました。
けれど、なかなか観るチャンスに巡り会えず・・・
題名から源平合戦に関わるものなのだろうなあ、と思ってはいましたが、
今回の巡業を観て、初めてどのような概略なのかを知ることができました。
・・・勉強不足ですな(汗)。

壇ノ浦で滅んだはず平家一門。
そのうち知盛、維盛、教盛の三人が生きていて、
その後の生き様を義経を狂言回しに描いていく、とても長い物語。
三人だけではなく、彼らに関わる沢山の人たちの生き様を描いた物語。
吉野の山で誰のためでもなくただ咲き初め、咲き誇り、散っていく桜の花のように、
その人生をひたむきに生きる一人一人の物語―――

いがみの権太という、鮮やかな1本の桜の咲きっぷりを、夏の前橋で堪能することができました。


松竹大歌舞伎 東コース
「義経千本桜」
  下市村茶店の場(木の実)
  下市村釣瓶鮓屋の場(すし屋)

2009.7.15 夜の部 ベイシア文化ホール 7列30番台

自宅から徒歩15分なこのホール。
実はここで観劇するのは初めてだったりします。
高校のときに、合唱の大会で舞台の上で歌ったことはあるのですが・・・(笑)
そんな身近な舞台で、仁左衛門さんの歌舞伎が見れる!
幸せだなあ、と思ってしまいました。

物語は、片岡仁左衛門さん演じるいがみの権太を軸に進んでいきます。
この権太がね、とにかく魅力的なんですよ!
「木の実」の場でやってること(わけありの旅人を騙してお金を巻き上げる)はとんでもないんですが、
相手を騙すために演技をしつつ、こっそりと忍び笑う小ずるい表情とか、
芝居がかった声音で、でも刀を持つ侍を手玉にとっちゃう度胸とか、
ちょっとした仕草や巧みな台詞回しが自然なのに凄く雄弁で、
権太の悪党っぷりと愛嬌(といえるかな)のある人柄をすんなりと受け入れることができました。
「すし屋」の場で母・お米への甘え方(膝枕して甘えちゃうんですよ!!)や、
甘えつつほくそ笑んでお金を巻き上げちゃうところとか、
妹のお里をからかう様子とかも、なんだか憎めない男だなあ、という感じでした。

そして、妻・小せんや息子とのやり取り―――抱きついてきた息子を見つめる蕩けそうに優しい表情や、
小せんとのラブラブっぷりが、とーっても微笑ましかったです。
権太は二人を本当に大事にしてるんだなあ・・・と思えて。
だからこそ、この物語の終わりは、本当に観ているのが辛かったです。

父がかくまっていた維盛の妻子の身代わりとして、自分の妻子を源氏方に引き渡す権太。
それは、小せん自身が申し出たことだったということだけど、
それを最終的に決断したのは権太自身で―――
でも、彼は妻子を引き渡す最初から最後まで、
ひたすらに苦悩し、そして惑っていたように思います。
背けられた顔、握り締められた手、はっとしたように上がる顔の悲痛な表情・・・
もう、目を離すことができませんでした。

最後の述懐の場面も、苦しい息の下で語られる妻子への、両親への想いがとてもリアルで―――
息子の形見(になるんだろうな)の笛を、痛みに耐えならが吹くシーンでは、
ここでこの笛を持ってくるのか!!(涙)と、あまりの切なさに、
この伏線を張った戯作者にちょっと文句を言いたくなりました。いえ、本気で。

私がこれまでに観た仁左衛門さんの役は数えるほどですが、
そのどれもがとてもリアルで、そしてそのどれもに深い真情と背景が感じられました。


権太の父・弥左衛門役、坂東竹三郎さん。
飄々とした佇まいの中に、
息子に対しても、娘に対しても、昔恩を受けた維盛に対しても、とても強い情を感じました。
自分の恩ある相手を殺し、その家族を敵に売った息子を手にかける瞬間のあの苦渋の表情・・・
その後の、孫への想いを語る場面も、押さえた声音でしたが心に響きました。
観た日にもちょっと書きましたが、
「(息子を我が手にかけるのは)三千世界で俺一人」という台詞が凄く重くて。
息子を勘当したのも、許されないことをした息子を自分の手で殺そうとしたのも、
息子への愛情があったからこそなんだろうなあ。

権太の母・お米役、市川家橘さんも、息子への愛情、目一杯でした。
駄目な子ほど可愛い、というか(笑)。
なにかおかしい、と思っていても、
息子の窮状が本当だったら・・・と思ってしまうのは、当然の母心なんだろうな、と思います。
まあ、だからこそ権太が増長するんでしょうけどねー(え)。
でも、こういう愛情の基盤があったからこその、権太の憎めなさなんだろうな、とも思いました。

権太の妹・お里役、片岡孝太郎さん。
恋に一途な積極的なお嬢さんでした(笑)。
弥助と夫婦のやり取りの練習をするところも、
お兄ちゃんにつっかかるところも、とても可愛らしかったです。
自分が恋した相手が、決して結ばれることのない相手だとわかり、
辛い気持ちを押し殺して、窮地に立つ弥助=維盛とその妻子を助けようとするところは、
芯の強さが感じられて、とても素敵でした。

片岡秀太郎さんは、権太の妻・小せんと、平維盛を演じてらっしゃいました。
もう、小せんと権太のらぶらぶっぷりが印象的で(笑)。
だからこそ、源氏の武将に若葉の内侍の身代わりで引き立てられていくときの、
権太との最後の視線のやり取りが、本当に切なかったです。
また、あの時の権太の表情が・・・(涙)
そんな感じで小せんの印象がとても強かったので、
弥助のなよっとした風情に馴染むのにちょっと時間がかかりました(笑)。
が、維盛として話すときは、凛とした声音になって、背筋もすっと伸びる感じで、
ああ、高貴な人なんだなあ、と素直に感じることができました。

若葉の内侍は市川高麗蔵さん。
動きそのものは少ないのですが、薄幸の美女、という風情でとても素敵でした。
お里が嘆くときに、一緒に悲しんでいる風なのが、
決していやみでも優越感でもなくて、
同じ男を愛した女としての共感のようなものが感じられました。

片岡愛之助さんは、内侍の従者である小金吾と、
内侍を引っ立てていく源氏の武将梶原平三景時を演じてらっしゃいました。
前者は、権太に言いがかりをつけられて、
でも言いなりになるしかなくて歯噛みする様子が見ごたえがありましたし、
その後、追っ手との立ち回りのシーンは凄くかっこよかったです!
以前「赤い城黒い砂」を観た時とはまた違ったかっこよさだなあ、と思いました。
後者は・・・ごめんなさい。
見せ場は悉く視線が権太に向いてしまっていたので、あんまり記憶がありません・・・(汗)
また何かの機会でしっかり拝見させていただこうと思いますv

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