瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2009/09/29 22:13   >>

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先週の土曜日、シアターコクーンで「コースト・オブ・ユートピア」を見てきました。
3時間の舞台でも、精神的に大きな負荷を受けることの多い蜷川さんの演出。
その3倍の賞味9時間の舞台。
しかも19世紀ロシアの思想が盛り込まれた翻訳劇。
そして、前日までの怒涛の学会週間(笑)。
どれもが不安要素で、この舞台を私は眠らずに観ることができるのか、
この舞台を私は楽しむことができるのか、とても緊張して観劇に臨みました。

実際、観終わった後の疲労はかなりのもので(渋谷駅まで走ったしねー/笑)、
昨日は疲労困憊していてふらふらしながら仕事をしていました。
でもね。
本当に観て良かった、と思えた舞台でした。
コクーンの椅子は、9時間座り続けるにはちょっと硬かったし(でも柔らかいと寝ちゃったかも?)、
耳慣れないロシアの名前や、熱く語られる言葉の奔流に戸惑うこともありました。
理解しきれない部分も沢山あったし、納得できないところもあった。
それでも、私にとってとても難解で長大なこのお芝居は、
同時にとてもとても魅力的で、決して飽きることはなかったのです。

それは、脚本の力でもあったでしょう。
役者さんたちの、渾身の演技もあったでしょう。
でも、蜷川さんの演出こそが、あの世界をあれだけ魅力的に構築していたのだと思うのです。

客席にはさまれた形のシンプルな舞台。
セットに使われるものは決して多くなく、その全ては人の(時には役者さんの)手で設置されました。
けれど、縦横にあたる繊細な照明に照らされて、
単純なポールの白樺の幹は北の地の豊かな森を作り出し、
寒々しい屋根裏部屋の湿った暗い空気を感じさせ、
海辺の鮮やかな光を見せ、
そして大きな窓のあるゲルツェンの書斎へと私を導きました。

沢山の場面変換は、全てカーテンのようにひかれた白い薄幕の中で行われました。
その幕の使い方が本当に秀逸!
完全な暗転ではなく、ぼんやりと見えるその人たちの姿は、
お芝居に引き込まれていた私をふっと現実に引き戻す冷静さがありました。
そのクールダウンがあったからこそ、この3部作を最後まで楽しむことができたのかもしれません。
また、幕を通して見える向こう側の客席すら、一つのセットのように使われるシーンもありました。
印象的だったのが、3幕のゲルツェンとナターシャが急接近するシーン。
舞台上だけでなく客席通路にも百合の花が置かれ、それぞれにピンライトが当たっているのですが、
2枚の白い幕を通すと、その百合の花だけが浮かび上がるように見えるのです。
この演出は、本当に美しくて、
でも小さな光の中にぽつんと浮かぶ百合の花がなんだかとても寂しげで・・・
なんだかとても象徴的だな、と思いました。

衣装もとても綺麗でした。
男性陣は地味な色が多かったのですが(でもツルゲーネフはいつも明るい色でしたね!)、
女性陣のドレスはそれぞれの特徴やその時の気持ちに沿った雰囲気で、
物語を理解する一助であったように思います。
1部の4姉妹と両親は同じような白い衣装でしたが、それも意味深だなあ、と(笑)。
だって、濃い色合いのミハイルの軍服やベリンスキーのくすんだ粗末な服は、
その白く調和した世界の中の異分子のように際立って見えたのです。

たぶん、一つ一つの場面の、セットも、照明も、音楽も、衣装も、全てに意味があったのだろうな。

24日の夜に放送された蜷川さんのインタビュー番組を録画して、観劇の後に観ました。
番組の最初に、この舞台の稽古風景が流れました。
1部2幕の仮面舞踏会の後半、ベリンスキーが熱く語るそのシーンでした。
あの長い台詞の中の一つの言葉を、僅かなニュアンスすら流さずに演出していく蜷川さん。
そのニュアンスを過たずに理解し、表現する役者さん。
真正面からの真剣な関係に、番組の中のほんの短いシーンだったのに、固唾を呑んで見入ってしまいました。
あの9時間の舞台は、こんなにも濃い密度で創り上げられた―――
そう思ったら、あの空間を、あの9時間を、客席で共に過ごすことができたことが、
なんだかとてつもなく幸福なことであるように、感じてしまいました。

こんなに素敵な舞台だったので、
最終の新幹線を逃さないために、カーテンコールを諦めなければならなかったのが本当に悔しいです。
3部の最後は時間が気になってちょっと気持ちが散漫になっていた部分もありますし、
カーテンコールに出てきた役者さんたちに背を向けるのは、本当に申し訳なかった。
翌日の休みを確保できなかったのが敗因ではあるのですが・・・
でも、正直なことを行ってしまえば、もう30分でも早く開演してくれたらよかったのにな、と思います。


さてさて、まずはこんな感じで全体的な感想を書いてみました。
観てない方にはなんだかな?な解かりにくい文章でごめんなさい(汗)。
この後は、1部ずつ、役者さん中心の感想を書いていければいいな、と思います。


《10月2日追記》
 何とか3部作の観劇記録を書き上げました!
 記憶が曖昧で、凄く散漫な感想になっちゃいましたが・・・
 こちらもちょっと達成感?

 T部観劇記録 追憶の夕陽
 U部観劇記録 微笑みの残像
 V部観劇記録 二つの流れ

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
お疲れ様でした。ご一緒できて幕間等の短時間でもおしゃべりできてよかったです。
>もう30分でも早く開演してくれたらよかったのにな......確かに遠方からの日帰り観劇の方にはつらい時間設定だったと思います。しかし12:00開演にこだわったのはその前に早お昼御飯をすませて観てねということだったのではないかと推測します。歌舞伎の11:00開演は最初の幕間が食事休憩で長くとってあるからいいのですが、企画者側もそのあたりの時間設定って悩ましいのだと思われます。
私はその前の歌舞伎の感想アップに追われてまして、ちょっと先になりそうですが、なんとか書くつもりですので、お待ちくださいね(^O^)/
ぴかちゅう
2009/09/30 00:57
ぴかちゅうさん、こんばんは!
こちらこそ、お会いできてとても嬉しかったですv
開演時間、確かにぴかちゅうさんのおっしゃる通りかもですね。
腹ごしらえしておかないと、身体共にもたなそうですし。
返す返すも翌日の休みを確保できなかったのが悔やまれます。
それでも、行って良かったと思える素晴らしい舞台でした。
情報量が多すぎて、いつにもまして支離滅裂な感想になっていますが(汗)。
ぴかちゅうさんの感想、楽しみに待っていますね!
恭穂
2009/10/01 22:35

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