瓔珞の音

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zoom RSS 微笑みの残像

<<   作成日時 : 2009/10/01 22:32   >>

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さて、短い休憩を挟んでのU部。
休憩ではぴかちゅうさんと久々にちょこっとお話ができました。
やはりこの日観劇されていたsakuramaruさんと、事前のトークイベントにも参加されたとのこと。
観劇後にお話ができなかったのが本当に残念でした。
みなさんとお話できれば、この物語をもう少し理解できたかもしれないなあ、なんて。
そのくらい、私的には3部作の中で一番難解で、一番理解しにくいU部でした。
でも、最初と最後のシーンを重ねた演出にはやられましたけどねー。
ええ、もう、最後のシーンでぼろ泣きでしたから、私。

遠い雷鳴。
肌を掠める雨の気配。
けれど、彼らのいる場所はまだ光に溢れていて・・・
新しい世界で、彼らを待ち受けていた大きな嵐。
低く垂れ込める雲の隙間からこぼれる光のように、
ロシアの短い夏の日の微笑みの記憶は、胸が痛くなるほど愛しくて、そして儚い。


「コースト・オブ・ユートピア 〜ユートピアの岸へ〜 U部 難破」

2009.9.26 シアターコクーン A列10番台

出演:阿部寛、勝村政信、石丸幹二、池内博之、別所哲也、水野美紀、栗山千明、とよた真帆、大森博史、
    松尾敏伸、大石継太、横田栄司、銀粉蝶、麻実れい、妹尾正文 他


このU部は、まさにゲルツェン一家の物語。
T部のバクーニン家とは、全く色合いの違う、けれどやはり家族の崩壊を描いた物語でした。
そして同時に、ゲルツェンをはじめとする男たちの分岐点の物語でもあった。

池内博之さん演じるベリンスキーの最期が描かれたのも、この1幕でした。
文学を通して、故郷へと働きかけ続けたベリンスキー。
挫折や絶望を経験し、焦燥に苛まれていても、
彼の根底には、祖国に対する眩しいほどの真っ直ぐさと誠実さと純真さがあったように思います。
だからこそ、彼は沢山の人たちに慕われていたのかなあ。
こうして舞台を観たりプログラムの解説を読むだけでも、
ベリンスキーの成し遂げたこと、成し遂げようとしたことが、どんなに凄いことなのか感じられます。
彼はきっと志半ばで倒れたのだろうけれど、
その短い人生で彼が他者に与えた影響はどれだけのものだったのだろう。
今とは生きる速さが違うのかもしれないけれど、
彼が死んだ年齢と同い年の私としては、背筋を伸ばして襟を正したくなる・・・そんな気持ちになりました。

ベリンスキーは、ほんとに仲間たちから慕われていたけれど、
別所さん演じるツルゲーネフが一番懐いていたような気がします。
T幕の仮面舞踏会のとき、初めてベリンスキーに会ったときの舞い上がり方は微笑ましく、
彼の死を知ったときの嘆きは本当に深かった。
そもそも、ツルゲーネフは、この舞台の中でちょっと独特な雰囲気だったように思います。
自分の理念や思想を、熱く、激しく語り合う男たちの中で、
ツルゲーネフはあからさまに自分を主張するということがなかった。
感情豊かでありながら、どこか冷静に周りを見ていた。
そして、周りから受け取ったいろんなものを丁寧に噛み砕き、小説という形に創り上げていた。
そんな風に思うのです。
なんだかね、ツルゲーネフが出てくると、ちょっとほっとしてしまって(笑)。
実際は、かなり恋に生きた男だったようですが、
別所さんのツルゲーネフって、なんだかどっしりした安心感がありました。


反対に、出てくると面白いけど不安になったのが、勝村さんのバクーニン。
彼が出てくると、良い意味でも悪い意味でも場が動くんですよねー。
今度は何を巻き起こすんだろう、と、ちょっと身構えてしまいました(笑)。


阿部さんのゲルツェンは、冷静な思想家であり、優しい父親でもありました。
でも、このU部は、彼にとってまさに試練の時だったんだろうなあ。
1幕では、パリの革命を目の当たりにして、自分の思想を揺るがされ、
2幕では大事な友人と愛する妻の不義を知り、
そして母親と耳の不自由な幼い息子を海難事故で亡くしてしまう・・・
息子の死に耐えられなかった妻も逝き、彼は一人イギリスに向かう船に乗ります。
その暗い甲板で、彼はバクーニンの幻(なのかな?)に会い、彼に語りかけます。
もうね、死んだ息子について語るその言葉が、本当に重くて、本当に辛くて・・・
思想との絡みは十分には理解できなかったけれど、
パリの現実を知ることで、愛するものとの心がすれ違うことで、大切なものを有無を言わさず奪われることで、
彼自身が築き上げてきた理想のカタチも、きっと変わっていったんだろうな、と思う。

また、息子のコーリャを演じた子がめちゃくちゃ可愛くてねえ(涙)。
耳が聞こえないのですが、お祖母さまと一緒に一生懸命練習して、
ゲルツェンに得意げにロシア語で話しかけるところとか、
これはゲルツェンめろめろになるって!と思っちゃった(笑)。
あと、場面転換などで、彼が一人おもちゃで遊ぶシーンが何回か入るのですが、それが非常に象徴的でした。
Wキャストで名前は確認しなかったのだけど、あの小ささは首藤勇星くんだったような・・・?
って、この子の名前、どこかでみたことあるな、と思ったら、去年タムをやってた子ですね!
私、たぶん2〜3回観てますよ。
1年でこんなに大きくなっちゃうんですねー。子供って凄い!


そのゲルツェンの妻、ナタリーは水野美紀さん。
生で舞台を拝見するのは初めて・・・かな?
良い意味でも悪い意味でも情熱的な女性だったように思います。
というか、この舞台で一番理解できなかったのがこの役なんですよ。
パリのゲルツェンの家に滞在する、友人のヘルヴェーグ(松尾敏伸)と恋に落ち、
大胆に誘って(と私には見えた)彼を落とし、
彼の妻・エマ(とよた真帆)に知られても、自分が彼を救うのだと言い切り、
彼の子供まで作っておきながら、それが夫にばれて追及されると、「神の愛を否定するの?!」と泣き叫ぶ・・・
で、ゲルツェンは結局それを許しちゃうんですよ!

えーと、"神の愛"って、なんですか???
彼女の"愛"ゆえに、少なくとも3人が苦悩し、傷つき、涙している。
それでも、それは"神の愛"なんですか?
その前のシーンで、夫がいながら愛人の画家と暮らすマリアを糾弾したのは何?
あそこでマリア相手に凄い自信満々に愛を語って、
その直後にヘルヴェーグを誘惑したナタリーは、自分こそが本当の愛の持ち主だ、と思ってたのかな?
なんだかもう疑問符が頭の中に一杯でした。
そんな頭の中にふと浮かんだのが、成田美名子さんの「サイファ」で双子の母が言った言葉。

「愛はわけるものじゃない。増えるものなの」

もしかして、ナタリーが言いたかったのもこのことなのかな?
ゲルツェンに対しては、尊敬と信頼と安心に基づいた、ある意味父や兄に対するような愛であり、
ヘルヴェーグに対しては、傷つきやすい弟や子供に向けるような母性の強い愛であり、
そのいずれもが真実で、まったく別のものだった。
もちろん、ナターシャに向けた恋心も。
うーん、そんな風に考えても、やっぱりちょっとわかりません。
なんだか永遠の謎になりそうだなあ・・・(笑)


そう思うと、麻実れいさん演じるマリアの、
非常に現実的でドライなスタンスのほうがまだ理解できたかなあ。
正直、ナタリーとの対決(?)では、マリアの方が一枚上手な気がしました。
自分の想いを神聖視せず、正当化せず、汚泥も全て飲み込んだ上で今の生活を選んだ―――
そこにはもちろん狡さや非道徳的な部分もあるのだけど、
なんとも大人の女性だなあ、と思いました。
出は短いけど、とてもインパクトのある役柄だったと思います。
麻実さんは、あとパリの革命のシーンでバリケードのマリアンヌとして出演されていました。
水色のストライプ(かな?)のドレスで、毅然と立つ横顔がめちゃくちゃかっこよかったです!


銀粉蝶さんが演じたゲルツェンの母、マダム・ハーグも、
他の女性たちとは全く違った、厳格だけれど情の深いドイツ女性、という感じでした。
孫を見る目が凄く優しくてねえ。
でもって、個性的な召使たちへのリアクションも可愛らしくv
ほんとに大好きな役者さんです。


でもって、イタリアでの召使役、妹尾正文さん!
めちゃくちゃいい声で朗々と「カーロ・ミオ・ベン」を歌ってくださいましたv
いやー、聞き惚れちゃいましたよv
蜷川さんの舞台では、いつもちょっと心惹かれる役柄を演じられることが多いのですが、
これだけいい声なら、それこそミュージカルもいけるんじゃないいでしょうか。
うーん、ちょっと観てみたいかも!


歌、というえば石丸幹二さん、なのかな?
ゲルツェンの幼馴染で、革命家であること(だったかな?)を誓い合った生涯の友人、オガリョーフ役でした。
実は拝見するのは初めてでして。
U部では歌は聴くことができませんでしたが(V部ではちょっと歌ってくださいましたv)、
U部でもとても重要な役割をされていたように思います。
オガリョーフの「彼(コーリャ)には聞こえているんだよ」という台詞が、
冒頭のモスクワ郊外の草原と、最後の回想のシーンで繰り返されます。
呼びかけると振り向く、だから彼には聞こえている。
もちろん、オガリョーフもコーリャの聴覚障害は理解しているはずで。
だからこれは、"声"を越えた想いのようなものを言っているのかな、
そして、彼らの思想や理想といった"声なき声"が、いつか沢山の人の心に届く―――
そんな想いも込められていたのかな、とちょっと思いました。

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