瓔珞の音

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zoom RSS 二つの流れ

<<   作成日時 : 2009/10/02 23:08   >>

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さて、長大な三部作の感想も、最後までたどり着きました。
といっても、既に1週間前の観劇で、ちょっと記憶が曖昧かも・・・(汗)
V部は特に沢山の人たちが出てきて、もう誰が何の役だか、プログラムで確認してもわかりませんでした(涙)。
それでも、すごく面白かったんですよね。
夕食も食べておなか一杯だったのに全然眠くならなかったし、
なによりゲルツェンの感情の変遷が、これまでよりも強く感じられました。
というか、一番ゲルツェンが主役らしい物語だったように思います。


「コースト・オブ・ユートピア 〜ユートピアの岸へ〜 V部 漂着」

2009.9.26 シアターコクーン A列10番台

出演:阿部寛、勝村政信、石丸幹二、池内博之、別所哲也、長谷川博己、京野ことみ、美波、高橋真唯、
    栗山千明、とよた真帆、大森博史、松尾敏伸、大石継太、横田栄司、毬谷友子、瑳川哲朗、麻実れい 他



ゲルツェン役の阿部さんは、ほとんど出ずっぱりでもの凄い台詞量!
でも、何故かとても静かな印象を受けました。
ナターシャの激情と向かい合うときも、
若き革命家の真っ直ぐな視線と対峙するときも、
再会したバクーニンの目指す先が自分とは異なることを悟ったときも、
言葉よりもむしろゲルツェンの真摯な視線こそが雄弁だった。
個々まで描かれた彼の絶望はたぶんとても深く、理不尽な打撃による疵は癒せないほど深かった。
だからといって、そのせいでゲルツェンが全てを諦めていた訳では決してないと思うのです。
彼が最後にたどり着いた"理想郷への道"あるいは"生きる意味"。
やっぱり私はそれをきちんとは理解できていないと思うけど・・・
この三部作を観て、ゲルツェンの、たぶん何かを失い続けた半生を共に経験したことで、
彼の得た答えに、なんだかとても納得がいってしまいました。
たぶん、それだけ丁寧に創り上げられた役立ったんだろうと思います。


石丸幹二さん演じるオガリョーフは、V幕のもう一人の主役でした。
いまいち彼の職業が理解できなかったんですが(詩人でいいんだよね?)、
ゲルツェンとは違った意味で、一つのゴールにたどり着いた人なんだなあ、と思いました。
たぶん、いろんな葛藤や屈折した想いを胸に抱えていて、
でも、それ以上に友へ、妻へ、恋人へ、そして祖国への愛情に溢れた人だったんだろうな。
ゲルツェンやバクーニンやベリンスキーのように派手な見せ場はありませんでしたが、
とても雰囲気のある演技をされる方だなあ、と思いました。
歌もちょこっとだけ聴けました!
本当にとても素敵な声で、次は是非ミュージカルを見てみたいですv


オガリョーフの妻・ナターシャ役は栗山千明さん。
「道元の冒険」のときとは全然違う、
めちゃくちゃ情熱的で奔放で感情豊かな(という域は超えてるかも?!)女性でした。
あれだけ感情の起伏の大きい役柄って、やってて大変なんだろうなあ・・・
でも、何故かナタリーよりも気持ちに寄り添いやすいように感じたのは、
ナターシャは決して自分に嘘をついていないからなのかな、と思ってみたり。
夫にも、ゲルツェンにも、子供たちにも、とにかく全力投球でぶつかっていくの。
でも、きちんと反省するんだよね。そこで高感度アップ?(え)
それに、あの激しさ、溢れる命の輝きこそがゲルツェンを引き寄せた魅力だったのかも。
でも、結局ゲルツェンが最後に呼ぶのは妻・ナタリーの名前で・・・
それを聞いた瞬間の、あのかすかに歪んだ表情がなんだか凄く切なかったです。


別所さんのツルゲーネフは、V部も飄々とした佇まい。
やっぱり出てくるとほっとします。
他の役者さんたちに比べて、なんというか順当に年をとっていましたね(笑)。
見た目だけでなく、役柄的にも懐がどんどん深くなっていく感じ。
若い者への目線も、ちょっと優しいかなあ。
でも、あの笑い声と恋に一直線なところは健在で、なんだか微笑ましかったです。
他の仲間たちに比べて、思想的な部分をあまり直接的には出していない役柄でしたが、
彼が最初に覚えた英語、というのが実はとても意味深だったことをプログラムを読んで知りました。
あの台詞を言うときのツルゲーネフの表情がなんだか凄く印象的だったのは、そのせいなのかな?


順当に年をとっていたもうお一方が、勝村さんのバクーニン。
というか、あの着ぐるみ(違う?/笑)とカツラにはびっくりです!
名乗るまで誰だかわからなかったもの・・・(笑)
でも、姿かたちは変わっても、バクーニンのあの得体の知れなさはそのままで。
椅子に座り損ねたり、(太りすぎて)足が組めないのに何度も組もうとしたり、
V部の笑い担当、という感じでしたが、
それでも全然目が笑ってないというギャップがなんだかちょっと怖かったです。
この人も、やっぱり一つのゴールにたどり着いちゃったんだろうなあ・・・


麻実れいさんは、V部ではドイツの亡命者で、ゲルツェンの子供たちの家庭教師となる、
マルヴィータ・フォン・マイゼンブークを演じてらっしゃいました。
U部のマリアとは正反対な、厳格だけれど愛情深い家庭教師で、
そのまったく違う雰囲気にかなり驚きました。
母を亡くした子供たちにとって、たぶん母親代わりとなっていたマルヴィータ。
彼女が現れたことで、それまで子供たちを見ていた子守の女性は、見解の相違に耐えられず出て行きます。
そしてその後、ナターシャが現れたときに、
マルヴィータはやはり見解の相違から、ゲルツェンの屋敷を出て行くのですが、
その潔さがなんだか凄くかっこよかったです。


とよた真帆さんは、V部ではいろんな役柄をやってらっしゃいました。
貴婦人役のときは華やかな美しさでさすがだなあ、と。
でも、自ら志願されたという乞食の役は、どれがそうだか全然わかりませんでした。残念!
昨日書き損ねましたが、U部のヘルヴェーグの妻・エマも、かっこよかったです。
というか、あの四角関係の中では、一番まともな人にみえました(笑)。


毬谷友子さんは二役やってらっしゃいましたが、
オガリョーフの愛人・メアリー役がとても素敵でした。
場末の娼婦なんですが、オガリョーフが溺れるだけの安定した強さや優しさが感じられた。
駄目な男を見捨てられない情の深さというか。
ちょっとT部のカーチャに通じるところがあったかな。


瑳川さんが演じた、ポーランドの民主主義者・ヴォルツェルもいい人だったなあ・・・
彼がいたことで、ゲルツェンが凄く救われていたんじゃないかと思います。
いつも凄く穏やかな目で周りを見ていてね・・・
雨の中歩いて帰る、といってゲルツェンの家を辞すシーンがあるのですが、
そうですかで引き下がらず、きちんと送っていけ!とゲルツェンに内心叫んでしまいました(笑)。


V部で印象に残ったのが、イギリス人給仕役の宮田幸輝さん(たぶん)。
台詞は最後に一つだけで、ただ黙々とキャンドルに火を点けたり消したりグラスを運んだりしてるんですが、
なんというか、目線の動きが凄く意味深だったんですよねー。
主人や彼を取り巻く人たちをきちんと観察している感じ?
なので、あの一つの台詞がなんだか凄く重かったです。


そして、V部ではT部でバクーニン家の姉妹を演じた京野ことみさん、美波ちゃん、高橋真唯ちゃんも、
ゲルツェンの長男の嫁や、ゲルツェンの二人の娘の青年期として出演されていました。
美波ちゃんは後半には結構出番があったのですが(というか、ゲルツェン娘に甘すぎ!!/笑)、
京野さんと真唯ちゃんは、ほんとに最後の最後にちょこっと出るだけ。
でも、彼女たちがこれらの役をやることが、凄く意味があるんだろうな、と思えたのです。

最後のシーン、私の席の真正面で、若い夫婦とその妹たち、そしてマルヴィータは、
生まれたばかりの小さな赤ちゃんをあやし、明るく和やかに笑いあっていました。
それは、まるでバクーニン家の家族が得たかもしれない、
けれど決して得ることのできなかった幸せの構図にも見えて、
そして、そこにリュボーフィがいないことが、
彼らはバクーニン一家ではないことの明確な証に見えて―――
そして、その美しい光景と、背後で語るゲルツェンの言葉に満ちた重さの対比が鮮やか過ぎて、
なんだか泣けてきてしまいました。


この長い物語の中では、ロシアの農奴制(あるいは政治全体)に対する男たちの思索、そして戦いと、
家庭の中での様々な愛憎や思惑などが、並行して描かれました。

国への愛と、家族への愛。
公の存在である自分と、私的な存在である自分。
それぞれで得られる幸福と絶望。
歴史の大きな流れと、一人の人間が生きていく時間の流れ。

どちらもが、この物語を生きた男たちにとって、捨てることのできない現実だったのだと思う。
けれど、彼らが目指した理想郷は、決して手の届かない向こう岸にあり、
目指せば目指すほど、手にしていた何かが零れ落ちていった―――
それを、彼らは決して後悔はしていないだろうけれど。
彼らの熱情が作り出した大きなうねりは、きっと形を変えて受け継がれていくのだろうけれど・・・
彼らのそれぞれが、何らかのゴールにたどり着いたこの舞台。
観終わった後の達成感がちょっとクールダウンした今、
私が向かい合っているのは、二つの大きな流れのただなかにいる自分自身なのかな。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
海軍兵さま
コメントありがとうございました。
前半のご意見は非常に共感しましたが、
後半はちょっと攻撃的過ぎるかなあ、と思いましたので、
申し訳ありませんがコメントは削除させていただきました。
でも、麻実さんは本当に素晴らしい役者さんだと思います。
次の舞台が楽しみですね。
恭穂
2009/10/03 10:54
すご〜い!さすが恭穂さん!
9時間の舞台をまた観たような気分になりました。
わたしが観劇した日からは1月近くたっているのですが
訳わからないながらもすごく印象的だった舞台です。
私もベリンスキーが熱く語る時 内容はわからないのに
気持ちがぐいぐい惹きつけられていきました。
池内さん あんなにすごい役者さんだったとは
嬉しい驚きでした〜〜〜♪ 
チケ代がも少し安ければもう一度みたいんですが、、、
ちなみにツルゲーネフって 甲高い声で笑う人だったらしいです(笑)
kumigon
2009/10/04 01:57
kumigonさん、こんばんは!
私も思想的な内容は殆ど理解できませんでしたが、
彼らの熱さにはほんとに引き込まれました。
どの役者さんも熱演でしたねv
池内さんは「リア王」での熱演が素晴らしかったので、
今回も期待していたのですが、
期待以上の繊細な熱演で大満足でしたv
私もほんとはもう1回観たかったです。
ツルゲーネフの笑い声って、ああだったんですか・・・
別所さん、いい味だしてましたよねーv
もうすぐレ・ミゼの秋が始まりますね。
私は11月に観る予定ですが、今からとても楽しみですv
恭穂
2009/10/05 22:23

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