瓔珞の音

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zoom RSS 王座の意味

<<   作成日時 : 2009/11/13 22:36   >>

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シェイクスピアの戯曲の中で、実は一番多く舞台で観たのが「リチャード三世」でした。

蜷川さんと市村さんが創り上げた、深い闇と苦悩を感じさせるリチャード三世。
吉田鋼太郎さんが表した、血と肉を感じさせるリチャード三世。
いのうえさんと古田新太さんが挑戦した、新しい形のリチャード三世。

それぞれ全く違うアプローチで、たぶんリチャード三世の魅力も違った。

市村さんの"彼"は、求めながら全てを切り捨てるような切なさがあった。
吉田さんの"彼"は、冷酷さと熱情の混在した高温の炎のようだった。
古田さんの"彼"は、まるで子供のような頑是無さがあった。

そして、今回。
違う戯曲の中で描かれる、若き日のリチャード。
演じるのは、繊細な色気をみせてくれる、岡本健一さん。
岡本さんの"彼"は、私にどんな魅力を見せてくれるのだろうか―――



「ヘンリー六世」 2009.10.31 新国立劇場中劇場
第二部 敗北と混乱   2階1列20番台
第三部 薔薇戦争

演出:鵜山仁
出演:浦井健治、中嶋朋子、渡辺徹、村井国夫、ソニン、木場勝己、上杉祥三、岡本健一、中嶋しゅう、
   立川三貴、金内喜久夫。菅野菜保之、勝部演之、鈴木瑞穂、木下浩之、久野綾希子、鈴木慎平、
   今井朋彦、水野龍司、吉村直、青木和宣、渕野俊太、那須佐代子、浅野雅博、小長谷勝彦、前田一世他


新国立劇場中劇場は、「舞台は夢」以来・・・かな?
奥行きのある、傾斜のついた大きな舞台は、開演前、暗い闇に沈んでいました。
その手前、上手側の客席との境には、浅く張られた水。
大きなセットの少ないシンプルな演出の中で、その水がなんとも雄弁で・・・
舞台の上の光りと闇と、そしてその生を駆け抜ける人たちの影を、
時にクリアに、時に歪んだ鏡像として映し出していました。
王の玉座である大きな椅子も、
二つの家の象徴である薔薇を描いた赤と白の大きな布が交差する戦闘場面も、
不安定に揺れるブランコも、どれもが印象的ではありましたが、
私的には、静かな水面に映し出される彼らのもう一つの表情が、とても心に残りました。


そんな水面のように、静かに佇み、たゆたっていたのが浦井くん演じるヘンリー六世。
第二部は、彼とナポリ王の娘・マーガレット(中嶋朋子)の結婚から始まります。
ヘンリーの名代であるサフォーク伯(村井国夫)が連れてきた、美しく聡明な王女マーガレット。
けれどその結婚は、イギリスとフランスの和平の証でもあり、
その和平は、イギリス側にとても不利なものでした。
この結婚=和平を廻って、イギリス宮廷の中には不穏な波が立ち・・・
利害と、保身と、野心が、多くの陰謀と裏切りを生み出し、そして薔薇戦争へと繋がっていきます。

奪い合われる王の玉座。
失われる無垢な命。
踏みにじられる愛情。
復讐の連鎖が引き起こす悲劇は尽きることがなく・・・

けれど、その中心にいるはずのヘンリーは、まるでどこか違う次元にいるようでした。
激しく飛び交う舌鋒の中で、常にゆっくりと穏やかな口調で語りかけるヘンリー。
妻にも家臣にも、その気概のなさを嘆かれ、邪魔にされてしまうヘンリー。
物心ついたときから自分のものであった王の玉座。
最初、ヘンリーには王の座への執着というものが全く感じられませんでした。
だって、彼は生まれてこの方王でしかなかったのだから。
彼は、王に"なった"のではなく、王としてしか生きてこなかった。
生きること=王であること、その位当たり前のことだったのだと思うのです。
だからこそ、彼の心は玉座ではなく常に神の傍に在ることを望んでいた。

そういう風に育ったのは、決して彼のせいではなくて。
でも、王であることと、王であり続けることが決してイコールではないことを知ったとき、
既に彼の周りには何も残っていなかった。
信頼する摂政であり、叔父であるグロスター公は殺され、
妻の愛は既に他の男と、王座そのものにしか向けられず、
家臣たちも、決してヘンリーのことを見てはいなかった。
それを自業自得、といってしまうのは酷だと思う。
でも、それは明らかに、彼自身の罪であったとも、思う。

自分を取り残して進んでいく戦乱のさなかで、羊飼いであることを夢想するヘンリー。
けれど、最後の最後で、ヘンリーは王であることに執着を見せます。
神を敬い、優しく、穏やかであったヘンリーが、最後に見せた執着と恐怖。
それは、リチャードの暗い熱情の前に、あっさりと挫かれてしまうのだけれど・・・

この舞台の中で、ある意味異質な存在であったヘンリー六世。
その雰囲気は、浦井くんならではなのかなあ、と思いました。
うん、やっぱりこういう役似合うよね、彼。


そして、そんなヘンリーを取り巻く面々はどなたも個性的で・・・

一番は、やっぱり中嶋朋子さん演じるマーガレットですかねー。
賢くて、情が深くて、勇気があって・・・なんというか、めちゃくちゃ生命力に溢れていたと思います。
ヘンリーやグロスター公、ヨーク公(渡辺徹)側からみれば、やってることはとんでもないです。
愛人であるサフォーク伯と一緒になって、ヘンリーをないがしろにするし、
グロスターを追い落とそうとするし、ヨーク公はなぶり殺しにするし・・・
でも、ヘンリーが自分の死後、ヨーク公へと渡すことを約束してしまった王座を、
息子のエドワード皇太子(ソニン)へ取り戻すために自ら剣をとり戦場に立つその姿は、
王座への、命への、未来への、強く激しい想いに彩られて、その存在感に圧倒されました。
そして、私の中で彼女の姿は、「リチャード三世」でのマーガレットに真っ直ぐ繋がったのです。
当たり前のことなのだけれど、なんだかちょっと驚いてしまいました。


ヘンリーの叔父であり摂政であるグロスター公は中嶋しゅうさん。
「氷屋来る」でも、「炎の人」でも、その渋さにくらくらしてたのですが(笑)、
今回のグロスター公もめちゃくちゃかっこよかったです!
ヘンリーや妻への愛情とか、イギリスへの想い、そしてそれゆえの苦悩が、
抑えた演技の中にきちんと見えていたように思います。
彼こそがヘンリーの最後の砦だったんじゃないかなあ・・・
第一部から観ていたら、感じ方も違ったのかもしれませんが、
第二部では、気持ちがグロスター公に寄り沿っちゃったので、
他の方々が悉く悪人に見えちゃいました(笑)。


村井国夫さんが演じたのは、マーガレットの愛人であるサフォーク伯。
いや、最初村井さんだって分からなかったんですよ。
だって、めちゃくちゃ若いんですもの!!
この色気満載の声は誰?!と思ったら村井さんでした。
ほんと、いい声してるなあ・・・
サフォーク伯については、自信満々に暗躍していたのに、
失脚したとたん、一気にへたれてマーガレットに縋り付くのにちょっとびっくりしてしまいました(笑)。


薔薇戦争の中心、ヨーク公は渡辺徹さん。
舞台で拝見するのは初めてですが、ちょっと台詞が聞き取りにくかったかなあ・・・
ヨーク公については、彼が望んだものが、王の椅子そのものだったのか、
イギリスの未来だったのかで、ずいぶん感じ方が違うかな、と思いました。
末息子の死を知らされてから、自身が惨殺されるまではとても迫力でした。
最後まで決して取り乱さないように、自分を強く律していたところは、
気持ちの上で既に彼は"王"だったのかな、とも思ってみたり。


長男エドワード(後のエドワード4世)は今井朋彦さん。
前回観た「炎の人」での愛情深い弟とは正反対!
なんか、すごい軽い人なのかも・・・?と思わせるエドワードでした。
戦争についても、王座についても、どこか冷めてるのね。
冷静でしたたか、といえないこともないけれど。


で、次男坊のジョージもまた素晴らしい変わり身の速さで!
演じた前田一世さんが、背の高い美丈夫なんですが、
時勢を見ているといえば聞こえがいいけれど、白になったり赤になったり・・・(笑)
まあ、実は一番賢いのかもしれないですけどねー。
あの父の美徳はどこに受け継いだんだ?!と思っちゃいました(え)。


そして、お目当てだった岡本健一さんのリチャード。
なんというか、めちゃくちゃ野獣なリチャードでした(笑)。
うーん、個人的にはもっと繊細で影のあるリチャードを期待していたんですが・・・
でも、あのギラギラ光る眼には、ちょっと魅了されちゃいました。
自分を取り囲むものも、自分自身も既に憎んでいるリチャード。
全てを憎み、全てを疑っているからこそできる、おもねりや慈悲の擬態。
そして、人の想いすら操り踏みにじる冷酷さ。
垣間見せる王の椅子への執着が、彼自身の存在を確かにするものへの切望のように見えて・・・
ヘンリーとの対比が鮮やかだなあ、と思いました。
そして、このリチャード、確かに「リチャード三世」のリチャードに繋がっているんですよね。
これも当然なのだけど・・・岡本さんの「リチャード三世」もいいかもしれないなあ(え)。

でもって、岡本さんのリチャード、ビジュアルがちょっと「瓦礫の町」のCDジャケットの出口さんみたいでしたv
他の人たちは薔薇を胸に付けてるのに、彼だけ耳の上に差しているのもポイント高いかも(笑)。


ソニンちゃんは、第二部では予言をする巫女を、第三部では皇太子エドワードを演じていました。
巫女さんは、まさに狂乱の体で予言をするのですが、
もちろんこれはいんちきなのよ、というのもちゃんとわかるようになってました。
暴れるし叫ぶし・・・でもちょっと楽しそうかも?(笑)
皇太子エドワードは、美少年、という設定のよう。
個人的にはちょっと違和感があったかなあ・・・どうしたも体つきが女性らしいので。
むしろヨーク公の末っ子の方が似合ったかも。
でも、正確の激しさは母似、頑なさは父似、というのが感じられて、これはこれでよかったのかな。
第一部のジャンヌ・ダルクが観れなかったのがちょっと残念です。


木場勝己さんは、第二部では海賊の一人(だよね?)、
第三部では、リチャードに救われるエドワードと一緒にいた猟師を演ていました。
いや、どちらも出てきて台詞を言った瞬間に、木場さんだ!とわかりました。
なんだかとても目を惹かれるんですよねー。
やっぱり声の響きがいいのかな?
第一部では主要な人物を演じられていたとのこと。
こちらも観たかったなあ。


岡本リチャード目当てだったのと、単純にチケットが取れなかったので第一部は観なかったのですが、
やっぱり通しで観たかったかも、と今は思っています。
まあ、仕方ないですね。
来年の春には蜷川さん演出で上演されます。
チラシをみると、ヘンリーは上川隆也さん、マーガレットは大竹しのぶさんのよう。
浦井くんとはまた違った魅力のあるヘンリーになりそうですねーv
とすると、今度のリチャードはどなたかな?
うーん、洋さんの名前がないのが、なんだか改めてめちゃくちゃ哀しいです(涙)。
早く次のお仕事の情報来ないかな。

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