瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2009/12/29 21:05   >>

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師走も押し迫った今日は、とっても穏やかな良い天気でしたv
関東平野で生まれ育った私としましては、冬はやっぱり抜けるような青空でないと!と思います。
澄んだ青い空の下で、年末の忙しい一日を、それぞれの流れで過ごしている沢山の人。
その中には、きっと誰かを泣くほど愛したり、誰かを痛いほど求めたり、
誰かを蒼褪めるほど憎んだり、そんな自分を執拗なまでに隠している人もいるはず。
それでも、この空の青の下では、それも全て自然な、そして小さなことのように思える。


けれど。
コクーンに描き出された昭和四年の東京の空は、たぶんとても厚い雲に覆われていた。
その雲の向こうの青は、決してその街に住む人たちの目には映らず、
清冽なはずの空気さえ、澱み、血の匂いに温まる―――そんな、閉鎖された魔都、東京。



「東京月光魔曲」

2009.12.26 マチネ シアターコクーン 1階M列20番台

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:瑛太、松雪泰子、橋本さとし、大倉孝二、犬山イヌコ、大鷹明良、長谷川朝晴、西原亜希、林和義、
    伊藤蘭、山崎一、ユースケ・サンタマリア 他


舞台は、昭和四年の東京。
断続的な戦争に疲弊し、関東大震災の爪痕からの急激な復興に、どこか歪んでしまった街と人。
享楽的な夜。
血生臭い事件。
闇の中に潜む退廃。
伝統とモダンの融合。
全てを呑み込んで変容していく街。
そしてその中で、息を潜めるようにして生きている人たち。
大正から昭和初期、というと、江戸川乱歩や横溝正史、夢野久作の小説が思い浮ぶせいか、
なんとなくそんなちょっと妖しげなイメージが思い浮びます。
この舞台は、まさにそのイメージそのままでした。

回り舞台のセットは、華やかさと質素さがくるくると入れ替わり、
けれど、そのどれもに、"死角"がある。
見えない部分。
闇の部分。
隠された部分。
それは、人も同じで。

震災で母を亡くし、寄り添って生きる姉と弟。
清楚で優しい姉・澄子(松雪泰子)は、弟には見せない別の顔があり、
震災の傷痕に苦しむ弟・薫(瑛太)は、危うい一線の上で揺らめく。
澄子の上司であり、"客"でもある大曽根(大鷹明良)は、姉弟との暗い因縁を密かに楽しみ、
大曽根の妻・千とせ(伊藤蘭)は、夫との冷めた関係の中で、洋行した息子を待ち続ける。
大曽根の過去の部下であった相馬賢三(山崎一)は、
身の内に埋まった弾丸の疼きに耐えながら、家族の確執と自らの因縁にただ向き合う。
地方から東京に出てきた兄弟・八木太郎(ユースケ・サンタマリア)と二郎(長谷川朝晴)は、
魔都東京の歪みに飲み込まれていく。
そんな彼らの絡み合った秘密に関わっていく探偵・一之蔵始(橋本さとし)と、
その実直で献身的な助手・小町安子(犬山イヌコ)。
そして、探偵のブレーン(?)である、売れない探偵小説家・夜口航路(大倉孝二)。

こう書いているだけでも、めちゃくちゃ妖しいですよねー(笑)。
実際、彼らがそれぞれの思惑で、それぞれの利害のために動いているので、
物語はなんとも複雑な様相を呈していました。
お約束(笑)の猟奇殺人とか、人物入れ代わりとか、ありえない装置とか(あの蛇の毒とかね)、
新興宗教とか、催眠術とかの要素も満載で、まさにあの頃の探偵小説の世界だなあ、と。

でも、これって結局は探偵小説ではないんですよね。
だから、最後に全ての謎が明らかになるわけではなく。
誰が誰を憎み、誰が誰を陥れ、誰が誰を守り、誰が誰のために動いたのか・・・
どんなに真剣にお芝居を観ていても、やっぱり全ての登場人物の表情や仕草は見切れないわけで。
すごいいろいろ頭の中で推理(?)しながら観ていたのですが、
それがあってる部分もあり、全然違った部分もあり、
私の疑問はそのまま放置されちゃった部分もあり・・・(笑)
なんだか、パズルのピースが幾つか抜けたまま終わっちゃった感じ。
うーん、それがもしかすると観終わった後の混沌とした気持ちの原因なのかも。

個人的には、終盤にあれだけいろんな事実が出てくるんだったら、
もう一捻りした上で、きちんと全てを解決して欲しかったなあ、という気持ちもあるのですが、
(そういう意味で、ドラマの「JIN」の最終回もちょっと辛かった・・・)
これは好みの問題かな、と思います。
そういえば、あの頃の探偵小説も、謎や不安が余韻として残っているものもあるしなあ。
ケラさんがそういう効果を狙ったのであれば、納得かな。

ただ、そうであるなら、最後の薫の台詞はもうちょっと影があると良かったなあ、と思います。
それまでの瑛太くんの演技がとっても妖しくて思わせぶりな感じだったので、それがちょっと残念。
まあ、凄く短い台詞だし、もっと近くで細かい表情が見えればもっと違った印象だったのかもしれませんが。
薫という役は、たぶんこの物語の中心なんだと思います。
いろんな人たちが、いろんな思惑で動いている中で、
薫の存在は、その全てに深く、浅く、関わっていた。
そういう意味では、彼が黒幕(ちょっとニュアンス違うかも)だったのだと思います。
そして、彼の中には、震災で母を亡くした、という事実がたぶんもの凄く歪んだ形で刻み込まれていた。

美しい姉との禁断の恋。
その想いが通じ合ったその時の、震災。
背徳への憧れと嫌悪。
母の死に対する慙愧と安堵。
そんな相反する想いが、彼の精神を引き裂いた。

清廉な雰囲気の薫が、少しずつ闇さを纏い、歪んだ笑みを浮かべ、
静かな佇まいが、急に全てを壊すように爆発する。
その不安定な雰囲気が、瑛太くんにとても似合っていると思いました。
「怪談 牡丹燈籠」はちょっといまいちだったけど、やっぱりいい役者さんなんだなあ、と実感。
また舞台で拝見したいです。
あ、のだめの映画も観るけどね。


そして、松雪さんの澄子。
マドンナ的な存在なんでしょうね。それもダークなイメージの。
美しくて、清楚で、賢くて、でも薄幸。
抑揚の乏しい声と、あまり動かない表情が、彼女の中の冷たい何かを感じさせました。
個人的には、どうして澄子があんなに沢山の男性と関係を持っていたのか、
その理由がちょっとすっきりしなかったり・・・
弟との関係への罪悪感のようなものが、ああいう形で出たのかなあ・・・?
相手が望むままに振舞うことで、自分を偽るのか。
退廃に身を堕とすことで、自らを汚すことで、自分に罰を与えようとしたのか。
そうすることで、薫には綺麗な自分を見せたかったのか―――
彼女に感じた冷たさは、もしかしたらそういう風に自分の中の熱い想いを凍らせた結果なのかもしれません。
彼女も薫と同じように、全てのキーでありながら、結局は何も知らないままだったように思います。


大曽根夫妻役、大鷹さんと伊藤さん。
なんとも冷えた夫婦なわけですが、息子のエピソードを考えると、
千とせはこの時点で既に正気を失っていた・・・のかなあ?
けっこう千とせと息子の関係は、最初のころからわかってたんですが、
殺されてるというのはちょっと唐突だったかな、と思います。
というか私、実は震災の混乱で息子と薫が入れ替わってた(薫は死んでた)んじゃないか、
なんて、ちょっと思ってました(笑)。
だってあんなに似てる似てる言われるとねー。


相馬兄弟役、山崎一さん。
相変わらず雰囲気のある役者さんで、私は大好きですv
真面目な演技で狙い通り笑いがとれるのもさすが。


八木兄弟役は、ユースケ・サンタマリアさんと長谷川さん。
ユースケさんは、舞台で拝見するのは始めてですが、
あの独特の声は舞台向きだなあ、と思いました。
プログラムでは悪役、とありましたが、個人的にはすごくまともな人だったように思います。
兄の優しさと責任感と無神経さがきちんと伝わってきたように思います。
で、弟くん。
最初は一番まともそうだったのですが、だんだんと雰囲気が変わっていきましたねー。
きりきりとネジが締まっていくような変化が見事だな、と思いました。
仲の良い兄弟だけど、たぶん凄く抑圧されてたんだろうな・・・


探偵役、橋本さとしさん。
いやー、めちゃくちゃ似合ってました!!
浮世離れしているように見えて(金田一耕介の影響ですね/笑)、
実は一番現実的でしっかりしている感じ?
というか、いつか金田一耕介やってほしいな。
幾つもの猟奇事件を引き起こしたのは実は彼だったわけなのですが・・・
うーん、ちょっと一之蔵の立ち位置がしっくりこなかったかな。

その助手役の犬山イヌコさん。
ちょっとぶっとんでるけど、この物語の中で一番常識的で、健全な役柄だったな、と思います。
他の役柄と、雰囲気が全然変わるのが凄い。
最後、一之蔵と初詣に行くために幸せそうに出かけていくわけですが、
その頃一之蔵は相馬を殺して、自分も猛獣に食い殺されているわけで・・・
安子さん、一人で待ってるのかなあ・・・切ないなあ。

で、売れない探偵小説家役、大倉孝二さん。
あの髪型にちょっと笑っちゃいましたが(え)、この方も健全な役柄でしたねえ。
大袈裟な動きが漫画みたいでした。
というか、あの足を真っ直ぐ上げた状態を舞台が回って見えなくなるまでキープするって凄い!!
夜口には、安子さんと是非幸せになってほしいなあ、と思います。


舞台では、この頃の歌謡曲(なのかな?)がアレンジされて歌われました。
最初と二幕のレビューのところ。
最初の曲は、登場人物が順々に歌い継いでいくんですが、
それが登場人物を印象付ける風で、楽しめました。
個人的には橋本さんと伊藤さんの歌声が聞けたのがラッキーでしたv

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