瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2010/03/31 22:49   >>

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明日はもう4月なのに、先週から寒い日が続いていましたね。
私の住んでいるあたりでは、昨日の朝はうっすら雪が積もっていました・・・
通勤路の桜の木も、今朝あたりからやっと幾つか綻んできた感じです。
明日からは、ちょっとは暖かくなるのかな?
咲き初めた桜が身を縮めてしまわないように、
穏やかな陽射しが降り注ぐといいなあ、と思います。

その寒さに負けたのか、2ヶ月暴露されなかったせいなのか、
先週は見事に風邪をひいてしまいました(涙)。
最初は花粉症かなあ、と思っていたのですが、とんでもない!
でも、なんとか根性で6割方治して、土曜日は観劇に行ってきました。
しかも、休憩コミで8時間越えの「ヘンリー六世」(笑)。
さすがにちょっと疲れましたが、久々のばりばりの蜷川シェイクスピア!
しっかり堪能してまいりましたv



彩の国シェイクスピア・シリーズ第22弾
「ヘンリー六世」

2010.3.27  彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 1階I列20番台

出演:上川隆也、大竹しのぶ、高岡蒼甫、池内博之、長谷川博己、草刈民代、吉田鋼太郎、佐川哲朗、
    たかお鷹、原康義、山本龍二、立石凉子、横田栄司、大川ヒロキ、石母太史朗、星智也、中島来星 他


シェイクスピア初期の3部作。
この長大な戯曲は、昨年の国立劇場での上演で、2部と3部を観ました。
そのとき既に今回の上演は決まっていて、同じ戯曲を違った演出、違った役者さんで、
しかもこれだけの近い期間で観れるというのは、とても贅沢だなあ、と思った記憶があります。
そして、それはまさにその通りでした。

鵜山さんの描いた「ヘンリー六世」は、ある意味とても静かな世界だったと思います。
もちろん、戦争の場面もあるし、登場人物の感情が大きく爆発するシーンもあった。
でも、最終的に残った印象は、どこか違う次元にいるような浦井くんのヘンリー六世と、
そして、舞台の光も闇も写し取る水面の穏やかさだった。

今回、蜷川さんの描いた「ヘンリー六世」は、人々が生きる土の匂いがした。
その土に染み込み、塗り重ねられる血肉の生々しさがあった―――

最初、客席にはさまれた長方形の白い舞台の上には、赤い模様がありました。
白と赤。
無機質な光に浮かぶそのコントラスト。
ヨークとランカスターの対立の象徴。
けれど、5人の掃除人が現れ、その赤を拭き始めた時、それは血の赤になった。
淡々と、無表情に、けれど執拗なまでの完璧さでその赤をぬぐう女たち。
全ての赤を跡形もなく拭き取り、掃除人たちが舞台の端へ退いた時、それは降ってきました。
湿った、けれど明らかに質量のある大きな音を立てて、無秩序に落ちてくる大きな赤黒い肉片。
その暴力的なまでの落下を、掃除人たちは少しの恐怖と諦念を感じさせる無表情でじっと見つめていた。
そして、また何事もなかったかのように、その肉片を片付け始める・・・

無言のこの冒頭があることで、この舞台は王と貴族たちの物語であるだけでなく、
民衆の物語になったように思います。

繰り返される内乱。
それはきっと民衆にとっては、知らないうちに大切な大地に撒き散らされる、
かつて人であった肉片と血でしかなかった。
天災と同じように、なすすべもなく通り過ぎるのを待つしかなかった。
その血を、その肉を、人々は淡々と片付ける。
その後にまた撒き散らされる命の破片を、また人々は片付ける。
血と、肉は、その地面の中に塗り込められ、堆積していく―――
そのイメージは、生温かく鮮烈に、私の中に飛び込んできました。

もちろん、肉片が降ってきたのは最初と最後だけ。
それ以外の時には、むしろ美しい花々が舞台の上に降り注ぎました。

ランカスターの赤い薔薇。
ヨークの白い薔薇。
そして、フランス王家の白い百合。

それは、衣裳とともに、複雑なこの物語を視覚的に理解する良い手がかりになった。
けれど。
切り取られた茎を下にして落ちる花は、地面に触れて"カタン"という小さな音を立てます。
戦闘シーン以外の殆どの場面で、この音は響いていた。
時にゆっくりと、時に速く、不規則に紡がれる無機質な音。
かすかな、けれど、確かな存在感を持つ音。
それは、何故か私にとても不安を抱かせました。
降り注ぐこの花たちは、この舞台の上で流れる時間の象徴だったのか。
それとも、二つの大きな戦争の中で消えていった命の象徴だったのか。
そして、その花々すらも、掃除人たちは冷めた視線で片付けていった。

堕ちてくるモノと、片付ける人。
その絶え間ない連鎖。繰り返し。
それは、役者さんの存在と同じくらい雄弁に、この物語を表していた。
なんだかそんな風に思いました。

もちろん私の感じ方は蜷川さんの意図とはずれているかもしれません。
でも、こんな風に感じさせてくれる蜷川さんの舞台が、私は本当に好きだなあ、と改めて思ってしまいました。


・・・って、降ってくるもののことだけで観劇記録が終わっちゃいそうですね(笑)。
もちろん、お芝居そのものもとても見ごたえがありました!
昨年見損ねた第一部をを理解したことで、更に物語の世界に深く入れたような気がします。
また、同じ役を別の役者さんが、別の演出でやることで、
こんなにも印象が違うのか、というのが当たり前だけど驚きでした。

一番印象が違うな、と思ったのは、やっぱり上川さん演じるヘンリー六世。
浦井くんのヘンリー六世は、もう別の次元にいるような浮世離れした感じがあったのですが、
上川さんのヘンリー六世は、もっとずっと人間臭いというか、
同じ地面の上に生きている人、という印象をうけました。
未熟さも、割り切れなさも、弱さも、嫉妬も、卑屈さも、存在感の薄さも全てが生々しくて、
王様である前に、一人の人間、という感じ。
「羊飼いになりたい」発言(笑)のシーンでも、
浦井ヘンリーは空中ブランコの高みから見下ろしていたけれど、
上川ヘンリーは地べたに這いつくばり、嘆く息子や父親と同じ目線で、戦争を見ていた。
だからこそ、羊飼いの生活を夢想する彼の、世間知らずな甘さも際立った。
物心つく前から王様で、王様でなくては生きていけない男。
彼が最初自分の王位にだけこだわった理由が、このヘンリーを見て、なんとなくわかった気がしました。

ヘンリーは、この物語の中で唯一"呪わない"人物だとプログラムにありました。
でもね、私的にはヘンリーは十分呪っていたように思うのです。
それは、幼いリッチモンド伯への言葉だったり、
自分を殺しにきたリチャードへの言葉だったり・・・
不確かな未来への予言は、そして、その人物にはどうにもならない過去への言及は、
やっぱり私には"呪い"に聞こえてしまったのでした。


瑳川さんのグロスター卿も、なんというかちょっと悪役が入っていて新鮮でした。
100%いい人ではなくて、もっと保身とか対抗心とか、そういうちょっとマイナスな要素もある感じ。
同じように吉田さん演じるヨーク公も、ばりばりの野心が凄くわかりやすかったです。
まさにあのリチャードの父!という感じでした。
マーガレットに弄られて殺されるシーンは、吉田さんならではの大迫力!!


吉田さんのヨークと同じくらい大迫力だったのが、大竹さんのマーガレット!
最初の初々しい少女が、王妃となったことで、驚くほどの変貌を遂げるのを、
さすがの説得力で演じてらっしゃいました。
ヨーク公とのシーンで、嘆き吼えるヨークの間近で同じように吼えて、
その声が高らかな笑い声に変わっていくシーンの眼が、ちょっと怖いくらいでした。
前編のジャンヌ・ダルクも、イギリス人からみると聖女もこうなのかあ・・・と、
ちょっと意外なくらい、サディスティックなジャンヌでした。
罵詈雑言の似合うジャンヌ・・・うーん、凄い(笑)。


国立劇場では観れなかった第1部の主要人物、トールボット卿は原康義さん。
個人的に凄い癒し系だったんですけど、なんでかな?(笑)
周り中がぎらぎらの野心をむき出しにしている中で、
もの凄く真っ当な雰囲気をかもし出していたからかもしれません。
石母田さん演じる息子とのやり取りも、他の親子が比較的殺伐とした感じななかで、
凄く情愛のこもった感じがあったのもポイント高かったかな。
戦死したトールボット親子を抱きしめて妹尾さんが叫ぶ1幕ラストもとても好きでした。
妹尾さんは、もともと蜷川カンパニーの中でも好きな役者さんなのですが、
あの嘆きが、イギリスの良心の死と、その後の荒廃を示唆するようで・・・ちょっと泣きそうになりました。


長谷川博己さんは、フランス皇太子シャルルとヨーク公の長男エドワード。
シャルルはジャンヌと、エドワードはマーガレットと、という形で大竹さんと絡むのですが、
その関係性が、それぞれの二役の奥深さを感じさせてくれたように思います。
後編2幕で、捕らえられ息子を殺されたマーガレットと対峙したエドワードが、
凄まじい気迫で呪いの言葉を吐くマーガレットを前に、
どんどん後ずさりして、腰が抜けたように座り込んだときの、あの驚愕と恐怖に満ちた表情が印象的でした。
きっとこのエドワードは、長男として凄く頑張ってるんだろうなあ、と思う。
でも、きっと王様にならない方が、彼は幸せだったんじゃないかな。
ああいう呪いを前面から受け止めるのは、
やっぱりリチャードぐらいの強い想いがないときついだろうな、と思いました。


そのリチャードは初見の高岡さん。
なんとも素直なリチャードだな、と思いました。
いや、もちろん役柄は王座への執着と野心を持つリチャードそのものなのですが、
鬱屈した捩れのようなものが、あまり感じられなかったな、と。
原因と結果が凄くわかりやすい感じ。
それはそれでありかな、と思います。


池内さんはサフォーク伯爵とヨーク公次男のジョージ。
サフォーク伯爵は、とても若々しい感じで、でもさすがの色気でした!
これを基準にしちゃったら、それはヘンリーは物足りなかったでしょう・・・(え)
マーガレットを見初めて、彼女を手に入れるために画策するシーンが、可愛らしかったです(笑)。
ジョージはがらっと雰囲気が変わって、一瞬違う人かと思いました。
誓い破りのジョージ、とマーガレットに罵られるわけですが、
要所要所の視線や表情がとても意味深で、
彼が裏切るにはそれだけの根拠がある、と思わされました。
それにしても、3人兄弟の真ん中って、やっぱりいろいろ苦労が多いのかなあ・・・(あ、4人か/汗)


ウォリック伯爵役は、横田さん。
すごい久々に拝見するかも。ちょっとお痩せになりましたか?
キング・メーカーと言われるウォリック伯爵。
彼の王座に対するちょっと屈折した立ち位置を魅力的に演じてらっしゃいました。
ヨーク家を見限ってから、戦死するまでの雰囲気や台詞回しが、
びっくりするぐらい吉田さんに似ているなあ、と思いました。

この舞台では基本黒の衣裳に様々なそれぞれ様々な薔薇の模様の布地を使っていたのですが、
その中で、個人的にウォリック伯爵の布地と、マーガレットのドレスの布地がとても好きでした。
こちらも降り注ぐ花と同じで、赤と白を効果的に使ってあって、
その分、民衆のくすんだ、でも様々な色合いの衣裳との対比が鮮やかだなあ、と思いました。


そのほかの役者さんも、お一人お一人とても印象的でした。
ヘンリー六世の幼少期を演じた中島くんは、小さいけどきちんと王様だったし、
サマセット公爵役の星さんはめちゃくちゃ背が高くてかっこよかったし、
草刈さんの佇まいはやっぱりとても美しかったし、
山本さんの哀愁あるジャック・ケイドも見ごたえあったし、
立石さんのグロスター公爵夫人とマーガレットの対決は大迫力だったし・・・
病み上がりで、実は前編2幕あたりは頭痛がちょっとつらかったのだけど、
後編は(痛み止めも効いて)とても舞台に引き込まれたし、とても大満足な舞台でした。
席が通路脇だったので、役者さんが走り抜けるのはちょっと迫力ありすぎて怖かったですけどねー。
おもいっきり、身体ごとよけてました、私(笑)。

蜷川さんの舞台は、私にとってやっぱりとても怖い舞台です。
今回は、視覚的にも、聴覚的にも、身体的にも(?)、イメージ的にも、凄く怖かった。
「タイタス・アンドロニカス」のときにも感じた、白と赤の使い方。
「リチャード三世」のときにすぐには立ち上がれなかった程の衝撃を受けた、落ちてくるモノ。
どちらも、たぶん私の中の根源的な恐怖に繋がるんだと思います。
でも。
蜷川さんの舞台には、生きる人の体温が、その人が踏みしめる土の匂いが、その人の頬を撫でる風がある。
それがやっぱり私にはとてもとても魅力的で。
それだから、やっぱりどんなに怖くても、私は蜷川さんの舞台に足を運ばずにはいられないんだろうなあ。



最後になりましたが、この日の観劇では、ぴかちゅうさんと玲小姐さん、
そして初対面のけろちゃんさんとご一緒させていただきました。
お昼も、夕食(?)もご一緒できて、とても楽しかったです!
喉が本調子なら、もっといろいろお話したかったのですが・・・って、十分喋ってましたね(笑)。
どうもありがとうございました!

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
恭穂さま
“降ってくるものの”話、ほんとにそうそう、と
同感しながら読ませていただきました。
まさに蜷川ワールド炸裂の演出で、とても印象的な
オープニングでした。
長時間の舞台ですが、緊張感途切れることなく
蜷川シェイクスピアをどっぷり楽しませていただいた
感じです。
私は国立劇場版を観ていませんので、恭穂さんが
感じられたその違いもとても興味深いです。
やっぱり両方観たかったな。

そして、恭穂さんといえば、洋さん(笑)。
もし洋さんがこの舞台にいたらどの役だったかな。
サフォークかしら、ウォリックかな、それとも
シャルルかリチャードかな、なんて劇場で会った
友人とも想像を巡らせました。
スキップ
2010/04/15 00:38
スキップさん、こんばんは!
あのオープニングはまさに蜷川さん!という感じでしたね。
ただでさえ長時間のお芝居の冒頭に、
あれだけの長さで無言のオープニングを持ってくるところに、
この舞台に込められた蜷川さんの想いを強く感じました。

そして、洋さん!(涙)
哀しくなるので、あえて観ている時には、
この舞台に洋さんがいたら・・・とは考えなかったのですが、
個人的には知的な眼鏡のウォリックか、
悩みながら復讐に駆られるクリフォード(息子)とか、
見てみたかったかも、と思います。
が、以前から「洋さんの『リチャード三世』が見たい!」と
公言している(笑)私としては、
やっぱり一押しはリチャードですかねー。
この辺は語りだすと止まらなくなりますので(え)、
いつかまた是非直接お話させてください!
恭穂
2010/04/16 23:34

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