瓔珞の音

アクセスカウンタ

zoom RSS きれいなもの

<<   作成日時 : 2010/08/25 22:40   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

たとえば、心から欲しいと願う何かがあるのに、それは決して手に入らないものであるとき。
たとえば、何かが大事で大事でしかたがないのに、既に"終わり"が見えてしまっているとき。
たとえば、自分の中の一番深いところに、なくした何かを幾重にもくるんでしまいこんだとき。

その"何か"は、たぶんその人にとってとてもとても"きれいなもの"なのだと思う。

手に入らないから。
さよならするしかないから。
もう、抱きしめることができないから・・・

そんな儚い"きれいななにか"にたいして、人はどんな想いをもつのだろうか。
どんな選択をするのだろうか―――



「宝塚BOYS」

2010.8.21 ソワレ シアタークリエ 5列20番台

出演:浦井健治、杉浦太陽、黄川田将也、東山義久、藤岡正明、瀧川英次、石井一彰、初風諄、山路和弘



この舞台を初めて観たのは、初演のDVDでした。
そして、再演で二度、生でこの舞台を観ています(観劇記録)。
物語そのものに対する感想は、再演を観たときと変わりありません。

が!
キャストが変わるだけで、こんなにも受ける印象が異なるのですね。
それぞれの登場人物が辿ってきた時間も、ぶち当たる壁も、迎える終わりも、もちろん変わりありません。
けれど、その時間に、壁に、終わりに対峙した時、
選ぶ道は同じでも、そこに至るまでの感情の揺れ揺れや表情は、まったく異なる印象でした。

もちろん、役者さんが違うのだから、それは当然のことなのかもしれません。
けれど、役者である彼らが、その"役"の彼ら自身の時間をきちんと紡いでいること。
憧れ、飛び込み、拒絶され、悩み、反発し、支えあい、そして成長していく、時間。
その時間をリアルに感じさせてくれること。
それこそが、この舞台の魅力であるのだと、なんだかそんなふうに思ってしまいました。

初演・再演のBOYSから比べると、一気に若返った感のある新生BOYSたちは、
なんというか、痛々しくなるほどの真摯さと純粋さと無防備さがありました。
あ、もちろん、これまでのBOYSたちが真摯でなかったということじゃないんですよ。
ただ、先輩BOYSたちは、その"時間"を乗り越えてきた大人の余裕と、
乗り越えたからこそ感じられる切なさが前面にでていたように思うのです。
けれど、新生BOYSたちは、もうその感情の荒波の真っ只中!という雰囲気で、
喜怒哀楽のふり幅がとんでもなく大きくて、
引きずられた私の感情も、観劇の間中大きく動いていたように思います。


そんな中、今回の舞台で私が一番心惹かれたのが、東山さん演じる星野丈治でした。
最初は、あの迫力満点な上腕筋と大胸筋(笑)にちょっと圧倒されていたのですが、
仲間に対するときのつんとした様子と君原さんに甘える様子のギャップとか、
稽古場の端っこの椅子に座りながら、中央で喋る君原さんに向ける全開の笑顔とか、
池田へのすがるような表情とか、
山田に対する容赦ない愛情表現とか、
宝塚をやめることを決意した時の、優しく寂しい、でも切羽詰った表情とか・・・
そういう一つ一つのことが、私の中に"星野の生きた時間"を鮮やかに作り出してくれたのです。

彼らに出会うまで、ダンスに対する星野の感情は、きっと愛憎が入り混じったものだったと思うのですね。
ダンスを失ったことで、生きる目的を失った父。
父がダンスを失う原因を作った母も、たぶん星野にとって暖かいだけの存在じゃなかった。
妬みや、嘲りや足の引っ張り合い・・・踊るということは、彼にとってある意味戦いだったのだと思う。
けれど同時に、彼の中には踊ることへの強い想いがあった。

かつて、父が手にしていたそのきれいな光。
かつて、父と母の間にあったはずの、きれいな感情。

その美しい世界に憧れて、飛び込んで、走り続けて・・・
でも、求めても求めても、決して自分が求めるだけのものを返してくれることのないこの世界。
なのに、そんな冷たい世界から、決して離れることのできない自分自身―――
宝塚に入った当初彼が作り出していた壁や斜に構えた様子は、
たぶんこれまでと同じように優しくはないであろう世界へ向けた、必死の防御だったのかな、と思うのです。

けれど、彼は出会ってしまった。
ただひたすらに宝塚を愛し、その舞台に立つために立ち向かい続ける誰かに。
どす黒い妬みを越えて、足を引っ張り合うのではなく、共に歩いていく誰かに。
ダンスへ向ける自分の想いを、大切に包み込んでくれる誰かに。
それは、たぶん星野にとって、とてもとても"きれいなもの"だったに違いありません。

星野が見つけた"きれいなもの"。
彼が信じたもの。
彼の力になったもの。
彼が甘えそうになったもの。
大事な大事な、キラキラひかる"きれいなもの"―――

その終わりが見えたときに、彼は誰よりも先に自らその時間に別れを告げようとします。
自分たちが紡いできたものが、壊れる瞬間を見ないですむように。
さよならを告げられるよりも、告げる方が受ける疵が少ないから。
それは、大人な振りをした星野の、子どものような自己防衛に思えて・・・
たぶんね、7人の中で星野がいちばん宝塚男子部への心理的依存が強いように私には見えたのだと思います。

だから、最後のショーの星野のソロは、見ごたえがあると同時に、
その懸命さがなんだかとてもとても切なく感じてしまいました。
終わった後、シャンシャン(でいいのかな?)に顔をうずめる時間も、
たぶん星野が一番長かったように思うのです。
終わってしまう夢を、
解体されてしまう時間を、
離れてしまう存在を、
全てを大切に大切に抱きしめるように佇んだその姿。
そして、その訣別をきちんと受け止めて、大階段を振り返るその後姿が、とても印象的でした。

うーん・・・ここまで書いて思いましたが、私って普通に東山さんのファンなんですかね?
アンジョの後姿と最後の笑顔にもよろめいてたしなあ・・・(汗)
喋る声とか、あの逞しい上半身とか(笑)、決して好みではないのですが、
なんというか彼の作り出す人物がみせる"時間"が、非情に私好みなのだと思います。

あ、もちろん、ダンスも素晴らしかったですよー。
最後のショーのシーンとか、やっぱり”見せる=魅せる”ことはBOYSの中で一番上手だな、と思いました。
表情とか、溜めの間とか、視線の動かし方とか、確実に観客の眼を奪っていました。
そういうところはさすがですねー。


そんな星野な東山さんと並んでいて、ちょっと心配になっちゃったのが、杉浦太陽くんの長谷川。
いや、だってなんだか折れちゃいそうに細いんですもの!
杉浦くんって、TVのヴァラエティでちょっと見ることがあるくらいなのですが、
もっとふっくらしていたような・・・こんなに細かったかなあ?
1幕はそれでも元気一杯でちょこっとKYな長谷川を、ハイテンションで楽しく見せてくれていたのですが、
2幕になってから、なんだかどんどん憔悴していっちゃう感じで・・・
いや、まあ後半は長谷川はちょっと悲しい役回りではあるのですが。
もしかして、そういう役作りだったのかな?
だとしたら、それはそれで凄いかも。
でも、ショーの時とか、最初表情がめちゃくちゃこわばっていて、
中盤になって笑顔が出たときには、心底ほっとしてしまいました。
なんだかお母さんみたいな気持ちになっちゃったよ(笑)。
あ、でも、足の上がりは見事でした! 
綺麗にぴしっと上がる足は、東山さんに負けてなかったと思うよ?


最後のショーでは、再演のときも泣かされておりましたが、
今回の涙ポイントは、実は瀧川英次さん演じる太田川のソロのシーンでした。
病院を脱走して稽古場に忍び込んだときの独白から、
男子部解散が知らされたあと、涙ながらに歌う仲間から逃げるように後ずさって、
それを池田さんに抱えられて連れてこられた時の抵抗の様子とかがめちゃくちゃ痛々しくて・・・
だから、華やかな場で歌う彼の笑顔には、ちょっとやられてしまいました。
ビジュアル的にも前任の山内さんとは全然違う役作りで、
虚勢を張ってきゃんきゃん吼える子犬みたいなところも魅力的でした(笑)。


黄川田将也さん演じる山田は、ひょろっとした立ち姿に優しさが滲み出る感じでした。
なんだかね、全てを受け止めてくれるような優しさが感じられたの。
同時に、強い芯が一本通っているようなしなやかさも感じました。
愚連隊を率いてはいなかったけど、
たぶん愚連隊になくてはならない癒しだったんじゃないかな、と思ってみたり(笑)。
竹田が宝塚に来たのも、山田が大きな要因だったんじゃないかな。
たぶん、山田の傍にいると、ほっと安心できるんだと思います。

で、その竹田を演じたのは石田一彰くん。
「偽伝写楽」の歌舞伎役者役がもの凄く印象に残っていたので、
普通の格好をしているのがなんだか不思議な感じでした(え)。
2幕後半の見せ場も熱演されてましたが、もうちょっと深みが欲しいかなあ・・・と思っちゃった。


浦井健治くんの上原は、ほんとに裏表のない真っ直ぐな男だなあ、と思いました。
でもって、7人の中で一番大人だったようにも思います。
上原は柳家師匠のイメージがとても強いので、
最初の方はあの大袈裟な挙動不審さ(笑)が、ちょっと違和感あったのですが、
最後の方は、一歩退いた客観的な視点で男子部を見ている感じがして、
浦井くんの上原をきちんと見せてくれたように思います。
ある意味、物語の中で一番成長したなあ、と感じさせる役柄でした。
歌はもちろん、ピアノもとてもお上手でしたv


この舞台、歌は決して多くはないのですが、その中で藤原正明さん演じる竹内の美声はぴかいち!
なんとも一本気で無骨な感じの竹内で、新鮮でした。
自分がいいと思うものはいいと、嫌いだと思うものは嫌いだと言い切る、
ある意味頑なさともいえるような情の強さも、きちんと見せてくれました。
でもって、とっても肉体派な竹内?
山田も太田川もがっつり担ぎ上げてくれました。びっくり!
・・・藤岡くん、バルジャンできるんじゃないかな?(笑)


初風さん演じる君原さんは、やっぱりこの舞台の癒しでしたねー。
というか、初風さんって、めちゃくちゃ綺麗ですよねv
君原さんがBOYSと稽古をするシーンは、やっぱり涙してしまいました。
そういえば、男子寮の壁に貼ってある食事の時間の張り紙、
場が進むごとにきちんと古びて汚くなっているんですね。
かかっている布巾も変わっているし。細かいなあ〜!
わりと時間経過のわかりにくい物語なので、
あの汚れかたが、彼らが過ごしてきた時間を語っているように思いました。

山路さん演じる池田さんは、相変わらず渋かったですv
新生BOYSがわりときゃぴきゃぴ(え)した印象なので、更にその渋さが際立った、というか・・・
でも、その内に秘めた、彼らにも負けない熱さが、
今回は割りと最初の方から垣間見えていて、
そういう部分もとても魅力的でした。


なんだかばらけた感じの観劇記録になってしまいました。
でも、新生BOYS、とっても良かったです!
この舞台は、こういうふうにキャストを変えて新しい人間関係を紡ぎながら、
ずっとずっと長く上演されていくといいなあ、と思います。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
きれいなもの 瓔珞の音/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる