瓔珞の音

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zoom RSS なかなか熟成しないので

<<   作成日時 : 2010/09/28 21:15   >>

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私は観劇記録を書く時、いつも1つキーワードを決めます。
それは、観劇中に思いつくこともあれば、
観劇後数日立ってからふっと思い浮ぶこともあります。
我ながらぴったり!と思うこともあれば(笑)、
こじつけ感満載なこともあります・・・というかその方が多いかなあ(え)。

で、「イリアス」。
観劇から10日ほど経ちますが、な〜んにも思いつきません(笑)。
熟成を通り越しちゃいそうな気配なので、簡単に観劇記録を。


「イリアス」

2010.9.18 マチネ ル・テアトル銀座 1階6列1桁台

原作:ホメロス
演出:栗山民也
脚本:木内宏昌
音楽:金子飛鳥
出演:内野聖陽、池内博之、高橋和也、馬渕英俚加、新妻聖子、チョウソンハ、初嶺麿代、中川菜緒子、
    一倉千夏、飯野めぐみ、宇野まり絵、木場勝己、平幹二朗


ちょっと言い訳めいた前置きをしましたが、
この舞台、個人的にはかなり楽しんで観ることができました。
なにより素敵だったのが、シンプルなのに奥深い舞台美術と5人のコロスの存在。
舞台を前後に区切るような高い赤茶色の壁。
ごつごつとした岩肌のような圧迫感のあるその壁の前に、
様々な姿勢で佇むコロスの白いドレス―――その一部を汚す泥と血。
そして、無表情なのに雄弁な彼女たちの表情・・・
それは、ホメロスの叙事詩そのままの世界を示すために、
奔流のような言葉を操るほかの役者さんたちと同じくらい、
私にこの舞台の上に作り出された世界の"意味"を届けてくれたように思います。
あ、もちろん台詞もあるんですよ。
女神テティスになったり、戦士になったりもしたし、
この長い舞台に殆ど出ずっぱりだったと思います。凄い!

そして、舞台の最初、このコロスたちの中央で闇い光を放っていたのが、新妻さん演じるカッサンドラでした。
実はチケットをとった最大の理由だった新妻さんは、
その期待を裏切らない美しさと神がかった歌声に魅了されました。
神の求愛を受け入れ、その結果未来を視る力を得、
その力ゆえに神の愛が失われていくことを、そして祖国が滅びていくことを予言してしまうカッサンドラ。
―――予言することしかできない、カッサンドラ。
その細い身体に押し込まれた、怒りと、悲哀と、愛。
白い喉を反らし、細い腕を天にすがるように伸ばして歌うあのソプラノは、
舞台下手で金子さんが奏でるヴァイオリンの音色と絡み合って、
まさに別世界のような美しさでした。

そんな、既に人の世界から一歩逸脱しているようなカッサンドラとは対照的だったのが、
馬渕さんのアンドロマケ。
いやー、彼女の泣きの演技はやっぱり天下一品ですね!
「オセロー」のエミリアのときもそうでしたが、
あれだけ泣いても台詞がまったくぶれないのが素晴らしいです!
真っ赤に泣き濡れて、けれど凛とした輝きを失わない眼差しがとても印象的でした。
夫が殺された後も、自分の未来をきちんと見据えて、
その上で生きていこうとする強さ―――それは私にはこの物語の中で一番強い力のように思いました。


・・・って、女性陣のことばかり書きましたが、
正直男性陣はちょっと受け入れがたかったんですよねー。
いえ、演技はとても見ごたえありでしたし(というか怖いくらいでした)、
それぞれの役柄も魅力的だったんですが、
いかんせん、この舞台の男性陣は、めちゃくちゃワイルドというか、ぶっちゃけ理性がめちゃくちゃ少ない!!
私の受け取り方のピントがずれてるのかもしれませんが、
男性陣は誰もが自分の欲望にもの凄く忠実なんですね。
唯一、池内さん演じるヘクトルに、自分を律し、求められる役割を全うしようとする姿が見えたかな。
逆にワイルド全開だったのが、内野さんのアキレウス。
本当に自分の求めるままに生きている、という感じ。で、結局後悔するの(え)。
この二人の戦いのシーンは、迫力があるというのを通り越して、めちゃくちゃ怖かったです・・・
アキレウスが客席を通ってヘクトルの待つ舞台に行くのですが、
その間の「フシュー、フシュー」っていう呼吸の音が、
人間以外の存在のような怖さで、はっきりいって、私的には思いっきり悪役でした(笑)。

平さんのプリアモス王は、リア王を彷彿とさせる佇まいでした。
ヘクトルを失った後の嘆きは、アキレウスの心を動かすだけの説得力がありましたが、
そう思う反面、彼以外に殺されてしまった王子たちにたいしてはどうなんだろう・・・?
と思っちゃった私は、やっぱり捻くれ者なのかなあ。

高橋さんのオデュッセウスは、智将としての存在感抜群でしたが、
その分、言葉の裏側をかんぐってみたくなってしまいました(笑)。
木場さんのアガメムノンは、アキレウスと同じ神の末裔として生まれた自分自身への、
嫌悪のような感情が感じられたように思います。

そして、かなりなインパクトだったのが、チョウソンハさんのパトクロス。
いやー、あのアキレウスへの執着具合には、ちょっと退いちゃいましたよ(笑)。
「ザ・キャラクター」の時のアポロンもかなりいっちゃった感じで凄かったですが、
今回は更にその上を行く感じでした。
死霊としてアキレウスの前に現れたときの凄味のある表情と、
さらりと語られる恐ろしい言葉の数々に、ちょっと鳥肌がたちました。


うーん、ほんとにマイナスな感じの感想になっちゃったなあ。
なんというかこの舞台、私にとってもの凄く現実感がないのに、
血とか汗とか泥とか、そういう生々しさも感じられるもので、
そのギャップに私自身がついていけてないのかもしれないなあ、と思いました。


あ、そういえば、カッサンドラというと、すぐに思い浮ぶのが、
梨木香歩さんの「沼地のある森を抜けて」で、カッサンドラと名づけられた存在だったりします。
この舞台のカッサンドラとはもちろん全然違うのだけれど、
境界を踏み越えた存在としての異質さは、もしかして共通するのかなあ、と思いました。
・・・って、これ、もしかしてキーワードになったかな?(笑)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
なるほど。
恭穂さんが「こわい」と感じられた理由が
このレポを読むとわかるような気がします。
男性陣が皆欲望に忠実、というの、その通りだと
思います。そうそう、ヘクトル以外(笑)。
私は、その身勝手な男たちというより、
それを演じる役者さんたちの演技とか、
つくり上げられた舞台のチカラに感動したのかも
しれません。
今でも、あのアキレウスとヘクトルの一騎打ちの
シーンで自分がどうして泣いてしまったのかは
うまく説明がつきません。
でもクオリティという意味では大変上質の作品で、
できればまた観たいと思いました。

あ、チョウソンハさんのあの金属音のような
叫び声は苦手なので、そこだけ別キャストで(笑)。
スキップ
2010/10/11 01:02
スキップさん、こんばんは!
とても怖い舞台ではありましたが、同時にとても美しく、
スキップさんのおっしゃるとおり、
クオリティの高い舞台だったなあ、と思います。
先程一昨日の「情熱大陸」の録画を見て、
ほんの少し映った「イリアス」の舞台映像に、
もう一度あの舞台に、役者さんたちの演技に向き合いたい、
と強く感じました。
再演、してくれるといいですねv
チョウソンハさんの声、独特ですよね〜。
私の中では彼はすっかり”ギリシャ神話の人物”です(笑)。
恭穂
2010/10/12 21:48

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