瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2010/10/18 21:17   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 2

土曜日にぐっすり眠れたので、昨日は久々の(でもないか/笑)観劇へ。
渋谷の雑踏は、私にはやっぱりちょっと辛かったけど、
でも、帰り道は、すれ違う沢山の人たちを、何故かとても愛しく感じてしまったのです。
様々な速度で様々な表情で様々な"何か"に向かって歩いている沢山の人たち。

そこにいる誰もが、大切な何かと嫌悪する何かを持っている。
そこにいる誰もが、綺麗な何かと汚い何かを隠している。
そこにいる誰もが、愛する何かと愛される自分を求めている。

それは、私も例外ではなくて―――
そんなふうに感じたのは、きっとこのミュージカルを観たからなのだと思います。



「ファンタスティックス」

2010.10.17 マチネ シアターコクーン 1階B列一桁台

出演:鹿賀丈史、田代万里生、神田沙也加、斉藤暁、矢部太郎、蔡暁強、二瓶鮫一、モト冬樹、
    大泰司桃子、川手祥太、皆川良美


劇場に入ってまず目をひかれたのが、クリスタルのペンダントトップのような、
ちょっと細長い菱形の舞台と、その四辺にある客席。
でもって驚いたのが、その舞台の傾斜のはんぱなさと、私の席が最前列だったこと!
これは緊張するなあ、と思っていたのですが(笑)、
静かな気配をたたえて舞台奥から現れた蔡さん演じるミュートが、
正面にすっと座って、そして浮かべたあの素敵な笑顔に、一気にリラックスしてしまいましたv
そして現れた鹿賀さんのエル・ガヨに導かれるように客席から現れるキャストたち!
間近で見る沙也加ちゃんの可愛らしさに、くらくらしちゃいました(笑)。
なんだかもう存在自体が可愛いよ、沙也加ちゃん!

そして始まる物語―――
16歳の朝に自分の美しさに気づき、母の形見のクリスタルのペンダントをつけながら、
特別な"今"に特別な"何か"が起こることを疑わない、夢見がちな少女ルイザ(神田沙也加)。
彼女が恋するのは、隣の家の一人息子マット(田代万里生)。
二十歳のマットは、大学で生物を学ぶ学生。
ずっと真面目に生きてきて、でも今はルイザの存在に全てを持っていかれてしまっていて、
そんな自分の愚かさすらも、恋のスパイスにしかならない青年。
二人の恋の間には、文字通り高い壁―――仲の悪い父親同士が立てた壁。
その壁越しに、どんどん恋心を募らせる二人。
けれど、その壁は、二人を結婚させようと企む父親たちが敢えて立てたもの。
子どもたちは親がNO!と言えばそのことをする。
だから恋もNO!と言えばきっと二人は恋に落ちる。
子どもたちを家へとおいやり、壁越しに目論見通りになったことを喜ぶ二人の父親。
そんな二人の今の悩みは、自分たちをどう仲直りさせるか、ということ。
そこでマットの父ハックルビー(佐藤暁)が連れてきたのが、
流れ者のエル・ガヨ(鹿賀丈史)。
彼にルイザを誘拐させ、それをマットに助けさせ、それで二人の父親が許せば万事オッケー!という計画。
老役者ヘンリー(二瓶鮫一)と殺され役専門のモーティマー(矢部太郎)と観客(笑)の協力を得て、
月夜の森で計画通りにルイザを襲い、マットに倒されるエル・ガヨ。
すっかり英雄気取りのマットとドラマティックな一幕に酔いしれるルイザ、
そして計画通りの流れに大満足な二人の父親たちは、大喜びで歌い踊ります。
けれど、太陽の光の中で、自分たちが手にした"現実"に向き合った時、
彼らは何かが違う、と感じ始めます。
月の光の中では気づかなかった恋人の表情。
境をなくした庭で父親同士が起こす諍い。
そして、暴露される計画―――
全てが仕組まれたと知ったマットは、エル・ガヨに導かれ全てを捨てて旅に出、
残されたルイザは、一人庭に佇みながら、自分を連れ出してくれるはずの"誰か"を待ち・・・
エル・ガヨの手に操られるように、庭の外の世界を経験した二人が最後に得たものは―――?

という感じのお話でした。
全体を観て思ったのが、「キャンディード」みたいだなあ、ということ。
宮本演出だったということもあるのかもしれないし、
黒い箱からいろいろなものが出てきたり、木になったり椅子になったりする演出も似てたこともあるし、
若い恋人同士が周りの大人たちに翻弄され、世界を旅し、
挫折し、傷つき、何かを失いながらも、再び互いの手をとり共に生きていく、という流れと、
明るく華やかな音楽と歌の中に紛れ込んだ苦味が、そんなふうに思わせたのかもしれません。
恋人たちが、最初はもの凄いすれ違いというか勘違いな恋をしているところも同じかな。
でも、この恋人たちは変わっていくことを選び、変わっていく相手を受け入れてる。
そして、狂言回しでもあるエル・ガヨは、彼らを観察するのではなく、彼らを導いていた。
彼らを見つめるエル・ガヨの表情は、時に厳しく、時に切なく、時に慈愛に満ちている―――
そのことが、なんだかとても安心感を与えてくれました。


そんな鹿賀さんのエル・ガヨ。
いやー、最初に出てきたときからめちゃくちゃうさんくさかったです!
笑っているのに裏がある、というか(え)。
裏地の赤い黒のマントがあれだけ似合う方もそういないでしょう(笑)。
父親二人を煙に巻いて、ちゃっかり高額の報酬を約束させたり、
銀色の棒にまたがって、しっかり乗馬を表現したり、
モーティマーの指導(笑)を受けて、とっても楽しそうにマットに殺されたり・・・
1幕の鹿賀さんの多彩な表情は、ちょっと聞き取りにくい歌声を補って余りある存在感でした。
でも、私が心惹かれたのは、彼の神秘的な影の部分。
誘拐劇の前、闇に沈む森の中で、語るその声。(このシーン、一番好きなシーンかも!)
旅立つことを決めたマットの背後で、彼を飲み込むように、あるいは彼を守るかのように、
大きくマントを広げ、彼を見つめるその視線。
一人残されたルイザを操る、大きな手の繊細な動き。
そして、ルイザを本当の意味で守ろうとするマットの前で、
徹底的に悪役を演じた後に闇に消える後姿―――
エル・ガヨという役は、この物語の中の最大の謎です。
けれど、謎が謎であることを、そのまま受け入れてしまえるのは、やはり鹿賀さんの力なのだろうな、と思います。

そして、鹿賀さんと同じように謎に満ちていた存在、ミュート(祭暁強)。
黒い衣裳で、エル・ガヨの助手のように物語の小道具を用意し、時には大道具にもなるミュート。
歌も台詞も一つもないミュート。
影に紛れてその気配すら感じさせないかと思うと、エル・ガヨの影のように若い恋人たちを翻弄し導くミュート。
けれど、その存在はとても優しさに満ちているように私には感じられました。
それが、とにかく私にはとても癒しだったんですね。
蔡さんを拝見するのは初めてですが、あの笑顔はもちろんのこと、しなやかなダンスにも魅了されました。
長いことミストフェリーズを演じてらっしゃったというのも納得です。
というか、思わず「CATS」が観たくなっちゃいました(笑)。
幕間に、竪琴で爪弾いてくれた♪Try To Remenber も、なんだかとっても嬉しかったです。
でもって、彼がどんな声で歌うのか、是非聴いてみたくなりましたv

ルイザ役、神田沙也加ちゃん。
とにかくめちゃくちゃ可愛いかったです!
個人的に彼女はピンクのイメージなのですが、オレンジもとってもお似合いでしたv
歌声はやっぱりちょっと声量が足りない感じだけど(というか、めちゃくちゃ難しそうな歌!)、
その澄んだ響きがルイザの少女らしい純粋さや不安定さにぴったりでした。
自分とそっくりなので、ずっとやりたかったというルイザ役を、
まさに等身大の若さあふれる切なさで演じていました。
ほんとに、50年も前に作られた作品とは思えないくらい。
たぶん今まさに恋をしている女の子にとっては、凄く心に響いたんだろうな、と思います。
もちろん、沙也加ちゃんの魅力はその可愛らしさだけではありません。
2幕、思い描いていた独りよがりな夢とは異なる"現実"を目の前にした戸惑いが、
思い通りに行かない不満と不安に、そして怒りへと変わっていく様。
そして、"現実"を知り、マットよりも少しだけ早く、でも中途半端に"大人"になってしまったために、
マットを追い詰めてしまったことへの後悔。
舞台の端で遠くを見つめるその横顔から、ちょっと目が離せませんでした。

マットを失ったルイザは、ある意味全ての元凶であるエル・ガヨに縋ります。
縋る、といってもそれはとても精神的な意味で・・・
自分も変わらなくてはならない。
自分は何かを見つけなくてはならない。
そういう気持ちが、彼女をエル・ガヨに近づけたのかなあ、と思います。
まあ、あの大人の魅力にやられちゃった、というの少しはあるかもですけどね(笑)。
エル・ガヨに連れられて、世界を見、その世界の端っこで残酷な仕打ちを受けるマットを見るルイザ。
彼を助けようとする思いは、けれどミュートに渡された仮面を被ることで、
むしろ残酷な喜びへと変わっていきます。
あれはどういう意味だったのかな・・・?
あの残酷さは、彼女の本当の想いだったのかしら?
でも、ああいう残酷さって、たぶん誰でもが多かれ少なかれもっているのだと思う。
そういう、自分の中の残酷さとか汚さとか、
夢の世界では決してありえない想いを知り、受け入れること。
そして、信じた誰かに裏切られること。
その痛みを知ることで、彼女は本当の意味で大人になったのかもしれないなあ、と思います。

万里生くんのマットは、ルイザとは違う意味で大人になったのかな。
自分の中の汚いものを知る、というよりは、
自分弱さ、自分の限界を知ることで、守るべき"何か"を見つける、という感じ。
最後のシーンでも、自分の知らない影を纏ったルイザを、
それでも包み込もうとする、包み込むだけの強さを得た―――そんなふうに感じました。
で、マット。
万里生くんのミュージカルは「ブラッド・ブラザーズ」以外は観ているのですが、
これまでで一番自然で一番見ごたえがあったかな、と思います。
というか、それだけ彼が成長しているのかも(・・・てちょっと上から目線?/笑)。
1幕では恋に溺れるおぼっちゃまなマットを、厭味なく素直に演じていました。
客席に降りてきたと思ったら、私の二つ隣の席の人に自分の恋心を切々と訴え、
その席の肘掛に立ち上がって高らかと歌い上げるというシーンがありまして、
まさに1mぐらいの距離で見た万里生くん、めちゃくちゃキラキラしてました!
前よりちょっとほっそりしたのか、髪型がにあっているのか、とってもかっこよかったですv
でも、目の前で迫られた人、びっくりしたろうなあ・・・

でもこの舞台、客席参加型というのか、客席通路を使う演出もところどころにありました。
で、誘拐劇のとき、観客から協力者を募るのですが、
リピーターの方なのかな、躊躇なく手を挙げている方が沢山いてびっくり!
まあ、実際は役者さんが客席にいて、その方たちがエキストラやコーラスをするのですが。
で、そのお一人の皆川さんが、凄い演技派でした!
冒頭で鹿賀さんにプレゼントを渡そうとして拒否られたりしていて、
その後の所在のなさそうな様子が見ていて凄く痛くて、暫く気になっちゃったり、
♪回れ回れでコーラスで出てきたときは、同じ衣裳なのに別人みたいな雰囲気だったり・・・
ちょっと注目したくなっちゃいましたv

万里生くんに話を戻しまして(笑)。
歌声はやっぱりとっても素敵でしたv
生声に近い音響だったからか、とてもまろやかな印象。
エル・ガヨとの♪I Can See It は、目が離せないような緊張感に溢れていて、
これはもしやルドルフ効果?と思っちゃった(笑)。
沙也加ちゃんとのデュエットも、思わず笑みがこぼれてしまうような初々しさとロマンティックさでした。


個性的な二人の父親を演じたモトさんと斉藤さん。
凸凹コンビ、というか、とっても仲良しな様子が微笑ましかったですv
多分に一人(二人?)よがりなお父さんたちですが、
その行動には、子どもたちへの愛がきちんとあるんですよね。
斉藤さん、どこかで見たことあるなあ、と思っていたら、
去年沙也加ちゃんが出ていた「She Loves Me」で、
味のあるヘッドウェイターを演じてらっしゃったんですね!

そして、もう一組の凸凹コンビがヘンリー役の二瓶さんとモーティマー役の矢部さん。
微妙にずれた掛け合いがとっても楽しかったです!
って、矢部さんはお笑い芸人さんなんですよねー。
折れちゃいそうな細さで、エル・ガヨに「力なさそー」って言われてました(笑)。
舞台の中央からは外れた役者二人なのかもしれませんが、
その情熱とか矜持が、なんだかぐっと胸に迫りました。
特にヘンリーの「小さな役はある。だが小さな役者はいない」という台詞に、はっとしました。
この言葉、人の生き方にも繋がるんじゃないかなあ。


そんな感じで、魅力的な役者さんが舞台と客席を駆け回る楽しい舞台でした。
でも、可愛いだけのお伽話や、ちょっとブラックな寓話というだけでなく、
すごく現実的で、身近で、普遍的なものを沢山隠したお芝居だなあ、と思いました。
そうそう、このミュージカル、演奏はピアノとエレクトーンとパーカッションという編成だったのですが、
シンプルなピアノの音と役者さんの歌声のキャッチボールみたいな掛け合いが、
とても可愛らしくて、華やかで、この物語にぴったりでしたv


9月に始まった物語は、秋を越え、雪の降りしきる冬で終わります。
でも、その終わりは決して寂しいものではなくて・・・
降りしきる雪を受け止めるのは、豊かな9月の記憶を持つ大地。
そして、その凍えた大地には、次の春に芽吹く種が隠れている。
その種がどんな花を咲かせ、どんな実りをもたらすのか―――それは誰にも分からない。
でも、分からないからこそ、人は春を待ち望む。
降りしきる雪は、そんな大地への祝福のようでした。

カーテンコール、ミュートがキラキラした紙吹雪を笑顔でいっぱいの役者さんたちに降り注ぎました。
更には客席に降りて、私たち観客にも。
その煌めく紙吹雪は、この舞台に溢れた笑顔という光の欠片のように感じました。
そして、帰ってから見直したプログラムの装丁が、まさにこの紙吹雪であることに気づきました。
この舞台を創り上げた全ての人たちからの、祝福の欠片―――
そう思ったら、なんだかとっても幸せな気持ちになりましたv

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
体調少し回復したようで よかったです♪
ファンタスティックス 21日に行ってきます!
恭穂さんの記事を読んで予習もできたので
何だかすごく楽しみになってきましたーーー!
ありがとうございます!
kumigon
2010/10/18 22:57
kumigonさん、こんばんは!
ご心配いただき、ありがとうございました。
まだちょっと咳がのこりますが、ほぼ回復いたしましたv

「ファンタスティックス」、私はとっても楽しめました!
沙也加ちゃんも万里生くんもきらきらしてましたよー。
鹿賀さんも文字通り(衣裳が)キラキラでした(笑)。
マット役、井上くんもやっていたんですよね。
見れなかったのがとても残念です。
kumgonさんは明日観劇なのですね。
どうぞあの幸せな空間を堪能してきてくださいね!
恭穂
2010/10/20 21:17

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