瓔珞の音

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zoom RSS 命の赤

<<   作成日時 : 2011/05/12 22:07   >>

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白い肌。
黒い肌。
白い心。
黒い心。
緑色の盤上でくるくると裏返る駒のように、移ろっていく心の色。
でも。
その命の流れの色は―――鮮やかな赤。



劇団☆新感線プロデュース
「港町純情オセロ」

2011.5.5 ソワレ 赤坂ACTシアター 1階O列10番台

原作:W.シェイクスピア
脚色:青木豪
演出:いのうえひでのり

出演:橋本じゅん、石原さとみ、大東俊介、粟根まこと、松本まりか、伊礼彼方、田中哲史、右近健一、逆木圭一郎、
    河野まこと、村木よし子、インディ高橋、山本カナコ、磯野慎吾、吉田メタル、中谷さとみ、保坂エマ、村木仁、
    川原正嗣、前田悟、武田浩二、藤家剛、加藤学、川島弘之、西川瑞


蜷川シェイクスピアの「オセロー」を観たのは、もう3年以上前。
高橋洋さん演じるイアゴーに惚れ込んでさいたまに通い、挙句に名古屋まで行っちゃった私は、
もうこれ以上の「オセロー」にはきっと出会えない―――そんなふうに感じていました。
だから、これが新感線の翻案オセローでなければ、きっと観にいくことはなかったと思います。

そんな不遜な私の思いを打ち砕くかのように、
新感線の「オセロー」は、新感線の「オセロ」であり、
そして、真っ向勝負の紛うことなきシェイクスピアでした。

物語の舞台は、16世紀のヴェニスから1930年代の関西の町神部へ。
悲劇の行き先は、トルコ軍と戦うキプロス島から、組同士の抗争の場となる小豆島。
ムーア人せあるオセローは、とある組の組長であり、日本人とブラジル人のハーフであるオセロ。
彼の若く美しい妻デズデモーナは、オセロが入院していた病院の令嬢モナ。
そして、二人を陥れるイアゴーは、"ミミナシ"の異名を持つ伊東郷―――

物語は、そんなふうに違和感なく戦前の日本のヤクザ同士の抗争、そして内乱へと置き換えられていました。
置き換えられた登場人物の造形も、要所要所の台詞も、とても原作に忠実だなあ、というのがトータルの感想。
もちろん大きく置き換えられているところもあるし、
新感線らしい笑いや(ガガさまみたいな体当たりも「ね民」みたいな地味なのも◎)、
アクションや、下ネタや被り物もしっかりありました。
けれど、「メタル・マクベス」が「マクベス」を粉々に解体した上で、もう一度再構成されていたのと比べて、
なんて素直な「オセロー」なんだろう、と思いました。


でも、なんといってもこの舞台、一番の感想は、「じゅんさんお帰りなさい!!」です!
もう、最初のシーンから全開のじゅんさんに、本当に本当に嬉しくなりました。
緩急というよりは常にトップギア、という感じなのに、
笑いも涙もしっかり客席から引き出すあの吸引力はさすが!
1幕のモナとのラブラブさも、素なんじゃないか、というくらい幸せそうな「可愛い〜!!!」の叫びも、
ああ、じゅんさんだ、と思いましたが、
そして2幕。
伊東の言葉に引きずられて、嫉妬の怪物になっていくときの凄味、
そして、全てを知ってから、真っ白なスーツを赤く染めるまでの穏やかなまでの表情に、
役者・橋本じゅんの魅力を感じました。

常に二つの領域の狭間にあって、自分の居場所を探していたオセロ。
身の内に流れる二つの国の血は、そのどちらの人々からも異邦だった。
二つの故郷は、どちらも不確かで安らぎの場にはなりえなかった。
そんなオセロがやっとたどり着いた、モナ。
モナへの想いを叫ぶように語るその言葉の後ろに、そんなオセロの孤独を見たように思いました。
帰るべき港であり、休むべき家であり、生きていく糧であり、熱情の源であり、そして安らぎの温もりであったモナ。
でも、そのどれもをもたずに生きてきた彼にとって、
彼女の存在はたぶん、二つの故郷以上に遠く儚く、そして不安を煽るものだったのかもしれない。
その不安があったからこそ、オセロはあんな杜撰な伊東の計画に踊らされた。
そして、モナを殺したことで、オセロは全てを失い、同時に全てを手に入れた―――そんなふうに思いました。


モナ(デズデモーナ)役は石原さとみさん。
舞台で拝見するのは「組曲虐殺」以来かなあ。
もう、とにかく可愛い!とオセロでなくても叫びたくなっちゃうお嬢様っぷりでしたv
1幕、オセロときゃぴきゃぴいちゃいちゃしているのがとっても微笑ましくv
でもって、じゅんさんのふりに一生懸命ついていこうとして、
なのにいきなり不意打ちに「え?」と素で戸惑っちゃっているところも可愛らしかったです。

年齢設定としてはきっと10代。
ここではない別のどこか、こうではない別の自分―――そんなものをまだ真っ直ぐに信じている年頃。
そして、信じるままにオセロを愛し、何も知らないまま彼に愛される少女。
けれど、何故か彼女には最初から"孤独"を感じていた。
ただ、今とは違う自分、退屈でない世界を求めるのではなく、
もっと切実にオセロを求める理由が、もしかしたらモナにはあったのかなあ、と思う。
オセロに疑われ、責められたあとの、哀しいくらい自省する頼りなさは、
咲き誇る前に手折られてしまう花のような印象を受けました。


伊東郷(イアゴー)役は田中哲史さん。
野田地図の舞台でしか観たことがなかったのですが・・・すごいかっこよかったですv
洋さんのイアゴーとはもちろん全然違っていて、
もっとずっと嫉妬や野心があからさまでで生々しい印象だったし、
ときめくというよりははらはらして見ていた、という感じなんですが・・・
基本的に私、こういう抑圧された人が好きなんだろうなあ、と思う。
オセロがヒートアップしていくのとは裏腹に、常に冷静なのにどこか浮き足立っているような不安定さが好きでした。
最後の最後、オセロが自殺する瞬間の表情を見たかったんだけど、
(洋さんのイアゴーは、この表情にとにかく気持ちを持っていかれたので)
ついついじゅんさんに目が行ってしまって、見損ねました(涙)。
やはり1回の観劇では全てを見ることは無理ですねー。


汐見(キャシオー)役は伊礼彼方さん。
浦井くんに引き続き、ミュージカル界からの登場です!
いやー、凄かった! というかもの凄く頑張ってた!!
冠くんがいない分、歌とシャウト(笑)をしっかり担っていましたv
やっぱり歌がお上手ですねー。
でもって、ちゃんと体当たりで笑いもとってらっしゃいましたv
帝大出のインテリで、おしゃれで顔も良くて、人当たりも良くて、口も上手くて、歌も上手くて、
でもちょっと頼りないところがまた魅力vというような役柄かなあ。
こう書いてみると、モナの浮気相手としてオセロが疑いたくなっちゃう要素だらけかも。
モナも無邪気に帝大出だから相談した、とか言っちゃったしなあ・・・
ある意味最大の被害者かもですね。


だがしかし!
私が一番かっこいい!と思ったのは、そんな負の魅力の伊東でもなく、キラキラした汐見でもなく、
銛を持った紋田さんだったり(笑)。
もともと河野さんの声とか動きとかかなり好みだったのですが、
紋田さんは思いっきりストライクでしたv(笑)
仕方のないこととはいえ、出番が少ないのが残念でした。


原作と一番違っていたのは、イアゴーの妻エミリアのパートが、
伊東の妻・絵美とその弟・准に分けられていたことでしょうか。

准役の大東俊介さんは、たぶん初めて拝見するのですが、
姉の夫に恋するゲイの青年を、可愛らしくも切なく演じてらっしゃいました。
いや、彼の歌う「柳の歌」がすごい良かったのね。
どろどろした感情の上澄み、という感じ。
ちょっとでも表面が揺らぐと、そのどろどろしたものが一気に濁らせてしまう・・・そんなぎりぎりさ。
「もしも愛する人が世界を手に入れられるなら・・・」という一連の台詞も、
心から愛する人には愛されないことを知っている諦めとか、
愛することを否定されて生きてきた怒りとか、
それでも愛し求めずにはいられない哀しさとか、いろんなものを内包していて、
准ちゃんが明るく笑顔であるだけ余計に涙を誘われました。
自分の渡した岩塩(原作のハンカチね)が、モナを破滅に導いたことを知ったときの、
あの悲痛な叫びも、聞いていてほんとに辛かったなあ・・・

そんなふうにある意味エミリアの見せ場の殆どが准ちゃんのパートになってしまったので、
松本まりかさん演じる絵美には派手な見せ場はあまりなかったのですが、
モナを見つめる視線とか、オセロを信じきるモナに堪らずもれる溜息とか、
舞台の端で涙をぬぐう仕草とか、頬杖をついて遠くを見つめる瞳とか、
大きく動いている舞台の上で、ふっと流れが止まるような存在感があって、
その細やかな演技が素敵だなあ、と思いました。


物語の最後、舞台は暗い赤に沈みました。
それは流された血の色であり、沈んでいく太陽の最後の光でもある。
"黒い太陽"として慕われたオセロが、最後に流した真っ赤な血。
彼の黒い肌も、彼女の白い肌も、黒く染まった心も、白を保った心も、
全てを塗りつぶすかのように染める、命の色。
でもその赤は、なんだか泣きたいくらい綺麗に澄んでいました。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは〜^^
私も娘を預けて^^; 見てきましたよん〜(*´∀`*)

オセロという悲劇を、どうやって新感線流にアレンジするのかなーと
思っていました。そもそも本物はまだ見てないので(^^;
どうなのかなーと思ってたんですが、行って良かったです。

石原さん綺麗でしたね〜見ほれました♪
じゅんさんのフルパワーぶりに押され気味の所もありましたが
それはそれで可愛かったですし。

大東くんは私も初見だったんですが
ほんもののそっちの人かと思いました(笑)
それぐらい迫真の演技で、これから要チェックだなあと。

あと目当てのまりかちゃんが、可愛くて可愛くて。
座席が観客席の方に降りて消える時の出口近くだったので
目の前通る度にきゃーきゃー思ってました(笑)
演技も更に磨かれてて、お姉さんは嬉しかった(*´∀`*)〜
関西弁も上手にしゃべってて、多分関東の人は
本物の関西人かと思ったんじゃないかなと思いました。

本当に心に残る舞台だったと思います。
悲劇なのに、心が濁らないというか。
これだから新感線はやめられないです。
宮内
2011/05/16 13:34
宮内さん、こんばんは!
宮内さんも、観劇されたんですね。
新感線テイストはしっかり、シェイクスピアもしっかり、の、
見ごたえのある舞台でしたねv

宮内さんお薦めの松本まりかさん、とっても素敵でしたねv
派手な見せ場はなかったけれど、
絵美がいることで、悲劇性が引き立ったように思います。
たぶん派意見するのは初めてなのですが、
また是非お芝居を見てみたいなあ、と思いましたv

石原さんのモナも素敵でしたし、
大東くんの准ちゃんもほんとに迫真でした!
「オセロー」は男性陣の物語がどうしても中心になりますが、
女性陣が魅力的でないと、お話として成り立たないなあ、と、
蜷川さんの「オセロー」を観たときにも思いましたが、
今回も同じような感想を持ちました。

新感線、今度は「髑髏城の七人」ですね!
めちゃくちゃ豪華キャストなので、チケットとれるか不安ですが、
見にいけるといいなあ、と思っています。
宮内さんも是非!
子育てにも息抜きは必要ですv(笑)
恭穂
2011/05/18 21:09
恭穂さま
「オセロー」といえば鋼太郎さんと高橋洋さんを思い出しますが、
この作品もまごうことなき「オセロー」でしたね。

大東俊介くんの准が、原作にないキャラクターということで
とても印象に残りましたが、こうして恭穂さんのレポを
読ませていただくと、どの役もどの役者さんもすごくハマって
いたなぁ、と改めて思います。
それにつけても、まずは、じゅんさん復活おめでとう!ですね(笑)。

そうそう、オセロが自殺する瞬間の伊東郷の表情、私も見逃しました。
やっぱり初見だとじゅんさんの方に目が行っちゃいますよね。
次に東京で観る時には・・と思っていたのですが、結局それもできなくて
ザンネン。どなたがご覧になった方いらっしゃらないかしら(笑)。
スキップ
2011/05/21 13:12
スキップさん、こんばんは!
はい。私の中では特に「オセロー」=吉田さんと洋さんだったんですが、
この作品もとても楽しむことができました。
じゅんさんの復活、本当に喜ばしいですねv
やっぱりフック船長も観にいくべきかと、ちょっと悩み中です(笑)。

最後の伊東の表情、気になりますよねー。
私が観た日はカメラが入っていたので(凄いたくさん!!)、
きっとゲキ×シネかDVDになりますよね。
そのときにこの表情が写ってるといいなあ、と思います。
恭穂
2011/05/21 22:03

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