瓔珞の音

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zoom RSS それぞれの花の色

<<   作成日時 : 2011/06/13 22:06   >>

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学生の頃から世界史日本史共に、近代史が大の苦手だった私。
いわゆる幕末から明治、大正、昭和にいたる流れは、その中でも特に苦手でした。
それは、めまぐるしく変わっていく価値観や、
蜘蛛の糸のように絡み合う生々しい思惑、
そして、常に在る戦の影を感じていたからかもしれません。
そんな私ですが、最近幕末から明治初期を舞台とした物語に出会う機会が何回かありました。

松井今朝子さんの「幕末あどれさん」から「銀座開化おもかげ草紙」。
北森鴻さんの「なぜ絵版師に頼まなかったのか」。
井上×蜷川の舞台「たいこどんどん」。
そして、このミュージカル「風を結んで」。

どの物語も、歴史を動かす人たちではなく、
否応なく動いていく歴史の流れの中で、立ち止まり、立ち尽くし、恐れ、慄き、戸惑い、
けれど、自らの手で自らの行く末を選び取っていく人たちの物語でした。



ミュージカル「風を結んで」

2011.6.5 ソワレ シアタークリエ 1列20番台

演出・振付:謝珠栄
出演:中川晃教、藤岡正明、小西遼生、菊地美香、照井裕隆、小原和彦、俵和也、加藤貴彦、山崎銀之丞、
    大澄賢也、大和悠河


物語の舞台は明治9年の東京(だと思う)。
めまぐるしく変わっていく時代の中で、武士であることを否定された若き武士たち。
そんな彼らを描いた物語でした。

正直なことを言ってしまうと、謝先生が創り出す真っ直ぐで強いメッセージを、
この観劇では私は受け止め切れなかったように思います。
変わっていく時代のように、大きなふり幅で語られる彼らの想い。

生き抜くために、自分の生きる場所を見つけるために、変わることを受け入れた平吾(中川晃教)。
武士であることこそが自分の存在意義であることを、最後まで貫いた右近(大澄賢也)。
アメリカと日本の違いを強く感じとり、自分だけの方法で時代の波に乗ろうとする由紀子(大和悠河)。
強い輝きを放つ由紀子の前で、良き婦女であることに誇りをもち、たおやかに凛と立つ静江(菊地美香)。
散っていった命の儚さと重さを背負いながら、今を生き抜こうとする若者たちを見守る捨吉(山崎銀之丞)―――

そのどれもが鮮やかで、
そのどれもが真剣で、
けれど、そこには、一つだけの正しい答えはない。
時代の波にもまれる彼らと同じように、この物語を観ながら、私の思いも揺れ動いたように思います。


というか、最前列、という席もちょっとまずかったかなあ、と(笑)。
いや、役者さんの表情は良く見えるし、生声は聞こえるし、足元に竹槍は落ちてくるし(え)、
非常に美味しい席ではあったのですが、
その分、全体を観るというよりも、目の前の役者さんを観る、という感じになってしまったのかなあ、と。
うーん、理想的には初回はちょっと後ろの席で観たかったかもです・・・って贅沢ですね(笑)。


とりあえず、そんなこんなで一番印象に残ったのが、
実は一番のお目当てのアッキー平吾ではなくて、藤岡くんだったりします(笑)。
初っ端の白い衣裳の群舞のシーンで、全員が正座をして深く頭を下げるシーンがあるんですが、
藤岡くんが思いっきり真正面でした。
客席を見ているわけではないのはわかっているのですが、
藤岡くんはじめみなさんの真剣で思いつめた表情に、思わず居住まいを正してしまいました(笑)。
で、その後も、三ばかトリオの位置的に上手は田島さんのポジションだったしねー。
もちろん、そういう位置的なことなしでも、藤岡くんの演じる田島さんは、とても印象的でした。
お調子者だけど情に厚い田島さんを、違和感無く演じてらっしゃいました。
たしかアンパレの時に、これからもっとどんどんダンスが上手くなる、と書いたと思うのですが、
ほんとにまたまた動きがシャープにクリアに雄弁になっていました!
台詞と歌と動きがきちんと一つの方向性を表現していて、
ミュージカル俳優・藤岡正明の魅力を見せてもらったような気がします。

歌も相変わらず素晴らしかったです!
というか、アッキーと小西くんと、三人の歌声が、とてもいいバランスだったのだと思う。
全員で歌うときでも、三人で歌うときでも、アッキーと藤岡くんの声は際立って聞こえる。
それは、もう"そういう声"なんだと思う。
この二人の歌声の相性の良さは、アンパレでも経験済みで、
それはたぶん、色合いの違う歌声が交わることなく併走することで、
一人一人で歌うときとは別の高みに到達する、という感じ。
でも、その二人の声に小西くんの声が加わると、なんだかとてもまろやかになるような気がしたんです。
個人的には、マリウスでの急成長ぶりが記憶に新しい小西くんの、
もっと感情を爆発させるような歌声も聴きたかったのですが、
たぶん、役柄的、(三人の中での)ポジション的にも、今回の小西くんに求められたのは、
そういう媒体のような役割だったんだろうなあ、と思う。

気弱なようで、自分の意思を絶対に曲げない強さを持つ平吾と、
大きな事を言っていつも周りを振り回しながら、でも何故か憎めない魅力を持つ田島さんの間で、
常に穏やかに、けれど思慮深い表情で二人を、周りを見つめる小西くんの弥助。
最後に彼が選んだ道は、だから、決して家や周囲に流されたのではなく、彼自身が決めたものだ。
そう、素直に感じることができました。


そういう意味で、実は一番理解しがたかったのが、アッキー演じる平吾だったりします。
いえ、彼が言っていることは、終始一貫しているし、凄くクリア。

生きていること、生き抜くこと。
変わっていく世界の中で、自分の居場所を探し出し、作り出すこと。
一番大切なものを守るためには、自分自身が変わっていくことを決して畏れない強さ。

アッキーの真摯で、風に乗る、というよりも、自ら風を起こしていくような力に溢れる歌声はやっぱり凄くて。
大切なものを見極め、それを守ろうとする彼の強さはやっぱりとても輝いていて―――
その爽やかな強さが、けれど最後、私にはとても痛いものになってしまいました。
それは、たぶん、彼の最後の選択が、私にはどうにも納得がいかなかったからだと思う。
新聞記者として、そして志願兵として戦地に旅立っていく田島さんと弥助。
彼らのその選択に納得がいかない平吾は、新妻を残し、彼ら二人を連れ戻すために西へ向かおうとします。
それがね、私にはどうして?と感じてしまったの。
田島さんも弥助も、行き当たりばったり、周囲に流されて西へいくことを選んだわけじゃない。
彼らなりの信念を持っていたはず。
そして、それは命を投げ出しにいくのではなく、彼らにとって生き抜く方法だったのだと思う。
なのに、どうして平吾はそれを受け入れられないんだろう?
どうして、自分の信念に、自分の生き方に彼ら二人を引き寄せようとするんだろう・・・?
そんなふうに感じてしまったんですね。
そして、そんな平吾が、凄く頑なに見えてしまったの。

生きて生きて生き抜くこと。
戦うことではなく、変わらないことではなく、変化を受け入れることで、一番大切なものを守ること。

その平吾の想いは素晴らしいと思う。
そして、戦争をすることが、命を粗末にすることを、私は肯定するつもりは微塵もない。
けれど―――その上で、友の選んだ道を受け入れ、彼らの生き抜こうとする想いを信じることが、
どうして平吾にはできなかったのかな、と思えてしまいました。

まあ、これは私の勝手な解釈で、実際の謝先生のメッセージは全然違うのかもしれません。
私自身、革新というよりは保守的だと思っているし。
それに、西で平吾が再会した二人に、平吾が逆に諭されて帰ってくるのかもしれないし(笑)。
うん、そんな未来もいいかな。


最後まで武士で在りつづける事を選んだ右近役は大澄賢也さん。
「ウェディング・シンガー」とは全く違った静かで大人な魅力に溢れておりましたv
頑ななまでに武士であることを望んだ右近は、平吾とは対角の存在で。
でも、彼は、決して譲れない一番大切な何かを、自分自身の命と同等の何かを、そうやって守ったんだな、と思う。
それはある意味とても愚かなことなのかもしれないけれど。
でも、そういう矜持を持つ人たちが創ってきた歴史もあるんじゃないかと思う。
2幕の右近の見せ場は、開幕直後だったせいか、ちょっとぎこちない感じがありましたが、
次に観にいくときは、きっと溜息が出るほど滑らかになっているんだろうなあv(笑)

でもって、大澄さん、やはりダンスが素晴らしい!
武士たちのパフォーマンスもめちゃくちゃかっこよかったけれど、
紅い獅子の踊りは、すっと引き込まれるような不思議な存在感がありました。
「AKURO」の鹿の精霊や、「タン・ビエットの唄」の白い女と黒い男と、たぶん同じ立ち位置の獅子。
戦いの化身であり、終わりを迎える時代の象徴でもあり・・・
獅子の赤と、白虎隊の舞い落ちる雪のように白い衣裳の対比が、とてもとても美しかったです。

元武士+ダンスパートを担っていた4人の方たちも、本当にかっこよかったですv
ダンスシーンではどれがどの方なのかまではわかりませんでしたが、
4人の元武士は、それぞれ個性的でいいなあvと思いました。
個人的にはやはり影のある栗山さん(俵和也さん)が好きですv
いやもう最初に出てきたときから、この人絶対何か過去にあった!!って思っちゃったもの(笑)。
彼もねー、仲間の呪縛を振り切ることができれば、別の人生があったのかなあ・・・
でも、振り切ってしまったら、きっと栗山さんは生きてはいけないのかもしれない。
3月の震災のあと、サバイバーズ・ギルトという言葉をよく見かけるけれど、
まさにそういう部分もあるんだろうな、と思います。


大人の魅力、といったら、やっぱり山崎さんの捨吉は別格でした!!
席の関係で、若者3人を見つめる捨吉の横顔を間近で見つめることができたんですが、
あの深い表情は素晴らしいなあ、と思ってしまいました。
歌声はどちらかというと台詞に近い感じで、歌い上げるタイプではありませんでしたが、
その分、ずん、と心に響いてくるように思いました。


女性陣お二人は、対照的な魅力に溢れていましたv
由紀子役の大和さん。
「偽伝写楽」の時の不可思議な雰囲気とは全く違う、内側から輝きが溢れるような存在感でした!
まあ、ある意味ちょっと不思議ちゃんでしたが(笑)。
でも、かなりデフォルメされているけれど、あの時代、実際にああいう文化の狭間で活躍する人もいたのでしょうね。
真っ白な肌に紅い口紅が映えて、派手な衣裳が全然違和感なし!
1幕登場シーンのレビューみたいなソロ、若者3人と一緒に、ちょっと口をあけて見上げちゃいました(笑)。
表情の一つ一つが美しかったです。眉間のしわまで美しいって、ちょっと凄いよね?!
で、そんな輝くような存在感の由紀子とは対照的に、
控えめで、でも凛とした強さを感じさせてくれたのが、菊地美香ちゃんの静江。
右近の妹で、家を守るために苦界に売られそうになり、でもそれをきちんと自分の役割として受け止めている。
それは、確かに受身であるかもしれないけれど、
でも、そうやって受け入れる強さって、最終的には一番強いんじゃないかな、って思う。
最後の平吾とのシーンでも、静江、強い!って思ったもの。
女性二人が目指す花の色は全く違うけれど、
花としての美しさも、かぐわしさも、どちらも決して引けをとらない。
そのことが、一人の女性として、なんだかとっても嬉しかったですv


なんだかちょっと辛口になっちゃいましたが、
それは多分、私がまだこの物語にきちんと向き合えていないからだと思います。
舞台そのものは、重い、答えの出ないテーマを扱いながら、
とても素直な全開の笑顔に溢れていて、とっても癒されて、とっても元気をもらいました。
三人の掛け合いはもちろんですが、
一座に入った元武士の方たちの存在も、笑顔の理由だったかな、と思います。
アッキーのあまりの若々しさにもびっくり!だったし(笑)。
「OUR HOUSE」を思い出しちゃったv

私の観劇は、あと1回。
そのとき、この物語は、私にどんな印象を与えてくれるのだろう。
それが、今からとても楽しみですv


そういえばこの日の観劇、いろいろなものが落ちてました(笑)。
まず、3人の飲み会(?)のシーンで田島さんの丼が落ち(思わず手が出そうになりました・・・)、
次いで、平吾が捨吉さんにもらった二百円の包みを振り向き様すっ飛ばし、
(角度的にしっかり飛んだ瞬間が目に入っちゃいました・・・
 みなさん一瞬素でさがしてましたよね?
 でもって、田島さんが「なくすなよ!(落とすなよ!だったかも)」としっかりつっこんでました/笑)、
極めつけ、右近さんの見せ場で、飛び交う竹槍が一本足元に転げ落ちてきました・・・
「ガラスの仮面」や「AKURO」の初演(だったかな?)の時も思ったけど、
こういうふうに足元とかに大事(そう)な小道具が落ちてきちゃったときは、
やっぱりひろってあげるべきなんでしょうか?(汗)
まあ、そんな機会もそうそうないですけどね。

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