瓔珞の音

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zoom RSS 天地人、そして花

<<   作成日時 : 2011/10/06 22:44   >>

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昨日の冷たい雨が嘘のように青い空の美しかった今日。
でも、吹く風はやはり冷たくて。
その風に揺れるベランダの朝顔も、なんだか所在無げな頼りなさがありました。
けれど、天空の青を名前に持つその朝顔の色は、今も全然色褪せなくて―――
空を渡る風に揺れる青い花が、なんだかとても健気に思えてしまいました。


そして、この物語の中で、天の周りに集った人と地と花。

人は天を目指し、
地は天を支え、
花は天に身を任せ寄り添った―――

天を喪ったその後も、天に寄り添うことを望み続けた白い花は、その無残な最期すら鮮やかでした。



劇団☆新感線2011夏興行・いのうえ歌舞伎
「髑髏城の七人」

2011.9.8 マチネ 青山劇場 1階P列10番台
2011.9.28 マチネ 青山劇場 2階B列30番台

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:小栗旬、森山未來、早乙女太一、小池栄子、勝地涼、仲里依紗、高田聖子、粟根まこと、
    河野まさと、千葉哲也 他


本能寺の変から八年。
豊臣秀吉は、天下統一を目指し関東へ向けて兵を動かしていました。
目指すは、関東の荒れ野に築かれた漆黒の城―――髑髏城。
漆黒の鎧と仮面に身を包んだ天魔王(森山未來)率いる関東髑髏党は、
その異形の強さを武器に、関東に住む人々を蹂躙し続けていました。
そんな髑髏党の脅威に立ち向かう、関東荒武者隊を率いる抜かずの兵庫(勝地涼)。
仲間の三五(河野まさと)の裏切りにより窮地に陥った彼らを救ったのは、
着流しに長い鉄煙管を持った男、捨之介(小栗旬)。
戦で焼け出された娘たちの居場所を得るため、彼らは関東一の色里、無界の里へ向かいます。
無界屋蘭兵衛(早乙女太一)を主人にいただき、
極楽太夫(小池栄子)を筆頭に強くしたたかな女たちが集う無界の里。
それは、戦乱の世の中で拠り所を奪われ惑い続ける者たちが築き上げた、最後の砦でもありました。
しかし、その無界の里にも、天魔王の魔の手が伸びます。
彼の目的は、かつて共に一つの天に仕えた者たち―――
織田信長の側近として仕えていた人の男―――天魔王は、
野に放たれ諜報の任を負っていた地の男―――捨之介と、
小姓として信長に寄り添った森蘭丸―――蘭兵衛、
その二人を手にすることで、自らが"天"になろうとしていたのです。

全てのしがらみを捨てようとして、それでも捨てきれない情に揺れながら、
天魔王を止めるのは自分であると覚悟を決める捨之介。
無界の里を守るために、その身一つで髑髏城へと赴く蘭兵衛。
大きな秘密を抱えながら、無界の里に身を隠す沙霧(仲里依紗)。
蘭兵衛と共に創り上げた生きる場所を守るため、もう一度その手に鉄砲を取る極楽太夫。
真っ直ぐに前を向き、守るべきものを決して見失わない兵庫。
黒い城の奥深く、血と夢見酒に酔いながら、彼らを翻弄する天魔王。

それぞれに"何か"を喪った者たちが、その命を賭けて刃を交えるとき、
開かれるのは更なる戦乱の世への扉なのか。
それとも、新しい未来への扉なのか―――


恭穂的意訳だと、こんなような物語・・・なんだけど、全然焦点がぼやけてるかなあ?
これまでの上演では天魔王と捨之介はどちらも信長の影武者で、一人二役。
今回、天魔王と捨之介を別の役者さんが演じることで、
物語の構造自体が大きく変わっていたようです。
私自身は、これまでの髑髏城はDVDで見ただけで、正直それほど思い入れがあったわけではなかったので、
今回の髑髏城も、あまり違和感無く楽しむことができました。
通称が「ワカドクロ」、というのが納得な感じの舞台。
若さの強さや勢いだけでなく、焦燥感や頑なさや寄る辺なさも感じられたかな。
ただ、これは好みの問題なのだと思いますが、
「吉原御免状」や「SHIROH」、「朧の森に棲む鬼」などに比べると、
自分の中に深く残るものが余りなかったのが正直なところだったりします。
もちろん、観ているときは凄く楽しめたし、舞のような殺陣の美しさにうっとりしたり、
それぞれのキャストの見せ場にワクワクしたり、すれ違う想いに涙したりもしたのですが、
なんとなくそれで終わっちゃった感じ。
すごくさらっとしていたというか、軽いというか、ある意味爽やかというか・・・?


そんな中、その濃さが非常に印象深かったのが、やっぱり森山くんの天魔王。
ちょっとイっちゃった感じの、真意をうかがい知ることのできない台詞回しに翻弄され、
まったく気負いの感じられない、なのに鋭い殺陣の見事さに目を奪われました。
2幕冒頭の「敦盛」を謡いながらの殺陣には、ほんとやられた!!
鶴瓶さんは森山くんの映画だけでなく舞台も観るといいよ!と心底思いました(笑)。
いろんなところで「天魔王はちっちゃい男だ」というのを読みましたが、
個人的には、あまり小さくは感じなかったかなあ。
確かにいろいろ姑息な策を弄するのですが、それってある意味当然というか妥当というか・・・
自分が死ねば全て円く収まると思っちゃう捨之介よりは、
よっぽど現実を見ているような気がしました。
最後、捨之介に額を刺されるシーンの台詞でちょっと客席からは笑いが起きていましたが、
私としては、あの瞬間まで天魔王というキャラを演じきった人の男に拍手を送りたいかも!

あと、天魔王が出てくるとき、舞台奥からの光のなか逆光になっていることが何度かあったのですが、
2階席から観ていたら、その影が客席の壁に映し出されていて、ちょっと鳥肌たっちゃいました。
というか、今回も原田さんの照明、めちゃくちゃ素敵でした!!
これまでも何度も叫びましたが、もう本当に大好きです!!!
そもそも舞台が始まる前から、照明の魔術に絡めとられてたんですよねー。
開演前、舞台の中央に突き刺さった刀に小さなピンスポットが当たっているのも絵のように美しかったのですが、
客先の再度の壁にも丸い白い照明があたっていて、まるで向かい合わせの月のようでした。
この二つの月は、なんの象徴なのだろう? 捨之介と天魔王? 信長と天魔王? 信長と蘭兵衛?って、
その時点で舞台に気持ちが持っていかれた感じです。
舞台上に描かれる文様も相変わらずとても綺麗でした。
模様のパターンとしては決して多くはないと思うのですが、
焦点の当て方とか重なり方とかで、いろいろな情景を浮かび上がらせていたように思います。
あと、冒頭で無界の里に向かう荒武者隊がたどる白い光の道も良かったなあ・・・
無邪気にじゃれあいながら進む彼らを導くその道の先にあるのがあの最期なのだと思ったら、
2回目に観たとき、それだけでちょっと泣けてきてしまったのでした。


早乙女くんの蘭兵衛は、殺陣の美しさも素晴らしかったですが、
個人的にはあの声にちょっとよろめきました。
「蛮幽鬼」の時もいい声してるなあ、って思っていたのですが、
今回も僅かに苦さの混じった甘い声が素敵でした。
音楽との関係で、ちょっと聞き取りにくいところがあったのが残念。
1幕最後の、仕込み笛(?)で戦いながらの台詞は、彼の蘭兵衛だからこその色気があったように思います。
個人的には、蘭丸に戻った後の、まるで夢の中を彷徨っているようなゆらゆらした動きと、
それでも鮮やかな殺陣に魅了されました。
でもって、人の命を奪う瞬間ですら、首にかけた数珠を弄る手の切なさはちょっと犯罪級!と思ったり(笑)。

信長を喪った後、この地にたどり着くまでの間、
彼はどれだけの後悔と、喪失感と、寂寥に苛まれてきたのだろう。
いや、たぶんその想いは、無界の里というつかの間の安住の地を得てさえも、満たされはしなかったはず。
彼の中に穿たれた、深い深い喪失の虚。
彼が目を背けたその暗闇に、力ずくで押し入った天魔王。
彼が信長に置き換わることは・・・人が天になることは決してないことを一番知っていたのは、たぶん蘭兵衛で。
それでも彼が天魔王についたのは、彼を天として戴いたからではなくて、
たとえフェイクでも、今の自分に許された死に場所はそこでしかない、と思ったからなのかなあ。
信長を忘れ、蘭兵衛として生きることは、彼にとって幸せよりも痛みを与えるものでしかなかったのかもしれない・・・
彼の最期を見て、なんだかそんな風に感じてしまいました。


小栗くんの捨之介は、飄々としたふうを装いながらも、押し隠しきれない熱さがありました。
私には、それがなんだか"怒り"に感じられました。
天魔王や蘭兵衛への怒りではなくて、自分に向けられた怒り。
信長を守りきれなかった自分。
クマキ衆を破滅へ導いた自分。
人の男の真意を推し量りきれなかった自分。
蘭兵衛の虚を見誤った自分。
それは、全て決して彼の責任ではないけれど、でもそう感じてしまう捨之介なんだろうなあ、って。
それが、私にはいい意味でとても発展途上な青さに見えて、
決して"ヒーロー"にはなれない捨之介もいいなあ、と思ってしまいました。
殺陣も、なんというかとても誠実な印象。
他を圧する強さ、というよりは、その一瞬一瞬、自分の全てで相手に対峙する誠実さ、というか。
天魔王との最後の戦いのシーンも、彼を止めるために自分の全てを賭けた、という印象を受けました。
百人斬りも、鮮やかというよりは一歩一歩という感じ。
ぎこちないというのではなく、なんだか不思議な余裕があったように思います。
でも、やっぱりあの着流しの雰囲気そのままに、さらっとした捨之介だったかなあ。
この舞台に私が感じたものは、この捨之介ならではだったのかもしれません。


勝地くんの兵庫、めちゃくちゃ良かったです!!
わりと大人しめというか渋いトーンの舞台の中で、
天魔王のエキセントリックさとは正反対の素直で陽性の存在感が素敵でした。
すごくみんなに愛されている兵庫だなあって(笑)。
荒武者隊とのやり取りも楽しそうだったし、
礒野慎吾さん演じる兄さとのタッグも最強だったし、
百人斬りの時の楽しそうな様子も印象的。
でも、一番心惹かれたのは、あの懐の深さかなあ。
極楽太夫が誰に対する想いを胸に秘めているのか、たぶん彼はわかっていた。
わかっていて、それでも、その想いごと彼女を受け止めようとしていた。
そのことが、台詞ではなく視線の動きや表情、仕草で十分に伝わってきました。


小池さんの極楽太夫もかっこよかったです!
史上最強の極楽太夫ってあったけど、まさにその通り。
全てに対して体当たりな太夫でした。
彼女が蘭兵衛に向ける思いも切なかったなあ。
想う相手が仇となり、復讐は想う相手を喪うことになる。
でも、彼女が蘭兵衛を撃ったのは、復讐の想いだけじゃなかったんじゃないかな、って想う。
蘭兵衛に、自分では決して埋めることのできない虚があることを彼女は知っていた。
彼が死を望んでいることも―――
事切れた蘭兵衛を殴りながら「ばか!」と叫ぶ声の複雑な思いに、ちょっと胸が痛くなりました。
ので、その後捨之介に言う、「ここまで迎えに来た沙霧の気持ちを汲んであげな」(だったかな?)という台詞、
彼女も、ある意味蘭兵衛を迎えに行ったんだと思ったら、かなり切なくなりました。


高田聖子さんの贋鉄斎、みんなのお母ちゃん、という感じの暖かさがありましたv
登場シーンは、まさに高田さんの独壇場!
捨之介、圧倒されてちょっと素に戻ってたかも(笑)。
鳩の動きも可愛かったですv
最初に配役を観たとき、高田さんが百人斬り?!って驚いたのですが、さすがに違ってましたね。
でも、なんというか若者に大切なものを伝えていく、という形がとても素敵だな、と思いました。
いや、もちろん役もご本人も女盛りの魅力満載ですが(笑)。


沙霧役、仲里依紗ちゃん。
TVでも見た記憶がないので、演技をみるのは始めてかな・・・
ハスキーな声の子ですねー。
ちょっとかすれてるのに通りのいい不思議な声。
捨之介との身長差がちょっとツボでした(笑)。


個人的に今回とてもお気に入りだったのが、河野さんの三五。
あのぴたっと来て欲しいところに決めてくるのは、やっぱり劇団員さんならではですねー。
前半のマイルールに忠実な三五も素敵でしたが、
髑髏城に突入してからのかっこよさにやられました(笑)。
最初から最後まで、ぴしっと芯が通っているところが好きです。
プログラムの写真もかっこよかったしねーv
そういえば、今回のプログラム、相変わらずとても麗しい写真ばかりでしたが、
早乙女くんのページで、写真の1枚を彼の後姿に決めた方に拍手!
あの胸鎖乳突筋の美しさは必見ですv(え)


劇団員さんはみなさんさすがの存在感でしたが、
今回村木さんのおよしの可愛らしさが印象にのこりました。
一幕で、銃を持って戦った後、二郎衛門の姿が目に入った途端、ささっと身支度をする仕草が可愛くてv
恋する女性の強さと滑稽さと可愛らしさを、全てきちんと見せてくれたように思います。


そんなこんなで、非常に楽しんだ割には、ちょっと物足りなさの残った今回の公演。
好みの問題でもあるのかもしれませんが、
このキャストなら、もっと深い人間模様を見せてもらえるのでは、という期待の裏返しなのかもしれません。
というか、信長を喪った三人の関係性が、実はかなり好みだったんですよ。
7年ごとに再演されているという「髑髏城の七人」。
もしサイクルどおり7年後に再演されるのであれば、
この3人は続投だと嬉しいなあ、なんて思います。
今回とはまた違った3人の関係の魅力が見えてくるんじゃないかなあ、と思うので。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
恭穂さま
相変わらず感性豊かで細やかで、役者さんへの愛に
あふれている恭穂さんのレポ、とても楽しく興味深く
読ませていただきました。
私は「髑髏城」にはかなり思い入れがあって、やっぱり
白紙の目や心では観られてなかったなぁ、と恭穂さんの
ご感想を読んで思いました。

だけど未來くん筆頭に、若い髑髏城のメンバーたち、
ほんとに頑張っていましたね。
7年後にまた再演があるとすれば、一段と成長した彼ら
の姿に会えるとうれしいです。
フルタさんはもう「キツイ」らしいですから(笑)。
でもただ一つ望みが叶うなら、やはり捨之介と天魔王は
一人二役で、と中島さん、いのうえさんに切にお願い
したいと思います。
スキップ
2011/11/06 22:51
スキップさん、こんばんは!
楽しんでいただけたなら何よりですv
でも、スキップさんの愛の深さには、及びませんって!
白状しますと、気持ちがまだR&Jモードだったので、
余計に一歩引いた位置から見ることが出来たのかもしれません。

森山くんの天魔王、ほんとに大好きでした!
というか、蘭兵衛と捨之介の3人の距離感の微妙さが、
個人的に好みだったのだと思います。
物語的には一人二役の方がしっくりしますし・・・
7年後、どんな髑髏城が観れるのか、
今から楽しみにしていようと思いますv
恭穂
2011/11/08 22:27

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