瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2011/11/17 23:27   >>

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エディット・ピアフ―――

有名なその名前は、知っていました。
マルセル・セルダンと、「愛の賛歌」の逸話も何かで読んだことがありました。
けれど、この余りにも有名なシャンソン歌手の歌声を、私は意識して聴いたことがありません。
だから、私は本当にまっさらな状態で、この舞台に対峙しました。
そして、そこに描かれていたのは、一人の女の壮絶なまでの生き様でした。



「ピアフ」

2011.11.6 マチネ シアタークリエ 9列一桁台

作:パム・ジェムス
演出:栗山民也
出演:大竹しのぶ、田代万里生、薄井将大、KENTARO、山口馬木也、梅沢昌代、彩輝なお、高橋和也、
    山路和弘、辻萬長、吉田理恵


パリの裏路地で歌いながら生計を立てていたエディット。
彼女がナイトクラブのオーナーに見出されたところから、晩年までを描いたこのお芝居。

歌手としての成功。
様々な男性と交した愛。
不倫。
理不尽な別れ。
絶望。
そして薬物への依存―――

ここに描かれたエディット・ピアフの辿った人生は、私にとって決して共感できるものではありませんでした。
正直に言ってしまえば、その自暴自棄で自堕落な(と私には見えた)生き方には、嫌悪すら覚えた。
いや、もし単なる映像や文章で読んだのならば、たぶん嫌悪したと思います。
なのに、大竹しのぶさんが私の前に見せ付けた"生身"のピアフの生き様は、彼女が歌う歌は、
そんな私の甘っちょろい嫌悪感など吹き飛ばしてしまうくらいの力がありました。
いや。
"力"というとちょっと違うかもしれません。
不安定で、痛々しくて、見ているのが辛いのに、
なぜ彼女はこうなんだろう、という疑問も胸にいっぱい沸いてくるのに、どうしても目を離すことができなかった。
歌に。
愛に。
生きることに。
自分の欲しいもの、自分に必要なものを、全く妥協せず、自分を偽らず、
常に自分の全てを掛けて求め続ける、凄まじいまでの貪欲さ―――
その姿は、嫌悪と同時に見る人を、その歌を聴く人を、惹きつけてやまない光がありました。

ピアフ=小さな雀と名づけられた、小柄な身体から発せられる大きな声。
自分の全てを赤裸々に手渡してくる歌声。
大竹しのぶさんの歌声は、綺麗、と表現するには余りにも生々しい印象があります。
けれど、その生々しさがあったからこそ、舞台の上のピアフの虚構の生き様を、
これほどまでにクリアに、体温さえ感じさせるような存在感で表現しえたのではないでしょうか。

昔なじみとかわす蓮っ葉な物言い。
親しい友人に見せる正直すぎる笑顔。
高温の炎のようにむしろ静謐ささえ感じさせる愛情。
その愛を奪われたときの身も世もない嘆き。
スカーフで腕を駆血するときの追い詰められたような表情。
ぼろぼろになって、それでもステージに立とうとするときのギラギラと光る瞳。

全てが、私にとっては"リアルなピアフ"像としてインプットされた感じです。
もちろん、実際のピアフと戯曲に描かれたピアフでは違う部分も多いでしょう。
けれど、大竹しのぶという一人の女優がこの舞台の上に顕現させたこの女性は、
虚構でありながら、真実であった。
そして、その生き様は、全てのマイナス要素を含めてもなお、喝采に値するものであった―――
終幕に歌われた♪愛の賛歌 と♪水に流して を聞きながら、そんな風に思いました。
そして、その想いのまま、久々に自発的にスタオベしてしまいました。
感動して涙する、というよりは、ピアフの生き様に圧倒された感じ。
でも、このお芝居、きっと大竹さんの代表作になるんじゃないかなあ。
若い男優陣は変わっていくとしても、是非再演して欲しいなあ、と思います。


他の役者さんのことも少しだけ。
大竹さんのほかの役者さんたちは、ピアフの昔なじみであるトワーヌを演じた梅沢さん以外、
主な役のほかにたくさんの役を演じてらっしゃいました。

辻さんは、ピアフの才能を最初に見初めるナイトクラブのオーナー ルイ・ルプレなど。
いやー、めちゃくちゃ渋くてかっこよかったです!
♪枯葉を弾き語るところとか、もっと聴いていたい、と思いました。

田代くんはルプレ亡き後ピアフを引き立てその才能を開花させるレイモンと、
ピアフが見出し、その才能を世へ送り出すイブ・モンタンなどを演じていました。
ちょっと神経質で大人な感じのレイモンも素敵でしたが、
田舎から出てきた元気な男の子、という感じのイブ・モンタンが、
ピアフに促されて歌った♪帰れソレントへ が素晴らしかったんです!
ピアフに促されて、最初は躊躇いがちに歌っていたのですが、
その声がどんどん自信に溢れ、そして情感に溢れていく―――
ソレントという町を私は知らないけれど、潮風にやかれた古い町並みの鮮やかな色彩が思い浮ぶような、
そんな深さがありました。
もともと大好きな曲ではあったのですが、ますます好きになりました。


山口さんが主に演じたのは、ピアフの恋人である、ボクシングチャンプ、マルセル・セルダン。
いやー、雰囲気とか話し方とか、まさにボクサー、という感じでした(笑)。
ピアフとの場面は決して長くはないのですが、とても印象的。
白い布のに絡まるようにして愛を語る二人のシーンでの、
ピアフの静かで穏やかな表情と、それを受け止めるマルセルの笑顔がほんとに素敵だったのです。
マルセルには妻子がいて、家族の下へ帰らなければならない彼に、
「私のために早い飛行機で帰ってきて」とピアフは言うのですが、
その飛行機の事故でマルセルは帰らぬ人となってしまうのですね。
そのエピソードは知っていただけに、このシーンで彼らの間に流れる優しい空気が、
本当に切なくて仕方がありませんでした。
マルセルがこんなに急に死んでしまわなかったら、
もし、いつか彼らが修羅場を経て別れたとしても、
その後のピアフの人生は、もっと生き易いものであったのではないかなあ・・・
そう思ってしまうくらい、素敵な二人でした。


ピアフとマルセルを引き合わせたのが、彩輝さん演じるマレーネ・ディートリッヒ。
いやもうめちゃくちゃ美しくてかっこよかったです!!
最初に出てきたときの軍服みたいな衣裳も、その後も真っ白なドレスもとってもお似合いv
ディートリッヒは昔何かの映画(「モロッコ」だったかな?)をちょこっと見たくらいなのですが、
私の中のディートリッヒのイメージそのままな感じでした。
ピアフとは全然タイプが違うのだけれど、二人が仲良しなのは、なんだか妙に納得できちゃいました。
彩輝さんは、その後ピアフの秘書マドレーヌも演じてらっしゃいました。
こちらは一転して地味なスカート姿の、大人しい女性で、
ピアフのわがままに振り回されながら、彼女を案じ、献身的に支えようとする役。
最初彩輝さんだとはわからないくらい違った雰囲気でしたが、
ピアフが眠るまでその傍にいるときの、彼女を見る目の控えめな優しさがいいなあ、と思いました。


ピアフのもう一人の友人トワーヌは梅沢さん。
路地で歌っていた頃からの友人なので、非常に蓮っ葉で下品な物言いをする役なのだけれど、
なんというか、ふっと頼りたくなるようなふくよかで柔らかな存在感がありました。
窮地に追い込まれたときや、自分の足場を見失いそうなとき、
ピアフが思い浮べ縋ろうとするのはトワーヌなんですよね・・・

そういえば、舞台の置くには、殆どの場面でパリの暗い路地の壁がありました。
ピアフにとって、その場所は故郷であり、原点であり、そして決して逃れられない闇であったのかもしれない。
そして、その時代を共有したトワーヌは、彼女にとってその路地と同じような存在だったのかもしれないなあ・・・


KENTAROさんは、やはりピアフの恋人で、彼女がその才能を育て上げたシャルル・アズナブール役。
ピアフを本当に心の底から愛していて、とにかく彼女の傍で彼女の全てを護りたい、と思っているシャルルを、
決して嘘くさくなく、切ないまでの真剣さで演じてらっしゃいました。
ピアフの傍にいるためにツアーを断ろうとする彼を、
ピアフは他に男が出来たと言って突き放すのですが、
それでも、と彼女の足にすがる彼を見つめるピアフの表情がまた・・・!(涙)


薄井将大さんは、初見かなあ。
ピアフの最後の恋人であり夫、テオ・サラボを演じてらっしゃいました。
ステージの上の彼女に憧れ、晩年の彼女を支え続けたテオ。
二人が舞台の上で歌った♪愛はなんの役に立つの は、
マルセルの時とはまた違った穏やかな雰囲気がありました。
最後のシーン、トワーヌと昔語りをするピアフにそっと寄り添い、
彼女を見つめるテオの姿は、本当に彼女への愛しさに溢れているように思いました。

テオにしろ、シャルルにしろ、マドレーヌにしろ、彼らがであった頃のピアフは、
プライベートではもう心身ともにぼろぼろな状態で、
でも、それでも彼らが彼女を求め、愛し、支えようとしたその気持ちが、
すっと納得できてしまうくらいに滑らかだったのは、やっぱり舞台の上のピアフの姿が、
そしてその歌声が、圧倒的なまでの魅力を持っていたからなんだろうな、と思います。


山路さんは、なんだかいろいろな役をやっていたのですが、
ちょっといろいろ見分けがつきませんでした・・・フランス人の名前って覚えられません(涙)。
でも、相変わらずとってもダンディで素敵でしたv
最初と最後の舞台のシーンで司会者をやっているのですが、
そのときの複雑な表情の変化がさすがだなあ、と。
山路さんの歌声も好きなので、あまり聞けなかったのがちょっと残念でした。

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