瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2011/12/20 22:34   >>

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今夜は23時からNHKBSプレミアムで蜷川シェイクスピア「オセロー」が放送されます。

吉田鋼太郎さんの、少年のように澄んだ瞳が嫉妬に染まっていく様が圧巻のオセロー。
蒼井優ちゃんの、白い花のようにたおやかで且つ凛としたデズデモーナ。
そして。
深い闇を感じさせる、高橋洋さんのイアゴー。

洋さんのイアゴーに見事に堕ち、4時間超のお芝居に5回も通ってしまったのも今ではいい思い出です・・・
1回は名古屋まで行ったしねー(笑)。
個人的にはいまだに蜷川シェイクスピアでは一番好きな演目です。

もちろんDVDも持っていますが、TV放送だと最初に解説のインタビューとかあるかなあ、とちょっと期待して、
しっかり録画予約をしておりますv
洋さんのコメントとかもあるといいなあ・・・!

では、「オセロー」が始まる前に、蒼井優ちゃん出演のお芝居の観劇記録をv



シス・カンパニー公演
「その妹」

2011.12.13 ソワレ シアタートラム H列一桁台

作:武者小路実篤
演出:河原雅彦
出演:市川亀治郎、蒼井優、秋山菜津子、鈴木浩介、水野あや、内田亜希子、西尾まり、段田安則


大好きな役者さんがたくさん出演されてる!と、勢いでチケットをとったこのお芝居。
でも、近代日本文学が大の苦手で、武者小路実篤も名前は知っているけど読んだことはない私。
しかも、朝からの出張帰りの途中下車の観劇。
これは寝てしまうかも・・・と、かなり心配したのですが(出張で歩きっぱなしだったので/汗)、
そんな心配は全くの杞憂でした!

大きな事件が起きるわけでもなく、
派手な音楽が鳴り響くわけでもなく、
大正という時代に生きる人たちの日常が、淡々と紡がれるお芝居。
でも、その静かな空間の中で、彼らがその胸に抱える様々な感情が、鮮やかに描き出されていました。

物語の中心は、ある兄妹。
画家を目指していた野村広次(市川亀治郎)は、戦争で視力を失い、
妹の静子(蒼井優)と共に叔父夫婦の家に身を寄せています。
絵を描くことを奪われた広次は、小説で身を立てようとし、
静子に口述筆記させた、私小説のような処女作を、
かつて自分の絵を認めてくれた西島(段田安則)に送ります。
西島は文芸雑誌を主宰していたのです。
広次の小説の中に、才能の片鱗を感じ、そして彼の境遇に衝撃を受けた西島が訪ねてきたその日、
静子に縁談が降りかかります。
叔父の上司の放蕩息子が、静子を見初めたのです。
縁談を断ると、叔父の仕事にも差し障る、そうすれば兄の生活も危うくなる。
けれど、今兄の傍を離れるわけには行かない―――そう嘆く静子を前に、
広次は二人で家を出ることを決意します。
しかし、先立つもののない二人は、その一部始終を見、彼らに深く同情していた西島に縋ります。
西島から経済的援助を受けながら、小説を書く広次。
けれど、西島の雑誌に載った彼の処女作は、世間から酷評を受けてしまいます。
一方の西島は、兄に尽くす静子の美しさに惹かれる心を止められず、
妻の反対を押し切って、家にある本を売ることでなんとか兄妹の援助を続けていました。
しかしそんな中、兄妹の住む家の周囲では、西島が静子を囲っているとの噂が流れます。
そして、一人西島の家を訪れ、彼の窮状と、そして恋慕を知ってしまった静子は、
ある決意を持って叔父の家へと向かい―――

という物語。

劇場に入ってまず目を引かれたのが、舞台の中央にに据えられた、大きな1枚の絵。
曖昧な色彩の中に微笑む一人の少女―――広次が最後に書いた静子の肖像。
場面転換の度にこの肖像が幕の代わりのように現れるのですが、
最初の場面転換では、見えない光の筆がキャンバスを走り、少女の面影がどんどんクリアになり、
そしてその後に「その妹」というタイトルが示されたのですが、
それが個人的にはめちゃくちゃ綺麗で感動しました。
更に、場面が進むにつれて、描かれている少女の表情がどんどん変わっていくのです!
といっても、明らかに違う絵になるわけではなくて、だんだんと大人びていくというか。
もしかしたら、観ている私の心の動きが見せた錯覚だったのかもしれません。
けれど、静子が決意を胸に西島の家を去ったあとに現れた絵の少女の頬には、涙が光っていた・・・
それが演出だったらとても効果的だったし、
もし私の錯覚だったとしても、そんな錯覚を見せるだけの力が、このお芝居にはあったと思うのです。


大正という時代は、私には余りにも馴染みがなくて、
戦争で負傷し、生計を立てることの出来なくなった人たちがどんな風に暮らしていたのか、
当時の女性の立場がどんなものだったのか、などリアルに実感することはできません。
そう考えると、このお芝居は決して寄り添いやすいものではないのだけれど、
舞台の上に描き出されたそれぞれの感情は、とてもクリアでした。


成功を目の前にして、絵を描く術を奪われた広次の絶望と苦悩。
小説で身を立てようとするものの、思う通りには行かない現実。
そして、その焦燥を最愛の妹へ向けることしか出来ない孤独―――
亀治郎さんが形作った広次は、
時に笑いを誘う飄々とした佇まいを見せながら、
彼が陥った過酷な状況を、そしてその中であがく姿がとても生々しくて・・・
もし自分が静子の立場だったら、逃げ出してしまいたくなるくらいの激しさがありました。
その分、静子の決意を受け止めた後の静かな嘆きが、なんだかとても切なかったです。

切ないといえば、段田さん演じる西島と、秋山さん演じるその妻・芳子も、
それぞれとっても切なかったなあ・・・
西島が兄妹を援助したのは、もちろん同情もあったろうし、
自分が所持する肖像画のままの、あの美しい妹が汚されるのを見ていられなかったからなんだろうと思います。
静子への恋慕があったとしても、それを美しい感情のまま仕舞いこむだけの分別のある男だったと思う。
けれど、その想いがプラトニックで在るがゆえに、芳子は見過ごすことが出来なかった。
本を売ってまで彼らを―――静子を援助するという行為が崇高に見えるがゆえに、
芳子は、自分へ向けられる夫の想いと比較せずにはいられなかった。
秋山さんの芳子は、静子とは対照的な"既に出来上がった"大人の女性で、
だからこそ、ふとした瞬間に溢れ出る激しい感情が凄く鮮やかでした。

そういう激しさのある芳子や、感情豊かに喋り倒す男性陣とくらべて、
静子の感情のありかって、見始めた当初はちょっと見えにくさがあったんですね。
可愛らしい容姿と(あの鬘は当時の流行とはいえちょっと・・・と思いましたが)、
問いかけるように語尾を上げる話し方が、なんだかお人形さんみたいな現実感のなさがあったんです。
それでいて、兄よりよっぽど現実的なことを、ズバッと大胆に口にしてしまったり。
でも、物語が進むにつれて、静子の表情の変化に目を奪われました。

懊悩する兄を見つめる真っ直ぐな視線。
その目に浮かぶのは、兄への敬愛であり、嫌悪であり、憎しみであり―――
そんな複雑な目で、泣き出す寸前のように歪んだ表情で、
けれど兄へ話しかける声は、あくまでも可愛く健気な"妹"で・・・

戦争の後、変わろうともがく兄の傍で、静子自身は確実に変化を遂げていった。
けれど、広次の中では、静子はいつまでも最後に見た少女―――あの肖像画のままだったんだろうな、と思う。
いや、理性としては静子の変化―――成長を知っていても、
感情の部分でそれを受け止めることができていなかったのかもしれない。
そして、静子自身も、「静ちゃん」とあやすような、甘えるような声で自分を呼ぶ兄の前で、
ギリギリまで兄の記憶の中の"妹"で在ろうとしたのかもしれない。

先の見えない生活の中で、
兄と、そして西島から寄せられる愛情の中で、
静子が選んだ道は、叔父の持ってきた縁談を受けることでした。
それは、決して自暴自棄になったのでも、兄を見捨てたのでもなく、
自分と、そして兄の未来をしっかりと見据えた上での選択だったのだと思います。
そして、広次も、西島も、それを痛いほどわかっていた―――

最後、静子が去った部屋の中で、西島と佇む広次が振り絞るように呟きます。

力が、欲しい―――!

弱々しい声の、だからこそ切実な響き。

この物語の登場人物は、誰もがただ生きようとしていた。
誰もが、前に進みたいと願っていた。
誰もが、幸せになりたいと思っていた。
誰もが、誰かを幸せにしたいだけだった。
そこには、どんな悪意も、どんな卑しい思いもなくて・・・
それでも、いや、だからこそ、静子はそうするしかなく、男たちは彼女の選択を受け入れることしかできなかった。

そのことが、なんだかとても哀しくて、でも同じくらいに愛しくて、
帰りの電車に乗ってからも、ふとした瞬間に涙ぐんでしまいそうになりました。
そして、こんな容赦のない優しさを描いた武者小路実篤という文豪に、とても興味がわきました。
せっかくなので、お正月休みにでも、小説を読んでみようと思います。


他の役者さんたちも、それぞれの立場を感じさせる佇まいが見ごたえあり!でしたが、
特に印象に残ったのが、西島家の女中役の水野あやさん。
出番も台詞も多くはないのですが、静子に対する物言いや態度に、
ああ、この人は芳子が嫁ぐときに実家から付き添ってきたんだろうなあ、とか、
芳子はこの人の前でだけは泣いているのかもしれないなあ、とか、
いろんな背景を想像させてもらいましたv

シス・カンパニーの舞台はなかなか観る機会がありませんが、
これまで観た舞台、どれも雰囲気が違っていて、どれもとっても見ごたえあり!
「寿歌」はどうにもチケットが取れませんでしたが(涙)、
またいつか視す・カンパニーの舞台を観たいなあ、と思います。


ということで、「オセロー」放送に間に合いました!
明日もお仕事なので(しかも当直/涙)、
冒頭だけ観る!と心に決めていますが、どうなることか(笑)。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「雨」の亀治郎がすごくよかったので、こちらの舞台も観たいとは思いつつ、歌舞伎公演が多すぎて手が回らずに見送っていました。恭穂さんのこちらの記事で観たような気分になれました。有難うございますm(_ _)m
いよいよ来年は猿之助襲名披露公演もあり、いとこの香川照之の市川中車襲名ともども楽しみにしているところです。
ぴかちゅう
2011/12/27 01:53
ぴかちゅうさん。
こちらにも、コメントをありがとうございます。
つたない記事ですが、少しでも舞台の雰囲気が伝わったなら嬉しいですv
私は最近歌舞伎は全然観に行けていないのですが、
来年は襲名披露公演もありますし、是非また観にいこうと思っています。
恭穂
2011/12/28 23:18

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