瓔珞の音

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zoom RSS はじまりの歌

<<   作成日時 : 2012/03/31 22:26   >>

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ずいぶん昔の、ちょうど今頃。
合格した高校の学校説明会に行ったとき。
古びた階段の踊り場に貼ってあった一枚のポスター。
目を閉じて歌う、一人の少女の絵。
それは、音楽部の定期演奏会のポスターでした。
何故か心惹かれて、友人を誘って観にいったその演奏会でであったのが、
宗教曲とオペラ「魔笛」でした。

聴いたことのない、重なりあう歌声。
ピアノ伴奏で演じられる、初めてのアリア。

今思えば、実際のオペラと比べたら―――というか、比べることすらできないレベルだったと思います。
女子高だから、キャストは全部女の子だし、脚本は1時間で収まるように作り直されているし・・・
でも、初めて触れるオペラの楽曲は、
手作りの衣裳を着て、手作りの小道具を使って、精一杯の照明効果の中で、
ピアノ伴奏と少女たちの歌声だけで作り出されるその空間は、
私にはとても眩しくて・・・入学後、迷わず音楽部のドアを叩いたのでした。

そして実質2年間の音楽部での活動は、私にたくさんの贈り物をくれました。
歌う喜び。
演じる難しさ。
伴奏の面白さ。
仲間と一緒に何かを創り上げる楽しさ。
そして、大人になっても仲良くできる友達。
ミュージカルだけでなく、舞台の魅力を知ったのも、この部活に入ったからのように思います。

音感の絶対的に乏しい私は、歌も演技も全然だったけど、
あの2年間は、確かに今の私の核の一つなのです。

そんな思い出のオペラを、観てきました。



「ピーター・ブルックの魔笛」

2012.3.25 さいたま芸術劇場 大ホール E列10番台

演出・翻案:ピーター・ブルック
配役:ピアノ・・・・・・・レミ・アタゼイ
    タミーノ・・・・・・エイドリアン・ストゥルーパー
    パミーナ・・・・・ディマ・バワブ
    夜の女王・・・・マリア・ベンディ=メラッド
    パパゲーナ・・・ベツァベー・ハース
    パパゲーノ・・・ヴィルジル・フラネ
    ザラストロ・・・・ヴァンサン・パヴェジ
    モノスタトス・・・ジャン=クリフトフ・ボルン
    俳優・・・・・・・・アヴド・ウオロゲム、ステファン・スー・モンゴ


ピーター・ブルックという世界的に有名な演出家を、恥ずかしながら私は全く知りませんでした。
ですから、このオペラのチケットをとったのも、「魔笛」だから、という理由。
上演時間を確認したとき、その短さに初めてこのオペラがグランド・オペラではないことを知ったくらい(汗)。

モーツァルトがこのオペラに忍ばせたフリーメイソンの様々なシンボルや教義・・・特に「3」を悉く排し、
物語の真髄の部分だけを抽出したというこの舞台は、
何故かかつて触れたあの「魔笛」を彷彿とさせました。

数十本の様々な太さの黄色い竹が配された、蒼い照明の舞台。
上手に置かれた一台のグランドピアノ。
それらの竹を上手く利用し、動かしながら物語を導くのは、"俳優"という役名の二人の男性。
黒人系のお二人は、とても表情豊かに、そしてとっても楽しそうに物語を導いていました。
三人の侍女や三人の童が担っていた役割も、このお二人がやってるんですよ。
このお二人の立ち位置は凄く意味深で、ほんとに八面六臂な働きなのですが、
初めて「魔笛」に触れる方には、もしかしたらちょっとわかりにくかったかな、とも思ったり。
でも、このお二人、特にウオロゲムさんの笑顔がほんとに素敵で、
何気にとっても癒されておりましたv

実は、この日思いがけず最前列センターでして。
台詞はフランス語、歌はドイツ語という舞台で、
でもって当直明けの観劇だったので、正直寝ちゃったらどうしよう・・・と思ってたんですね。
しかも、同じ列に座ってらっしゃるのは、オペラファンです!という感じの上品なおじさまか、
音大で音楽やってます!という感じの若者ばかり。
場違い感にかなり萎縮していたのですが、最初のウオロゲムさんの笑顔にすっと気持ちがほぐれて、
眠くなることもなくしっかり物語を楽しむことができました。
いやもう、ほんとに感謝!
懸念していた言葉の問題も、字幕と、それから遠い記憶による脳内変換で、なんとかなりましたし(笑)。

今回、いろいろな要素を排除してシンプルな物語にしたことで、
「魔笛」という物語がとても身近なものに感じられました。
一番そう思ったのが、夜の女王の造形。
恐ろしく、罪深い、魔女というイメージよりも、
先立った夫の最後の言葉の中から、自分への愛を見つけることができず、
その哀しみと空しさを、ザラストロへの憎しみに転嫁するしかない女性、という印象でした。
演じるメラッドさんが、とても小柄で綺麗な優しい声をされていたので、余計にそう思えたのかも。
有名なアリアも、昔TVで見た「魔笛」の夜の女王の圧倒的な有無を言わさぬ強さよりも、
相手の心に語りかけ、相手に拒否されることで激昂する、ほんとに普通の女性に見えました。
ので、最後のシーン、夜の女王とモノスタトスが地獄に落ちるのではなく、
自分の過ちと誤解を自覚して、ザラストロの手をとる、というのも嬉しかったな。
勧善懲悪の"終わり"ではなく、新しい朝の"はじまり"を感じさせてくれる、
素直な喜びといたわりに溢れたラストシーンだったと思います。

モノスタトスなボルンさん、かなりかっこよくってちょっとびっくりしました(笑)。
やってることはどうしようもないのですが(え)、
その後ろに、そういう男に育つしかなかった背景が感じられるというか・・・
ただ、愛したくて愛されたくて・・・なのにその方法がわからなくて苛立つ若者、というのが、
なんだかとっても新鮮でした。

タミーノ役は、ストゥルーパーさん。
こちらも王子様然とした正統派なかっこよさv
歌声もとても優しくて、最初の彼のアリアはうっとりしちゃいました。
パミーナの絵姿を観て歌うこのアリア、実は音楽部に入った後、文化祭での上演で伴奏をしたのです。
当時部長をしていた先輩が大好きでとても尊敬していたので、伴奏できるのがとっても嬉しかった反面、
先輩に迷惑を掛けたくなくて凄くたくさん練習して、本番もめちゃくちゃ緊張したのを思い出しました(笑)。
この曲自体もとても好きだったのですよ。
なんだかほんとに懐かしかったです。
でもさすがに記憶の遠さと言葉の壁があったのか、
タミーノがザラストロに心を許す過程が、私にはちょっとわかりにくかったかな。
魔笛を奏でるシーンも、口に当てるのではなく、両手の間に浮かせる演出で、
ちょっと不思議な感じでした。

バワブさんのパミーナの美しさは、姿も声も秀逸でした。
タミーノの存在を知ったときの喜びやはにかみ、
母に渡されたナイフを手にしたときの困惑と恐怖、
そして、タミーノの愛を失ったと思ったあとの思いつめた表情。
そのどれもに10代の少女の繊細さが感じられました。

舞台を盛り上げてくれたのは、なんといってもパパゲーノ役のフラネさん。
パパゲーナ役のハースさんと共に、とにかくとってもキュートで、彼らが出てくると思いっきり笑顔になれましたv
パパゲーノは、ほんとに仕草は表情が雄弁で、
しかもピアノさんにちょっかい出したり、客席をいじったり、日本語を交えたりして、サービス精神も旺盛!
最初にパパゲーナが老婆の姿で現れたときのきょどっぷりも素晴らしく(え)。
というか、あの老婆、いろいろ容赦なくって最強でした!(笑)
この二人のあの有名な二重唱も、ちょっと下世話ではあるのだけど、
めちゃくちゃ明るくて、めちゃくちゃ楽しくて、めちゃくちゃ愛らしくて、もうほんとに嬉しくなっちゃいました!
「小さなパパゲーナ」という歌詞の時に、俳優さんが本当に小さな女の子を連れてきて、
だっこしたパパゲーナがびっくりした表情のあと凄く優しく笑ったのだけど、
あの子、もしかしたらほんとにハースさんのお子さんだったのかしら?
ちょっと似ていたような気がするんですよね。
多分2〜3歳だと思うのだけど、いきなり舞台に連れ出されても泣くことなくニコニコしていて、
大物!と思ってしました。
この子も将来こうやって舞台に立つのかなあ・・・v

ザラストロ役のパヴェジさん、眉間のしわが素敵なクールなザラストロでしたv
バリトンが美しい彼のアリアもとても好きなのですが、
僧侶のパートはどうするのかなあ、と思っていたら、
他の男性陣が舞台奥で黒い上着を着て歌っていました。


この舞台、セットもシンプルですが、衣裳もシンプル。
でも、白と黒と赤を効果的に使っていて、視覚的にとても美しかったです。
パパゲーノとパパゲーナのピンクのブラウスも可愛かったなあv

演劇、としてみると心に響いてくるものはちょっと少なかった気はしますが、
私的にはとっても満足でしたv
オペラってどうしてもいろんな意味で敷居が高いのですが、機会があればまた観てみたいと思います。

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ピーター・ブルックの魔笛
<モーツァルト「魔笛」K.620より> 2012年4月7日(土)15:00/びわ湖中ホール ...続きを見る
オペラの夜
2012/07/02 22:18

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