瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2012/04/16 22:39   >>

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この物語に出会ったのは、高校生の時でした。
膨大な登場人物。
しかも苦手なカタカナの名前。
私の知識や想像を超えてくるSFの世界。
複雑に絡み合った人間関係―――
そのどれもが、私にとっては高いハードルだったはずなのに、
それでもなお、この物語の世界は、文章の中で生きる人たちは、私をとことん魅了した。
原作が好きすぎて、アニメや漫画など、他の媒体には触れることはなかったけれど、
私の中には確かに生き生きと動き回る"彼ら"がいて。

そして、昨日。

私は広い舞台という宇宙の中で佇む、生身の"彼"に出逢いました。



「銀河英雄伝説 第二章 自由惑星同盟篇」

2012.4.15 マチネ 国際フォーラム ホールC 1階6列40番台
2012.4.15 ソワレ 国際フォーラム ホールC 1階16列20番台

原作:田中芳樹
脚本:村上桃子
演出:西田大輔

出演:河村隆一、馬渕英俚可、野久保直樹、大澄賢也、天宮良、中川晃教、松井誠、西岡徳馬、
    はねゆり、井田國彦、金澤博、荒木健太朗、伊藤哲也、長澤奈央、桑代貴明、中村誠治郎、仲原裕行、
    川隅美慎、樋口夢折、LGMonkees、深澤英之、佐藤和久、石塚智司、遠山裕介、碓井菜央、佐藤愛美 他


「第一章 銀河帝国篇」を観たのが去年の1月。
外伝の双璧篇はどうにもチケットがとれず(恐るべし東山・中河内人気・・・)DVDを購入。
参謀殿の外伝は、オリジナルなエピソードらしいのと行ったことのない劇場だったので、躊躇して行かずじまい。
そして、今回の自由惑星同盟篇。
ヤン・ウェンリーを河村隆一さんが演じるということでまず驚き、
キャストの役の予想が悉く外れたことにちょっと落胆し(え)、
そして、アッキーがポプランを演じることに動揺し・・・
とりあえず、観ておこうか的な気持ちで、劇場に向かいました。

だって、原作ものの舞台化って、どうしたってイメージと合わない部分があるじゃないですか。
キャストも、脚本も、音楽も、100%イメージどおり、っていうのは絶対に、ない。
小説の文章から喚起されるものは、読む人の考え方や経験の影響を受けるものなんだから。
正直、第一章も双璧の外伝も、とても面白く観ることができたし、
キャストのみなさんも、それぞれ本当に素晴らしかったけれど、
描き出される表情や感情、佇まいや感じる熱は、やっぱり私の中の彼らとはどこか違っていて―――
私の中では、原作と舞台は別物、という意識が強かった。
だから、期待しすぎちゃだめだ、ってどこかで気持ちをセーブしてた。

でも。

今回の舞台で、私は生身のヤンを観た、と思いました。

物語は、アスターテの会戦からイゼルローン要塞攻略を経て、アムリッツァ会戦の前夜までを描いています。
ヤンとラップ、そしてジェシカの学生時代の回想を織り込みながら
ヤンと、彼を取り巻く人々と、そして二人の天才を同時に得て動き出す世界の予兆を感じさせる物語。
第一章と同じように、映像とダンスと音楽を巧みに使いながら作り出されたこの舞台は、
正直なことを言ってしまえば、ちょっと気になるところももちろんありました。
でも、そういうことを全て通り越して、この舞台はまさに"自由惑星同盟"の物語だと思った。
そう私に感じさせた"軸"は、河村さんのヤンだったと思います。

右手を口元にあてて考える仕草も。
ベレー帽を外して黒髪をかき混ぜる様子も。
柔らかな口調で辛辣な言葉を紡ぐ声も。
ユリアンに向ける素直な笑みも。
ひとり立ち尽くす、その姿も―――
小説の文章を経て私の中で息づいていた"ヤン・ウェンリー"が、
暖かな体温を持つ存在として、鮮やかに現れたように感じたのです。
もちろん、ちょっと違和感を感じた部分も確かにあります。
でも、その"在り方"がまさにヤンだと、そう思いました。

小説を読んでいて、ヤン・ウェンリーという男は、私にとってとても難解でした。
それぞれの状況で、最善を行おうとすると同時に、
どこか一歩離れたところにいるような不確かさを感じる時がありました。
でも、この舞台を観て、ヤンは"見えすぎて"そして"優しすぎた"のだと思いました。

自分が置かれている戦局。
自分の中にある、それを打破する方法。
それは、戦局だけでなく、同盟と帝国の関係も同じだった。
恒久的ではなくても、休戦による平和へ向かうことのできる道を、
無理やりに捻じ曲げていく人の思惑も、彼には見えていた。
そして、自分の中にそれを正す方法があるのに、それを遂行する自分の手が押さえつけられていることを。
その状況の中で、最善を尽くすことが、決して全ての人を救うものではないことを。
誰かを傷つけ、誰かの命を奪うことを―――

もし、彼が"見えすぎる"だけならば、良かったのかもしれない。
でも、彼は同時に"優しすぎ"たのだと思う。
割り切って全てを遂行することも、諦めて全てを捨てることも、だから彼には出来なかった。
2幕後半、戦争反対派のリーダーとなったジェシカと向かいあったあとから、
最後にユリアンと星を見つめるシーンまで、舞台の上で生きる河村さんのヤンは、
それゆえの深い苦悩と、そしてだからこその優しい笑みに彩られていて、
なんだか胸が痛くなって、ちょっと涙してしまいました。


もう一人、私が素晴らしい!と思ったのが、松井さんのシェーンコップ。
実は、最初にキャストが発表になったとき、シェーンコップは大澄さんだと勝手に思っていたのです。
私の中のビジュアル的にしっくりしていたのね。
戦闘シーンは踊るだろうと思ってたし(え)。
なので、最初は松井さんのシェーンコップのビジュアルは、ちょっと私的には違和感があったのです。
が!
観ているうちに、もうシェーンコップにしか見えなくなっちゃったんです!
ちょっとした間合いや、仕草、表情、台詞の抑揚、そういうものから、
私の中にあるシェーンコップの過去や未来がわーっと想起されて、自分でもちょっとびっくりしちゃいました。
一番「ああ、シェーンコップだ」と思ったのが、イゼルローン攻略直後。
ヤンが雷神の槌をゼークト率いる帝国艦隊の放った時でした。
舞台奥から迸る白い閃光の脇で、目を閉じたシェーンコップの静謐な表情が、素晴らしかったのです。
これ、マチネで上手前方のポプランかぶりつき席(笑)だから見えたのですが、
(正面だと閃光が眩しくて目を開けてられなかったの)
この表情を見たとき、理屈でなく彼はシェーンコップだ、と思ってしまいました。
ので、その後、辞表をつき返されたヤンに向けた言葉は、
彼の未来を知るものとしては、なんだか凄く切なくて、ちょっと泣きそうになってしまいました。


でもって、注目のアッキーポプラン!
いやー、とっても可愛かったですv
というか、あのテンションの高さが素晴らしい!!(笑)
個人的には、ちょっとというかかなりビジュアル的にも役の造形的にもイメージから外れてるのですが、
(そもそもポプランを可愛いと思ったことがない・・・)
これもありかなあ、とまんまと思ってしまいましたよ。
まあ、敵機はともかく女を落とした数はちょっと水増ししてません?と思っちゃう雰囲気でしたが(え)、
ユリアンに語った「俺が俺自身でいられる場所」という言葉に、
なんだか凄く深いニュアンスを感じてしまって・・・仲間に見せるのとは別の顔を見せてもらった気がします。
8月の外伝「撃墜王篇」では、その辺も描いてくれるのかなあ。

あ、アクションも頑張ってましたよ!
スパルタニアンの戦闘シーン、透ける幕に映されるCGと、その奥での殺陣で表されるのですが、
これが結構わかりやすくて且つかっこよかったです。
第一章の時の、戦艦の戦いがダンスで表されたのも良かったけど、
今回のもスパルタニアンの特徴をよく見せてくれたんじゃないかなあ、と思う。
この殺陣といい、ローゼンリッターとの喧嘩のシーンといい、アッキーめちゃくちゃハードそうでした。
「SAMURAI7」から1週間だったので、お稽古期間も短いし、出番少ないのかなあ、と思ったらとんでもなかったし。
ほんとにお疲れ様です。
でもって、こういう殺陣って、やられる側が上手だともの凄く見ごたえあるなあ、と、
「SAMURAI7」に引き続き思っちゃいました(笑)。


そうそう、この舞台、映像の使い方が秀逸でした。
まあ、ちょっと使いまわし多すぎ、と思う部分も無きにしも非ずでしたし、
(だって、イゼルローン攻略の戦図が最初のシーンから映ってるんだもの/汗)
いきなり始まったフライングボールのシーンや、
いきなり映ったオーベルシュタインの映像には何事?!と思いましたが、
映像だけではなく、役者さんのダンスや演技と上手く絡み合わせて、
舞台をわかりやすく、且つスケールを大きくしてくれたようにも思います。
ソワレで後方正面で見たときは、大画面の映画を観ているような気持ちになりました。

というかこの舞台、一度は正面席で観るべきだと思いました。
いえ、キャストの立ち位置とか照明の具合とか、正面から観ると凄い綺麗でかっこよかったんですよ。
更に2階席から観れたら、きっともっと照明とかも堪能できてベストだったんだろうなあ。
もちろんポプランかぶりつき席(しつこいです)でも十分かっこよかったのですが、
正面でからだとなお視覚的なインパクトがありました。
冒頭、舞台中央に佇むヤンの背後や左右から、次々と主要キャストが現れて、
それぞれの雰囲気を十分出して動いていくシーンも、ほんとに計算されてるんだなあ、と思ったし。
あのシーン、ポプランが捌ける前にヤンをちょっと振り返るのが意味深で気になりましたv


役者さんに話を戻しまして。
ジェシカ役の馬渕さん。
最初は、フレデリカ役かなあ、と思っていたので、ジェシカと聞いてちょっとびっくりしたのですが、
蓋を開けてみると、とってもお似合いでしたv
最初のころのちょっと頑なさも感じさせる芯の強さが、凛として美しかったし、
反対派のリーダーとなってしまった後、ヤンと対峙するシーンは、
ちょっと悲愴さの漂うような美しさに変わっていました。
この後の本編で、彼女の未来がどこまで描かれるのかはわかりませんが、
是非、最後まで馬渕さんにジェシカを生き抜いてほしいと思います。
とりあえず、あの斜めの舞台をあのヒールで動くのは凄く大変だと思うので、
怪我などされないよう、祈っております!

ただ、ヤンとラップとジェシカの関係は、個人的にちょっとしっくりこなかったなあ・・・
いえ、私の中では、ヤンはジェシカに淡い片思い、とインプットされていたので、
最初のシーンで、ヤンを挟んでジェシカとフレデリカが対峙するのが、
まさに三角関係、という感じに受け取られて、ちょっとうーん、と思っちゃった。
いえ、実際に気持ち的には三角関係(というか四角関係?)なのだと思うのですが。
第一章の時も、キルヒアイスとアンネローゼの関係と、
それを観てしまったラインハルトの反応が結構あからさまだったのが気になったのですが、
やっぱり舞台となると恋愛要素も強めないといけないのかな・・・?
まあ、このあたりは私の思い込みかもしれないので、そのうち原作をチェックしなおそうと思います。


ラップ役は野久保さん。
名前は知ってたけど、きちんと認識したのは初めてかも(おい)。
冒頭でいきなり戦死してしまうのですが、あの最期のシーンのジェシカとの立ち位置もよかったなあ。
その後は、回想シーンや、ヤンの自問の中でのみの登場なので、
ある意味とても難しい役柄なんだろうな、と思います。
2幕後半のヤンの「不公平か?」という問いかけから、一緒にジェシカの演説を聴くときの表情は良かったな。
ヤンにとってラップは、いろんな意味で楔なんだろうな、と思う。
そういえば、初めてジェシカと会うシーン、花束を渡し損ねた後の台詞はアドリブなのかな。
マチネは「俺、玉砕した・・・」(だったかな)で、ソワレは「俺、花束渡すの下手か?」でした。
で、どっちの台詞にも変わらず「そんなことないよ」(かな?)とさらりと言い切った河村さん・・・ヤンだ!(笑)

アドリブは、他にも幾つかあったかな。
ポプランの登場シーンで、「女の口説き方を教えてやる!」と言ってアッキーが歌う(?)のですが、
マチネはラップっぽい感じで言っていて、直後にシェイクリがしっかり真似てましたが、
ソワレは思いっきりメロディをつけて歌ってたので、どうするんだろう?と思ったら、
シェイクリ、メモしてました(笑)。
でも、2幕で実際に女の子を口説く時には、ちゃんと歌ってた!
幕間に楽屋でアッキーに教えてもらってたのかな?(笑)


ユリアン役は桑代くん。
まさにユリアンと同年代の15歳!
最初はちょっと台詞を噛むことも多くて、はらはらしながら観ていたのですが、
彼も、だんだんと「ああ、ユリアンだ」と思わせてくれました。
演技としてなのか、素の部分もあるのかわからないけれど、
ヤンに向けられる感情が、憧れも、遠慮も、尊敬も、ほっとけなさも(え)とてもストレートでリアル。
銀英伝は登場人物全ての成長物語でもあると思うけれど、
やっぱり一番共感しやすいのはユリアンで。
だからこそ、この役を演じるのって、凄いプレッシャーだったと思います。
でも、私は、桑代くんのユリアン、とってもありだと思った。
彼も、ユリアンとして、そして役者として、銀英伝の舞台でこれから成長してほしいなあ、と思います。


西岡さんのシトレ本部長も、とっても渋くてかっこよかったです!
天宮さんのキャゼルヌとともに、このお二人も原作のイメージにとっても近かったと思う。
ヤンとの台詞の応酬が、とても自然で説得力がありました。
そういえば、天宮さんって、ハイネセンも演じてらっしゃるんですよね。
ハイネセンは顔は見えませんが、手の動きや仕草がとても雄弁で、ちょっと目が離せませんでした。
まあ、あのシーンは、原作を知らない方にはちょっとわかりにくかったかも、と思いますが、
でも、白い布と映像で表されたドライアイスの船の表現は素晴らしかった!

他にも、大澄さんのムライはとってもいい人だなあ、とか、
はねゆりさんのフレデリカ、可愛いけどあの「信じてます」はけっこうプレッシャーだなあ、とか、
アッテンボローとクラフトの見分けがちょっと私には難しかった、とか(え)、
井田さんのトリューニヒトのあの演説はまさにトリューニヒトだ!とか、
評議員の面々頑張ってたけどちょっと若すぎるかなあ、とか、
伊藤さん、鬼気迫るゼークトも良かったけど、飄々としたビュコック元帥が素敵vとか、
樋口さんのフォークの嫌らしさはまさに原作どおり!(褒めてます)とか、
いろいろいろいろ思ったことはあるのですが、長くなったので、とりあえずこの辺で強制終了!

でも、とにかく今回は河村さんのヤンを軸に、まさに同盟の物語を見せてもらったように思います。
一番そう感じたのは、実はカーテンコールのテーマ曲。
DLして聞いたときは、綺麗な曲だな、と思ったくらいだったのですが、
キャスト全員での大合唱の時は、もの凄いパワーを感じました。
そして、短い静寂のあとの笑顔での喝采、そしてその後の歌声が、
私の中の自由惑星同盟、というかヤン・ウェンリーとその仲間たち(笑)のイメージにぴったりだったの。
明るくて、軽快で、前向きで、大空へ飛び立つその瞬間の鳥のようなイメージ。
これから先、彼らが進む道は、彼らを待ち受ける未来は、決して平坦なものではないけれど、
彼らは互いにその笑顔をかわしながら、光へ向かって真っ直ぐに進んでいく―――そんな風に感じて、
この先描かれるだろう辛い物語を、私も真っ向から受け止める力をもらったように思います。

河村さんが作ったこの曲。
同盟の、というよりも帝国も含めた銀英伝のテーマ曲、ということなのだそうです。
次の本編がどういう形になるのかはわかりませんが、
帝国側が歌うこの曲は、きっとまた違う印象になるんだろうな、と思う。
その歌を聴ける日を、楽しみにしていようと思います。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ですよねですよね〜!
ありがとうございました。
色々思い起こしながら読ませて頂きました。
今回は本当に河村隆一さんのヤンが素敵でしたね。
次の本編も楽しみです、またご一緒させて頂けるとうれしいです!
Rook
2012/04/18 21:57
Rookさん、こんばんは!
先日はご一緒してくださって、ありがとうございました。
楽しんでいただけて本当に良かったv
夏の外伝も、それから先の本篇も、またご一緒いたしましょうね!
恭穂
2012/04/19 22:06

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