瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2012/04/21 22:53   >>

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始まりの遅かった今年の春。
その遅れを取り戻すかのように、この1週間で目に入る色彩が格段に増えました。

終わりかけの桜の新緑の緑。
山の木々の若葉の萌黄色。
ライラックや木蓮、オオアラセイトウ、菫の紫。
山桜や雪柳、ドウダンツツジの白。
八重桜やハナモモ、芝桜、石蕗のピンク。
一面の菜の花や水仙、タンポポの黄色。

今がそのとき、とばかりにいっせいに萌出る植物の生命力に、ちょっと圧倒されています。

このお芝居も、ちりばめられたたくさんの種が、いっせいに芽吹くような、
そんな力を感じました。



彩の国シェイクスピア・シリーズ第25弾
「シンベリン」

2012.4.14 マチネ 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 1階N列10番台

出演:阿部寛、大竹しのぶ、窪塚洋介、勝村政信、浦井健治、瑳川哲朗、吉田鋼太郎、鳳蘭、
    大石継太、丸山智己、川口覚、井口恭子、手塚秀彰、塾一久、大川ヒロキ、岡田正、二反田雅澄、
    清家栄一、飯田邦博、塚本幸男、井面猛志、篠原正志、松田慎也、千葉裕之、北村健太


物語の舞台は古代ブリテン。
ブリテンの王シンベリン(吉田鋼太郎)は、一人娘のイノジェン(大竹しのぶ)を、
後妻である王妃(鳳蘭)の連れ子クロートン(勝村政信)と結婚させようとしていた。
しかし、イノジェンが結婚を誓ったのは、身分の低い紳士ポステュマス(阿部寛)。
戦争で家族をなくし、城で育てられたポステュマスは、文武両道で人柄も良い素晴らしい紳士。
対するクロートンは誰もが納得する愚か者。
けれど、シンベリンは王妃の甘い言葉に操られ、イノジェンを叱咤しポステュマスを追放してしまいます。
知人を頼ってローマに渡ったポステュマスは、
お国の女自慢をする各国の紳士たちの中で、イノジェンの素晴らしさを語り、
それを否定したヤーキモー(窪塚洋介)と妻の貞操を賭けることになってしまいます。
ポスティマスの手紙を手にブリテンへ渡ったヤーキモーは、
現れたイノジェンの美しさと清純さに心を奪われ、賭けを超えた熱情を持って彼女を口説きます。
ヤーキモーの語るポスティマスの不貞に一時は衝撃を受けたイノジェンは、
けれどヤーキモーを拒絶し、その貞節を彼に知らしめます。
道ならぬ恋情と嫉妬に苛まれるヤーキモーは、策略を持ってイノジェンの寝室に忍び込み、
ポスティマスから贈られた腕輪を盗み、目に焼き付けた寝室の様子と彼女の体の特徴を証拠として、
ポスティマスに突きつけます。
まんまと妻の不貞を信じさせられたポスティマスは、
妻の下に残した従者ピザーニオ(大石継太)に妻の殺害を命じます。
イノジェンの貞節を誰よりも知るピザーニオの一計により、
イノジェンは小姓に身をやつし、ポスティマスとじかに話をするため旅立ちます。
道中、疲れを癒すために入り込んだ山の中の洞窟で、イノジェンは猟師の親子に出会います。
その猟師は実はシンベリン王のかつての家臣ベラリアス(瑳川哲朗)。
無実の罪で追放されたベラリアスは、幼い王の息子二人を攫い、実の息子として育てていたのです。
実の兄妹は知らず、イノジェンを弟として愛しく思う息子たち(浦井健治、川口覚)とともに、
つかの間の安息を得るイノジェン。
それまでの疲れに眩暈を覚えたイノジェンは、ピザーニオからもらった強壮剤を口にします。
けれど、その薬は王妃がピザーニオを殺すために渡した毒薬。
でも実は王妃の行動に不信を覚えた薬師が調合した一時的に仮死状態になる薬。
狩から戻ったベラリアスたちは、仮死状態のイノジェンを発見し、彼女を横たえ哀悼の花で飾ります。
その少し前、イノジェンの出奔を知ったクロートンは、ピザーニオを脅し、
彼が持つポスティマスの服を着こんで、イノジェンを追って旅立ちます。
やはり山中でベラリアスと出合ったクロートンは、その尊大で品位の低い言動の報いか、
長兄ボルドー(浦井健治)と戦い首を落とされてしまいます。
首のないその死体をイノジェンの隣に並べ、ともに弔う猟師親子。
彼らが去った後目を覚ましたイノジェンは、隣に横たわる首のない死体を夫と思い込み悲嘆に暮れます。
そこに通りかかったのはローマの将軍ルーシアス(丸山智己)。
実はブリテンはまさにローマとの戦火を切るところだったのです。
”主人”を悼むイノジェンの忠誠と美しさに心を奪われたルーシアスはイノジェンを小姓として連れて行きます。
一方ピザーニオの送った偽の血染めのハンカチを手にしたポスティマスは、
己の命で妻を殺してしまったことを激しく後悔します。
折りしも始まった戦争で、身を寄せていたローマ軍からブリテンへ寝返り、
亡き妻の故郷であるブリテンを守るために戦います。
ポスティマスと猟師親子の活躍でローマ軍を撃退したブリテン軍。
けれど自分を責め続けるポスティマスは、ローマ軍としてブリテンに投降、捕虜となります。
生きる気力を無くし横たわるポスティマスの背後に現れたのは、
彼岸へ渡ったはずの両親と兄たち。
彼らは大神ジュピターに彼の苦難の終結を願い、ジュビターはそれを聞き入れます。
一夜明け、シンベリンは戦火に焼かれ、一本の松の木だけが残る戦場に、
戦争で活躍した勇者と捕虜たちを集めます。
知らず因縁の糸に絡みとられた彼らが集うとき、その糸は解きほぐされ―――


というお話。
いやー、書いててどうしようかと思うくらい、とにかく盛りだくさん!
シェイクスピア後期の作品ということですが、シェイクスピアのほかの作品の要素が盛り込まれ、
しかもそれがとんでもない力技で幸福な結末へと怒涛の勢いで進んでいくのです。
実際、観ているときは、ちょっと待て!とつっこみを入れつつも、
繰り広げられる荒唐無稽な物語に引き込まれてしまったのですが、
引き裂かれる恋人や仮死状態での錯誤は「ロミオとジュリエット」だし、
悪意と嫉妬による策略に陥れられた夫が妻を殺すのは「オセロー」だし、
悪女に唆された暴君が真に自分を案ずる子どもを迫害するのは「リア王」だし・・・
でも、そのどの要素も悲劇にはならず、こうだったら良かったのに、と思う大団円に繋がるのが、
なんだか観終わった後ほんとに嬉しくなってしまいました。
シェイクスピアの作品として評価が低く、上演回数も少ないというこのお芝居。
でも、私は大好きだなあ。
それはきっと、蜷川マジックなのだと思うのです。

劇場に入ると、舞台の上には楽屋のようなセット。
並んだたくさんの鏡には、役者さんの名前が張ってあり、
実際に浴衣やジャージを着た役者さんたちが、思い思いに動いています。
将棋を指す人、語り合う人、一人黙々と台詞を呟き続ける人・・・
台詞を呟いているのは大川さん。
なんだかぴりぴりしてるなあ、と思ったら、物語の第一声が大川さん演じるブリテン紳士だったんですね。
(いや、あのぴりぴりの演技だったのでしょうけど)
阿部さん大きいなあとか、浦井くんと瑳川さんが仲良しそうでちょっと嬉しいとか、
勝村さんの挙動不審っぷりから目が離せませんとか、始まる前からいろいろ楽しませていただきました。
で、始まりの合図とともに、舞台前方に一列に並んだ役者さんの背後、黒子さんが一気に服を引き剥がすと、
その下にはアイボリーや黒を基調とした華やかな舞台衣装!
この展開、予想はしていましたが(いえ、みなさん結構もこもこだったので/笑)、
実際に目の前で鮮やかな変貌を見せられると、一気にテンションが上がります。
思いっきり拍手しちゃいましたv
そして役者さんたちがはけた後、後ろへとどんどん下がる楽屋のセットと入れ替わりに現れたのは、
水墨画のような色彩でブリテンの自然が描かれた何枚もの大きなパネル。
これが、複雑に交差しながら動いていき、所定の場所に収まると、現れたのはブリテンの王宮でした。
いやー、こういう演出、ほんとに大好き!
「ムサシ」の始まりの動く竹林(笑)も衝撃的なまでの美しさでしたが、
今回のパネルも、地味ではあるけれど音楽との関係も含めて素晴らしかった。
美しさももちろんなのですが、先の見えない暗さとか戸惑いとか、物語の世界へどんどん引き込まれる感じ。
また、上方に空けられた四角い窓から差し込む光の演出も綺麗でねえ・・・幸せでしたv

場面がローマに移ると、今度は源氏物語の一場面が描かれたパネルへと変わっていきます。
描かれた場面は「雨夜の品定め」。
金を多用したきらびやかなパネルに描かれる、平安時代の貴族たち。
その前の赤い布や金色のクッションの上に、
色鮮やかでけれど退廃的な雰囲気もある衣裳を着けた、ローマの紳士たち。
そんな華やかな空間の中、ポスティマスの黒一色の衣裳は、ちょっと異質な感じでした。
で、時代も国も異なる時代の男たちが語るのは、同じ"女"のこと。
その時空を越えた演出、私は好きだったけれど、これがイギリスで上演されたときどう評価されるのか楽しみだったり。
でもって、いつも思うのですが、シェイクスピアの女性観って、ほんとに複雑!
女性を賛美すると同時に、否定的で差別的な台詞が続くわけなのですが、
でも実際に登場する女性の代表イノジェンは、とにかく美しく純真無垢なんですよねー。

そんなイノジェンを演じたのは大竹しのぶさん。
16歳の少女役に違和感がないところが素晴らしい・・・・!
「冬物語」の田中裕子さんもそうでしたが、役者さんってほんとに凄いですよね。
真っ白なドレスの王女さまも素敵でしたが、小姓に身をやつしてからの溌剌とした姿も素敵でしたv
とにかく登場人物のほぼ全てに愛される完璧な淑女、という描かれ方のイノジェン。
でも、実際は結構やんちゃだし突飛だし思い込みが強いし結構自己中心的だし、決して"完璧"ではないの。
むしろ滑稽さもあるくらいの描かれ方。
なのに、それがとっても魅力的に感じられたのです。
なんかね、凄い生命力があったように思うのです。
悪意や猜疑に翻弄されているのだけど、決してそれに手折られることのないしたたかでしなやかな生命力。
ルーシアスに対するしうち(笑)とか、結構えええ?!と思ったりもしたのだけれど、
彼女の中では優先順位がしっかりとあって、更に自分の命に責任をもっているんだなあ、と。
もちろん、その優先順位の一番はポスティマスなのですよね。
最後、死んだと思っていたポスティマスが生きていて、
彼の誤解がヤーキモーの誤解であることがわかったとき、
凛々しい小姓姿のまま、一気に表情や仕草がイノジェンに戻ったのが、とにかく可愛らしかったりv
まあ、それならそれで、どうして隣に寝ていた首なし死体をポスティマスと見誤ったのかなあ、とも思いますが(笑)。
いや、だってしっかり体中触ってるんですよ?
服のサイズだって全然合ってなかったしねえ。
もしかして、この二人、結婚式までは清い関係で、ということだったのかなあ・・・
そう思うと、不義を信じ込んだポスティマスの激昂もわかるような気がしないでもなく(え)。

ポスティマス役は阿部寛さん。
舞台で拝見するのは「コースト・オブ・ユートピア」以来かしら。
あの堂々とした体躯と深い声は、やっぱり舞台栄えするなあ、と思いました。
イノジェンと同じように、誰からも賞賛される素晴らしい紳士のポスティマス。
でもイノジェンに関わることだと、ちょっと冷静さを欠いてしまうのは、恋する故なんですかねー。
イノジェンの台詞で、二人が幼馴染というのが語られるのですが、
その生い立ちなどからも、ポスティマスにとってイノジェンは神聖で侵すべからざる存在なのかな、と思ってみたり。
その聖女の命を自分の命で奪ってしまったあとの後悔と、その後の彼の混乱は、
ちょっと観ていて辛かったです。
ローマとの戦いの時も、敵として対峙したヤーキモーを殺さずに捕えたのは、
全ての罪を自分で背負おうと思ったからなのかなあ・・・

戦いのシーンは、真っ赤な月(だと思うのだけど・・・?)を背景に、スローモーションで描かれます。
その中で、ふっと普通のテンポに戻って描かれるポスティマスとヤーキモーの対峙や、
猟師親子の活躍は、あの雑然とした戦争のシーンの中でとてもクリアに観ることができました。
まあ、どうしてもいろんなところに目が言っちゃって、全てを見きれたとはいえないのですけどね(汗)。


ヤーキモー役の窪塚洋介さん。
登場しーんからして一癖も二癖もある色気をかもし出しておりましたv
ちょっと舌っ足らずな印象を受ける台詞回しが、ヤーキモーという役柄に良く似合っていたように思います。
いえ、私的にはヤーキモーって凄く幼いイメージだったので。
なんというか、精神が成熟しきっていない、というか。
イノジェンを口説くところの本気っぷりが、ちょっと哀れに感じてしまったり。
自らの"欲"が引き起こした悲劇と、それに引き続く戦い、そして赦しを経て、
彼自身が今後どんな風に変わっていくのかなあ、と思いました。


クロートン役の勝村政信さんは、まさに技あり!な存在感。
ヤーキモーとは全然意味合いの違う幼さというか、愚かさを、
なんともコミカルに且つ容赦なく演じてらっしゃいました。
剣を抜こうとして全然抜けなかったり、逆に鞘に収めようとして入らず剣を投げ捨てたり、
サイズの合わないポスティマスの服を意気揚々と着ていたり、
大真面目に自分は王妃の息子であることをひけらかしたり・・・
その様は非常に滑稽なのだけれど、彼がそんな風に育った根本はなんなのか、と考えると、
あの突拍子もない馬鹿王子っぷりが、なんとも悲哀に溢れたものに見えてしまいました。
彼が出てくると客席がちょっとブラックな笑いに満たされるのもそのせいかな?
クロートンはあっさり浦井くん演じる本物の王子様に切り殺されちゃって、
でも、それが最後に明らかになったときも、誰も彼を悼まないのです。
それが、ちょっと悲しかったなあ・・・

でもって、クロートンの死後、大神ジュピターとして空中から現れたのも勝村さんだったようです。
仮面をつけていたので、声も篭っていたので、キャスト表で見ていなかったらわからなかったかも?
絶望の中一人眠るポスティマスの背後に現れた、
彼の亡き両親や兄たちの懇願で現れ、彼の未来を予言する本を残して立ち去っていくのですが・・・
このシーン、凄く唐突ではあったのだけど、なんだかちょっと胸に迫るものがありました。
母のお腹にいるうちに、戦で死んだ父と兄。
ポスティマスを生んだ後、産後の肥立ちが悪く命を落とした母。
ポスティマスは、彼らの顔もぬくもりも知らない。
けれど、彼岸を示す光の帯の上から、まさになくなった瞬間の姿のままで現れた彼らからは、
ポスティマスに向けられる優しい感情が感じられました。
彼に心を残して彼岸へと旅立たなければならなかった彼らが、
どれだけ彼を案じ、彼の幸福を願っているのか。
もしかしたらそれゆえに、彼らは未だ彼岸へは至らず、中陰に留まっているのかもしれない。
(私の印象なので、宗教の違いは目を瞑ってください)
そんな風に思ったら、なんだか理屈でなく、ポスティマスは大丈夫だ、と思ってしまったのでした。
そして、その思いは、ラストシーンで見事に昇華されるわけなのですが・・・


クロートン並みに笑いをとっていたのが、実はシンベリン役の吉田鋼太郎さん。
最初はちょっと怖くなるくらいの暴君っぷりなのですが、
最後のシーンで王妃の裏切りを知らされ、自分の知らない事実が次々と明らかになり、
失ったと思っていたものを再び手にする喜びに打ち震え、
その幸せを平和へと繋げようとする様子は、まさにその後の平和な時代を担う賢王、という感じ。
・・・なのですが、そのかっこよさの合間合間に親馬鹿っぷりとか支配者の孤独とかが垣間見えたり、
怒涛の勢いで進んでいく大団円に独白でつっこみを入れたりと、キュートな面もあったり。
もしかしたら、このお芝居の中で一番常識的だったのはシンベリンかもとちょっと思ってしまいました(笑)。
いや、だって、私が内心つっこんだところで、シンベリンも同じように複雑な表情をしていることが多かったので・・・
というか、こういうつっこみをタイトルロールにさせるシェイクスピアって素敵vv(え)


王妃役の鳳蘭さんもかっこよかったです。
いやもう正統派の悪役、というか魔女オーラ全開!!
真っ黒なドレスや赤い口紅もですが、芝居がかった高笑いや底の浅い姦計、息子への溺愛などなど、
清々しいまでのステレオタイプな悪役で、見ていてワクワクしてしまいました(笑)。
出番自体はそれほど多くないのですが、素晴らしいインパクトだったと思います。


猟師の父親モーガン、実は追放された家臣ベラリアス役は瑳川哲朗さん。
無実の罪に陥れられた腹いせに王子二人を攫ってしまうというとんでもない人なんですが、
攫った王子を実の息子として、大切に、愛情深く育て、
更に山の中ではありつつも、自分の知識を全てつぎ込む英才教育を施したところがさすが!
もしかして、あのまま王の手元に置いておくと、王子はまともに育たないとか思っちゃったのかしら?(え)
何も知らない王子の前で、いきなり彼らの真実の身分を明かしちゃうところとか、
そのときの王子の心情を思うとちょっとどうなの?!と思っちゃいましたが、
でも、結局王子二人は血の絆と情の絆の両方をきちんと受け入れて大切にしていきそうで、
そういう意味では、彼の子育ては成功したんだろうなあ、と思ったり。


その王子その1ギデリアス役は浦井健治くん。
初の蜷川演出出演でしたが、良い意味で彼の個性が出ていたなあ、と思います。
なんというか、とても素直! そして野生的! でもって王子!(笑)
猟師役なので、粗末というか毛皮をがっつり使った衣裳で、
冒頭の王子様然とした白い衣裳は着ていないのですが、
実は彼は王子様、と言われてついつい納得しちゃう自分がおりました(笑)。
モーガンに王子である=実の親子ではないと告げられたときの途方に暮れたような表情や、
その後シンベリンと向かい合い、見つめあうときの戸惑った表情の中の強い視線が素敵でした。
川口くん演じる弟王子との仲良しっぷりも良かったなー。
二人で偶然であったイノジェンを理屈でなく愛しく思い可愛がる様子とか、とっても微笑ましかったです。
とはいえ、個人的にはちょっと理解しがたい役柄だったかなあ。
特にクロートンを些細な(と私は思った)理由で殺してしまったところとか、
理性よりも本能的な部分が勝っているのかも、と思ってみたり。

でもって、1幕では仮面の楽師役もやっておりました。
クロートンがイノジェンを起こすために楽師隊を呼んで演奏させるのですが、その歌い手。
ちょっと調子っぱずれな歌声でしたが、まさかここで浦井くんの歌が聞けるとは思わなかったので、
蜷川さんグッジョブ!と思ってしまった(笑)。
さらに、にこやかでオーバーな身振りに薔薇サムのシャルル王子が思い浮んでしまいました(笑)。


ピザーニオ役の大石継太さんは、なんとも軽やかで、
且つ心情的にとても寄り添いやすい役柄で、とっても好印象。
忠誠を誓いつつも、決して盲目的に仕えるのではなく、
心を込めて手助けをしつつも、最後は相手の力に委ねる。
一連の出来事に心を痛めつつ、自分に出来る最善を考えるところが、この物語の良心のように思えました。
とりあえず、この物語の癒し系に(個人的に)決定です!(笑)


ルーシアス役の丸山智己さんは、普通にとってもかっこよかったです。
「血の婚礼」で感じた暗さはなくて、まさに正道を行く支配国の将軍、という感じ。
なので、男装するイノジェンに出会って彼女を助け、傍に置き、
そしてここぞというときに彼女にあっさりあしらわれた時の呆然とした独白が、
逆にギャップがあって良い感じでした(笑)。


とにかくあのラストシーンはほんとに怒涛!
登場する人物の関係性や隠された過去(もちろん観客は知っている)が、
ほんとにあっという間に解き明かされていくのです。
観る側としては、絡み合った糸、というか広がりきった風呂敷が鮮やかに畳まれていくのを観るのは、
ちょっと待て!とつっこみたい部分は多々あるものの、とても楽しいし嬉しかったのも確か。
そんな大団円の舞台は、一本の松が立つ戦場の一角。
戦火を耐えた松の気が見守る中、戦争の終結と平和を宣言するシンベリンの声に促されるように、
スローモーションで舞台の奥へと駆けていきます。
ゆっくりな動きの中で交わされる笑顔、繋ぎあう手、絡み合う視線。
舞台の奥は、暖かな夜明けの光に満たされていて、その中央の松は凛としたシルエットとなっていました。

この松が、陸前高田市の奇跡の一本松を模したものであることは、プログラムで読みましたし、
何度もTVで見たその形は、強く私の記憶に残っていました。
人々の命も、日常も、容赦なく押し流した津波に耐えて残った一本の松。
その松の向こうに広がる、新しい未来。
今、そこに向かって走る人たちが、いる。
誤解も、猜疑も、嫉妬も、怒りも、嫌悪も、過去の罪も、悲しみも―――全てを耐え忍び乗り越えた彼らが、
共に笑顔で向かう先にある、光溢れる未来。
そして、彼らを見守る一本の松に、ポスティマスを見守る家族の姿が重なりました。
そう思ったら、なんだか泣けて泣けて仕方がありませんでした。
でも、その涙は去年「たいこどんどん」を観た時の涙とは違っていた。
1年を経て"いたむ"涙は"未来へ向かう"涙に変わったのかもしれない。
それは、私の個人的な思い込みではあるのでしょうけれど、
でも、真っ当に、ひたむきに生きることで乗り越えられるはずの様々な苦難の果てにある約束の未来は、
こんな風に夜明けの光に満ちているはず。
彼らのような輝く笑顔に溢れているはず。

このラストシーンは、きっと蜷川さんのエールなのだと、そう思いました。

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12/04/21 蜷川シェイクスピア「シンベリン」の赦しの想いが五輪のロンドンに届きますよう
彩の国シェイクスピア・シリーズ第25弾「シンベリン」の千穐楽に自転車ですっとんでいき、開演に間に合う(^^ゞ 舞台の上には大部屋の楽屋風に化粧前の鏡台が並び、役者たちが浴衣やガウンで開演を待っている雰囲気。一同が舞台の前にずらっと並んで挨拶かと思いきや、ここで... ...続きを見る
ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記
2012/04/22 03:00

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
21日の千穐楽に観て先ほど記事アップしたら恭穂さんもアップされていたので嬉しくなって早速TBさせていただきました。
私は最後の「赦し」の場面に「ムサシ」を彷彿とし、赦しの心で復讐の連鎖を断ち、戦争のない世界をというメッセージを込めた舞台が平和の祭典といわれるロンドン五輪に連動するシェイクスピアフェスティバルに上演されるのだと思ったら涙があふれてきてしまいました。その後、復興の松のエピソードも読んでなるほどと思いましたが、その「赦し」について重点を置いた感想を書いています。
浦井君の仮面の楽師も気づいて喜んでいました。役者陣の充実の演技も含めて、なかなか興奮がおさまりません。
しかしながら、明日は若手の「仮名手本忠臣蔵」昼の部なのでこの辺で寝ないとヤバイのでとりあえず、お知らせまで(^^ゞ
ぴかちゅう
2012/04/22 03:08
ぴかちゅうさん、こんばんは!
コメントとTBありがとうございますv
私は最初のシーンで「ムサシ」を思い出しましたが、
ぴかちゅうさんは最後の「赦し」で思い出されたのですね。
シェイクスピアフェスティバルが五輪と連動するとは知りませんでしたが、
そうであればこの舞台の「赦し」が、
たくさんの方に伝わるといいなあ、と思います。
浦井くんの仮面の楽師、嬉しかったですねv
「仮名手本忠臣蔵」はいかがでしたか?
私もまたそろそろ歌舞伎を観にいきたいなあ。
恭穂
2012/04/24 21:19
恭穂さま
ご無沙汰しています。
恭穂さんのとても丁寧なレビューを読ませていただいて
舞台の一つひとつがまた脳裏によみがえってきました。
私は初めて「ペリクリーズ」を観た時、「わっ、ロマンス劇
って苦手」と思ったのですが、前作の「冬物語」も
今回の「シンベリン」もとてもよかったですね。
シェイクスピア、おそるべし!です(笑)。
そこに、今の日本、今の世界とつなげる蜷川さんの
演出があり、役者さんたちのすばらしい演技があり、
ほんとうに魅力的な作品に仕上がっていると思います。
ロンドンでの評価も楽しみですね。
スキップ
2012/05/12 05:56
スキップさん、こんばんは!
粗筋を書いていて書き終わらなくて困った恭穂です(笑)。
ほんとにいろいろな要素が組みあわさって出来た、
とっても素敵な舞台でしたね。
私は、実は「ペリクリーズ」が初蜷川さんでして・・・
非常に衝撃を受けたのを覚えております。
ロマンス劇って未だ良くわからないのですが、
「冬物語」も「シンベリン」も大好きですv
夏のオールメールも楽しみですね。
恭穂
2012/05/12 19:24

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