瓔珞の音

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zoom RSS 息づく闇

<<   作成日時 : 2012/07/12 21:48   >>

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私が初めて観たミュージカルは「オペラ座の怪人」でしたが、
初めて自分で観にいくことを決めて、チケットをとって観にいったのは、このミュージカルでした。

「ミス・サイゴン」、初演―――
ただただ舞台から放射されるパワーに圧倒されていたあの日。
あれから再演のたびにこのミュージカルに触れ、
観るたびごとに何かを受け取ってきたように思います。

そして、20年の月日を経て、新しい演出としてスタートした「ミス・サイゴン」を観てきました。



「ミス・サイゴン」

2012.7.7 マチネ 目黒パーシモンホール 大ホール 1階11列一桁台

出演:市村正親、笹本玲奈、原田優一、上原理生、木村花代、泉見洋平、池谷裕子、加藤憲史郎 他


目黒パーシモンホールは、今回初めて訪れた劇場でした。
緑の中の近代的な建物の中、オペラやクラシックの演奏会が似合うようなホール。
入った瞬間、舞台が近い!と思いました。
前方席だった、ということもあるのかもしれませんが、
オケボックスがあるにも関わらず、感覚としてとても舞台に近いと感じたのですね。
それは、幕が上がってからも同じでした。

今回新演出ということで、もちろんいろいろと変更がなされていました。
個人的に一番印象に残ったのは、自然な暗さになったなあ、ということ。
前の演出でも、舞台全体が明るくなるような場面ってそうはなかったとは思うのですが、
今回は、更に暗さが増して、そしてその闇のなかに、
開いた窓を通り抜ける風や、ドリーム・ランドの刹那的な熱気、
不安定なサイゴンの街に生きる人たちの潜めた息や体温が感じられる―――

それは、セットや照明、効果音だけではなくて、役者さんの演技自体にも感じられました。
よりリアルさを求めた、と何かで読んだ気がするのですが、
お芝居としての綺麗さよりも、その役としての体温を重視した、というか・・・

特にそれを感じたのは、やっぱりキムとクリスのシーン。
二人のスキンシップは多分前回よりも増していて、
でも、甘さと言うよりも縋りつくような切実さが感じられて・・・観ていて痛々しくなってしまいました。
また、玲奈ちゃんのキムがほんとに素直な感じなんですよね。
打算とか全く無しで、ただひたすらにクリスに気持ちを向けているの。
この出逢いが、運命の出逢いだと何の疑いもなく信じているというか。
それに反比例するかのように、トゥイへ向ける拒絶もとても強かったなあ、と思います。
タムを挟んで対峙したときも、彼女の中ではトゥイは完全に"敵"に認定されたような・・・
最初に撃てなかったのも、トゥイを撃つことを躊躇ったというよりは、
極限の状態に混乱した、という風でした。

そういえば今回の演出、暴力の描写もかなりリアルになりましたよね?
冒頭のジョンが兵士を殴るシーンとか、
トゥイの命令でキムとが拷問に掛けられる(だよね?)シーンとか。
その後のキム痛がり方というか苦しみ方が半端なくて・・・
最後のシーンも、事切れる直前のキムって、あんなに苦しんでましたっけ?
この死に様って、クリスにとって新しいトラウマになるんじゃなかろうか?と思うくらいの苦しみ方でした(涙)。
いやでも、それこそ彼女にとって本望なんだろうか・・・?(え)


原田くんのクリスは、とにかくその鬱々とした佇まいが素晴らしかったです!(褒めてます/笑)
1幕冒頭も、ずーっと眉間にしわを寄せていて、全然笑顔がないのですよね。
ソワレで観た山崎クリスがずっと笑顔だったので、その対比とそれぞれの役作りに、
複数キャストの醍醐味を感じてしまいました(笑)。
原田クリスは、とにかく現状の全てに倦んでいる。
そして、その中に甘んじている自分自身を嫌悪している。
♪神よ何故? でも、彼の中に燻るマイナスの感情が垣間見えたように思いました。
その中で出逢った、自分の手で守り幸せにできるかもしれない存在―――キムに、
彼は文字通り縋りついたのだと思う。
その感情は、限りなく愛に似ていて、でも決してキムと同種の愛ではなかった。
アメリカに戻った彼は、"悪夢"にうなされるけれど、
サイゴンでの生活は、それこそ夢の中のような出来事になっていたのではないかと思う。
アメリカに戻り、エレンに出会ったことで、彼はきっと全てをリセットしてしまった。
バンコクでのエレンへの告白から後の二人の様子を見て、なんだかそんな風に感じてしまいました。


エレン役の木村さん。
いやいや賢いのはあなたでしょう!と言いたくなる感じでした(え)。
もの凄く理性的で賢い女性なんだろうなあ、と感じさせる雰囲気。
衣裳もすっきりしたパンツスーツv(前はスカートでしたよね?)
歌声も綺麗に澄んだソプラノで、凛とした響きがありました。
そんな彼女が、キムと会い、キムの嘆きや懇願を前にして激しく動揺する姿がとても印象的でした。
椅子の背を掴む手に込められた力が、彼女の揺り動かされた感情を感じさせてねえ・・・
今回から、そのシーンの後に♪メイビー というエレンのソロが入ったのですが、
不安や猜疑心に苛まれながらも、自分とクリスの幸せのために一歩も退かない、という決意が感じられました。
キムが懸命に生きてきた3年間。
その苦渋、そして彼女の今の生活を考えれば、自分はずっと恵まれていて―――
でも、だからこそ、自分が身を引いてキムにクリスを"譲る"ということは、
キムがこれまで抱きしめてきたクリスへの愛情に対する侮辱になる。
そんな風に考えたのではないかなあ・・・
クリスの心が自分にあると解かったあと、「子どもだけなら」という台詞も、
偽善とか同情というよりも、キムに対する敬意のようなものがあったように思います。
・・・クリスは完全に上から目線な感じでしたけどね(え)。


ジョン役は上原くん。
R&Jの時に、ジュリエットと目を合わせるのも恥ずかしかった、と語っていた彼はどこに行った?!
と言いたくなるような、見事な女好きっぷりでした(笑)。
2幕のバンコクでキムを探すシーンでも、見事に客引きのお姉さんに鼻の下伸ばしてたしね(え)。
(岡ジョンは、このあたりは相変わらずだなあ、という懐かしさ溢れる表情に見えました)
佇まいも、どちらかと言うと粗暴で荒々しい印象だったかなあ・・・
でも、サイゴンにも既にきっちり見切りをつけている冷静さも感じられました。
クリスとは同世代で、キムにクリスのことを告げられないシーンでも、
クリスやキムと同じ目線、同じ感覚で苦悩しているように見えました。
彼自身も、まだ惑いの途中というか・・・
♪ブイ・ドイ はさすがの歌唱力で聞かせてくれましたが、
笑顔がちょっと浮いちゃう感じだったのが残念。
まだ開幕したばかりですし、これから回を重ねるごとに深みも増していくことに期待!


トゥイ役の泉見さんは、下手側の席だとあまり表情が見えなかったのですが、
人民委員長になるのも納得な感じの落ち着きと自信と強さがありました。
笹本キムとだと、キムが自分のものであることを全然疑っていなくて、
でも、だからこそ、タムの存在を知ったときの、怒りが凄まじかったように思います。
彼にとってタムの存在を抹消することは、キムを、ではなく、”自分のものであるキム”を守ることだったのかなあ。
歌声は相変わらず素敵でしたが、
♪モーニング・オブ・ドラゴン のシーンの最後は、前を見据えて歌うほうが好きだったかなあ。

あ、♪モーニング・オブ・ドラゴン はとっても迫力でした!
ドラゴンダンサーさんが倒立失敗しちゃったりもありましたし(初見だったのでそういう振りなのかと思った/笑)、
ちょっと乱れもあったように思いますが、やっぱりこのシーンは見入っちゃいますね。
場面転換の爆竹と、龍の鼻息(え)はもっと大人しくてもいいかなあ、とも思いますが。
(前のシーンの余韻を一気に吹き飛ばされました・・・)
今回も、アンサンブルさんたちは、見ごたえあり!
♪ブイ・ドイ や♪アメリカン・ドリーム での歌やダンスはもちろんですが、
役としての演技も、プリンシバルと同じように、しっかりと体温を感じさせてくれました。
個人的に気になったのが、川島大典さんの副人民委員長。
トゥイへの忠誠が、その嘆きと怒りにしっかり感じられて、
その分、トゥイの造形も厚みが出ていたように思います。


ジジ役は池谷さん。
ボブカットの黒髪と黒の衣裳(というか下着?)に彩られた白い肌が、
あの暗闇の中に浮かぶのは、綺麗と言うよりちょっと痛々しい感じだったかなあ。
ジョンに縋りつく腕の必死さも、ああ、これがこのときの彼らの現実なんだなあ、と。
♪我が心の夢 も、その途中でキムを庇って抱きしめるシーンも良かったですが、
ドリームランドの閉店後、たった一人で立ち去る後姿の雄弁さに、ちょっとやられました。
でも、このシーン、(たぶん)ジョンが見せ付けるように他の女の子を抱えて去っていく流れが、
「レ・ミゼラブル」の工場のシーンの終わりと重なっちゃいました。
前の演出もこうでしたっけ?


タム役は加藤憲史郎くん。
いやー、お兄ちゃんにそっくりだよね!
毎回のことではあるのですが、キムに呼ばれて最初にタムが駆け出してくるシーンは、つい涙してしまいます。
前回よりも、抱きしめられているシーンが多いように思うのですが、
抱きしめられた状態で♪命をあげよう やトゥイとのシーンを経験するのって、
子どもにとってどんな感じなのかなあ・・・?
なんだか、お家で夜うなされてそうな気がする(え)。
その辺のケアはきちんとしてるのかな、とか思ってしまいました(笑)。


そして、エンジニアは市村さん!
やっぱり市村さんのエンジニアの強かさと悲哀は素晴らしいなあ、と思いますv
きっと身体に"エンジニア"が染み付いているのでしょうね。
とても自然で観ていて安心感がありました。
1幕、ドリームランドの閉店後、道を歩くお坊さんにお布施をするシーンがあるのですが、
その姿にもお坊さんへの純粋な敬意が感じられて、
アメリカに憧れて、アメリカに渡ることを夢見ている彼にも、
生活としての信仰が根付いているのだなあ、と、ちょっと驚いてしまいました。
途中、ちょっと歌っていて息が切れているように感じた部分もあったのですが、
あれは演技だったのかなあ・・・?
今回、長期の公演にシングルキャストということで、個人的にかなり心配だったりします。
どうぞお体に気をつけて、エンジニアを生き抜いて欲しいと思います。

もちろん、他のキャストのみなさんも!

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