瓔珞の音

アクセスカウンタ

zoom RSS 永遠の黎明

<<   作成日時 : 2012/07/16 18:29   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

暗闇に響く二発の銃声。
二人の選択のその先にあったものは、
美しい春でも、
自由なパラダイスでもなく―――

ただ、永遠に続く黎明。


「ルドルフ ザ・ラスト・キス」


2012.7.15 ソワレ 帝国劇場 2階G列30番台

演出:デヴィッド・ルヴォー
出演:井上芳雄、和音美桜、吉沢梨絵、坂元健児、一路真輝、村井国夫 他



オーストリア皇太子ルドルフと、男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中を描いたこのミュージカルを、
初めて見たのは4年前
宮本亜門さんが描き出した二人の最後は、1枚の絵画のように美しいものでした。
力のある役者さんたちが描き出す人物はどれも印象的で、
けれど、私の中に確固として存在する"ルドルフ"像を越えるものではありませんでした。

そして今回。
タイトルロールの井上くん以外のキャストを変更し、ルヴォー氏が創り出したこの舞台は、
とても美しく繊細で、そして"ルドルフ"という複雑な人物を、強い説得力を持って描いてくれました。

まず、そのセットが秀逸!
舞台はビロードの手触りを思い起こさせるような赤い壁や幕に囲まれていました。
絵画ではなく、いつかTVで見たヨーロッパの人形劇が行われるような奥行きのある箱。
その箱の中を、同じ赤の壁や幕、二重の盆が動くことによって行われる場面転換は、
そこに流れる音楽のように滑らかで美しく、
計算しつくされたその繊細な動きに、ただただ感嘆するばかりでした。

特に凄い!と思ったのが、♪それ以上の・・・ での舞台ワーク。
八木さん演じるサロンのピアノ弾きが奏でる旋律から始まるという流れも素敵でしたが、
マリーとルドルフの心が同じ方向を向いていることを、
その想いとは裏腹に、二人の生きる場所は遠く離れていることを、
けれど、すれ違う二人の間に灯る小さな蝋燭の灯が暗示する未来を、
二重の盆の動きと雄弁な照明で見せてくれました。
しかも、それを、二幕のリプライズでちゃんと回収して更に発展させているのです!
いやもうほんとに細部まで計算されつくされた演出にただただ感嘆するばかりでした。

登場人物の物理的な距離だけでなく、心理的な距離すらも視覚的に見せるシンプルなセット。
その隙のない造形は、ある種の閉塞感すら舞台効果として利用していたように思います。
夜のシーンで舞台を満たす濃い蒼の照明も、
喝采を送る人々の中で笑うルドルフの向こうの明るい光も、
駅のシーンの眩い光と黒い陰の動きも、とても美しく!
役者さんの衣裳の色や形も、その箱の中で揺らめく舞台効果になっていました。
そして、その箱の中で丁寧に紡がれる"彼ら"の感情―――
"一つの"舞台として、素晴らしく完成度の高い空間が創り上げられていたように思います。

正直言って、宮本演出とは全くの別物。
それは、人物の造形でも同じでした。

特にそう感じたのが、ルドルフとマリーの関係。
前回の二人は、私には抑圧された二人が傷を舐めあうような関係に見えました。
けれど、今回の二人は、恋人同士というよりも、同志といってしまってもいいような関係。
それは、多分にマリーの描き方によると思います。

和音さんのマリーは、とても賢くて強い。
政治的社会的な部分にも、最初から深く踏み込んでいる。
運命だから。
孤独な心が惹かれあったから。
そんな不確かな理由ではなく、ユーリウス・フェリクスの熱い思想に共感し、
その思想と皇太子という立場の狭間で苦悩するルドルフに惹かれ、
そして世界を変えるために彼と共に歩もうとする強さがあった。
けれど同時に、彼女は哀しいほどに幼かった。
自分たちの行動が、自分たちの想いがいつか世界を変えると、
共に在り、共に闘い続ければ必ず未来は開けると、
そう信じてしまえるほどに幼かった。

輝くような強さと、自分と同じ視線で世界を語るマリーは、
きっとルドルフにとってそれこそ未来に続く道しるべのように見えたのだと思う。
彼女と在ることで、彼女と共に闘うことで未来は開けるかもしれないと、
そう願うことは、きっとルドルフにとって大きな力となったと思う。
1幕の最後、♪二人を信じて で、高らかに歌うマリーを抱き上げ、
彼女の名前を呼ぶルドルフの明るく自由な笑い声は、
本当にそんな光に満ちた未来を感じさせてくれました。

けれど、ルドルフの前には立ちはだかるたくさんの壁。
長い歴史の末の不動の存在として常に自分を押さえつける、父である皇帝。
政治的辣腕で、自分の行動を阻むターフェ首相。
義務と立場を突きつける、妻ステファニー。
決して自分は自由にはなれないのだと。
この壁を突き破ることは、自分だけでなくマリーをも危険にさらすのだと。
それを痛感し、絶望したルドルフを再び光の中へ連れ出したのはやはりマリーでした。
けれどこの時点で、彼はマリーの強さだけでなく、彼女の幼さを悟ったのだと思う。

二幕冒頭の悪夢のシーンのあと、ルドルフはまるで子どものようにマリーを抱きしめ縋りつくけれど、
♪明日への道 で、最初は躊躇いがちに、徐々に高らかと理想の未来を歌い上げるルドルフは、
二人の目指す未来が、決して二人で共に歩む未来とは重ならないことを理解していたように思います。
その上で、彼は自分の進む道を選び、あれだけの言葉を人々に伝えた―――
ここから♪それ以上の・・・(リプライズ) までの流れは、
私は二人の年の差というか、マリーの若さを強く感じさせるものでした。
ステファニーとの対話も、ターフェとの対峙も、
ほんとに世界を変えちゃうんじゃないかと思えるくらい最強に見えたマリーが、
まだほんの17歳の少女であることを強く印象付けました。

もし、マリーがもっと早く生まれていたら―――二人は同志として世界を変えていけたかもしれない。
もし、ルドルフがもっと遅く生まれていたら―――二人は全てを捨てて旅立てたかもしれない。

結局、ルドルフの計画はターフェに握りつぶされ、
二人の望む未来を作ることの出来なかった二人は、
二人で共に在る未来―――死を選びます。
その選択を口にするルドルフの掠れた声と、マリーの柔らかな笑み、
そしてその後、最後の灯火を消すまでの二人は、とても静かで、とても美しくて、とても満ち足りた表情をしていて、
二人が向かう世界は、きっと幸せと平穏に溢れているのだと、そんな風に感じさせました。

けれど。

暗闇の中、響く二発の銃声。
そして、赤い部屋の中で寄り添うよう横たわる二人が見えたその一瞬後。
奥の赤い幕が落とされた向こうにあったのは、
彼らが求めた花々に溢れる春のマイヤーリンクでも、
光に溢れるパラダイスでもなく、
白々として、なのに果てのない暗さを感じさせる何もない空間でした。

永遠に続く、黎明―――

その美しく、けれど怖いほどに空虚な静寂は、何故か酷く私を打ちのめしました。
彼らの物語が、決して美しいだけの悲恋ではないことを感じさせて・・・
けれど、同時に、これは完璧な形の終焉であるとも思いました。



ルドルフ役、井上くん。
複雑と評されるルドルフの弱さも純粋さも決断力も、しっかりと見せて聞かせてくれました。
こんなにも真っ直ぐな井上くんの歌声を聴いたのは、なんだか久しぶりな気がします。
「ハムレット」の時は、ミュージカルと言うよりも演劇に近い印象だったので。
空間を突き抜けるような力強さと清涼さのある歌声は、やっぱりとても聴き応えがありますね。
マリーの造形が変わったことで、ルドルフの在り方も以前とは変わったように思いますが、
今回のルドルフは、なんというかもの凄く"あり得る"ルドルフ”"だ、と感じました。
彼がひたすらに国を想い、悩み、選択し、
その結果未来を変える力がありながら、様々な要因で未来を変えられらなかった、ということが、
なんだか凄く納得できてしまったのです。
いや、これまでルドルフが出てくる舞台を観ると、どうにも不完全燃焼感があって(え)、
「天上の愛 地上の恋」を読み直したくなる衝動に駆られるのが常だったのですが、
今回は全くそんな気持ちにはなりませんでしたもの!(笑)

衣裳もそれぞれとてもお似合いでしたv
煙草を吸うシーンが多いので、ちょっと喉が心配になりましたが、
口に含んでいるだけだから大丈夫かな?
スケートのシーンは、ちょっとぎこちなさがあって微笑ましかったですv
マリーがとっても上手なので、なおさら(笑)。


マリー役、和音さん。
ほんとに強くてかっこいいマリーでしたv
1幕最後なんて、ほんとにこの二人なら、というかマリーが一緒なら、
ルドルフは世界を変えられちゃうんじゃないか、って一瞬錯覚しましたもの。
でもって、そういう聡明さと世間知らずさが、矛盾なく存在しているのね。
「三銃士」の時にも思いましたが、
井上くんとの歌声の重なりが、溶け合うのでもなく、反発しあうのでもなく、
寄り添うというよりももっと強く、共鳴し合って空間に広がっていくのがとても気持ち良かったです。
ステファニーやターフェとのやり取りは、気持ちの上では決して負けてはいないのだけれど、
彼女がよすがにしているものの危うさが感じられて、
その後のラリッシュとのやり取りでは、歳相応の幼さが見えました。


ステファニー役、吉沢さん。
たぶん初見ですが、とても綺麗な歌声ですねーv
前回の舞台でも、実は心情的にはステファニーの方が共感しやすかった私ですが、
(いえ、そういう経験があるわけでは決してなく!/笑)
今回も、ステファニーの不器用な懸命さにほだされました。
不器用、って言っても、きっと彼女はそういう風に教育された、彼女の常識に従って行動しているのであって、
彼女にとって、常識外れないのはルドルフとマリーの方なんだろうなあ。
♪それは私だけ! が、ルドルフを目の前にして、彼と絡みながら歌うという演出に、
凄い生々しさと容赦のなさが感じられて、ちょっと辛くなりました。
あの時代の王侯貴族の常識は同なのかわからないけど、
あれって、王宮内にマリーを連れ込んでたってことですよね?
いくら寝室が別だといっても、ちょっとルドルフ、サイテーって思っちゃいました(笑)。
教会でマリーと対峙したときの、抑えた演技も良かったなあ。
常識が全て正しいとは思わないけれど、愛が全てを許すわけじゃない。
そのことを、マリーも感じたのかしら。
最初の舞踏会のシーンは、アンサンブルさんとドレスの色が被っていたので、見失ってしまい、
マリーとルドルフが出逢った瞬間のステファニーの表情を見損ねたのが残念!


ターフェ役、坂元さん。
前回の岡さんの凄まじい(笑)ターフェも素晴らしかったですが、
等身大、というか実際にこうだったのかも、と感じさせる、人間味溢れる坂元ターフェでした。
単なる悪役ではなく、政治的な立場としてのルドルフとの対立が描かれていたように思います。
♪手の中の糸 でのルドルフへの迫りっぷりに、これはルドルフうなされるわ、と思いました(笑)。
ルドルフが署名した紙が入った箱がターフェの手に渡る流れは、ちょっと唐突?
でも、そうなるだけの手段を講じてたんだろうなあ、と納得させられちゃったり。
♪明日への道 で、演説するルドルフを見るときの表情の変化を、次回はちゃんとチェックしようと思います。
たぶんこの時に、彼はルドルフを排除することを決意したのだと思うので。


ラリッシュ役、一路さん。
いやもうさすがの存在感でしたv
♪美しき戦争 の華やかさも素晴らしかったですが、♪英雄だけが も圧巻!
ラリッシュとルドルフの関係って、幾つかの台詞に示唆されるだけなのですが、
細かいことは解からなくても、あの一曲でラリッシュの想いはしっかり語られていたように思います。
あのシーンは、舞台奥に映るルドルフたちの影の動きが凄く不安を煽る感じだったし、
舞台上に残された一脚の椅子の使い方がまたいいなあ、と思いました。
こういう細かい小道具の使い方とかも、ほんとに素敵な舞台だったと思います。


フランツ・ヨーゼフ役、村井さん。
なんというか・・・まさに真面目で伝統を重んじる皇帝、という感じでした。
ルドルフとの間に親子の情のようなものは余り感じられなくて、
むしろ深い確執と、息子に対する落胆のようなものがあったように思います。
歌声も、記憶していた村井さんの声とちょっと違ったのですが・・・役作りかな?
ルドルフとはターフェを間に挟んで向かい合っている印象でした。


アンサンブルさんは、歌もダンスもとっても見ごたえあり!
これまで舞台で何度も拝見している方も沢山いたのですが、
(こっそり応援中の保泉沙耶ちゃんも出演していて嬉しかったなv)
遠目だったのと、苦手なカタカナの名前で、どなたがどなただかちょっとわからず・・・残念!
次までに役名などちょっと予習(復習?)して、次はいろいろ見落とさないようにしたいと思います。
あ、エドワードとウィルヘルムのキャスティングって、やっぱりこういう感じが妥当ですよね(え)。


というわけで、ほんとにとっても素晴らしい舞台でした!
ルヴォー氏の演出は、以前に「人形の家」を観ていて、
そのときも好きだなあ、と思ったのですが、今回も思いっきりよろめきましたv
もっとチケットをとっておけば良かったと、ちょっと後悔。
歌もほんとに素晴らしかったので、是非ライブCDを出して欲しいな。
昨日は休日でしたが、2階席は結構空席がありました。
好みは分かれるかもしれませんが、ミュージカルがお好きな方は一度は観る価値あり!だと思います。
もしこの辺境ブログに迷い込まれて、行こうか迷っている方がいらしたら、
是非ご覧になることをお薦めいたします!
可能なら2階席中央でv

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
永遠の黎明 瓔珞の音/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる