瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2012/08/11 15:55   >>

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その小さな舞台の奥の壁は、その一部が切り取られていました。
切り取られた、と言うよりも破壊されたというような、無残な断面。
そして、その奥に広がる暗闇―――

人は、喪失を繰り返して生きていく。

思い出も、新たな出会いも、決してその喪失を埋めることはできないけれど。
でも、その大きな穴を抱えながら―――抱えているからこそ、
人は、時に振り返り蹲りながらも、新しい何かを見つけ、受け止め、受け入れ、
そして、前を向いて歩いていけるのかもしれない。

そんな風に、感じた舞台でした。


ミュージカル
「Bitter days, Sweet nights」

2012.8.3 CBGKシブゲキ! ソワレ G列10番台

作・演出:G2
音楽」荻野清子
出演:橋本さとし、新妻聖子、上山竜司、堀内敬子


最愛の妻フユコを亡くし、立ち直ることもできずに酒びたりの日々を送るミノル(橋本さとし)。
カメラマンとして、ミュージシャンであるフユコと出会い、惹かれあったミノルは、
フユコを失ったことで、カメラマンとしての立ち行かなくなってしまっていました。
―――女性が、撮れない。
その事実を知らない、フユコの親友でありエージェント(かな?)でもあったヤヨイ(堀内敬子)は、
ミノルを案じながら、彼に仕事を紹介しようとします。
けれど、彼女の気遣いは、ミノルを追い詰めるばかり。
そんな時、10年前に単身アメリカに行ったままだったフユコの妹ナツコ(新妻聖子)が、
突然帰国してきます。
フユコとそっくりなナツコの登場に驚き、動揺するミノルとヤヨイ。
そんな二人をよそに、ナツコはマイペースにミノルの生活に踏み込んできます。
ミノルが、自分が撮ったナツコの写真を仕舞いこんだ理由。
ミノルとヤヨイの結婚に反対していたはずのヤヨイが、フユコは幸せだったと断言する理由。
一枚の美しい写真が、フユコの日記に挟まれた理由。
そして、ナツコが帰国した理由―――
3人が、いえ4人が秘めた深い想いは、溢れんばかりにそれぞれの胸を満たし、
そこに、ナツコを追ってアメリカからやってきたジュン(上山竜司)の存在が投じた一石が、
その想いを溢れさせ―――


という感じの物語でした。
結構ぎりぎりに劇場に着いたので、物語を良く知らずに観ちゃったのですが・・・
G2さんの舞台で、ハンカチは必須だということを忘れていて、ちょっととんでもないことになりました(笑)。
ガマザリ「リタルダント」も号泣したのに・・・
なんというか、こういう物理的にも心理的にも小さな閉じられた空間の中で、
そこに生きる人たちの"想い"を描くのが、G2さんってほんとに上手いなあ、と改めて思ってしまいました。

正直なことを行ってしまえば、物語としてはちょっと物足りなさがありました。
かなり最初の方で物語の着陸点がわかってしまうというか。
互いのことを思いやりながらも、自分のことで精一杯な登場人物の在り方がちょっともどかしいというか。
でも、何気ない日常の中で、痛みを抱えて生きている人たちの物語なのだから、
そういう身勝手さも、根底に相手への思いやりがあればいいのかな、とも感じつつ・・・


ミノル役は橋本さとしさん。
登場直後の荒んだ雰囲気に、ちょっとどきっとしました。
メイクだったのかもですが、ほんとに目が落ち窪んで見えて、
投げやりに生きながら、というか、フユコという喪失を感じながら、なおも生きていられる自分に絶望している感じ。
他者を思いやる余裕もない彼がヤヨイに投げかける言葉や態度はとても冷たかったけれど、
ヤヨイの行動に対するミノルの苛立ちもちょっとわかるような気がしました(え)。
ナツコの登場で、ミノルは自分が愛したフユコという存在とその不在に正面から向き合うわけですが、
その過程は、"生きていく"自分を肯定することだったのかもしれないなあ、と思いました。
ナツコに促されて散歩に出て、今まで自分が見ないでいたいろいろなこと、
変化する夏の空の色や、その空に向かって咲く向日葵の凛とした姿や、タイ料理の辛さ(笑)を実感することで、
彼は、今も、そしてこれからも生きていかなくてはいけない、あるいは生きようとする自分を受け入れたのかも。
ミノルの表情がどんどん変わっていく様と、
そうやって変わっていく自分に対する戸惑いが、とてもクリアでした。
もちろん、橋本さんなので、しっかり笑いもとってらっしゃいましたよー。
ジュンとのやりとりとか結構容赦なくて、ミノルって本来こういう人なんだよな、きっと、と思いました。
最後、ミノルはナツコを撮ることで、自分自身を縛り付けていた枷から抜け出すわけなのですが、
その先には、また確実に一つの喪失が待っているわけで・・・
2回目の喪失を、彼は今度はどんな風に受け止めていくのかなあ。
それが、とても気になりました。


ナツコ役は新妻聖子さん。
一見自由に振舞いながら、その根底にある葛藤や恐れをきちんと見せてくれていました。
台詞や表情の端々に淡い焦燥が感じられて、
ああ、今回も新妻さんは儚い役なんだろうなあ、とけっこう早い段階で思ってしまいました(え)。
ずっと目を背けていた姉の想いに向き合い、彼女が自分たちに向ける想いをしることで、
ナツコの気持ちは穏やかになったのかな・・・穏やかに、自分の死と向き合えるのかな?
残される立場から、残していく立場になることで、彼女はミノルたちに何を伝えて旅立つのだろう・・・?
ミュージカルなのでもちろん歌はあったし、ナツコもかなり歌っていたのですが、
実はあんまり歌の記憶がありません。
それよりも、ちょっとした表情や後姿が印象に残っています。
新妻さんの魅力は、もちろんその類稀な歌声だし、大好きなのだけれど、
個人的には、「青空…!」やこの舞台のような、ストレートプレイに近い雰囲気の舞台での新妻さんを、
もっと見てみたい気がします。

というか、この舞台ってミュージカルとありますが、
実は私は音楽劇(「リタルダント」)との区別が良くわかりませんでした。
まあ、個人的にあんまりそういうジャンル分けって重要視していないので、いいんですけどね。
誰かクリアに説明してくれないかなあ(他力本願な/笑)。


ヤヨイ役の堀内敬子さんは、舞台で拝見するのは初めてかな?
ドラマでは何度か見た記憶がありますが、
ドラマの時と、良い意味で余り雰囲気が変わらない方だなあ、と思いました。
なんというか、とってもナチュラル!
ミノルに詰られた時の泣き顔も、ナツコと向き合うときの複雑な表情も、
その上で、ミノルにナツコを追わせるときの凛とした表情も、
凄く自然で違和感なくヤヨイという存在を見せてくれたように思います。
歌声も、はっとするような輝きのあるタイプではありませんでしたが(役作りですね、きっと)、
とても理性的で、でもちゃんと心の柔らかさを感じさせるもので、
ナツコにフユコが結婚式で歌った歌を伝えるシーンでは、思いっきり涙してしまいました。
親友と、仕事相手と・・・当事者にとても近い存在でありながら、
常に傍観者でしかありえなかったヤヨイ。
今度は、彼女が踏み出す番なのかもしれません。


ジュン役は上山竜司くん。
「ロックンロール」で初めて観て以来、いつかミュージカルで観たいなあ、と思っていたのですが、
今回やっと実現しました。
歌自体はあまり多くはありませんでしたが、滑らかで柔らかい肌触りの歌声が印象的でした。
突然姿を消したナツコを追ってアメリカからやってきた日系アメリカ人な役なのですが、
片言の日本語が不思議なほど違和感がないように私には思えました。
いや、もちろん笑いもとってましたけどね・・・
というか、登場シーンの歌が普通の日本語だったので、
芝居で喋るときがいきなり片言になっちゃったのが、結構衝撃だったかも(笑)。
ので、その最初の衝撃をやり過ごしちゃったら、普通に日系アメリカ人にしか見えませんでした。
英語の発音も綺麗・・・だったと思います(英語苦手ー/涙)。
ナツコとのやり取りとか、おおお!という感じで、
ヤヨイが「日本語で!」と間に入ったのに、その通り!と頷いちゃいましたから(笑)。
彼は、ナツコの希望を受け入れて、彼女の最後の時間をミノルに受け止めるよう伝えるのですが、
きっと彼自身もナツコの傍を離れないんじゃないかなあ、と思います。
というか、そうあって欲しいな、と思う。


ジュン役は、当初は白州迅くんという方がキャスティングされていたのですが、
開幕近くになって体調を崩されてWキャストになり、結局開幕後に降板になってしまったとのことです。
プログラムには、上山くんと白州くん両方のページがあって、白州くんの特集(?)とかもあって、
それを読むと、ほんとに頑張ってたんだなあ、というのが伝わってきました。
今回拝見できなかった残念さは、上山くんを観れた嬉しさと同じ重さがあります。
いつか、別の機会で白州くんに出会えると良いな。
きっととても悔しくて哀しいと思いますが、どうぞ今はゆっくりじっくり身体を直して、
未来へ進んでいって欲しいと思います。


初めてのシブゲキは、思ったより小さな空間でした。
座席がなかったら、ライブハウスみたいな印象。
セットの雰囲気は、「リタルダント」に似ていたかな。
基本的にはミノルの家が舞台なのだけど、
打ち壊された壁の破片みたいな感じのテーブルや座卓が、
向きを変えると、花壇や山などの違うものになったりしていました。
玄関の扉とは違うところからヤヨイは出入りしていたけど、あれは縁側なのかしら?
ナツコが作るアメリカンな朝食(ほんと?)にもちょっと心惹かれました(笑)。
小さな空間なので、生歌に近い音響だったのも、この舞台に合っていたように思います。
閉ざされた空間と、デフォルメされたセットなのに、
夏の空の色や風鈴を鳴らす風を感じられたように思いました。

演奏は、作曲もされた荻野さんのピアノだけ。
荻野さんは「リタルダント」の作曲もされていますが、とても優しいメロディが今回も素敵でした。
少人数の役者さんとピアノ、というのは、先日観た「スリル・ミー」と同じですが、
その関係性は全く違っていて、その点も興味深かったです。
「スリル・ミー」は、二人と感情的に対等で、ぶつかり合ったり煽り合うような印象でしたが、
今回は、役者さんたちにすっと寄り添う感じでした。
存在感がないわけではなくて、登場人物の心情を伝える媒介のような印象。
そういういろんな関係性が見えるのも、観劇の醍醐味ですね。

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