瓔珞の音

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zoom RSS その手紙が届けるもの

<<   作成日時 : 2012/09/17 18:26   >>

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西にある台風の影響か、今日はとても風が強いです。
カーテンを舞い上がらせて部屋に吹き込んでくる爽やかな風に、
1時間ほどぐっすりと午睡をとることができました(当直明けなのです・・・)。

閉鎖された空間であるはずのこの舞台にも、
カーテンを揺らし、二人が感じる爽やかな風が、確かに吹いていたように思います。


「ダディ・ロング・レッグズ」

2012.9.15 ソワレ シアター・クリエ 15列 一桁台

原作:ジーン・ウェブスター
音楽・作詞・編曲:ポール・ゴードン
編曲:ブラッド・ハーク
翻訳・訳詞:今井麻緒子
脚本・演出:ジョン・ケアード
出演:井上芳雄、坂本真綾


本好きの女の子なら、きっと誰もが一度が読んだであろう「足ながおじさん」。
私も例に漏れず、子どもの頃に何度も読み直しました。
それでも、最後に読んだのはもう高校生の頃。
正直、細かな内容はほとんど覚えていませんでした。
でも、舞台が始まって、真綾さん演じるジルーシャが、壁に映る背高のっぽな影を目にした瞬間、
初めてこのシーンに触れたときの、何処か怖いようなわくわくした気持ちがふっと心に浮かんできました。
そして、そんな風に、私の記憶の奥底に隠された感情は、
この舞台を観ている間中、浮かんでは消え、消えてはまた浮かび・・・
なんだか少女の頃にタイムスリップしたような気持ちになりました。

舞台自体は、とてもとても穏やかで静かな雰囲気でした。
二人芝居、ということもありますが、ジルーシャの手紙を読むという形式で、
大きな事件や全てを打ち壊すようなカタルシスがあるわけではなく、
淡々と、静かに、けれど確実に降り積もり、変化していく感情が、
繊細で優しい旋律と歌声に包まれて鮮やかに喚起されました。

というか、まず劇場に入った瞬間に心惹かれたのが、あのセット!
ジャーヴィスの書斎が奥の一段高いところに、その手前にジルーシャが暮らす空間が作られているのですが、
そのジャーヴィスの書斎がとにかく個人的には思いっきり好みだったんです!
壁一面に作りつけられた大きな本棚と、そこに掛けられた梯子。
本棚の間にひっそりと隠れるようにある出入り口。
大きな机と座り心地の良さそうな椅子。
そして、白いカーテンの揺れる出窓。
いやもうほんとにここに住みたい!と思ってしまいましたよ(笑)。
多分、ジャーヴィスなりの基準で不規則に並べられた本の奥の本棚の壁が、
場面によって外の風景になるところも素敵だったなあ。
ジルーシャの空間も、アンティークっぽい大小幾つもの箱が置いてあって、
それが二人の手で並び替えられて、
そのままスーツケースや宝箱なだけではなく、
椅子になったり机になったり、ベッドになったり、山になったり・・・
こちらの想像力にも委ねられるそのセットは、この舞台の雰囲気にとても合っていたと思います。

そして、そんな素敵な空間で繰り広げられる二人の物語は、ほんとうに瑞々しいものでした。

真綾さんのジルーシャは、ジルーシャという少女が大人になる4年間の変化を、
とてもリアルに見せてくれたように思います。
澄んだ歌声と表情豊な台詞、そして決して大きくはないのに雄弁な仕草に、ああ、ジルーシャだ、と思いました。
ずっと出ずっぱりで、衣裳も舞台の上で変えていって、歌って、喋って・・・本当に大変な役だと思うのですが、
観ている間は、とにかくジルーシャが遭遇する事柄、それに対する彼女の感情の動きの鮮やかさに、
微笑んだり、苦笑したり、驚いたり、哀しくなったり、怒ったり、ときめいたり・・・私の感情もめまぐるしく動きました。
そして、そんな風に動く感情が、とっても新鮮だったのです。

ジルーシャという女の子は、決して"出来た"女の子ではないと思います。
自分の境遇に対するコンプレックスもあれば、葛藤もある。
顔も知らないダディへは、信頼と感謝とともに、インクの沁みのような不安や不信もあったでしょう。
一人の篤志家の(しかも女の子嫌いの!)気まぐれの上に成り立っている現在の生活―――
私だったら、身を縮ませて9ヶ条を守ろうとして、自滅しちゃうんじゃないかなあ、と思う。
でも、ジルーシャはそうではなかった。
与えられた生活の中、出逢うもの全てを瑞々しい素直な感覚で受け止めて、
それに伴って生ずる自分の感情を、決して偽らず、むしろ喜びを持って受け入れていたように思うのです。
そのしなやかな感性が、彼女自身の溌剌とした雰囲気と相まって、ほんとに魅力的でした。
そんな風に彼女が経験したものが、舞台の上に本という形で並んでいくのも良かったなあ・・・

そして、彼女の書く手紙の文章!
本で読んだときもとても楽しかったけれど、こうやって声にのり、歌にのって聴くことで、
彼女の文章の魅力が更に際立ったように思います。
それは、舞台奥で彼女の手紙を(私たちと一緒に)読むジャーヴィスの存在によるところも大きいと思います。

原作では、もちろん手紙を読むジャーヴィスの様子は描かれていません。
ですから、ジャーヴィスがどんな風に彼女の手紙を読んだのかは、読み手が想像するわけですが・・・
正直、私は全然"手紙を読むジャーヴィス"というのを考えたことがなかったように思います。
今回の舞台では、最初の手紙からジャーヴィスの姿がありました。
それは、私の中にあった"足ながおじさん"とはもちろんちょっと違ったのだけれど、
ジルーシャの手紙を読みながら、思わずという感じで自然なリアクションをする井上くんのジャーヴィスが、
ジルーシャと同じくらい、この物語の中で鮮やかに変化していく様は、
観ていてほんとに微笑ましくなっちゃう感じでしたv

冒頭の、斜に構え、どこか暗さを感じさせるジャーヴィス。
才能に支援するだけ、と呟きながら、ジルーシャの手紙を本棚にピンで留める彼。
暗い部屋の中、ジルーシャが選んだ明るく可愛らしい便箋が増えていくごとに(舞台では同じ紙でしたが)、
ペンドルトンという名前に押し隠されていた、本来のジャーヴィスが解き放たれていくような感じがしました。
ジルーシャが書き綴る彼女の体験と感情を、それを読むことで追体験し、
彼女が初めて手にした本を、もう一度読み直し、
仕舞いこんだまま忘れていた、自分自身の子どもの頃の思い出に触れ―――
そんな風に自分を変えていく相手に、惹かれないはずがないよなあ・・・と、なんだか納得しちゃいました(笑)。
ルームメイトの叔父さんとして彼女の前に現れたときにはまだ戸惑いがあったようだけれど、
その後の彼の行動の素直さといったら!
大きな身体をかがめてタイプライターを打つ姿も、
ジルーシャの手紙の文章に一喜一憂する姿も、
(「私の読んだ本を全部読んでいるのです」というよな台詞に、にやっと笑った顔が印象的でした/笑)
彼女の最後の夏休みを、自分の思い通りにしようとして、
やること全てが裏目に出てしまったときの頭を抱える姿も、なんだかもう可愛くて可愛くて・・・v
その独占欲の理由に、本人が途中まで自覚がないところがなお可愛く!
いやもう、井上くんを可愛いと思う日がこようとは思ってもみませんでした(笑)。

ダディの手をはなれ、作家として自立していこうとするジルーシャ。
それは、彼が望んだ姿であったはず。
でも、自分が与えた援助以上のものを彼女から受け取っていたこと、
その彼女自身が自分にとってかけがえのないものであることを自覚した彼は、
最終的に自分の正体を明かすわけですが・・・

はっきり言って、二人の関係って全然フェアじゃないですよね?
ジャーヴィスはジルーシャの考えることを知っていて、その上で行動している。
途中何度も真実を話すチャンスはあったのに、それが出来なかったのは、
ジャーヴィス自身の弱さと甘えだったと、ちょっと厳しい見方かもだけど、そう思います。
でも、これまで望まなくても物質的には全てが手に入る生活をしてきた彼が、
本当に手に入れたいものを前にしたときに、
そしてそれが決して財産や地位では手に入らないものだと知っていれば、
躊躇っちゃうのも仕方がないのかなあ、とも思う。
本で読んだときは、ダディはあくまでダディだったので、そんな風には感じなかったのですが、
この舞台で"生身の"ジャーヴィスを目にしたら、なんだかそんな風に思ってしまって、
ジャーヴィスの書斎で二人が"出会う"シーンは、
自分でもどっち目線で見れば良いのかわからなくなっちゃいました(笑)。

このシーンは、多分舞台オリジナルなのだと思うのですが(原作が手元にないので・・・/汗)、
「秘書だったの?」という台詞から、事実を認識して変わっていくジルーシャの表情がほんとに素晴らしくて、
この瞬間は、完全ジャーヴィ坊ちゃん目線だったと思います、私(笑)。
驚きと、羞恥と、怒りと、喜びが、凄く複雑に交じり合って、
たぶん混乱の果てに、冷静な無表情に落ち着いたジルーシャ。
そんな彼女を前に、たぶんこれまでの人生で一番一生懸命言葉を尽くして、
でも、もう自分でもどうしたら良いのかわからなくてちょっと逆ギレしちゃうジャーヴィス(というかジャーヴィ坊ちゃん!)。
いやもうほんとにハラハラドキドキしました(笑)。
最終的には、ジルーシャがまたちょっと大人になって、素直に喜びを受け入れることで、
収まるところに収まるわけですが、
すれ違い、絡み合った二人の立場と感情が、この一瞬に大きく変わっていく様が、
そして、自分が求める本当の相手と向き合った二人がかわす微笑が、
観ていてとっても嬉しくて、そして同じくらい面映くて・・・なんだか凄く幸せな気持ちになってしまいました。
うん。
ハッピーエンドって、こうでなくっちゃね!

本当に、とても瑞々しく可愛らしいラブストーリーを見せていただきました。
改めて原作を読み直したくなっちゃった。
たぶん、今読んだら、文章の向こうにちょっと挙動不審なジャーヴィスが思い浮ぶんだろうなあ・・・(笑)
今回1回しか観れなかったのが本当に残念!
さすがに地方公演は観にいけないので、いつかまた是非再演していただきたいです。

この舞台の前に観た朗読劇でも思いましたが、文章というか言葉の力って、ほんとに凄いと思う。
朗読劇では、文章が喚起するイメージの鮮やかさに瞠目したし、
この舞台では、文章が伝える言葉以上の何かを再確認したように思います。
この物語では、ジルーシャの書く手紙は、"彼女自身"を、もしかしたら直接会って話す以上に、
ジャーヴィスに鮮烈に印象付けたわけだけれど、
小説にしろ、エッセイにしろ、あるいは新聞の記事にしろ、
文章の向こうには、それを書いた人自身が多かれ少なかれ透けて見えるんだろうな、と思う。
というか、そういう風に状況にマッチした形で、"自分"を感じさせる文章が書ける人の文章って、魅力的。
逆に、文章や言葉は幾らでも取り繕えるけれど、でも、やっぱり隠し切れない"真実"はあるはずで・・・
私自身の文章はどうなのかなあ、と、ちょっと思ってしまいました。
物語を書くことは、もうずいぶん昔にやめてしまったけれど、
こうやって観劇記録や日記の形でも文章を書き続けていくことで、
いつか少しでも魅力的な文章が書けるようになるといいなあ、と、そう思いました。

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