瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2012/10/30 21:42   >>

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観劇をすると、必ずその舞台のプログラムを購入します。
読み応えのあるプログラムもあれば、
読み物よりもビジュアル重視のプログラムもあります。
新感線のプログラムは、どちらの要素もしっかりで、大きさも写真も読み物もかなり充実していて毎回楽しみだし、
彩の国シェイクスピアシリーズのプログラムは、一度床一面に並べてみたいなあ、と思っています。
野田地図の、粗筋の載っていないプログラムには強い意志を感じるし、
新国立劇場のプログラムは、あの内容であの値段!といつも思います(笑)。
劇場に入って手にしたプログラムが好みの装丁だったとき、嬉しくなったりしませんか?

この舞台のプログラムは、その装丁も、サイズも、中の写真や文章も、みんな私好みで、
なんだかとっても嬉しくなってしまいましたv

古い本のような褪せた色合いと、そこに刻まれた細い線の模様。
暗い色合いの、けれど、その上にある青空と太陽の存在を確かに感じさせる雲の写真。
そして、常に大きく見開かれ、真っ直ぐに前を見つめる彼女の眼の美しさ―――

生きることは信じること。

そう言い切ることのできる彼女の強さに、私は憧れてやみません。


「Jane Eyre」

2012.10.27 ソワレ 日生劇場 1階I列20番台

出演:松たか子、橋本さとし、寿ひずる、旺なつき、阿知波悟美、山崎直子、辛島小恵、小西遼生、福井貴一、
    壌晴彦、小西のりゆき、鈴木智香子、さとう未知子、安室夏、谷口ゆうな、山中紗希、阿部よしつぐ、
    吉井一肇、笹近実佑、蒲生彩華


この舞台も、三年前に初演を観ていました。
1回しか観ていなかったし、実は記憶が曖昧で(汗)。
でも、舞台冒頭のロチェスターの「ジェーン」という呼び声を聞いた瞬間に、
ああ、私は確かにこの世界を知っている、と思いました。

全体的な印象は、前回と余り変わりないかな。
なんというか、とても"静けさ"のあるミュージカル、という印象。
もちろん、ミュージカルですから音楽はずっと流れているし、
開演前や幕間も、鳥の声が響いていたりでずっと"音"はあったのですが。
たぶん、そう感じたのは、松さん演じるジェーンの佇まいによるもののように思います。

白い襟のついた、シンプルな黒の衣裳を着て、真っ直ぐに背筋を伸ばした凛とした立ち姿。
好奇心と強さを秘めて、きらきらと輝くような大きな瞳。
けれど、息を潜めて相手を見つめているような、小さなジェーンの名残のような気配。

前回観た時は、小さなジェーンはあくまで彼女が語る過去で、
"今"のジェーンとは、隔絶した存在のように感じました。
だからこそ、病床のリード夫人に向かって二人が歌う歌は、
過去と現在が重なり交差するような、一つの完成形としての美しさがあったように思います。

でも、今回のジェーンは、小さなジェーンを内包したジェーンだ、と感じました。
だからかな。
常に自分を律し、冷静であろうとするジェーンがふとした瞬間に見せる子どものように素直な表情が、
とても印象に残ったのです。
例えば、学院を後にして一人旅立つ瞬間。
例えば、初めて得た自分の部屋に入った瞬間。
例えば、馬で走り去るロチェスターの姿に、"自由"を見た瞬間。
そこには、大人になることを求められ、大人になろうとし続け、
そして大人になったと感じている二十歳前の女性の中に、
確かに存在し続ける"少女"の気配がありました。
そして、その一瞬か今見える"少女"の存在がとても可愛らしくて、とても愛しくて、
思わず笑顔になると同時に、なんだか泣きたくなってしまうような切なさがありました。

自分が向かい合う相手に対する感情の流れも、とても素直だったように思います。
ロチェスターには、ほんとに出逢った最初の時から心惹かれてたんだなあ、と感じました。
彼女にとって彼は、初めて出逢う"大人"の男性で、そして、自由の象徴だったんだと思う。
けれど、その"自由"なはずの男が、どうにもならないしがらみに囚われて、
そして、その中から懸命に自分へと手を伸ばす―――
それは、自由を求める彼女にとっては、たぶんもの凄い恐怖だったんじゃないかなあ・・・
ジェーンがソーンフィールドから出て行ったのは、
バーサの存在ももちろん理由ではあるとは思うけど、
ロチェスターと共にあることで"自由"を見失ってしまうかもしれない恐怖もあったのかな、と思う。

そんな風に思ったのは、さとしさんのロチェスターもまた、
大人になりきれない"少年"のような部分を持っていたからかな、と思います。
基本渋くてかっこいいのですが、やってることってアデーレと変わんないよねー、と思ってしまった(笑)。
欲しいものを手に入れるために、なりふり構わず手段を講じ、そして縋りつく―――
ある意味潔い、と言ってしまってもいいようなその行動が、微笑ましいやらいらいらするやら(え)。

シンジュンに対する感情も、ほんとに素直。
いやだって、感謝はしていても、全然シンジュンには好意を持ってなかったよね?
また小西くんのシンジュンが、最初の好青年な印象から一転、
正論!という表情で極論を吐くというか(笑)、もの凄くエゴイスティックな男でして。
まあ、時代背景的にはそういうものなのかもですが・・・これはジェーンも戸惑うよね、と思ってしまった。
もちろん、シンジュンにはジェーンへの確かな恋心があったのかもしれないけれど、
自分の欲を、相手のため、神の意思、と言い切ってしまうところが、
なんだか観ていてちょっと怖かったです。
だから、真剣に祈るジェーンの耳にロチェスターの呼び声が聞こえたときは、ほっとしちゃった(笑)。
ごめんね、シンジュン(笑)。

三人の関係をそんな風に見ていたせいか、ロチェスターの声を聞いたジェーンが彼の元へ戻っていくことを、
なんだかすんなりと受け入れてしまっている自分がいました。
うーん、上手く言葉にはできないのですが、
正しいけれどたてまえと欺瞞に満ちた未来ではなく、
たとえ苦難に満ち溢れていても、自分の想いが向かう未来を選んだのかな、と。
本当の意味での、"魂の自由"を、彼女は選んだのかな、と。
そんな風に感じたのかな、と思います。

最後の曲、♪愛する勇気を に「生きることは信じること」という歌詞がありました。
ジェーンは、自分が出逢う全てのものを、自分が愛する全てのものを、そして、自分自身の想いの向かう先を、
ずっとずっと信じていくのだろうな、と思う。
信じているからこそ向かい合い、
向かい合うことによって信じることができる。
そういう関係性って、もの凄く難しいけれど、あの凛とした立ち姿と輝く瞳で、
彼女はそうやって生きていくんだろうなあ・・・
そのことが、なんだかとっても羨ましく感じてしまいました。


役者さんのことを少しだけ。
メイスン役の福井さん。
「ラ・マンチャの男」で気になっていたので、ここでまた拝見できてとても嬉しかったです。
メイスンの行動は、ある意味とても一貫していたように思うけれど、
彼が望んだ未来はなんだったのかなあ・・・?
旺さん演じるバーサの幸せだったのかな。
この物語でロチェスターが語るバーサは、なんだかとても酷い女のように聞こえたけれど、
メイスンからみたら、事実はまた別の側面があったのかもしれないな、と思います。

阿知波さんのリード夫人は・・・息子がやっていることを知っていて、
それでもなお、ジェーンを虐げるだけの理由があったのだ、と感じさせてくれたように思います。
そして、その暗い想いを抱えたまま逝くことで、ジェーンの重荷も背負ってくれたのかな、と思う。

寿さんのフェアファックス夫人は、なんとも複雑な人の良さで微笑ましかったですv
ジェーンの結婚を知ったときも、基本的には本気でジェーンを案じてたんですよね。
きっとジェーンが去った後の苦難の時を、彼女はしっかりと支えていたんだろうなあ、と思います。

さとうさんのヘレンは、本当に透き通るように優しい存在だなあ、と思いました。
でも、このヘレンもまた、ジェーンの記憶の中のヘレンであって・・・本当の彼女はどうだったんだろう?、
と思ってしまいました。
ヘレンのあの優しさや信心が、彼女が経てきた痛みや苦悩の果ての諦念でなければいいのですが。
そんな風に感じてしまう私って、やっぱりひねくれてるかなあ・・・?(笑)

子役さんたちも、ほんとにお上手でしたv
アデーレは、もっとハチャメチャだった印象なのですが、ちょっと大人しかったかな?
いえ、たぶん私の記憶違いですね(汗)。
ジョン役は、ほんとに難しいなあ、と思います。
2幕でさらっとシンジュンが語る彼の最後の色合いが、1幕のジョンのあり方で違ってくるように思うので。
吉井くんのジョンは、その最後がまったく違和感ないだけでなく、
リード夫人との関係性も見せてくれたかな。

辛島さんのブランチは、一生懸命意地悪してるのだけど、
それがちょっと強がってる感じに見えました。
彼女自身、選び取ろうとしている自分の未来に、とても不安と違和感を感じているというか・・・
でなければ、あんなにあっさり怪しい占い師の言葉なんて信じないよね。

ソーンフィールド館に勤める方々も、なんだかとても仲良しな感じで微笑ましかったですv
ジェーンとご主人様の結婚も、複雑な思いを持ちながらもちゃんと祝福してる感じ。
あ、その前の、♪トチの木 は、とても美しいハーモニーでしたv
鈴木さんのグレースは、バーサとの関係性がとても気になりました。
年齢不詳な感じなので、バーサとは乳兄弟でお嫁入りに一緒についてきたとか・・・
単なる介護人、という以上の関係があったんじゃないかなあ、なんて思います。
最後のシーンでは、召使たちの中にグレースの姿がなかったように思うのですが、
彼女はどうしたのかなあ・・・とちょっと気になりました。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
恭穂さま
私は最近は観た公演は必ずプログラムを買う訳では
ないのですが、この作品は買いました。
そして恭穂さんと同じく、とても気に入りました。
ちなみに、その時、「エッグ」のプログラムも
買ったのですが、どちらもコンパクトサイズで
よかったですよね(笑)。

「ジェーン・エア」とても印象に残る作品でした。
私の中の「ミュージカル」のイメージをいい意味で
裏切ってくれたと思います。
松たか子さんのジェーンは本当にすばらしい。
これ、大阪だったら確実にリピしていたのですが。
スキップ
2012/11/01 12:53
スキップさん、こんばんは!
お返事が遅れてしまってすみません。

プログラム、集めると大変なことになるのはわかっているのですが
(主に部屋の中が/笑)
ついつい買っちゃうんですよねー。
「エッグ」、私も買いましたが、読み応えあり!でしたね。
椎名さんの楽曲が好きなので、CD付にしたのですが、
どちらも大満足でした。

松さんのジェーンはほんとに素敵でしたね。
ライフワーク的に、繰り返し上演して欲しいなあ、
なんて思っています。
次に再演されるときは、私もリピートしたいですv
恭穂
2012/11/06 21:41

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