瓔珞の音

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zoom RSS 100万回と1回目

<<   作成日時 : 2013/02/02 20:19   >>

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久々にとても暖かい一日だった今日。
梅の小さな丸い蕾や、白木蓮の萌黄色の蕾が出ていることに気付きました。
明後日は立春。
これからまだまだ寒さは厳しいけれど、春の準備は着々と進んでいるのですね。

さて、肩凝りに負けてのびのびになっていた1月の観劇記録を。
でもこの舞台、文章ではどうやってもあの雰囲気は伝えられそうにないなあ・・・



「100万回生きたねこ」

2013.1.13 ソワレ 東京芸術劇場プレイハウス 1階L列16番
2013.1.26 ソワレ 東京芸術劇場プレイハウス 1階F列一桁台

原作:佐野洋子
演出・振付・美術:インバル・ピント、アブロシャム・ポラック
脚本:糸井幸之介、戌井昭人、中屋敷法仁
音楽監督:作曲:阿部海太郎
作曲:ロケット・マツ
作詞:友部正人

出演:森山未來、満島ひかり、田口浩正、今井朋彦、石井正則、大貫勇輔、銀粉蝶、藤木孝
    水野栄治、柳本雅寛、江戸川卍丸、皆川まゆむ、森下真樹、清家悠圭、鈴木美奈子、三東瑠璃


佐野洋子さんの描かれた絵本「100万回生きたねこ」を、
イスラエルの振付師の演出のもと、ミュージカルしたというこの舞台。
実はもとの絵本も本屋さんでさらっと見たきり(じっくり読むと泣きそうだったので)で、
振付師さんの名前も全然知らなかった私。
前情報は殆ど得ずに、まっさらな気持ちでの観劇となりました。
でも、それが返って良かったかも・・・?

初めて触れる振付師のお二人の世界観がとにかく独特!
キャンパスのような風合いの大きな枠に囲まれた一段高い舞台。
幕代わりの生成りの布が取り払われると、そこには同じ風合いの空間。
その奥の小さな可愛い家と、壁に取り付けられた3つの灯、高い天井から吊るされる灯と大きな天窓。
不思議に大きなベッドと、上手奥に作りつけられた本棚。
落ち着く空間だなあ、と思っていたら、その小さな家から出てきたのは、家よりも大きな女の子!
実は極端な遠近法でこの空間は成り立っていたのです。
下手側の3つの扉も、もちろんその遠近法トリックの中にあって・・・
その扉が使われるたびに、なんとも不思議な気持ちになりました(笑)。

遠近法トリックだけでなく、その後もいろんないろんな驚きがいっぱい!
曖昧な強さの灯、壁に揺れる大きな影、小さな扉から現れる大きな人、
壁に取り付けられた椅子に座る王様とお妃さま、蝶ネクタイに燕尾服のお魚、
小さな箱から天井に届くぐらいの高さまで飛び出す女の子、舞台の奥の空間にすっと消える人影・・・
1幕は特に、素朴な色合いだけれど、とても繊細に作りこまれた、初めて読む絵本のページを、
一枚一枚繰っていくようなワクワク感がありました。
音楽も、足踏みオルガンにアコーディオン、ピアニカ、縦笛といった楽器での演奏で、
可愛いけれどノスタルジックで、そして何処かシニカルな印象の不思議な曲。

そして、この空間をさらに不思議に魅力的な空間に仕上げていたのは、役者さんたち!

タイトルロールなとらねこくん役は森山未來くん。
ヘドウィグを観損ねたのでワカドクロ以来なのですが、あの身体能力の高さにはほんとに毎回驚かされます!
とらねこくんとはいえ、衣裳はあんまり猫っぽくはなかったし、
動き方は決して私の中の猫のイメージに合ってはいないのですが、
気だるげな様子から、ふっと瞬間的に動き出すときの敏捷さや、
狭い棚の上にひょいっと飛び乗る優雅さ、
そして、孤高なのにふいに人に寄り添う予測のつかなさが、なんとも猫っぽくて嬉しくなっちゃいましたv

とらねこくんは、たくさんの人から"自分のねこ"と言われます。
そして、いろいろな形で死を迎えます。
女の子のねこの時は、遊ぶ女の子の毛糸に絡まって。
王さまのねこの時は、攻め込んできた敵兵の槍で。
どろぼうのねこの時は、番犬に襲われて。
船乗りのねこの時は、嵐の海に落っこちて。
手品使いのねこの時は、そのトリックの爆発で。
老婆のねこの時は、しずかにその寿命を迎えて・・・

自分は誰のねこでもない、と呟きながら、死ぬのなんかなんともないよ、と嘯いて死んでいくねこ。
とらねこくんの死は、いろいろな形で表されますが、
必ずとらねこくんは舞台を囲む枠の下辺中央の綺麗な扉から、
何事もなかったかのようにまた生き始めます。
ちょっと直前の死の名残を引きずっていることもありますが・・・でも、彼にとってその苦痛はもう過去のこと。
新しい誰かに求められ愛されて、新しい生を生きていきます。
やっぱり、自分は誰のねこでもない、と思いながら。

でも、ねこと一緒に生きた人たちは、違います。
彼らがとらねこくんに向けた愛情は、とらねこくんにとって取るに足らないものであったかもしれないけれど、
でも、彼らがとらねこくんのために流した涙は、どれもとても綺麗な形で表現されていました。
うえーん、と素で泣いたのは女の子。
王さまの涙は、深い色のガラス瓶から零れ落ちる水(後ろの兵士が瓶を傾け、さかなくんがバケツで回収!)。
どろぼうの涙はきらきらの紙吹雪(だったかな?)
船乗りの涙はストローから。
手品使いの涙は、弟子たちが放つ銀色の糸(?)やクラッカー。
老婆の涙は天井の袋から降り注ぐ銀色の紙吹雪。
どの涙もとても綺麗で、でも、それは絵本の中の絵のように、どこか酷く遠かった。
たぶん、それはとらねこくんの心情の位置なのだと思う。

そして2幕。
1本の大きな木のある草原の中で、今度はだれのねこでもないままに生きるとらねこくん。
たくさんのめすねこさんたちのアプローチを袖にして、一人を満喫していた彼は、
まだ若いしろねこさんに出逢います。
満島さん演じるこのしろねこさんが、とにかくめちゃくちゃキュートなんです!
裾の広がった白い衣裳のすらっとしたシルエットもお似合いでしたが、
その動きがとらねこくんとは違う質の優雅さ。
座った状態で、足で表現しているしっぽの動きとか、どこか遠くを見ているような表情とか、
「そう」というそっけない言葉の落ち着いた響きとか、凄く魅力的v
1幕の女の子のちょっとたどたどしい動きも、小さな女の子そのもので可愛かったなあ。
歌声も、ミュージカルの歌声、というよりは"ことば"そのもの。
綺麗とか、迫力のある歌声ではないのだけれど、すっとこちらの心に届く感じでした。

100万回死んだ自分にまったく興味を示さないしろねこ。
それどころか「じゃあ、何回生きたの?」と真っ直ぐな目で見つめ返すしろねこ。
そんなしろねこさんに、とらねこさんはどんどん惹かれて行きます。
その表現がまた可愛らしかったんですよねー。
ぎこちないアプローチ。
ちょっとずつ距離を縮めていくとらねこくん。
そして、ゆっくりと触れるしっぽ(足で表現!)が伝える心―――
そのあとのシーンは、ほんとにほんとに素晴らしかった!
ゆったりとした音楽にのって踊る二人が、しりとりのように単語を並べていくのですが、
その単語の並びが直接的ではなくても、きちんと彼らの生きた時間を感じさせてくれるのですね。

寄り添う心。
かわされた告白。
もう一度告白。
けんか。
仲直り。
旅立ち。
子どもたち。
そして、もう一度二人きりで寄り添う彼ら。

静かに、静かに、眠るようにその生を終えていくしろねこさん。
残されたとらねこくんが、しろねこさんに触れる優しい手。
そして、彼の慟哭。
きみとの別れ。
きみと居たい。
きみと生きたい―――

たくさんの人たちの涙に悼まれながら、決してその涙を感じることのなかったとらねこくんが、
初めて自分自身で流す涙。
このシーンは、ほんとに森山くんの独壇場だなあ、と思いました。
もちろん、彼の膝枕で眠るしろねこさんの存在感あってこそではあるのですが、
彼の流すリアルな涙と、これまで静けさを保っていた空間を切り裂くようなその慟哭が、
1幕に描かれた涙との対比と相まって、なんというか一つの完璧な形になったように思いました。
その後、しろねこさんに寄り添うようにして息絶えるとらねこくんを、
これまでとらねこくんのために泣いた人たちが静かに見つめるのが、とても印象的。
その表情はもちろんそれぞれなのだけれど、
慈愛や安堵や優しさだけでなく、厳しさや淋しさも交じり合ったような複雑な色合いで・・・

彼らの表情を観ていて、とらねこくんは100万回と1回死んだのではなく、
100万回死んで、1回を生き抜いたんだなあ、と思いました。
タイトルとは違ってしまうのだけれど・・・
でも、死んだということと生きたということは、決してイコールではないのだと、
なんだか漠然と思ってしまいました。


王さまを演じたのは、今井さん。
朗々と響く声の強さとは裏腹に、眉間の深いしわが消えないような、ちょっと憂いのある王さま。
銀粉蝶さん演じるしっかり者の王妃さまに支えられて、戦争を続けていく王さま。
王さまと王妃さまのことば遊びのようなやりとりがとても面白かったです。
戦争を憂いながら、戦争を続けていかなくてはならない王さまにとって、
とらねこくんは本当に癒しだったんだろうなあ、と思いました。
王さまのシーンは、ダンサーさんたちが白い衣裳で兵士として動くのですが、
二人の椅子を支えたり、王さまを肩車したり、バルコニー代わり(?)のベッドを動かしたりと大活躍!
みなさん白をベースとしたメイクに丸いピンクのチークがとても可愛らしかったです。
もちろん大貫くんもこのメイクv

どろぼうコンビは石井さんのどろと田口さんのぼう。
いきなり天窓から逆さづりで登場、会話が始まってびっくりしました(笑)。
とらねこくんが紐をつたってするすると忍び込んだ後(初回はワイヤーが見えなくてびっくり!)、
舞台のいろんなところからどろとぼうが現れるのですが、それもまた楽しくv
舞台の色に合わせて生成りとグレーに染め分けられた衣裳の効果も面白かったです。

船乗りのシーンは、青をベースとした複雑な色合いの波がとても綺麗。
その奥で、沈没船の幽霊が歌う歌にあわせて、
同じような色合いの衣裳を着たダンサーさんたちが緩やかにタンゴ(かな?)を踊るのですが、
それがまた不思議な雰囲気。
踊る人たちは、やっぱり沈没船の幽霊だったのか、それとも海の精霊なのか・・・?
兵士の時とはまた違った雰囲気の大貫くんに、ちょっと目が釘付けでした(笑)。
で、船乗りさんは田口さん。
飄々とした語り口がなんとも癒し系でしたv
おかあちゃんへの愛情も深かったけど、とらねこくんも本当に家族みたいに大事にしていた感じですv

手品使いのシーンは、とにかく最初から最後まで驚きっぱなし!
舞台奥の小さな穴?にシルクハットが浮いてると思ったら、そこから手品使いが登場。
藤木さんの老手品使いは、なんとも味のある語り口で心惹かれましたv
大貫くんの助手がまた可愛らしい衣裳に、真っ直ぐだけどちょっと感情が遠いような話し方で、
二人の対比も面白かったです。
とらねこくんが死んでしまった後、手品使いが歌う歌がなんだかとても心に響きました。
直接的な表現ではないのですが、まさに悼んでいる感じ。
このミュージカル、どの曲もとても素敵だったので、DVD化ないしCD化して欲しいなあ。
そして最後、奥の小さな穴に彼らは消えていくのですが、
助手のお二人が一緒に入っていって・・・それは無理なんじゃ?と思いましたが、しっかり通り抜けました(笑)。

銀粉蝶さん演じる老婆のシーンは、小さなお家が幾つも出てきました。
色とりどりの窓の明かりがとても綺麗。
・・・どれもダンサーさんが中に入っているわけですが、家の下に足があるのがまた不思議な感じで(笑)。
老婆も、高い位置の小さな家に猫と一緒にいるのですが、
家から延びて舞台袖に引っ張られていく紐に、自分の服の模様の四角い紙を一枚一枚剥がしながら、
それをその紐に洗濯ばさみで挟んでいく様子がなんとも意味深。
この紙は老婆の記憶なのか、思い出なのか、あるいは家族の象徴なのか・・・?
同じようなトーンで静かに語り続ける様子と相まって、なんだかとても切なくなってしまいました。


ダンサーさんたちは、みなさんいろんなシーンで大活躍!
1幕の3人のおさかなさんが踊るシーンは、シュールなのに微笑ましくて、大好きでしたv
2幕最初のシーンも良かったなあ。
草原の中の長いテーブルに沿うように、たくさんのねこさんが同じ振りで踊るのですが、
それがバレエのバーレッスンを見ているような感じで、
同じ振付でもそれぞれに違う色合いがあって面白かったですv
ねこさんたちの衣裳も可愛かったなあ・・・!
というか、この舞台、衣裳もそれぞれ意味深で、この世界の要素なのだなあ、と思いました。

個人的には、「大貫くんを探せ!」が隠れテーマだったこの舞台。
久々に、踊る大貫くんとお芝居をする大貫くんを観ることができて、とっても幸せでしたv
手品使いの助手だけでなく、いろんなシーンに出ていて、全部は探しきれませんでしたが、
お友達に答え合わせしていただいた結果、それなりに見つけられたようで一安心(笑)。
顔の見えないどろぼうさんのシーンで、「この手は大貫くん!」と思ったのが当たってて嬉しかったなv
群舞では、突出して目立つというわけではなく、
ダンサーの一人としてこの世界を構成したいる感じでした。
でも、兵士も、どろぼうさんも、海の精霊(?)も、2幕のねこも、滑らかな動きと雄弁な手が大貫くんだ!と、
一人でほくほくしておりました(笑)。
丸い頬のチークも可愛くて、カーテンコールの笑顔にくらくらしてたのは内緒(え)。


そうそう、カーテンコールでは、草原に花が咲いていました。
ピンクやオレンジの幾つもの花びらが重なった小さな花。
寂しく切ない空気で終わった物語の後、そんな風に咲いている花があることが、
なんだかふっと救われたような気持ちになりました。
今は大阪で上演されているこのミュージカル。
この不思議な空間は、やっぱり生で観て感じるのが一番かな、と思います。
もちろん映像化して欲しい気持ちはありますが・・・
大阪のあとは北九州と広島へも行く予定とか。
私の文章ではその魅力は全然伝えられませんが、
もしこちらに迷い込まれて、観にいくかどうか悩まれている方がいらっしゃいましたら、
是非ご覧になることをお薦めいたします!

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
恭穂さま
2回ご覧になったのですね。
いいなぁ。うらやましい。
大阪は公演期間がとてもタイトで1回しか観られなかったことが
悔やまれます。もっと確かめたいことがいっぱいあったのに。

草原のお花、カーテンコールからだったのですね。
それも疑問の一つだったのでスッキリしました(笑)。
ありがとうございます。

本当に絵本を見ているような舞台でしたね。
お話もとても切なくてやさしくて、未來くんもひかりちゃんも
他の皆さんもすばらしくて、とてもお気に入りの作品になりました。
そうそう、大貫くん。出演されているの知らなくて(ごめんなさい)、
大貫くんを探せ!はできませんでしたが、手品師の場面で気づいて
からは、美形に敏感に反応していました(笑)。

私もDVDもしくはCD化、強く希望です!
スキップ
2013/02/17 20:34
スキップさん、こんばんは!
物語も、セットも、音楽も、キャストも、
本当に素敵な舞台でしたね。
とても丁寧に細やかに作られていて、
きっと観るたびに発見があるのではないでしょうか。
また是非再演して欲しいです。

大貫くんも気付いてくださってありがとうございました!
あの可愛らしいメイクに、ちょっとよろめきました(笑)。
夏の舞台も決まっているようですし、
秋のR&Jでも"死"のダンサー続投も決まりましたので、
これからも是非ご贔屓にv(笑)
恭穂
2013/02/19 20:44

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