瓔珞の音

アクセスカウンタ

zoom RSS 希求

<<   作成日時 : 2013/03/21 23:45   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

ただひたすらに、真っ直ぐに「彼」を見つめる揺るぎない「私」の希求。
「私」の視線を感じ、甘受し、けれど決してそれを「私」には感じさせない、奔放な「彼」の思索。

彼らの意識が互いを掠めるように交差した瞬間、空気が鋭さと密度を増した。


「Thrill me」 Bペア

2013.3.20 12時開演 銀河劇場 1階K列20番台
2012.3.20 15時30分開演 銀河劇場 1階F列10番台

原作・音楽・脚本:ステファン・ドルギノフ
演出:栗山民也
出演:松下洸平、柿澤勇人
ピアノ:朴勝哲


昨年の夏、目の前に突きつけられた"二人"の関係に、動揺し、混乱し、魅了されたこの舞台。
昨年は観ることが叶わなかったBペアを、今回の上演でやっと観ることができました。
そこここで良い評判を聞いていたペアだったのですが・・・
いやもうほんとに素晴らしかったです!
二人の関係性というか感情の流れを、初めてクリアに納得することができた感じ。
それだけスタンダードなつくり、ということなのかもしれないけれど、
その感情は決して単純でもあからさまでもなくて―――
むしろ、松下くんの「私」の佇まいは、静けささえ感じさせるものでした。
なのに、二人が作り出した密度の高い空間は、
私の胸底をかき乱し、ざわめかせ、いてもたってもいられないような焦燥感を感じさせた。

松下くんの「私」は、最初、なんというかとっても普通の青年という印象でした。
大人しくて、引っ込み思案で、でも、しなやかで強い。
真面目で、常識的で、そして、自分を客観視できる冷静さがある。
愛されて育ち、愛することにためらいがなく、だからこそ、揺るがない芯のようなものを持っている。

一方で柿澤くんの「彼」は、その行動の全てに違和感がない在り方。
表情と感情のふり幅がめちゃくちゃ大きくて、危ういの。
でもって、凄い無邪気。
犯罪も、最初はほんとにスリルを楽しんでる、という感じなのだけれど、
"何も感じない"自分に対して、徐々に恐怖感というか焦りを感じていて、
でも、その上で"殺人"という最高のスリルに辿り着いたときには、純粋にそれを楽しんじゃってる。
あの子どもを物色しているときと口説いているときの表情を観た時、そんな風に感じました。
だから、最初に観た時には、無邪気な笑顔と、感情の全てをそぎ落としたかのような目が凄く怖かった・・・

そんな二人の関係は、互いの感情を探り、交わし、挑発し、受け止めて投げ返し、そうすることで相手を試す―――
なんというか一瞬も気を抜けないような、ギリギリのラインでの攻防があったように思いました。
やりとりの中でも、「彼」にはもの凄く綿密に計算して「私」と対峙している部分と、
無意識に「私」に甘えているように見える部分が絶妙に混在してましたよね。
例えば、、冒頭の二人のキスシーン。
何気に3ペアの中で、最初のキスシーンは一番やられました(え)。
いやだってあの「彼」の笑顔は反則だよね?!
あの笑顔が計算じゃなくて素だとしたら、これは「私」も捕まるだろうし、
計算だとしたら、"悪い男"ってこういう感じなんじゃないかなあ・・・って思っちゃった。

で、「私」はそういう「彼」の甘えも計算も全てわかった上で、
「彼」には気付かせずにすっとそれを受け止めている、と感じる部分もありました。
「私」は揺るぎがない芯がある、とさっき書いたけれど、その揺るぎなさ全てで、「私」は「彼」に向き合ってた。
「私」の視線は常に「彼」に向かっていた。
もちろん、動揺もするし、悩みもするし、混乱もするのだけれど、
「彼」を手に入れる。
その命題のために生じた全てを―――罪も、後悔も、痛みも、喪失も、
全てを自分の責任の上で受け入れている・・・そんな覚悟のようなものを感じました。
そういう「私」だったからかな、53歳の「私」も、最初から最後まで凄く穏やかで毅然として見えました。

うん。
「私」は「彼」の強さも弱さも素直さも狡さも、全部わかってたんだろうなあ。
無意識の上だとしても、自分が「彼」にとって唯一甘えられる特別な存在だということもわかってた。
そして、悪い男だと、どうしようもない男だということもわかっていて、
それでも「彼」とともに在りたかったんだろうな、と思う。
それを一番強く感じたのは、取調室で「彼」と再会したときの「私」でした。

罵られるのはわかっていて、それでも警察に自首した「私」。
「彼」を追い詰め、落としいれ、でも、もしこの瞬間に「彼」が自分の予想とは異なって、
本当に自分を切り捨てるなら、「私」はそれも受け入れたんだろうな、と思う。
それすらも、きっと「私」は覚悟していた。
でも、「彼」は「私」の想定どおりに、計算の上で「私」に縋り口説き落とそうとした。
背後から自分を抱きしめる「彼」の腕を、「私」は一瞬縋りつくかのように強く握り締めました。
二回目に観た時、そのときの「私」の表情に、この作品で初めて涙してしまいました。
ああ、「彼」はこういう男なのだ。
ずるくて、情けなくて、賢しくて、でも、どこまでも無邪気―――そして、決して全てを与えてはくれない。
でも、誰よりも愛しくて、誰よりも欲しい相手。
それなら、僕は自分で「彼」の時間の全てを手に入れよう。
残りの人生の全てを、「彼」とともに在ることができるように。
たとえ、その瞬間に「彼」の心を永遠に喪うとしても。
その、覚悟。
その、諦念。
その、希求―――
それは、「私」が全てを掛けて得た"幸せ"だったのかもしれません。
でも、その"幸せ"には、痛みと喪失と罪が伴っていた。
それでも、「私」はその"幸せ"を求めずにはいられなかった。

護送車の中、「私」の告白に混乱する「彼」を前にした「私」に笑みはありませんでした。
むしろ、痛みを堪えるかのような切ない、けれど静かな表情だったように思います。
この辺は、ちょっと自分の中で受け止め切れないままラストシーンに繋がってしまったのがちょっと残念。
「彼」はほんとに混乱している感じで、嫌悪も歓喜の表情もなかったと思うのだけれど・・・どうだったかなあ。
このあたりは、なんだか思いっきり「私」に感情移入しちゃってて、
且つ、「私」みたいに冷静ではいられなかったので・・・
でも、この作品でまさか感情移入できるときがくるとは思ってもみませんでした。
そのことに自分でもびっくり!
そして、「私」に感情移入しちゃったせいか、最初あんなに怖かった「彼」が、
なんだか可愛くて仕方なく思えてしまったのにもびっくり!(笑)
ほんとにペアごとに全く違う関係性を作ってきてくれる舞台ですね。
これは嵌ると底がないなあ、と改めて思ってみたり(笑)。
去年観たAペアの互いを喰らい合うような関係にも魅了されたし、
Cペアの絡みつくような「私」の執着も凄味があるし、
もちろんどのペアも根底には"愛"があるのだと思うのだけれど、
現時点では個人的には今回観たBペアの関係性によろめいております。



うーん、思うがまま書いてたら、訳がわからなくなっちゃった。
役者さん自身のことも全然書いてないし!
ということで、最後にちょっと役者さんのことを。


「私」役の松下くんは、以前「リタルダンド」で拝見して以来となりました。
あ、「カラマーゾフの兄弟」は見てるけど。
歌い方や声は決して好みではないのですが、
「私」としての在り方の細やかさに本当に魅了されました。
ドラマとは全然印象が違っていて、そういう意味でもいい役者さんだなあ、と。
もの凄く深読みしがいのある演技をされるので(笑)、
また何かの舞台で拝見できるのを楽しみにしておりますv

「彼」役の柿澤くんは、これまでカラス、アリスの猫、(TVだけど)ヨシヒコのDV旦那を見たきりなので、
正直どんな「彼」なのか全然想像できてなかったのですが・・・
こんなに魅力的というか目の離せない感じの「彼」とは思わず、びっくりしました!
1回目はいろいろ翻弄されて、二人の関係性を追うのに精一杯だったのですが、
2回目に観た時は、その声の良さにうわー!となりました。
歌声という意味では、凄く安定していて、でも型に収まりきらない感じ?
♪死にたくない のシーンとかは、「彼」も観たいし、
その隣で静かに空を見つめる「私」も観たいしで、ちょっと混乱しました(笑)。
いえ、このときの「私」の何かを耐えるような横顔も良かったんですよねー。
とりあえず、秋のロミオがとても楽しみになりましたv


ピアノの朴さん。
去年観た時とはちょっと違った印象を受けましたが、
同じ日に観たCペアの時も印象が違っていたので、
ペアごとにピアノも全然違うアプローチなんだなあ、と改めて思いました。
・・・って、それって凄いですよね?!
決して派手な感じではなくて、シーンによっては意識に上らないときもあるのですが、
でもあの密度の空気を構成するのに欠かせない存在だな、と思います。
開演前、ピアノの蓋を開ける瞬間の後姿がかなり好きだったりしますv

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
希求 瓔珞の音/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる