瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2013/07/22 21:04   >>

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今日は土用の丑の日、ですね。
残念ながら私の食卓には鰻はありませんでしたが、
その代わり、土用の丑の日は鰻!を作った(?)方が主人公の舞台の記録をしようと思います。


「非常の人 何ぞ非常に」

2013.7.13 ソワレ パルコ劇場 L列10番台

作・演出:マキノノゾミ
出演:佐々木蔵之介、岡本健一、小柳友、奥田達士、篠井英介


本草家。
山師。
戯作者。
発明家。
建築家。
溢れる才能のままに、
あらゆることを手がけ、
あらゆることを求めた―――非常の人、平賀源内。

学生のころに教科書で読んだエレキテルを作った男。
「表裏源内蛙合戦」での、異邦人としての源内。
碧也ぴんくさんが描かれた「非常ノヒト」で、
自分の中の鬼に飲み込まれ、それでも譲れない美しいものを胸に抱き続けた鬼外。
平賀源内に関する私の知識はそんな偏ったもので・・・
その中でも特に鬼外として描かれた源内が、一番強いイメージとして存在していました。

そして、この舞台の中に生きた源内さんは、
熱い想いと冷めた想いの双方を身の内に抱き、
自分すら愛することができないからこそ、自分が認めた相手に常にその手を差し伸べる・・・
そんな、複雑で―――複雑すぎて、素直にすら見えてしまうような男でした。

物語は、芳町のとある陰間茶屋から始まります。
馴染みの茶屋に入り浸り、長崎から持ち帰った壊れたエレキテルを自慢する相手を待つ源内(佐々木蔵之介)。
源内に煽られ励まされ、「ターヘル・アナトミア」の翻訳を決意する杉田玄白(岡本健一)。
そして、まるで自分になんの価値もないかのように、けれどだからこそ誰にも媚びない陰間・菊千代(小柳友)。
この三人を軸に描かれる、男たちの"青春グラフティ"・・・プログラムに書いていたのは佐々木さんだったかな?
でも、まさにそんな感じでした!
特に源内と玄白のやりとりは、なんだか気恥ずかしくなるくらい青春してた気がする(え)。
この舞台を観るちょっと前に、いまだ嵌り中の某若者バンド(今更…/笑)のラジオを聴いていて、
男の子っていつまで経ってもお馬鹿だなあ、と微笑ましく思っていたのですが、
この舞台でも同じような感覚になりました(笑)。

1幕は、とにかくその暑苦しい青春に、大いに笑わせていただきました。
エレキテルの凄さを理解してもらえずに拗ねる源内とか、
翻訳に行き詰って、なんだか妙な方向にはじけちゃった玄白とか、
そんな二人に引きずられずに、冷静に突っ込みを入れる菊千代とか・・・
常に真面目で真っ直ぐで一歩一歩真っ向勝負な玄白と、
思いつきでぽーんと何かを飛び越えては、その先にある別のもに直ぐ気持ちが移っちゃうような源内。
正反対に見えるのに、互いを理解しようとし、互いを認め尊重する感じが、微笑ましくv


けれど。
1幕最後、菊千代が源内に突きつけた言葉が、源内の中に凝っていた闇を引き出してしまいます。

「あんたは、自分以外の誰も愛したことなんかない」

その言葉を否定すらせず、自分を慕う菊千代を更に突き放し追い詰める源内。
そのときの彼の表情は、それまでの子どものようにどんなことにも目を輝かせていた源内とは全く違っていた。
彼の中に凝る冷たい闇が、まるでその身体を包み込んだように、
空間そのものが暗くなったかのように感じました。

佐々木さんの源内は、静と動、光と陰、慈と鬼・・・そんな相反するものを何の齟齬もなく内包し、
ごく自然に、滑らかに、その双方を行き来している、そんな印象を受けました。
私的には、「自分以外を愛していない」のではなくて、
「自分を一番愛せない」から、自分以外の全てに優しくできて、
でも決して自分の中に踏み込ませはしない、そんな男に見えました。
プライドが高いくせに臆病で、自分の才能を信じきることができないくせにそれを拠り所にしていて、
だから、手を出したどんなことも、極めることができない男。
とんでもなくひねくれていて複雑で、だからこそ無邪気にすら見えてしまう男。
そして、その不安定さが、どこか人を惹きつけずにはいられない―――そんな男。

実は佐々木さんを舞台で拝見するのは初めてだったのですが、
TVドラマから受けるイメージとは全然違っていて、最初はほんとに佐々木さん?!と真剣に考えちゃいました。
声の響きが違うからそんな風に感じたのかな?
1幕前半の、ひたすらに自信に溢れた陽性の源内、
1幕ラストの、冷え冷えとした冬の月のように闇を纏った源内、
2幕前半の、彼の家に差し込む夕陽のように、何処か翳りを帯びながらも何かを信じようとする源内、
そして、2幕ラストの、佐吉(菊千代)を庇い抱きしめた自分自身の感情を理解できないことを、楽しそうに語る源内。
そのどれもが目が離せないくらい鮮やかで魅力的でした。

そんな源内に対峙する岡本さんの玄白がまた、控えめな愛情に溢れた、凄く懐の深い男なんですよねー。
踏み出す前はわたわたしているけど、源内に背中を押されて一歩踏み出した後は、
ひたすらに前を向いて、全てを背負うことを一瞬も迷いはしない、そんな感じ。
物語の中では「解体新書」を作るために、源内が玄白を支えたようにも描かれているけれど、
むしろ源内の方が無意識に玄白に甘えていたようにも思えました。
彼を炊きつけ、煽り、追い詰め、けれど、どんなに苦しんでも玄白はそれを乗り越える―――そう、源内は信じていた。
同時に、玄白が何かを成し遂げることを、恐れてもいた。
そして、玄白は、源内の中にあるそんな複雑な感情を、完全には理解していなくても、
きっと感じて、察して、そしてそれでもなお、源内を友として大切にしていたんじゃないかなあ、と思います。

2幕ラスト、舞台の中央で獄死し横たわった源内の身体を前に、玄白は源内への送辞を語ります。
「何ぞ、非常に死するや」
そう締めくくられた送辞からは、玄白が見つめてきた"源内"という男が鮮やかに浮かび上がってきて、
そして、源内へ向けられた玄白の想いが溢れていて、聴きながら涙せずにはいられませんでした。
その後、抑えきれない嗚咽を漏らす玄白の背中がまた・・・(号泣)
岡本さんはもともと好きな役者さんではあるのですが、なんだかこの役で更に惚れ直した感じですv

まあ、その分最後の台詞の後の源内には、玄白と同じように唖然として、泣き笑いするしかありませんでしたが(笑)。
だって、あの満面の笑みはどうなのよ?!って思いますよね?
でも、この源内さんだったらこういうのも全然ありだよね、とも思ってしまえたあたり、さすが源内さん?


そんな玄白とは違う意味で源内が試し続けた相手が、菊千代(佐吉)なのかな、と思いました。
そして、佐吉の方も、源内を試し続けていたように思う。
互いの中に情はないと、利害しかないのだと言い合っていても、
双方の中に甘えがあって、そしてどちらもがそんな自分の中の感情に戸惑っていた。
うん、作中にあるように、この二人って共通の何かがあったんだよね。
最終的に、佐吉が起こした刃傷沙汰の身代わりとなって源内は投獄されるわけなのだけれど、
何かに突き動かされるかのように自然に佐吉を庇い、そして抱きしめた源内の表情は、
それまでの表情にはなかった強さがあったように思います。
佐吉役の小柳くんは、たぶん初見なのですが、
1幕の陰間の時のぶっきらぼうに強がった表情が徐々に優しくなるのが良かったなあ・・・と思ってみたり。
その分、1幕ラストはかなり観ていてきつかったですが。


岡田さんと篠井さんはこの3人以外の役をたくさんされていました。
岡田さんは4役されてましたが、個人的には玄白と一緒に「解体新書」に携わった中川淳庵が印象的でした。
いや、だってめちゃくちゃ笑えたんですもの!
あの玄白との息の合いっぷりは素晴らしいですねv
菊千代に言い寄っていて、源内と玄白にあしらわれた僧侶も楽しかったし、
小野田直武は、朴訥とした感じが癒し系だったし、
秋田屋久五郎は、実直な大工の親方から一変してあくどさを出してくるところが素晴らしくv

篠井さんもとにかくどの役も短い出なのに印象的でした。
冒頭の陰間茶屋の女将は、源内に合わせてはしゃぎながら、実は源内を転がしてるところがさすがだし、
瀬川菊之丞は、人気絶頂な若女形というのも納得な綺麗な所作で、ちょっと見とれちゃいました。
のこりの三役は男役(笑)だったわけですが、
個人的には前野良沢のかっこよさによろめきました。
頑固で保守的な男のように描かれながら、その後の玄白の解釈を違和感無く納得できてしまうような、
台詞以外の部分での、凄く細やかなニュアンスのお芝居をされていて、うわー!!と思いました。
声の響きも当然ながら全然違っていて・・・ほんとに凄いなあ!


なんだかまとまらない記録になってしまいましたが、
どの登場人物も魅力的で、とても楽しめた舞台でした。
マキノノゾミさんの舞台はずっと観たいなあ、と思いつつこれまでご縁がなかったのですが、
暗転を多用しているのに舞台セットは変わらない、という演出がちょっと新鮮でした。
1幕の終わり、暗転の中盛り上がっていく音楽が終わった瞬間に、ぱっと客電が点いたのには、
その直前の源内の表情に釘付けになっていた分、びくっとするほど驚いてしまいました。
舞台セットも、1幕は陰間茶屋、2幕は源内の家で終始するのですが、
それでも時間経過が凄くすんなり感じられるのですよね。
個人的には、2幕の源内の家のセットがめちゃくちゃ好みでしたv
こんな家に住んでみたいなあ、と思ってみたり(笑)。
というかこの家の小道具、源内の業績(?)に関係したものがきっとたくさん並んでたんですよね。
後方席だったので細かいところまでは観れませんでしたが、
きっとそんなこだわりもあったんじゃないかなあ、と思います。

そんなこんなで、非常に楽しめた舞台でした。
平賀源内という人物にも、ちょっと興味がわいたので、
プログラムの対談に出てきた夢枕獏さんの小説、発売されたら買ってみようかと思います。
また全然違う源内さんの活躍を観ることができそうだしv(笑)
というか、どこかのタイミングでもう1回この舞台を観たいかも・・・って、無理ですが(爆)。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
恭穂さま
とても見応えのあるおもしろい舞台でしたね。
「表裏源内蛙合戦」とは全く違ったアプローチで、
それでいて源内の人となりをとても感じることが
できました。
それと玄白かなぁ、やっぱりこの芝居のキモは。
岡本健一さんの好演もあって、この杉田玄白なれば
こそ、源内も信頼を寄せたし、優越感に浸ることも
あれば嫉妬や羨望も感じていたのではないかと。

お二人の芸達者がいるとはいえ、男優さん5人だけで
こんなに世界を描けることにも拍手!でした。
スキップ
2013/09/09 16:06
スキップさん、こんばんは。
ほんとに面白い舞台でしたね。
平賀源内という人物の存在自体がドラマティックなのかなあ、とも思いつつ、私もやっぱり玄白がキモだなあ、というスキップさんのご意見に同感です!
源内に対する気持ちがとてもクリアで、玄白がいたからこそ、源内の姿や在り方も際立ったのかな、と思います。
こういう少人数の舞台もとても好きなので、いつかまたこんな風な舞台を上演して欲しいですね。
恭穂
2013/09/11 21:44

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