瓔珞の音

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zoom RSS 新しい、旋律

<<   作成日時 : 2013/08/05 22:51   >>

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出されなかった手紙。
果たされなかった再会。
突然に断たれた未来。
海の底に沈む、約束の旋律の終わり―――

でもそれは、新しい旋律へと繋がっていた。



オフィス3○○ 音楽劇
「あかい壁の家」

2013.8.3 ソワレ 本多劇場 C列10番台
2013.8.4 マチネ 本多劇場 A列一桁台

作・演出:渡辺えり
音楽監督・作曲:近藤達郎
テーマ曲作曲:中川晃教

出演:中川晃教、高岡早紀、稲荷卓央、渡辺えり、馬渕英俚可、田根楽子、土屋良太、林田航平、佐川守正、
    藤本沙紀、宮島朋宏、川口龍、石田恭子、小倉卓、奥山隆、金宮良枝、形桐レイメイ、Kiyoka、小出奈央、
    石山知佳、栗山絵美、十倉彩子、佐藤友紀、大鶴美仁音、瑚海みどり、川浪幸恵、若松武史、緑魔子


物語の舞台は、イタリア・ポンペイ。
オデオン小劇場にぽつんと置かれた古びた電子ピアノを、ふらりと現れた青年が奏でます。
喪われた都を、喪われた人を偲ぶ、柔らかく悲しい・・・終わりの喪われた歌。
青年の名は水原凡平(中川晃教)。
彼は、震災の瓦礫の中から見つかった祖父の遺品―――出されなかった手紙の宛先を訪ねて、
その手紙の中に入っていた楽譜を持ってこのポンペイに辿り着いたのでした。
そこでは、偶然にも姉・浪子(高岡早紀)が、勤め先の東野味噌の社長(渡辺えり)らとともに、
東野味噌イタリア進出のために、
ここオデオンで催される音楽祭で上演するミュージカル「DOGS」のオーディションを行うところだったのです。
見えない熊と戦い、額から血を流した老脚本家・紅嶋小太郎(若松武史)。
福島からやってきた、観光客の家族。
関西から結婚式でやってきた一団。
オーディションのためにやってきた薫(佐藤友紀)と付き添いの夕子(大鶴美仁音)。
迷子の花嫁・木ノ下朝子(馬渕英俚可)。
そして、70年間この地でオーディションを待ち続けた、日本人ガイド・タナベヨシコ―――通称・大女優(緑魔子)。
その手にある古びた台本のタイトルは、「ポンペイの犬」―――紅嶋が1940年に書いた、台本。
偶然か必然か・・・そこに集った人たちを巻き込んでオーディションは進み、
凡平を主役としたミュージカルの稽古は進んでいきます。
2000年前に突然に時を止めたポンペイの地で、70年前に書かれた物語の流れの中で、
古い楽譜の旋律と、今この瞬間に紡ぎだされる旋律に乗って交差する、
遠く離れた時間と空間―――今と1940年、今と2011年、ポンペイと福島、ポンペイと宮城。
その中で、自らの血に隠された秘密を知った凡平は―――

というような物語でした・・・って、全然わからないですね(汗)。
渡辺えりさんのお芝居は、一昨年の「ゲゲゲのげ ―逢魔がときに揺れるブランコ」以来。
そのときも複雑な物語に翻弄されたのですが、今回も同様でした。
初回に観た時は、もうとにかく目の前で繰り広げられる物語を受け止めるのに精一杯。
最初から最後まで、口を閉じることも忘れてただ舞台を見つめて、
そして最後のシーンでわけもわからず涙した感じでした。
2回目もそんな感じだったかな・・・口は閉じてたけど(笑)。

正直、えりさんが震災とポンペイを繋げて紡いだこの物語を、私はたぶん全然理解できていないと思います。
凡平が語る、喪われた故郷の景色。
朝子が待ち続ける婚約者・福島和夫(川口龍)。
彼が消えた原発の建屋と繋がるポンペイの地下道。
和夫の遺品である携帯を手に、彼が憧れたポンペイを訪れた彼の父と弟妹。
役である悲劇詩人の絶望とシンクロした凡平の前に現れる鬼剣舞の幻―――
震災と東北のモチーフはいろいろなところにあって、そのことにはっとしながら、
でも、観ている最中、それは私にはとても遠い景色だったように思います。

それは多分、私にとってこの物語が"人と人の物語"であったからだと思うのです。
物語の中に現れる、たくさんの"関係"。
そのどれもがとてもクリアで、切実で、痛くて、哀しくて、愛しかった。
その最たるものは、やはりアッキーの演じた凡平と"誰か"の関係だったのだけれど。

アッキーの演じる凡平は、自分の中にある熱を持て余し、なかったことにしてしまうような気弱さがありました。

言葉よりも先に音楽を紡いだ凡平。
けれど、自らの体から溢れる音楽を、彼は信じることができなかった。
それでも、オーディションで紅嶋に導かれるように自らを歌ったとき、彼の中で何かが変わったんだな、と思った。
その後の、ミュージカルの主人公である悲劇詩人そのものであるかのような強い言葉、強い旋律、強い歌声。
そこに違和感無く溶け込んでいく、彼自身の想い。
それは彼にその想いを、そして想いだけではどうにもならない現実をつきつけることになって・・・

何でもできるかっこいい姉に守られてきた凡平。
けれど、彼は常に姉への敬愛と、憎しみと、そして諦念の狭間でもがいていた。
でも、その感情と向き合ったとき、その感情を素直に姉に伝えることができたとき、
そして、その感情を浪子がしっかりと受け止めてくれたとき、
彼はやっと姉の後ろに隠れることしかできなかった子どもではなくなったんだな、と思った。
また、このときの高岡さんの浪子がとにかくかっこよかったんですよねー。
「泣いた赤鬼」にたとえた彼女の弟への感情―――それは凄く強くて、凄く重くて、でも凄く純粋で。
なんだかちょっと泣けてしまいました。

一度捨てた故郷の、波に攫われた街の果てに見える海に呆然とし、再び故郷に背を向けた凡平。
けれど、彼はもう一度故郷に戻り、そして祖父の残した曲―――「あかい壁の家」に出会った。
そして、その曲に導かれるように、彼はポンペイにやってきて、大女優に出逢った。
祖父母が彼女と交わした約束。
彼女と親友が、紅嶋と交わした約束。
彼女が、親友と交わした約束。
そのどれもが、時代の中で断ち切られ、奪われていた。
でも。
彼女は待っていた。
その約束が果たされる瞬間を、ずっとずっと、この約束の地で待っていた。

紅嶋が放つ、幻の犬の牙に捕らわれ、斃れていく人々を前に、
繰り返される悲劇を歌うことを拒み、逃げ、そして暗闇で一人膝を抱える凡平。
けれど、そんな彼の前に現れる幻たち―――
ただそこに在って、全てを見つめる空気の妖精の静かな眼差し。
大女優が辿った運命。
力強く舞い続ける鬼剣舞。
そして、斃れた人々が歌う、「行け、我が思いよ」の力強い言葉―――
その力に押されるように、彼はもう一度立ち上がりました。

物語の最後。
自分へと繋がる姉の、両親の、祖父母の、紅嶋の、大女優の時間を知った凡平は、
波の音のするオデオンの中で、もう一度ピアノと向き合います。
そこに現れた大女優に、約束の楽譜を渡します。
彼女のために、祖母が旋律をつくり、祖父が詩を書いたその曲は、けれど最後の部分が波に攫われていた。
でも、大女優は凡平に言います。

「あなたが、新しい旋律を創ればいい」

物語の始まりと同じように奏でられる、柔らかく、哀しい旋律。
年を経て掠れた、けれど深い色味と凛とした潔さを感じさせる大女優の歌声。
その声と向き合う、凡平の若々しく、熱く、澄んだ歌声。
二人が交わす、穏やかな笑み。
そして、奏でられる、最後の、新しい旋律―――

突然に奪われた未来。
断ち切られた想い。
喪われた、大切な何か―――誰か。
それは、もう決して戻ってはこないけれど、でも、それは"無"になったということでは決してなくて。
奪われたその先を、断ち切られたその続きを、繋ぎ紡いで行くことはできるのだと。
喪われたものを抱きしめ、語りかけることはできるのだと。
それは、私たちができる―――しなくてはならないことなのだと。
そんなふうに思ったら、もう涙を止めることができませんでした。

2年前の震災で、たぶん誰もが傷を負った。
目に見える傷。
目には見えない傷。
私はこの舞台を観ることで、自分に刻まれたその傷を、もう一度見つめることができたように思います。
そういう意味では、このお芝居は確かに"震災を描いた物語"だったのかもしれません。
わかりにくい文章になってしまったけど、ここまで書いて、なんだかやっと納得できた感じ。


というか!
本当にわかりにくい観劇記録で申し訳ありません!!
書き始めたときは、もっとすっきりいくかなあ、と思ったのですが(汗)。
でも、このお芝居って多分観る人それぞれで受け止め方が大きく違うんだろうなあ、と思います。
たくさんの関係性や事実が、小さなピースみたいに複雑にばら撒かれていて、
そのどれを拾うかで、見えてくるものが全然違う気がする。
私が拾ったピースはこんな感じで、多分全体の絵の一部分でしかないのだけれど、
でも、今の私にとって、このピースが精一杯なのかな、とも思います。


せっかくなので、役者さんのことを思いつくままに。

凡平役のアッキー。
音楽劇とはいえ、こんなにもたくさんアッキーの歌が聴けるとは思わなくて、めちゃくちゃ嬉しかったですv
アッキー作曲の曲もとても素敵でした。
えりさんとのぽんぽんと行きかうやりとりも楽しかったし、
劇中劇の悲劇詩人はめちゃくちゃかっこよくて、凡平の情けなさとのギャップがツボだったし、
凡平のアンバランスさというか繊細さが、凄くアッキーに似合ってたなあ、と思います。
可愛いアッキーもかっこいいアッキーも見せてもらえてかなり嬉しくv
浪子さんも、こんな弟だったらほっとけないよねー、と思いました(笑)。
(飴は歌いだす前に食べ終わってて欲しいけど/笑)
でもって、上記の大女優とのシーンは、ほんとにほんとに素晴らしかった・・・!!

というか、大女優役の緑魔子さんがまたとんでもなく凄い方だったんですよねー。
舞台に立つのは13年ぶり、とプログラムにありましたが、とにかくその存在感が半端ない!
劇中劇の大仰な台詞と、素の時の可愛らしい天然っぽいさと、
そして最後のシーンの、全てが凪いだような静謐さと・・・そのどれもに目を惹かれました。
声だけでなく動きや雰囲気のふり幅がとても大きくて、
愛らしい少女と、90歳(役は多分このくらいの年齢)の老婆を、何の違和感もなく融合させてて、びっくりしました。
緑さんは、先日玉砕した(汗)「盲導犬」の初演に出演されていたらしく、
でもって、その舞台を観たことが、えりさんの劇団立ち上げの大きな原動力になったらしく・・・
今回のお芝居でも、たぶんですがちょっと「盲導犬」にリンクする部分があったようななかったような(笑)。

馬渕さんは、やっぱりめちゃくちゃお綺麗でしたv
迷子の花嫁・木ノ下朝子さん役がメインですが、交差する時間の中では、
大女優・桃園蕾(って字でいいのかな?)の親友にして付き人であるタナベヨシコでもありました。
どちらの役も、凄く情の深い女性で、そしてどうにもならない"死"というものに絡めとられた役だなあ、と思いました。
物語の最初の方で、中央で紅嶋さんがいろいろやっているときに、
後ろの階段の上で遠くを見つめる横顔がとても綺麗で、ちょっとはっとしてしまいました。
個人的に馬渕さんは泣きの演技がめちゃくちゃ素晴らしい!と思っているのですが、
今回も朝子としても、ヨシコとしても、劇中劇の女奴隷としても、どの泣き顔も素晴らしくv
でも特に、朝子さんと和夫さんが思い出の中で邂逅するシーンは、切なかったなあ・・・
というか、このシーン、彼女を後ろから見つめる和夫さん役の川口さんが、
とにかくめちゃくちゃ優しい、愛しさに溢れた表情をされていて、それがとても印象的でした。
このシーン、実際の台詞は東野味噌社員の北里役の稲荷さんが言っていましたが(笑)。
というか北里さんって、もしかして憑依体質?!
過去のシーンで、凡平のおじいちゃんの若き日を演じてらしたのですが、
その後のシーンで、若き日のおじいちゃんとしての行動をみんなの前でしたりしてたし・・・?
「そこが味噌」では見事なラップ(?)も聞かせてくださいましたv

田根さんはイタリア人ガイドのカルラさんに、発掘のおじちゃんに、空気の妖精に・・・
いろんな役を非常に印象的に楽しく見せてくださいましたv
というか、あの妖精は、出てきたときはどうしようかと思いましたよ・・・!(笑)
出てくるたびにどうしても笑っちゃったのですが、
二日目、下手の最前列だったので、終盤に暗闇の凡平を見つめる妖精さんが目の前だったのですね。
その横顔が、厳しいのにどこか憂いがあって・・・ほんとに妖精に見えてしまいました。いや本気で!

学者役の土屋さん、助手役の林田さんとのやりとりもテンポ良くv
途中、凡平のお父さん役もやっていましたが、
でもって、お母さんは高岡さんがやってらっしゃったのですが・・・
凡平の両親は生きているのかな?ってちょっと思ってしまって、
そうしたら、なんだか凄く切なくなってしまいました。

高岡さんはメインは浪子さん。
上でも書きましたが、めちゃくちゃかっこいいお姉さんでしたv
そしてとてもとてもお綺麗でしたv
アッキーとのやりとりも、ほんとの姉弟みたいで微笑ましかったです。

紅嶋先生役の若松さんは、初見。
いやー、この方も緑さんとは別の意味で凄い存在感!
お芝居の冒頭は下手の端っこにいることが多かったのですが、
二日目に観た時は物語を知っていたことと、席の関係もあり、
伏線的な細かな演技に、おおー!!と思いました。
凡平がお祖父ちゃんの名前を言ったときに、ふっと微笑むんですよ!!
これにはちょっとやられました。
この物語の不思議の根本は紅嶋先生なんじゃないかなあ、と思ってみたり。
というか、きっと約束を果たすために、このオーディションを仕組んだんだよね。

川波さんは、バンドメンバーなアコーディオン弾きさんの熊谷さん役。
冒頭の歌でアッキーとセッションするんですが、
それが凄く自然で楽しそうで・・・観ててちょっと微笑んでしまいましたv
というか、この舞台、生演奏も入っていて、それを全部役者さんがしているんですよ!
オーディションに落ちた薫ちゃんがドラムで、
福島家の次男な次男くん(宮島朋宏)がベースで、音響・照明の中野くん(小倉卓)がたぶんギターで、
佐藤家のお父さんな正夫さん(佐川守正)さんがトロンボーンで。
それも凄い楽しかったですv
でもって、佐川さんがめちゃくちゃいい声で聞き惚れちゃいましたv
プログラムを見ると、もともとオペラの方なんですねー。
お父さんがおにぎりを持ちながら歌った「パッシオーネ」素晴らしかったです!

というか、この舞台、皆さんとても歌がお上手で・・・
振付師役の金宮さんや演出助手役の石田さんの説明的な歌とか、
ちょっと新感線の舞台を観ているような気持ちになりました(笑)。
新郎新婦役のお二人もお上手だったし、会田さん役の栗山さんの高音も素晴らしくv
なので、みなさんで歌うシーンは、ちょっと鳥肌が立つくらい感動しちゃったシーンもありました。
同じくらい爆笑させていただいたシーンもありましたけどね(笑)。

あ、夕子役の大鶴さんも凄かったです!
オーディションに付き添いで来たのに、大女優の演技に触発されて、
巫女の娘の台詞を憑りつかれたように演じ始めちゃう、という役柄なのですが、
演じる大女優を見つめる表情が、どんどん変わっていくのが凄い鮮やかで、
あのシーンはちょっと目が離せなかったです。
終演後にアッキーファンの方から、唐十郎さんのお嬢さんだと教えていただいてなんだか納得しちゃいました。
また是非どこかの舞台ではじける演技を見せていただきたいですv

そして、東野社長役の渡辺えりさん。
冒頭からがーっと舞台をひっぱって、でもそれが見事なミスリードというか(笑)。
たくさん笑わせてもらいましたが、いろいろはぐらかされたようにも思えてしまったり。
凄いインパクトがあるのですが、一番理解できていない役柄かもしれません。
社長だけに聞こえる耳鳴り―――波の音。
あれはどういう意味だったのかなあ・・・?


そんなこんなで、いろんなものを受け取りながら、まだまだ混乱の中にある感じです。
でも、凄く響いてくる舞台だったことは確か。
そして、多分日々進化していく舞台でもあると思います。
もう何回か観れば、もしかしたらもっといろんなことがクリアになるのかもしれないけれど、
残念ながらそれは無理で・・・(涙)
ので、是非地方公演の終盤あたりでDVD撮影して欲しいなあ、なんて思います。

そんなこのお芝居。
8月11日まで本多劇場で、そのあと全国各地で公演があります。
もしこの辺境ブログに迷い込まれて、ちょっと興味をお持ちになった方がいらしたら、
是非ご覧になることをお薦めいたします!
きっと誰もが自分だけのピースを拾える舞台だと思うので。

最後に。
まだまだ暑い夏。
役者さんやスタッフさんたちが怪我や体調不良などをきたさずに、
この深く不思議な世界を形作ることができますように・・・!

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