瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2013/10/14 19:24   >>

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10月に入って、1週間ごとに2つの井上戯曲の舞台を観ました。
「それからのブンとフン」と「ムサシ」
井上さんの初期の戯曲と晩年の戯曲。

実は、前者を観た後、なんだか凄く混乱してしまったのですね。
これまでも、井上さんの戯曲の舞台を観るときは、
言葉の奔流と笑いの勢いに巻き込まれた後、終演後にいつも凄く考えさせられて・・・
自分が観たものはなんだんたのか、
自分は何を受け止めたのか、
自分が受け止めたもの"正解"なのか、
自分はこのお芝居を"ちゃんと"観ることができたのか―――?
そんな風に自問自答することが多かったように思います。

で、「それからのブンとフン」では、そういう自問自答すらできないくらい、なんだか混乱しちゃったのです。
お芝居としてはとても面白くて、たくさん笑ったし、たくさん驚いたし、身を竦ませるほどの恐怖も感じたし・・・
でも、突き刺さるようにストレートな言葉たちのどれもが、私の中の"リアル"に上手く繋がらなかった。

そんなこんなで混乱したまま、観劇記録も書けずに迎えた「ムサシ」観劇日。
実は風邪を引いてちょっと体調不良だったこともあり、
観にいくかどうか家を出るまで悩んでいたのですが―――
「ムサシ」を観たことで、私の中の混乱が沈静化されたように思います。
うん、観にいって良かった。



「ムサシ ロンドン・NYバージョン」

2013.10.12 マチネ さいたま芸術劇場大ホール 1階C列一桁台

原作:井上ひさし
演出:蜷川幸雄
出演:藤原竜也、溝端淳平、鈴木杏、六平直政、吉田鋼太郎、白石加代子、大石継太、
    塚本幸男、飯田邦博、堀文明、井面猛志



初演再演に引き続き、3回目の観劇となったこのお芝居。
毎回小次郎役の役者さんが異なっているわけなのですが、
小次郎の在り方で、こんなにも受け取る印象が違うんだなあ、となんだかしみじみ思ってしまいました。
今回のパンフレット、白地に水色で表題が書かれているのですが、
これは今回の小次郎のイメージで選ばれたのでは?と思ってしまうような、
とても若々しくて爽やかなイメージの小次郎でした。
初演の、武蔵と対等に渡り合っちゃう小栗小次郎も、
再演の、ギラギラした野性味が印象的だった勝地小次郎も好きですが、
今回の、どこか未成熟な青さを感じさせる小次郎もとても良かったです。

溝端くん、TVのドラマでは何度か見たことがありますが、
やっぱり舞台だと全然受ける印象が異なりますね。
個人的には舞台で観る方がかっこいいなあ、と思ってしまったのは、
たぶん舞台での声の方が私好みなのと、単純に私が舞台好きだからなんだろうな(笑)。

武蔵との再会のシーンで、武蔵を追ってきた理由を口でも果たし状でも散々言い募るのだけれど、
この小次郎は、ただ武蔵に会って確かめたかったんじゃないかな、と感じました。
確かめたいことすらも曖昧で、でも、武蔵にもう一度会わなければならない。
会って、"何か"を確かめなければ、自分は前に進めない―――
物語が進む中、彼が武蔵に向ける視線がものすごく切実で、
なんというか仔猫のような頼りなさもあったりして、
これは武蔵もほだされるよなー、と思ってしまったり(笑)。

また、藤原くんの武蔵が、非常にどっしりとした安定感なんですよね。
小次郎の存在や、不穏さを孕む状況にいろいろ掻き乱されながらも、
考えてることや感じていることがあんまり表には表れなくて、なんというか全然揺るがないの。
まあ、私の視線が初参加の小次郎に向いちゃって、いろいろ見落としてることもあるのかもですが(え)。
なんだかね、観終わった後、この武蔵は最初となにも変わってないんだな、と思った。
死者たちとの3日間、彼らの切実な願い、そして小次郎との再会と別れを経て、
いろんなことを感じたり、考えたり、それに基づいた行動をしているし、
もしかするとこの経験が、彼のこれからの選択に影響を与えるかもしれないけれど、
武蔵の本質はあくまで変わりなく、その変化でさえも彼にとっては必然であるかもしれない。
そんな風に感じてしまいました。

対する小次郎は、なんだかもう可哀想なくらいあらゆるものに翻弄されてた気がします(笑)。
で、自分の中のいろんなものを一度全て見失った―――

死者たちが去った後の闇の中、立ち尽くして遠くを見る小次郎。
私の席からは、その表情が真正面から見えたのですが、
まるで痛みを堪えるような、去っていく何かを悼むような、置き去りにされた子どものような・・・
そんな彼の表情から目が離せなくなってしまいました。
あの表情がどういう意味を持ったものなのか、明確な言葉にはできないし、
そもそも私が正しい受け止め方をしているとも限りません。
でも、"現実"の光に戻った瞬間、我に返って瞬きをした後の小次郎は、
まだ混乱の中にあったとしても、冒頭とは違う素直で穏やかな表情をしていた。

小次郎は、自分の中のいろんなものを、一度全て見失った。
武蔵に対する曖昧な問いも。
自分の目指す不確かな未来も。
三日間の間に、自分に向けられた言葉も。
でも、彼の中には確かに残るものがあって―――そのことを、小次郎は素直に受け止めていたように思います。
自分の中に残ったもの・・・それが何かをまだ十分に理解していなくても、戸惑いに立ち止まることはあっても、
それでも、小次郎は笑顔で旅立っていった。
なんだかそのことが、とてもとても嬉しくて・・・
終演後に見上げた青空のような、晴れやかな気持ちになりました。

上手く言えないのだけれど、井上戯曲に対する私の向き合い方も、それでいいのかな、と思った

静謐さと仄暗さを内包した竹林の中で繰り広げられる"いのち"に対する物語。
「生きろ」、というそのメッセージと、そこに辿り着くまでの猥雑で複雑で懸命なやりとりは、
自分でも意外なくらいストレートに私の中に届いたように思います。

同時に、私は井上戯曲を観るときに、いつも無意識に身構えていたんだな、と感じました。
なんだかね、試験を受ける学生みたいに肩に力が入っていて、
理解しなきゃ、何かを受け取らなきゃ、って、一生懸命になってた。
まだ前の混乱を引きずっていたことと、体調がいまいちだったことで、
いつもよりも自然体で舞台に向き合えた、ということもあるのかもしれないけれど、
今回、役者さんたちの紡ぐ言葉を、ただ素直に受け止められた気がするのです。
身構えて、言葉の裏側を読むような考え方をするのではなくて、
届く言葉、見える表情、伝わる感情―――そういうものを無防備にただ受け止める。
それは、なんだか今の私にはとても心地よく感じられました。

もちろん、そういう見方では、見落としていることや理解できないこともたくさんあると思う。
でも、それでもいいんだよ、と、カーテンコールで掲げられた井上さんの笑顔が、
そうい言ってくれているような気がして、だからこんなにも晴れやかな気持ちになれたのかもしれません。


すみません。
なんだか全然観劇記録になってないですね。
自分の中で整理できた、と思ったことも、やっぱり上手く文章にはできないなあ。
こんな風に思っていても、多分私はこれからも井上戯曲には翻弄されるんだろうな、と思います。
でも、どんなに翻弄されても、最後には小次郎のように素直な笑顔で劇場を後にできたらいいな。
そんな風にも、思うのです。


さて、ちょこっとだけ他の役者さんの感想を。

杏ちゃんの筆屋乙女。
この役は要所要所の台詞が、まさに井上さんの代弁者だなあ、といつも思うのですが、
今回もやっぱりたくさん泣かされてしまいました。
白石さんとの蛸のシーン、能の所作や謡が前よりも滑らかになっているような気がしました。

白石さんはねー。もう本当に素晴らしい!の一言。
前方席で観ると、更に迫力が増して見えるので、ちょっと圧倒されました(笑)。
小次郎を陥落するときも、ほんとに容赦なくって・・・(え)
でも、あの子守唄の暖かさには真実があったように思います。

容赦ないといえば、5人6脚!!
これ、ほんとに危ないなあ、といつも観ながら心配になるのですが、
でも同時に冷静に罵りあう武蔵と小次郎の凄さと、
吉田さん演じる宗矩や、六平さん演じる沢庵和尚の武蔵への容赦のなさについつい爆笑してしまうんですよねー。
今回は吉田さんが本気で痛がって、ぺしぺし藤原くんを叩いてました(笑)。
その後も、小次郎に振り払われた宗矩が武蔵に体当たりしたり・・・
このときはさすがに武蔵の無表情も崩れてたな(笑)。

宗矩と沢庵和尚の仲良しっぷりも微笑ましくv
あの二人の悪代官なシーンは、やっぱり見逃せませんよねー(笑)。
そういえば、今回は下手通路側だったのですが、
1幕で宗矩が浅川甚兵衛の代役(?)をするのに通路に下りるときに、
階段をぴょんぴょんとジャンプして降りるのがなんだか可愛かったですv
というか、基本宗矩は可愛いよね!(え)

大石さんの平心さんは、今回もやっぱり癒し系でしたv
和尚としての在り方も好きでしたが、今回は最後の最後、鏡職人としての彼の言葉が、
なんだかとても心に響きました。
偽乙女(笑)が書いた二人のためのお芝居は、
それぞれの死者たちの心残りもきちんと汲み取ってたんだなあ、なんて思ってみたり。
彼らが幽明の境でお芝居の智恵を出し合ったり、お稽古をしたりしてる姿が思い浮んで、
なんだかほのぼのしてしまいましたv


そんなこんなで、いろんな意味で観て良かった、と思えたこの舞台。
来年の春にはコクーンで凱旋公演があるのですね。
3月はまだ全然予定が立たないのですが、できれば観にいきたいなあ・・・なんて思っています。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
恭穂さま
「ムサシ」私は再演を観ていないので4年ぶりだったのですが、
やはりとても楽しかったです。
この作品のメッセージはとてもストレートですが、ほんとに
心にしみ入りますね。

鋼太郎さん宗矩、カワイイですよね。
あのぴょ〜んと降りるところ、ちょうど階段のそばの席だったので
ほんと、間近で見て笑っちゃいましたよ。

大石さん平心さんの鏡職人としての言葉、私もなぜかとても
心に残っていたので、恭穂さんのご感想を読ませていただいて
うれしかったです。

そして、勝地小次郎はギラギラした野生味だったのですが。
う〜ん、ますます観たかった(笑)。
スキップ
2013/11/04 17:43
スキップさん、こんばんは!
「ムサシ」、この楽しさとメッセージ性の強さは素晴らしいですね。
鋼太郎さん宗矩のぴょん(笑)、私も通路近くだったので、
間近で見てしまいました・・・ほんと可愛かったですv

大石さんのあの台詞は、ほんとに心に残りますね。
杏ちゃんの言葉のようなストレートさはないですが、
なんだかいろいろな想いが込められているように感じました。

勝地小次郎も良かったですよー。
確か再演もDVDになっていたと思うので、
機会がありましたら是非!
恭穂
2013/11/06 22:09

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