瓔珞の音

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zoom RSS 未来の種

<<   作成日時 : 2013/11/21 22:29   >>

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20年前、自分は何をしていたかな。

・・・確か解剖実習の精神的ストレスを見ない振りするために、
家ではひたすら本を読み続けていた時期だったような気がします。
バス停の前の本屋さんで本を買って、その本を抱えるようにして、静かな雪の道を歩いてた。
冷たい手に染み付いたホルマリンの匂いと。
新しい本の紙の匂い。
うわー、なんだかいろいろ思い出しちゃった。
でもって、辛くなると本に逃げ込むのは昔から変わらないのね、自分(笑)。

あの冬の日から20年。
決して短くはないその時間のなかで、平凡な私の人生にも、たぶん幾つかの岐路はあった。
意識して、あるいは意識しないまま選び続けた先にある、今。

「何故、ここに来た?」

そんなふうにあの日の誰かに問いかけられたら、私はなんて答えるんだろう。




「メリリー・ウィ・ロール・アロング ―――それでも僕らは前へ進む―――」

2013.11.9 マチネ 天王洲銀河劇場 1階C列10番台
2013.11.16 マチネ 天王洲銀河劇場 1階D列20番台

演出:振付:宮本亜門
作曲・作詞:スティーヴン・ソンドハイム
出演:小池徹平、柿澤勇人、ラフルアー宮澤エマ、上山竜司、広瀬友祐、海宝直人、菊地創、山田宗一郎、
    上條駿、小此木麻里、関谷晴子、皆本麻帆、万里紗、大西統眞、ICONIQ、高橋愛



丸い舞台の上には一台のピアノ。
黎明を思わせる蒼い光の中、しなやかに激しく踊る人たちの中に、一人の男が逃げるように走りこんできます。
男は、作曲家であり、今は映画のプロデューサーとして華やかな成功を収めたフランク(柿澤勇人)。
名誉も富も、全てを手に入れたはずの、フランク。
けれど、彼は今、怯えているような心もとない目で、遠くを見ていた。
そんな彼を取り囲む、踊っていた人々。
彼の仕事仲間。
彼のマネージャー。
彼の妻。
彼の元妻。
そして、20年前に未来を語り合った、彼の親友たち―――
彼らは、フランクに問いかけます。

何故、ここに来た?―――と。

その問いの答えを求めるかのように、舞台の上の時間は逆回転していきます。

1976年。フランクの映画公開を祝うホーム・パーティーでの修羅場。
1973年。フランクと長年の親友であり脚本家のチャーリー(小池徹平)が訣別に至った、TV収録のスタジオ。
1968年。長い旅から戻ったフランクを迎えるチャーリーとメアリー(ラルフアー宮澤エマ)の心配を振り切って、
フランクが人気女優で不倫相手のガッキー(ICONIQ)を選び取った瞬間。
1967年。ベス(高橋愛)との離婚裁判の果てに、フランクが旅に出ることを決心した裁判所。
1964年。フランクとチャーリーのミュージカルが大成功を収めた劇場。
1962年。チャーリーと創った"小さなミュージカル"の曲を、ガッシーのための舞台に使うことをフランクが決心した、
ガッキーと夫ジョー(広瀬友祐)の邸宅。
1960年。フランクとベスが結婚式を挙げた、ダウンタウンクラブ。
1957年。それぞれの夢に向けて突き進むフランク、チャーリー、メアリーが住む、グリニッジ・ビレッジのアパート。
そして、その少し前。宇宙へ旅立つ人工衛星の光を見つめながら、彼らが世界を変えることを夢見た明け方の屋上。

そんなふうに時間を遡って、そして冒頭と同じ蒼い光の中で物語は終わります。
そう、この物語は、ただ時間を遡るだけ。
どれだけフランクが後悔していても、こんな生活は望んでいなかった、と叫んでも、失われた友情に涙しても、
この物語の中にはありえない"奇跡"は起こらない。
幾つかの岐路での選択をやり直すことも、その結果として未来が変わることもなくて。
ただ、彼が―――彼らが辿った時間を、その選択を描いているだけ。
けれど、丁寧に描かれた彼らの"過去"は、彼の"未来"に確かに繋がっていた。
そう、感じました。


最初に観た時は、逆回転していく時間軸に乗っかって、まるで推理小説の謎解きを見ているような気持ちになったり、
物語の始まりのフランクと同い年なので、彼がいろんな選択をするたびに、
自分にはどんな岐路があって、どんな選択をしたのかな、と思い返してみたりと、
舞台に集中しつつも、物語の"外側"に立っているような感覚でした。
とても面白かったし、なんだかいろいろ考えちゃったけど、でも、普通に面白いミュージカルだなあ、と。
でも、1週間の時間をおいて2回目に観たら、なんだか最初から最後までいろんなポイントで泣けてしまいました。
一度見て、フランクたちの歩んできた時間を知っているだけに、
最初は流してしまっていた台詞が、あの瞬間とリンクしているんだ、と気付いたり、
その時間ごとに交錯する登場人物たちの想いがものすごくクリアに伝わってきたり、
そして、この"時間"の前と後には、あんな風な彼らがいたのだ、と実感してしまったり・・・

そういうポイントはたくさんあったのだけれど、
一番印象的だったのは、やっぱり最後の屋上のシーンかなあ。
遠い空の向こうで、更に遠い宇宙に飛び立つ人工衛星のように、
煌めいてはっきりと見えるのに、遠くて手の届かない、でも確かにそこにある"夢"を語る3人。
メアリーがフランクに問いかけた「どうやって曲を作るの?」という言葉。
自分の中を覗き込むようにして言葉を捜しながら、「全て」と答えるフランク。
そんな二人を優しい笑顔で見つめるチャーリー。
その姿に、彼らが訣別したTVの収録時、インタビュアーが投げかけた「どうやって仕事をするの?」の問いが重なって、
なんだかたまらない気持ちになりました。

彼らの"はじまり"は、こんなにもシンプルな感情だった。

この先に、彼らが向かい合う岐路。
彼らのそれぞれが選び取るもの。
そして、その結果としての今。
その過程のどこで、彼らの感情はその色合いを変えていったのか。
いや、変わることが悪いわけではない。
変わらない感情も、変わらない関係も、そんなものはありえなくて。
彼らは一人一人、その瞬間の彼らの"最善"を選び取っていたはず。
その"最善"が、3人同じではなかった、それだけのこと。
変わっていくことを受容しながら、けれど変わっていく相手を、変わっていく関係を許せない彼らもいて。

わかっていてもどうにもできない感情。
わかっていても戻すことのできない時間。
そして、たぶん戻すことができたとしても、同じ選択をするであろう、彼ら。

そう、過去に戻る物語を見つめながら、私の別の部分は確かに彼らの"今"を、その先の"未来"を感じていた。
過去は変えることはできなくても、
彼らの関係は変わってしまったとしても、
あの時彼らが共有したシンプルな感情は―――彼らが蒔いた未来への種は、
今もこれからも、決してなかったことにはならないのだと。
たとえ今、どれだけその記憶がフランクを、チャーリーを、メアリーを苛んだとしても、
その種は、今も変わらず彼らの中のどこかに存在し続けるのだと。
そして、それぞれの種が咲かせる3人の花は、
違う方を向いて咲くのかもしれないし、同じ大地で同じ太陽を見上げているのかもしれないと。
そんな風に感じて、やっぱりカーテンコールで一人涙してしまったのでした。



フランク役、柿澤くん。
流されているように見えるけれど、彼は彼の信念に基づいて選択しているんだ、と感じるフランクでした。
と同時に、少年っぽさが抜けないというか、危なっかしさも感じられて、
これはメアリーもチャーリーもかまいたくなるよねー、とも思ってみたり(笑)。
二人にかまわれること自体が、彼にああいう選択をさせたのかな、という風に感じるシーンもあって・・・
うーん、人間関係って難しいよねー(え)。
2回とも前方センター、しかも2回目は前の席が空席だったので、
役者さんの表情がめちゃくちゃ良く見えたのですが、最初のフランクの泣き顔は反則!と思いました(笑)。
逆回転とはいえ、シーンごとには未来に向かっているわけなのですが、
2回目に観た時は、シーンの最後の表情が、
その前のシーン(時間軸的には未来)の最初の表情に違和感なく繋がっていることに驚いて見たり。
なんというか、凄く細やかに役作りされてるなあ、と思いました。
この前に見たロミオの印象の名残があったのですが、当然のことながら全然別物。
歌声もなんだか違う風に聞こえました。
まあ、最初の40歳はちょっと無理があったようにも思いますが(笑)。

チャーリー役、小池くん。
舞台で見るのは初めて、歌声も意識して聴いたことがなかったのですが、
こんなにも歌える方だったんですね!
真面目で誠実で努力家で懐が深くて、でもってフランクが大好きなチャーリーを、
なんとも優しい雰囲気で見せてくださいました。
基本そういうイメージで受け取った役柄だったので、TV収録シーンでの彼のエキセントリックさは、
改めてみるとなんとも痛々しくて・・・こんなに追い詰められてたんだなあ、って(涙)。
まあ、あの訣別のあと、彼は彼でちゃんと自分の道を見つけたわけなのですが・・・
♪Good Thing Going の、戸惑いながら歌いだしたチャーリーが、
フランクと声を合わせることで最後まで歌い上げるシーン、凄く綺麗なハーモニーだったなあ、と思います。

というか、フランクとチャーリーとメアリーの3人の歌声って、
微妙なバランスの上に凄く丁寧に重ね合わせていて、
なんだか彼ら3人の関係そのものだなあ、と思ってみたり。

また、メアリー役の宮澤さんが良かったんですよねーv
独特の不思議な肌触りの歌声に、馴染むのにちょっと時間がかかったのですが、
メアリーとしての在り方が、なんだかとても素敵だなあ、と思いました。
やりたいこと、目指すこと、好きなもの・・・そういうのが凄くはっきりしていて、そのために努力を惜しまない女性。
でもその反面、何かを得るために、全てを捨てることはできない女性。
それは時にとても切なくて歯がゆくて―――
フランクとベスの結婚式で、彼らが歌う誓いの歌に重なる彼女の声の響きが、
そして、その時の彼女の表情が本当に綺麗で、とても印象に残っています。

メアリーと同じように大事なものがはっきりしていて、
そして、それを手に入れるために自分自身以外の全てを傷つけることも捨てることも厭わない激しさがあったのが、
ICONIQさん演じるガッキー。
いやー、めちゃくちゃ綺麗な方ですねー。
歌声は気持ち弱いかな、と感じる部分もあったのですが、
真っ直ぐに相手を見つめるあの目力の鮮やかさには、感嘆しきりでした。
自分を活かす脚本、贅沢な生活、素晴らしい音楽・・・
それらを与えてくれる相手を次々と手に入れ、捨てていく人気女優、という役柄なわけですが、
彼女自身もずっと初恋の相手(歌、だったかな)に囚われてるんだなあ、と思いました。
「自分の意思は変えずに周りを動かす」というのは凄く強い言葉で、でもものすごく孤独だな、とも思った。
最終的に彼女は自らを破滅させるような行動をとるのだけれど、
あの時、彼女が本当に手に入れたかったのは何だったのかなあ・・・

ベス役は高橋愛ちゃん。
強くて賢くて、そして、常にどこかに不安を抱えている役だなあ、と思いました。
小柄で可愛らしい外見と、綺麗な高音なのに、どこかガチな力強さを感じさせる歌声と、
はっきりとした、でもどこかこわばったような表情がそう感じさせたのかも。
大事なときに、諦めることを視野に入れた上で相手を試す、みたいなとこがあって、
なんだか見ていてちょっと痛々しくなってしまったり。
彼女が歌う♪Not a Day Goes by は、離婚裁判のシーンと結婚式のシーン両方で歌われるのだけれど、
離婚裁判の時の歌詞を最初に聴いちゃうと、
結婚式のシーンの歌詞の危うさに、なんだか哀しくなっちゃいました。
同じ旋律、重なり合う歌詞でも、こんなにも賦活される感情が違うの。
それってなんだか凄いことだなあ、と思ってしまいました。


そのほかの役者さんたちは、いろんな役をやってらっしゃいました。
観劇前から知っていたのは、上山くんと海宝くんくらい?
上山くんはねー、とにかく舞台に出てくると凄く目を引かれました。
歌声も素敵なんですが、今回は動きの方に目がいっちゃった感じ。
個人的には男性キャスターの暑苦しさとガッキーの客のカメラマンの傍若無人さが結構好きだったかも(笑)。
万里紗さん演じる女性キャスターの、男性キャスターへの容赦のなさも好きでしたv(え)
海宝くんは、去年の「RENT」でいい声してるなー、と思ったのですが、それ以降拝見していなかったので、
今回まったく初見のような気持ちで、やっぱりいい声をしてるなー、と思いました(笑)。
広瀬さんは、ガッキーの3人目の旦那なジョーがメインの役かな。
落ちぶれた姿から始まるので、終盤(時間軸的には過去)の自信満々な彼に行き着くまでの流れが、
なんとも無情で切なかったです。
本気でガッキーに惚れていて、でもフランクたちの才能も認めてたんだなあ、きっと。
K・T役の小此木さん、小柄な身体でがんがん攻めて行く感じがめちゃくちゃかっこよかったですv
菊地さんはベスのお父さん役が印象強く。
が、2回目に観た時に、お父さん役のあとに凄く若い雰囲気の役で出てきていることに驚いてみたり(笑)。
いや、役者さんって凄いなあ・・・!
そんな風にいろんな役をやってらっしゃいますが、
メインの役は、当然フランクたちと一緒に時間を遡っているわけで。
1回目には気付けなかったいろんな人たちの"過去"やフランクたちとの関わりに気付けたのも2回目に観た時。
お友達に、「是非2回観て!」と言われた理由が分かりました。
もちろん、1回目も十分楽しめるのですけど、でもやっぱり私も複数回観ることをお薦めしちゃいそうです。

シーンごとに時間が遡る、というこのミュージカル。
シーンの間を繋ぐのは、彼らの歌う歌と、セットに映される年号や映像でした。
前のシーンからの繋がりで、いろんな組み合わせで歌われるのですが、
みなさんほんとに素敵な歌声で、しかも凄くクリアに歌ってくださいました。
ソンドハイムさんの曲、というとどうしても「スウィーニー・トッド」が思い浮んじゃうんですが、
「スウィーニー・トッド」の曲には根底に常に闇や不安があったのとは逆に、
メリリーの曲には、どれも根底に夢や希望のようなキラキラしたものがあったように思います。
それがどんなに厳しい状況での曲でも、辛い感情を伝える曲でも、何故かそんな風に感じました。
それはやっぱりこのミュージカルが、過去を描くことで未来を描いているからなんだと思う。

うん、ほんとに素敵なミュージカルでしたv
今回は、キャストは全員物語の始まりと同じ20代で揃えたとのこと。
彼らが最初の年齢に近づくまで、再演を繰り返して欲しいなあ、と思ってみたり。
きっと今とはまた違う何かが見えると思うんですよね。
・・・まあ、そのとき自分が何歳か、ということは考えない方向で!(笑)

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