瓔珞の音

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zoom RSS 最後の花火

<<   作成日時 : 2015/06/04 20:13   >>

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最近、各地で大きな地震が多いですね。
先日、私は初めて地震でお芝居が中断する、という状況を経験しました。

全館放送の緊急地震警報。
それでもストップがかかるまで、というかかかっても捌けるまで役でい続けた役者さん。
きちんと見通しをつけ、且つ観客の体調や気分にも気遣うスタッフの方のお話。
再開の時に、最初の一言で客席の緊張をほぐしてくれた役者さん。
地震をネタにアドリブを入れた役者さん。
最後まで、客席の意識を惹きつけ続けたお芝居。

耐震建築だといわれても、やっぱり地震は怖かったし、
その後に家に帰るまでも結構大変だったりしたけれど、
この時観たお芝居が、このお芝居で良かったな、とそう思いました。



「戯作者銘々伝」

原案(でいいのかな?):井上ひさし 
作・演出:東憲司
音楽:宮川彬良
出演:北村有起哉、新妻聖子、玉置玲央、相島一之、阿南健治、山路和弘、西岡徳馬


井上ひさしさんの小説「戯作者銘々伝」と「京伝店の烟草入れ」を素材として、
東さんが書き下ろした、というこのお芝居。
私は元の小説を知らないので、どのくらいそのままで、どのくらい変わっているのかはわかりませんが、
井上さんの持つ色合いを、少しマイルドに透明にした感じかな、と思いました。
強いメッセージ性も、秀逸な言葉遊びも、あっけらかんとした下ネタも、後から効いてくる怖さや楽しさも、
きちんと盛り込まれているけれど、どれもがちょっと薄まっていて・・・
それが気持ち的な受け入れやすさにも繋がっていたし、
逆に、これまで観た井上さんのお芝居との違和感もあったかな。
全く切り離して別物として観るには、やっぱり井上さんの物語ではあったし。

物語は三途の河を彷徨っている戯作者と版元の幽霊たちが、それぞれの人生の物語を語りながら、
江戸時代の黄表紙や洒落本の実際、戯作者の生き様、版元との関係を見せてくれたり、
現代まで受け継がれているはずの“書く”ということについての考察や希望を述べたり、という感じ?
あれ?
こう書くと全然面白そうじゃないなー(^^;)
実際には、これまで松井今朝子さんの小説などで見かけた戯作者さんたちの、
(幽霊だけど)生き生きとした物語がとても興味深く。
まあ、正直に言ってしまうと、オムニバス形式な1幕は、面白いけどちょっと物足りなさは感じました。
いえ、1個1個は本当に面白かったんですよ。

導入の幽霊たちのやり取りは、黄表紙の表紙を描いたセットの動きの秀逸さとも相まって、
誰がどの役で、どういう関係性なのかが凄くわかりやすかったし。
最初の北村さん演じる京伝の幽霊が語る物語(というか、彼の死後のごたごたの物語)は、
残された妻の百合(新妻聖子)が、義弟の京山(山路和弘)に夫が遺した全てを奪われ、
そして狂い死にしてしまう、という凄まじいもの。
聖子ちゃんの百合は、深い愛情と情の強さが素晴らしく!
見ているしかできない幽霊な京伝のへの字眉が、彼女の強さと脆さと相まってほんとに切なかったです。
山路さんの京山も、幼いころからの兄へのコンプレックスとかを、
凄くストレートに見せてくれて、悪いやつなんだけど、憎めない感じ。
というか、やっぱり山路さん、かっこいいな!

湯屋の三助(阿南健治)の幽霊が語る、式亭三馬(相島一之)の物語は、
木偶を使った演出も面白かったし、落ちも「そうきたか!」という感じで、
物語としては個人的に一番面白かったかな、と思います。
阿南さんのシャキッとした台詞回しもとっても聴きごたえあり!
でもって、山路さん演じる母親のインパクトも凄まじくv(笑)

朋誠堂喜三二(山路和弘)の幽霊が語る物語は、
朋輩である恋川春町の死と、その死後のあれこれについての物語。
春町本人は出てこずに、その死の真実が、
春町の妻お園(新妻聖子)と喜三二のやりとりの中で描かれていくわけですが・・・
このお園もかっこよかったー!!
そして、喜三二の渋さと策略家っぷりにちょっとよろめきましたv

そんな3つの物語の流れの底には、手鎖、というものの存在が常にありました。
最初に戯作者の幽霊たちが登場した時に、彼らの手には鎖があった。
そして、生きている頃の彼らに手鎖をつけたお上の存在も。
時折効果音として入る甲高い綺麗な音も、これは手鎖の音なんだ、と思ったら、
それが流れるたびにちょっと背筋が伸びるような気がしました。
1幕の最後は、蔦重(西岡徳馬)の手に手鎖が巻かれるのですが・・・
うーん、蔦重の存在については、結構意味深な描き方をされていたのですが、
今一つその化け物性(え)は浅かったかなあ。
それがちょっと残念。


そんな風に、井上さんの物語のお芝居としては珍しく(え)ある意味穏やかに幕間を過ごしての、2幕。
聖子ちゃんの歌声が空間を満たし、出てきた蜀山人(相島一之)が導入の語りをし、
そして、屋形船の上から川開きの花火を眺める蔦重と京伝たちの姿が舞台奥から前方に出てきて・・・

というところで地震!
警報が鳴って、ちょっと揺れてからスタッフさんがお芝居をストップ。
その後にかなりの揺れが着て、さすがにちょっと青ざめました。
地震が落ち着いてからも、エレベーターが止まった、というアナウンスが何度も流れたしね(>_<)
セットの安全確認のため10分の休憩、というアナウンスが入り、その間に帰られた方もいたかな。
私は、今帰ってもきっと電車は止まってるだろうし、
いざとなったら東京にもう1泊すればいいや(実は大阪からの出張帰り/笑)とおもって、
そのまま情報収集しつつ席に座っておりました。

で、再開。
最初からかな、と思っていたら、袖からいきなり蜀山人さん登場!
「みなさ〜んv」とにこやかに呼びかけて、
台詞ではなく、けれどそれまでの蜀山人の口調で客席を気遣う相島さん。
あの優しい笑顔と穏やか且つ軽妙な話し方に、ふっと肩の力が抜けて、
初めて自分がかなり緊張していたことに気づきました。

そして始まった、京伝と、花火職人幸吉(玉置玲央)の物語は、
人の胸の内に静かに燃え続ける炎を形にしたような、
淡々とした、けれど深い情に溢れた物語でした。

手鎖の記憶に怯え、筆を折ることを決めながらも迷い続ける京伝。
そんな京伝に突きつけられる、自らに巻かれた手鎖の本当の理由。
そんなときに出会った、花火のために生き、いつか一瞬でも日輪に勝る花火をと願う幸吉。
その二人の、相似と相違。

京伝が物語を書く理由。
幸吉が花火にかけた想い。
京伝がお上に奪い取られたもの。
幸吉がお上に叩き潰されたもの。

そして、二人が最後に選んだ―――選ばざるを得なかった、未来。

最後、江戸を去る幸吉に京伝が煙草入れを渡すのですが、
それを用意するときの京伝の決意を秘めた表情と、
受け取った煙草入れの重さに呆然とし、けれどしっかりと京伝の想いを受け止めて去っていった幸吉の、
二人の間に流れた静かで、けれどピンと張りつめた空気がとても印象的でした。

幸吉役の玉置くんは、それまでも色々な役をやっていたのですが、いまいち印象が薄く。
でも、それはこの役のためだったのか!!と思うくらい、素敵な幸吉でした。
たぶん初めて観る役者さんで。
台詞の声が朗々としていてすごい!と思ったのですが、
歌になると一気にトーンダウンしちゃうのはなぜなんだろう・・・?
でもまあ、一緒に歌ってるのが聖子ちゃんと山路さんだしねー。
というか、この二人を歌わせてくれて、しかもこの二人の絡みが凄く多かったのが、
個人的にとっても嬉しかったりv
このお二人、またミュージカルで共演しないかなー。
聖子ちゃんのアンナ・カレーニナとか・・・無理かな(^^;)


そんなこんなで、いろいろ思うところはありつつも、とても楽しむことができました。
最近ちょっと時代小説に嵌っているので、余計に楽しかったかも。
地震と帰り際の諸々が印象強すぎて、ちょっといろいろ飛んでっちゃった感じなのが残念・・・
2幕の物語だけでの構成でも良かった気もするけど、それだと最後のメッセージに繋がらないか。
あのメッセージが、井上さんご自身の言葉なのか、東さんの書いたものなのかもちょっと気になったり。
素案となった井上さんの小説も読んでみようかな。
松井さんの写楽た十返舎一九の物語も読みなおしてみたくなっちゃったなあ。
・・・しばらくは、時代小説ブームが続きそうです(笑)。

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