瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2015/07/14 22:46   >>

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避けがたきもの。

流れゆく季節
堕ちていく恋。
溢れ出る想い。
歩み寄る老い。
―――死。
そして、生きていくこと。


音楽劇「ライムライト」

2015.7.5 ソワレ シアタークリエ 18列10番台

原作・音楽:チャールズ・チャップリン
上演台本・作詞・訳詩:大野裕之
演出:荻田浩一
音楽・編曲:荻野清子
出演:石丸幹二、野々すみ花、良知真次、保坂知寿、吉野圭吾、植本潤、佐藤洋介、舞城のどか


チャップリンのハリウッド最後の映画「ライムライト」。
この有名な映画を私は見たことがありませんでした。
知っているのは、あの胸の奥にしまい込んだ感情を掻き立てるような、優しくて切ないテーマ曲のメロディだけ。
今回、この映画の初めての舞台化の初日の舞台を観ることができました。


物語の舞台は、1914年ロンドン。
オーストリア皇太子がサラエボで暗殺されたニュースが届いた日から始まります。
容赦なく近づく戦争の気配―――その緊迫した状況にこわばる人々の表情・・・
から、一転して流れる♪反戦のんきソング !
あまりの切り替えの鮮やかさに、一瞬呆然としてしまいました(笑)。
その一瞬の空っぽになった私の意識の中に、この物語はすっと優雅な足取りで入り込んできました。

舞台は、下手の一段高いところにしつらえられたカルヴェロ(石丸幹二)の部屋と、
下手の舞台袖か楽屋といった雰囲気のスペースで作られていました。
カルヴェロの部屋で紡がれる、カルヴェロとテリー(野々すみ花)の物語。
体を壊し、舞台から離れた年老いた喜劇役者と、
彼が助けた踊れないバレリーナ、テリー。

たくさんの言葉で。
舞台に向かう自分自身の姿で。
慈しむその視線と温もりで。
少しずつ少しずつ、テリーを癒していくカルヴェロ。

その二人の物語に関わるのは、
ハンガーに掛かった沢山の衣裳の中から、一枚の衣裳を身に着けてすっと気配を変える黒衣の男女。
時に、現実として彼らと会話する人となり、
時に、カルヴェロやテリーの回想の中の人物として現れる人となり、
時に、カルヴェロが復帰をかけた舞台の共演者や、客となり―――
様々な形で二人に関わった人たちは、
2幕で一つの役に収束し、二人と共に一つの物語を紡ぎ始めました。

希望と絶望。
諦念と切望。
慈愛と嫉妬。
恐怖と歓喜。
一人の人の中で、あるいは誰かに向かう、矛盾しつつ共存する沢山の鮮やかな感情。
カルヴェロの中の、テリーを慈しみやその才能への愛情と歓喜と、自分自身に向かう苦い諦念や絶望。
テリーの中にある、カルヴェロへのまっすぐな感謝と愛情、そして多分無自覚の同情。
お互いの中にある感情の、その全てを否定せずに受け止めて支え、消えていこうとする男と、
受け止めて抱きしめて、その上でなお共に在ろうとする女。
どちらの感情も、間違いなく正しくて。
でも、だからこそ、互いを傷つけ遠ざかった。
舞台を満たす光と、その影の中で紡がれた物語。
限りなく美しく、人の温もりのように優しく、けれど同時に容赦なく残酷なその物語を前に、
泣きながら笑い、微笑みながら頬を濡らしました。

石丸さんのカルヴェロは、なんとも軽やかに洒脱で、でも確実な老いと舞台への執着を感じさせる存在でした。
テリーに向かう、真摯ででも飄々とした言葉たち。
ふとした瞬間、その声音に、表情に、言葉に混じる苦い色。
その苦さも含めて、カルヴェロの語る言葉は、なんだかものすごく私の気持ちに突き刺さってきました。
映画を見ていない私には、その言葉がチャップリンが創りだしたものなのか、
脚本家が、はたまた石丸さんがアドリブで創りだしたものなのかは区別がつきません(^^;)
そして、私の記憶力では、突き刺さった言葉は細い氷でできてるかのように、
すっと溶けていってしまって・・・実はあまり覚えていないのです(涙)。
でも、一つだけ幕間にメモした言葉がありました。

「死と同じく避けがたいもの―――それは、生きることだ」

静かに、けれど確かな信念と痛みを纏って呟かれたこの言葉を聞いた瞬間、
ぶわっと涙が溢れてきてしまいました。
その時の感情をうまく言葉にすることはできないのだけれど、
なんというか、あの瞬間の私に、たぶん必要な言葉だったんだろうなあ、と思います。

テリーにとっても、カルヴェロの言葉はきっと深く響くものだったんだろうなー。
時々おやじギャグ的なものも入って、えええ?!と思う時もありましたが(え)、
その言葉たちは自分自身に言い聞かせる以上に、テリーのために語られたもので・・・
最後の舞台のアンコールで彼が歌った歌―――♪You are the Song での歌声も含めて、
テリーへと向かうその言葉は、彼女に強さと幸せと温もりをもたらす魔法の言葉のようだなあ、と思いました。


野々さんのテリーは、とにかくめちゃくちゃ綺麗!
1幕の打ちひしがれた様子から、すっと見え隠れする勝気さがとても微笑ましくv
知らなかったこととはいえ、自分が踊るために犠牲にしたものの大きさ。
その犠牲に対してどうしても自分の中に湧き起ってしまう嫌悪。
そんな風に嫌悪してしまう自分への怒り・・・うん、やっぱり気が強いなー(笑)。
1幕で語られるネヴィル(良知真次)への想いの初々しさもさることながら、
その彼の成功を目の当たりにした後、死を選ぼうとする流れも、
その絶望の深さとブライドの高さに感嘆してしまいました。
たおやかな風情と、しなやかで強い気性が矛盾なく存在しているところが、
テリーの魅力なのかも、と思いました。
そして、2幕のバレエシーンは本当に圧巻!!
私はバレエはあんまりなじみがないので、技術的にどうかとかは全然わからないのですが、
白いチュチュを翻して踊るテリーの凛とした姿と、
その姿から感じられる、恐怖を乗り越えて踊ることへ溢れんばかりの喜びが眩しくて、
なんだかもう思いっきり拍手してしまいましたよ。
ラストシーン、全ての力を出し切り、全ての言葉を伝え切り、生きていくことを終えようとしているカルヴェロ。
彼が最後に目に焼き付けたテリーの姿は、きっと泣きたくなるほど美しくて、
胸が痛むほどに愛しくて―――希望と光と幸せに満ち溢れたものだったんだろうな。


良知くんは主にネヴィル役。
1幕では、それに加えていろんな役もやっていましたが、
テリーの回想の時のネヴィルの優しい表情がとても印象的でした。
彼もテリーに仄かな想いを寄せていて―――プリマと作曲家として再開した時、
彼の音楽を聴くと踊りたくなる、と1幕で言っていたテリーは、
2幕では、彼の曲に合わせることで、本当に素晴らしいダンスを見せてくれて。
ネヴィルは、きっと「これは運命だ!」とか思っちゃったんだろうなー(笑)。
でも、テリーにとっては、多分ネヴィルは(というか彼の音楽は)踊るために不可欠なものであって、
踊りつづけるために、あるいは生きるために必要なのは、カルヴェロだったんだろうなあ。
ネヴィルもそれがわかっていたから、諦めはしないけど身を引いたんだろうし。
そんなネヴィルに良かれと思ってとはいえ、カルヴェロのあの仕打ち(笑)は残酷かな、と(え)。
うん、多分この物語の後日談があったとしても、ネヴィルはテリーにとっていい友人どまりな気がする(笑)。


保坂さんは、主にカルヴェロの大家さんなオルソップ夫人を演じてらっしゃいました。
あのパワフルな歌声がちょっと少な目だったのは残念ではありましたが、
噂好きでおせっかいで、いったん懐に入れちゃうと情の深い大家さん、素敵でした。
あの大きなフリルのエプロンがお似合いv
居酒屋の女主人もかっこよかったです。

吉野圭吾さんは、主な役は2幕の劇場支配人ポスタント、かな?
1幕でもそれっぽい役をやってた気がするんですが、別人かしら?
というか、1幕は、あのよぼよぼのおじいちゃん医者のインパクトが凄くて(笑)。
コートとか、帽子とか、白衣とか、衣裳をちょっと加えることで、ふっと雰囲気が変わるのがさすが。
ダンスもとってもかっこよかったですv
(というか、何気に男性陣は踊れる人がそろってたよね。
 みんなで踊るシーンとか、それぞれに魅力的で迫力がありましたv)
ポスタントさんはねー(笑)。
言葉を2度繰り返す癖とか、気持ちが入っちゃうと距離感を無視しちゃう感じとか、
微笑ましいというか、周りは苦労するだろうな、というか(え)。
でも、支配人としての厳しさと同時に、カルヴェロへの友情がちゃんと感じられて。
カルヴェロの最後の舞台の前の二人の会話とか、
倒れたカルヴェロの傍での動きとか、そういうのがちょっとぐっときました。


植本さんは、凄く久々に舞台で拝見する気がします。
なんというか、ほんとに相変わらずの芸達者ぷりに大満足!
どこからがアドリブなのかわからない勢いで、絶妙に笑いをとりつつ、
舞台上を縦横無尽に動くのから、ちょっと目が離せなくなる感じが・・・(笑)
冒頭のカルヴェロのお友達役も印象的でした。
2幕のボダリンクさんは、役者に振り回され支配人に振り回され、
めちゃくちゃ忙しく働きつつも、気持ちはちゃんと舞台や役者に寄り添ってるところに、
ちょっと涙を誘われたりしました。
ポスタントさんのお世話、大変だろうなー(笑)。


佐藤さんは、もう本当に素晴らしいダンスでした!!
もう冒頭から無駄にかっこいい!!(褒めてます/笑)
2幕でのテリーとのパ・ド・ドゥもめちゃくちゃ綺麗で、うっとりしてしまいましたv
今回は台詞もありましたね。
(多分)台詞のある役を拝見するのは初めてなので、ちょっとどきどきしてしまいました(笑)。


舞城さんも、舞台の中ではダンスポジションだったのかな。
たしか「ニジンスキー」で拝見した記憶があって、とってもキュートなダンサーさんな印象なのですが、
今回のダンスも、野々さんとは違う雰囲気の美しさでした。
イワシの若い奥さん役、可愛かったし、テリーのお姉さん役は、見ていて切なかったな。


音楽劇、ということで、このお芝居にはたくさんの音楽がありました。
ショーのシーンでカルヴェロが演技として歌う歌もあったし、
テリーやカルヴェロの心情を歌う者もあった。
そのうちの何曲かは、元の映画の曲で、チャップリンが作ったものとのことですが、
それ以外の曲は荻野さんのオリジナル曲とのこと。
でも、観ていて全然違和感がありませんでした!
荻野さんは、生演奏のバンドのピアノもやってらっしゃって・・・
ピアノとアコーディオン、ヴァイオリンとリード(とあるけど、木管とか金管かな?)という編成の生演奏は、
このこじんまりとした、でも凄く奥行きのあるお芝居にとても合っていたと思います。



カルヴェロの死で幕を下ろしたこのお芝居。
再び舞台が明るくなったとき、
寝椅子から笑顔でカルヴェロが―――カルヴェロを演じた役者が起き上がりました。
それを見た時は、一瞬ちょっと違和感があったのですが、
後から考えてみたら、1幕と2幕を通して、「カルヴェロとテリーの物語」を描いた舞台の舞台上と舞台袖を、
違う角度から描く入れ子式な舞台だったのかな、ということに思い至ってみたり。
ということは、最初のカーテンコールは、カルヴェロやテリーを演じた役者さんのカーテンコールであって、
石丸さんや野々さんのカーテンコールはその次のカーテンコールだったのかも?
もう1回観れたらその辺のことももう少しクリアに受け止めることができたのかな。
それはとっても残念ですが、でも、1回きりの観劇でも大満足なお芝居でした。

まさに世界初演の初日の舞台。
たぶん、あの日はまだきっと手探りで、滑らかでない部分もあったと思う。
初日から1週間以上を経て、きっとあの舞台はもっとずっと変化し、進化し、深化していっているんだろうな。
映画と併せて考えた時に、この舞台がどう評価されるのかは私はわかりません。
でも、愛され続ける映画と同じように、この舞台も永く上演され続ける舞台になってほしい。
そう、心から願いたくなる舞台でした。

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