瓔珞の音

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zoom RSS 情熱の味

<<   作成日時 : 2015/11/08 21:07   >>

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英語の苦手な私が、この単語に“情熱”以外の意味があることを知ったのは、
確か「オペラ座の怪人」に嵌ったときだったと思います。
大好きな♪The point of no return で歌われる、二人のPassion―――情熱と情欲と、受難。
その時に、この言葉の語源がラテン語の“苦しむこと”だということも知りました。

誰かに向かう情熱。
爆発する感情。
寄り添うための受難。

その全てが伴う、苦しみ―――

だけど、その苦しみは、きっと滴るほどの“甘美”さも内包しているのかもしれません。


「パッション」

2015.11.1 マチネ 新国立劇場中劇場 1階11列60番台

出演:和音美桜、井上芳雄、福井貴一、佐山陽規、伊藤達人、原慎一郎、KENTARO、藤浦功一、内藤大希、
    シルビア・グラブ、吉永秀平、鈴木結加里、中村美貴、一倉千夏、東山竜彦、谷本充弘、白石拓也、
    小南竜平、岩橋大、荒田至法


物語の舞台は、19世紀のミラノ。
騎兵隊の大尉ジョルジオ(井上芳雄)は、熱烈恋愛中のクララ(和音美桜)を置いて、
辺鄙な田舎に着任となります。
そこで彼を待っていたのは、退屈な田舎での生活に倦んだ上官や同僚。
そして、上官であるリッチ大佐(福井貴一)の従妹である病弱なフォスカ(シルビア・グラブ)でした。
持ってきた本を貸したことをきっかけに、言葉を交わすようになるジョルジオとフォスカ。
あくまで病弱でお気の毒な、上官の従妹としてフォスカに接するジョルジオとは裏腹に、
フォスカはジョルジオに強い恋心を抱き、あの手この手で彼に近づこうとします。
間接的に、時には直接的に拒絶するジョルジオ。
けれど、彼女の主治医でもあるタンボウッリ軍医(佐山陽規)に諭されて、
彼女を見舞い、先の短い彼女のささやかな願いを聞き入れ、彼女の言葉を聴くジョルジオ。
垣間見える彼女の聡明さと、執拗なまでに手渡される彼女の愛情に翻弄されたジョルジオは、
いつしか自分の求める“愛情”の形を見失い―――


というような物語でした。
見ている最中の最初の感想は、怖いなー、というもの。
一方的に押し付けられる愛情や執着って、本当に怖い。
学生の頃、今でいうストーカー的な被害にあったことがあって、警察のお世話になったりもしたんだけど、
あの時の自分ではどうにもできないことに対する不安とか恐怖とか嫌悪感とか、
そういうものを思い出しちゃって、ちょっとぞっとしました。
まあ、フォスカは真正面からぶつかってるだけまだましなんですけどねー(え)。

そんな過去の記憶が蘇りつつの観劇になってしまったので、
どうしたってフォスカに対して見方が厳しくなっちゃうんですが・・・
彼女の何が怖くて不快だったかって、凄く下手で控えめな言葉を使いながら、
結局のところ自分の命(の短さ)を盾にしているところ、なのかな。
先の短い相手の頼みを断るのって、人としてやっぱりとても抵抗があるし、申し訳ない気持になるよね。
ジョルジオとか、基本紳士(というか、女性に優しいイタリア男?)だから、
そういうところに付け込まれたら絶対断れない気がする。
雨の中で倒れたフォスカを立ち去ろうとして、でも結局おいていけずに振り向くときの、
あのジョルジオの忌々しそうな、でも仕方がない、という諦念もある表情が全てを物語ってたなあ、と思う。
それから、汽車の中でのシーンの、
自分なら全てを、命を掛けられるけど、あの人(クララ)はどうなの?という台詞も怖かった。
不倫という二人の関係を知った上での駆け引きとしての言葉だったら、とんでもなく強かだし、
単純に、素直な気持ちからくる疑問だとしたら、それはそれで空恐ろしいし。

なーんて思いながら観ていたんですが・・・
終盤、何故かフォスカが可愛く感じられちゃったんですよねー。
自分でもすごい不思議なんですけど、ここまで懸命になりふり構わず頑張ったのなら、
報われてもいいんじゃないかな、って思っちゃった(^^;)
絆された、ということなのかもしれないし、
もしかしたら、そもそも彼女が持っていた陽性の魅力みたいなものが、
あからさまではなく、でもちゃんと要素として描かれてたのかもしれないな、って思う。
そう思わせてくれたシルビアさん、ほんと凄い!!
彼女の幸せは、最後の最後まで彼女だけの幸せではあったけれど・・・ね。

そういう意味では、和音さんのクララがジョルジオを失ったことは、自業自得なのかもしれません。
クララは本当に綺麗で情熱的で、でもどこか守ってあげたくなる風情もあって、
これはジョルジオ夢中になるよ!って感じで(笑)。
でも、どうして結婚しないのかなあ、って冒頭から疑問に思っていて、
もしかしたら、身分違いとかそういうのかな、なんて想像していたのですが、
同じ疑問を口にしたフォスカに対するジョルジオの答えにのけぞったよね。
そうか、人妻だったのか!!
振り返ってみると、台詞とか、衣裳とか、髪型とか、そういうのからも納得なのですが。
あの時点で、一般的にはクララは狡い女、という感じで株が下がるのかもしれないし、
フォスカの理論が正当性を纏ってしまうのかもしれないけど、
でも、私的にはわかってて付き合ってるんだから、関係性としてはフィフティフィフティだと思うし、
描かれていないクララ自身の背景にも思いを馳せてしまうんですよね。
彼女の結婚がどういう経緯のものであったのか、
彼女の夫はどういう立場の、どういう人物で、二人の間に愛情はあるのかどうか、
ジョルジオの言う彼女との未来の中には、彼女のこどもは入っているのかどうか・・・
自分の立場を弁えずにジョルジオに溺れた彼女は愚かだったかもしれないけれど、
強く聡明な彼女をそうさせるだけの理由があった、と感じさせてくれる和音さんのクララが、
私は結構好きでした。

でも、結局ジョルジオは、自分にとって心地よい“愛”を選んでしまったのかなあ。
愛は求めるものではなく与えるものだ、的なことをフォスカに言っていた気がするけど、
与え続けることよりも享受することをジョルジオは選んだのだろうか。
あるいは、与えた愛への見返りを求めてしまったんだろうか。
それほど、フォスカが与える愛情は、彼にとって甘美だったのだろうか―――?
最後、彼がフォスカに向けた愛情は、嘘ではなかったと思う。
嘘ではなかったけど、でも、本物でもなかった―――そう、私は感じました。
あの決闘も、フォスカが死んでしまうのなら、自分も死んでしまおう、ということだったのかな・・・?
でも、それなら大佐を撃たずに、ただ撃たれてればいいわけだし。
うーん、思い返したら、いろいろ疑問が浮かんできたなー。
1回しか観なかったのを、ちょっと今後悔しています。
複数回見たら、見えてくるものが違ったかもしれませんね。

それに、今回はサイド席からの観劇だったのがちょっと残念。
正面から見たらとても綺麗だろうなあ、と思うシーンも多かったので。
上手席だったので、食事のテーブルに着くジョルジオはいつも後ろ姿だったしね。
あの食卓で、フォスカからのアプローチに対して、
ジョルジオがどんな表情をしていたのかがとっても気になりました。

あと、不思議なことに、今思い返してみると、ミュージカルを観た、という感覚が凄く乏しいの。
オケの演奏が素晴らしい!と思ったし、難しそうな曲だなあ、と思ったし、
同僚なみなさんやアンサンブルさんのハーモニー素敵vと思ったし、
井上くんやシルビアさん、和音さんの歌声も堪能したはずなのですが、
なんか全然曲の記憶がないんですよ(^^;)
私の記憶力の問題かもしれないし、ソワレで観た舞台の衝撃に吹っ飛んじゃったのかもしれないけど、
でも、もしかしたら、ミュージカルというよりも、
台詞劇のような生々しさをこの舞台から感じていたのかもしれないなあ。

うん、凄く怖かったけど、もしいつか再演されることがあるなら、ぜひまた観てみたいと思います。
その時は、ミュージカルとしてもっと楽しめるといいなあ。
まあ、このミュージカルって、そもそもそういうのとは違うものなのかもしれないけど。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
みなさん、始めにフォスカに感じる強烈な嫌悪感を、結末では見事にひっくり返されてるんですよね。
よそのブログで紹介していたサイトを早速にご注進。
http://www.ne.jp/asahi/sondheim/club/Passion.htm
ミュージカルでこんな風に分析されたものを見たのは初めてで興味深かったです。
すずwinter
2015/11/09 00:58
すずwinterさま

コメントありがとうございました。
そうか、みなさんひっくり返されてるんですね。
教えていただいたサイトも、とても細かくて驚きました。
じっくり読ませていただこうと思います。
教えてくださってありがとうございました!
恭穂
2015/11/09 21:20
恭穂さま
続けて失礼します。
やっと自分感想をアップしたぞ、と恭穂さんのご感想読ませていただいたら、
passionの持つ意味とか、フォスカが自分の命の短さを盾にしているとか
とても重なっていて驚きました。
でも私は最後までフォスカを可愛いとも思えず、心を寄せることも
できませんでしたが(ー ー;)

ジョルジオをどうかと思っているのですが、あの結末を知って
もう一度観たら感じ方もかわるのかなぁとは思います。
いやしかし、もう一度観るのは少しキツイかも・・・。
スキップ
2015/11/25 07:56
スキップさん、こちらにもありがとうございます。
おお!
そんなに重なっているところがありましたか!
早速これからお邪魔して拝見させていただきますね。
というか、スキップさんと語り合いたいー!

何度も観た観劇友の方に、「せめて2回観てほしかった」と言われたのですが、確かに結末を知っているとまた違った捉え方ができたかもしれませんね。
再演されたら、勇気を出して今度は2回観てみようかと思います。
恭穂
2015/11/25 21:06

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