瓔珞の音

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zoom RSS ガラス張りの密室

<<   作成日時 : 2015/12/10 22:44   >>

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めちゃくちゃ忙しいわけではないのだけど、
気持ち的になんだかせわしなく過ごしていたら、あっという間に2週間経ってしまいました!
12月も1/3が終わっちゃったよ!
どうする自分!!

・・・という気分です(笑)。

今もちょっといろいろ落ち着かなくはあるのですが、
メモ書き程度でも書いておかないと、というか既に記憶が曖昧なので、
ほんとに覚書で観劇記録、書いておこうと思います。
時間制限30分!(笑)


「スポケーンの左手」

2015.11.28 マチネ シアタートラム H列10番台

作:マーティン・マクドナー
翻訳・演出:小川絵梨子
出演:蒼井優、岡本健一、成河、中嶋しゅう

好きな役者さん4人の組み合わせに心惹かれて観に行った舞台。
演出の小川さんのお名前も、以前からよく目にしていたのですが、
演出作品を見るのはこれが初めてとなりました。
観終わっての感想は、なるほど、こういうお話でしたか!と。
いつものごとく予習なしで臨んだので、目の前で繰り広げられる物語に、見事に翻弄されました。

物語は、とあるホテルの1室で終始します。
下手にはドアとバスルーム。
上手には大きな窓とその傍のベッド、そしてクローゼットに続くドア。
細長い空間を挟むように配置された客席。
観客の視線が透過する、見えない壁。
あるいは、観客の視線そのものが壁になっているのか・・・
物理的に開放的な空間は、けれど心情的には限りなく密室に近かった。
その心理的に閉塞的な空間の中を満たす、ひりひりするような緊張感。
それが弛緩する瞬間。
暴発する瞬間。
そして様々な想いが交差する、濃密な沈黙の時間・・・
後に残ったのは、1冊の推理小説を一気読みした後のような、
どこか呆然としてしまうような、でも心地よい疲労感でした。

37年前、切断され奪われた自分の左手を探し続ける男(中嶋しゅう)。
その男を騙して金をせしめようとして、でも嘘がばれて男に命を握られるカップル(蒼井優、岡本健一)。
一つの言葉が、一つの行動が、命を奪うかもしれない、奪われるかもしれない。
そんな殺伐とした、けれどどこか滑稽な緊張感をかき回すように現れる、
ホテル従業員(成河)の、どこか違うところを見ているかのような不思議な目。

男のスーツケースに押し込められた無数の左手。
ライターのオイル。
揺らめく蝋燭の炎。
撒き散らされるガソリン。
彼らの皮膚を濡らす汗。
俯いた男の眼に浮かんだかもしれない、涙―――

舞台の上にあるそれらからは、もちろんなんの匂いもしなくて。
なのに、私には、それらの匂いが“見えた”気がした。
死んだ皮膚の饐えた匂いが、
オイルが燃える焦げ臭さが、
熔けていく蝋のどこか有機的な匂いが、
彼らを追い詰めるガソリンの圧倒的な匂いが、
見えないはずのそれらが、ガラス張りのような密室の中を満たしていくさまを感じた気がした。
それは、嗅覚ではなく、視覚ではなく、むろん触覚でもなく・・・
見ている時には、そう明確に感じたのではないけれど、
でも、観終わってあの舞台を思い返したとき、そういうあるはずのない“匂い”が、
あのホテルの1室には、確かにあったように感じられました。
それが何なのか、何故なのかをうまく説明することはできないけれど、
敢えて陳腐な言い方をすれば、それだけあのあり得ない状況がリアルだった、ということなのかもしれません。
・・・でも、撒き散らされるあれらを間近に見る前方席は、結構気持ち的にきつかったろうなー(^^;)
後方席で良かった、と久々に思いましたよ(笑)。


蒼井優ちゃんのマリリンは、なんというか凄い生命力を感じました。
動きが軽やかだったり、声に力があったり、表情が鮮やかだったり、
何気にとっても現実的だったり、理性的だったり、とにかくパワフル!
この子は、どんな時だって生きることを諦めないんだろうなあ、なんて思いました。
でもって、この子がいたからこそ、この物語の中の誰も命を絶ちはしなかったのだと、
そんな風にも思った。
最後、割れた窓から出ていく姿が、とってもかっこよかったですv

岡本さん演じるトビーは、マリファナの売人をしている黒人、という設定のようなのですが、
そんな大それたことをしているとは思えない臆病さと、突発的な大胆さのギャップが面白く。
ちょっとしたこと(でもないか)で泣いては、マリリンに罵倒されるんだけど、
マリリンとは違う色合いの生命力、というかしたたかさを感じたな。
なんというか、自分にとって大切なものとそうでないもの、必要なものとそうでないもの、
そして、それらを手にしているためにすべきことが、彼の中ではとてもクリア。
でもって、マリリンとあんまり年齢が変わらないように見えたあたり、岡本さん凄すぎる・・・!(そこか)

そんな二人とは対照的に、個人的に全く生命力を感じなかったのが、成河さんのマーヴィン。
最初は、野次馬的な人なのかなー、と思っていたのだけれど、
物語が進むにつれて、この人は“現実”を生きていないんじゃないか、と感じた。
舞台と客席の間を歩きながら、とつとつと語るその姿。
下着1枚でベッドの上に横たわりながら、自分の“望み”を語る姿。
“ヒーロー”になる。
そう彼は言っていて、思い返してみれば彼の行動は、
確かに彼が描く“ヒーロー”的なものだったのかもしれない。
でも、そういう彼の言葉や行動は、なんだか凄く薄っぺらいものに見えた。
浅はかで、不確かで、不透明で、不安定―――
人というよりも、執着とか妄想とか、もの凄く強い思念の塊みたいな存在に見えました。
それが、なんだかとっても怖かったな。
・・・まあ、実際はいろいろ中途半端な単なる野次馬なのかもしれないけど(笑)。

中嶋さんのカーマイケルは、彼が過ごした37年間を、時にもの凄くリアルに、
そして同時に、それは彼の妄想なのではないかと思わせるような危うさをもって見せてくれました。
彼の語る言葉の、どこまでが真実で、どこからが妄想なのか。
それとも本当に全てが真実なのか―――?
それは、もう彼自身にもわからないんじゃないかな、と思った。
37年の間に、きっと彼は騙されて、傷つけられて、沢山の辛酸をなめてきた。
でも、同時に彼は沢山の人を脅し、傷つけ、時には殺めてきたのかもしれない。
そういう凄味が、彼にはあった。
でも、同時に左手を失った時の少年のままの部分が残っているようにも感じた。
彼の上を流れた時間。
彼の中に滞ったままの時間。
そのアンバランスさ。
終盤、撒き散らされた左手は、彼とマーヴィンによって元通りスーツケースの中に収められていきます。
その過程で、手にしたマーヴィンが描写した、一つの左手の特徴。
その手を、自分の右手とじっと見比べるカーマイケルの、どこか途方に暮れたような横顔。
以前からスーツケースの中に在ったはずのその左手が、彼のものなのか、そうでないのかは舞台では語られません。
青い鳥的に、探し物はすぐ近くにあって、見えていなかっただけという落ちなのか、
どんなに見比べても、その左手が自分のものかどうかが彼にはわからないということなのか・・・?

ラストシーン、ベッドの端に腰かけて頭を抱えたカーマイケルの姿は、物語の始まりと同じでした。
違うのは、床に撒き散らされたガソリンと、割れた窓ガラス。
そして、スーツケースの上に一つだけ置かれた左手。
それは確実な変化ではあるのだけれど。
闇に沈むカーマイケルの姿を見つめながら、もう一度この部屋が明るくなったとき、
この物語はまた最初から始まるんじゃないかな、なんて思ってしまいました。
そんなSFのような物語ではきっとないと思うけど、
でも、カーマイケルの左手を探す旅は、これからも続いていくのだと思う。
それが、真実であっても、そうでなくても。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
お久し振りです。
「スポケーンの左手」、私も28日マチネでした!
同じ空間で観劇していたのですね。お会いしたかったです。

ちなみに私、最前列でした。
ベッド側の方だったので、例のモノは近くには飛んできませんでしたが、結構リアルに作ってましたね。

感想を拝見して、唸りました。
確かに舞台から"匂い"を感じてました、私も。
それに気付かせてくれた恭穂さん、ありがとうございます!
花梨
2015/12/12 23:44
花梨さん、お久しぶりです!
ニアミスだったんですね。
私もお会いしたかったです。
そして、最前列だったのですか・・・!
結構リアルだったのですね。
近くに飛んでこなくてよかったですねー。

“匂い”、自分の妄想もここまで来たか・・・と思っていたので、
花梨さんも感じてらっしゃったと知ってほっとしました(笑)。
良いお芝居でしたね。
繰り返し観るには気力が必要そうですが(^^;)
恭穂
2015/12/13 22:43

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