瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2016/01/14 22:12   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

物語のための役者。
役者のための物語。
どちらが良いとも言えないし、
どちらが悪いとも言えないし、
バランスが良いから満足とも限らない。
所詮は好みの問題なのかもしれないけれど・・・

そんなことをつらつら考えた舞台でした。


「DNA-SHARAKU」

2016.1.10 マチネ 新国立劇場 中劇場 1階18列30番台
2016.1.10 ソワレ 新国立劇場 中劇場 1階4列30番台

原案:冲方丁
脚本・演出・作詞:小林香
音楽:井上ヨシマサ
映像:齋藤精一

出演:ナオト・インティライミ、小関裕太、新妻聖子、坂元健児、田野優花、ミッツ・マングローブ、藤岡正明、
Spi、大野幸人、Miz、朝海ひかる、中川晃教、イッセー尾形 他


物語の舞台の一つは2116年の東京。
最高人工知能サイの統治のもと、
争いのない世界を作るために、火種となり得る「創造する心」の迫害を続けてきた日本では、
「創造する心」の象徴である遺伝子「DNA-SHARAKU」を擁護するシャラク派と、
過去にまでさかのぼって「DNA-SHARAKU」保持者=シャラキストの遺伝子操作をする政府との、
内戦の勃発が危ぶまれていました。
しかし、どれだけシャラキストの「創造する心」を抹消しても、シャラキストは消えることがない。
その原因が、江戸時代の謎の絵師、東洲斎写楽にあると考えたサイ。
その命を受けた政府総裁の水枝リドル(坂元健児)は、
その腹心である在人(中川晃教)を使って写楽探索を続けていました。
内戦勃発まで1週間となった日、サイは2045年に生きる画家志望の結城連(小関裕太)と、
2016年に生きるシンガーソングライター柊健二(ナオト・インティライミ)の二人のシャラキストに、
写楽探索を命じ、1793年の江戸へ送り込みました。
内戦の回避と、DNA-SHARAKU抹消によって全ての芸術が消える世界の中、自分の絵だけを残すために。
DNA-SHARAKUによって籠の鳥のように暮らしてい来た一人の女性の自由と「創造する心」の存続のために。
それぞれの目的を胸に、共に江戸に降り立った二人が出会い、知り、見つめ、選んだものは―――?


というような、たぶん(笑)SFな物語でした。
もともと写楽を題材にした小説を何冊か読んでいて、結構興味があったのと、
原案が冲方さんということもあって、どんな物語なのかかなり期待して行ったのですが・・・

ここまでツッコミどころの多い作品は久々でございました(^^;)

いやもう歴史ミステリーファンとしてもSFファンとしても理系としても舞台ファンとしても、
もう首を傾げずにはいられない状況に、ちょっと途中で負けそうになりました・・・
なんというか、そもそもの設定に無理があるし、
意味深な諸々も伏線として回収されることもないままぶっちぎられてるし、
最後のサイを説得する方法にはもう唖然とするしかなかったし、
物語の肝な写楽の1枚目の謎の絵の隠し場所には、もうつっこむ気も起きませんでした(^^;)

他にもいろいろいろいろあるのですが、まあ、私が物語を深読みしすぎたり、
細かなことまで何とか整合性をつけようと考えすぎちゃったせいもあるのかな。
でも、疑問も矛盾も違和感も、全てそのままでフィナーレに突入されちゃって、正直呆然といたしました(笑)。
で、最後の最後に思った。

これは、ショーだ!
豪華な出演者と、彼らの魅力を魅せるために組み上げられた、ショーだ!

そんなふうに自分の中の落としどころを見つけたうえで、
ソワレは、物語の流れとか細かな設定とか、全部考えないようにして、
ただ目の前にあるものをひたすら感覚的に受け止めるようにしたところ・・・

面白かったんですよ、これが!

考えてみれば、いろんな分野から集められた役者さんたちは、それぞれに魅力的だし、
でもって、役者さんにあて書きされたかのような登場人物が素敵でないはずないし、
楽曲もバラエティに富んでいて、かつ聴きやすいキャッチ―さだし、
衣裳は綺麗だし、映像はめちゃくちゃ凝ってるし、
シーンごとのパフォーマンスとしては、とても質が高い・・・んですよ、多分!

マチネで唖然としているうちに置いていかれた感じのサイの説得計画だって、
残りの3日間でこのショーをみんなで練習したのかとか、衣裳は誰が作ったんだとか、
花魁にモダンバレエ(かな?)を教えたのは誰だとか、そういう諸々を考えずに観ていたら、
目の前で繰り広げられるショーの中、歌声に込められた祈りや、
抑圧からの解放や、ダンスから感じる圧倒的な生命力や・・・
そういうものが本当に鮮やかに迫ってきて、
アップテンポの曲の時には自然に体が動きそうになったり、手拍子したり腕を振り上げたりしたくなったし、
聖子ちゃん演じるハルの歌声の中、死者と生者が対峙するシーンから、
最後の祭りのシーンのあたりでは、気づいたらぽろぽろ涙が零れていました。
で、それをサイにスキャンされた(笑)。

・・・このスキャンもびっくりしたなー。
それまで、舞台上と客席には明確な境界があったのを、一気になかったことにされた感じで、
マチネの時は、それでも豪華な舞台にちょっと高揚していた気持ちが、一気に冷めてしまいました。
「HEADS UP」の時みたいに、最初から巻き込んでくれるような演出なら違和感なかったのかもだけど・・・
まあ、それも難しいか(^^;)

今思い返してみても、“物語”としては思うところは山ほどあるんですが、
役者さんの魅力を最大限に見せるために、組み上げられたもの―――“ショー”としては、
とっても楽しませていただいた舞台となりました。
うん、まあ、こういう楽しみ方の舞台もたまにはいいかなー。
前置きが長くなりましたが、そんなわけで(笑)、この後は役者さんの感想を少しずつ!


柊健二役、ナオト・インティライミさん。
お名前は知っていたし、多分TVとかラジオで歌声は聴いたことがあると思うのですが、
意識して拝見したのは今回が初めてでした。
初舞台、とのことでしたが、ストリートのミュージシャンで、
難しいことはあまり考えないけど、
人とのコミュニケーション能力はめちゃくちゃ高くて面倒見のいいお兄ちゃんを、
とってもナチュラルに創り上げてらっしゃったと思います。
ストリートライブのシーンの曲はご自身で作られたとのことですが、
普段のライブもあんなふうにファンと声を合わせているのかなー。
なんだか気持ちがほっこりしましたv

結城連役、小関裕太くんも初見かな?
予想していたのよりも大人な雰囲気で、ちょっとびっくりしてみたり。
声も色気がありますねーv
柊とは逆に、ちょっとコミュ障っぽい、ちょっと痛々しい雰囲気だった彼が、
柊や江戸の人々と接する中で、少しずつ変わっていくのが微笑ましかったです。
自己肯定のための絵から、自己表現のための絵に、
あるいは、内へ向かう絵から、外=人に向かう絵に―――そんな感じ?
最後のショーで、思いっきり踊ってたのが凄い楽しそうだったのも印象的でした。

新妻聖子ちゃん演じる佐山ハルは、設定的には20代半ばなのだと思うのですが、
シャラキストであることを隠すために学校にも通えないまま、
籠鳥のように育ったというのが納得な感じの、
少女のような可愛らしさと、まっすぐな強さ、そして柔らかな心の柔軟さ素敵でした。
ミッツさん演じるお母さん、佐山コトリとのやりとりも良かったな。
二人の間にある愛情とか信頼とかが凄く優しくて、なんだか泣きそうになった。
ミッツさんの演技や歌をちゃんと見るのは初めてだけど、
静寂さの感じられる佇まいとその歌声に、なんだか凄い説得力がありました。
実はこの人、もともとシャラク派のリーダーで、
ハルの「DNA-SHARAKU」を隠すために政府に従ったことで、シャラク派から抜けざるを得なくて、
一部のメンバーからは憎しみさえ持たれていて、
それでも、いつか飛び立つ日を信じて、
ひたすら自己を抑圧して娘を守ってきたのかなー、とか想像しちゃいました。
で、サイ説得計画にあたって、元腹心とか元メンバーとかと連絡を取り合って全部準備したのかなー、とか(笑)。
そんなことを思っていたので、あのれもんとのショーのシーンの貫録ある弾けっぷりが、
非常に魅力的に見えたのでしたv

連の幼馴染でシャラキストで、江戸にも送りこまれる白崎れもん役は田野優花ちゃん。
あのアイドルグループは個人を認識できていないので、ほぼ初めて拝見するわけなのですが・・・
めっちゃ可愛かった!
というか、ダンス上手、歌声も綺麗、でもって歌詞がすごい聞き取りやすい!!
アイドル侮れん・・・と心底思ったよね(笑)。
この子も、頭でっかちな部分と繊細な心が、だんだんと融合していく感じが良かったかな。

藤岡くんが演じていたのは、写楽の正体という説がある能役者、斎藤十郎兵衛。
序盤のあたりに、ワキ方に生まれた自分、主役にはなれない自分の心情を歌う短いシーンがあるのですが、
その時の歌声がとにかくすさまじくて、ちょっと鳥肌立ちました。
あのシーンは、映像も凄い良かったなー。
映像もちゃんと堪能するのであれば、後方席で1回は観た方がいい舞台かもしれません。
まあ、その後は、あの鬼気迫る迫力はどこへやら、という感じになりましたが(^^;)
サイ説得計画で聖子ちゃんやMizさんたちと歌うシーンもあったけど、
あのシーンはライブみたいな大音量とエフェクトで、声を堪能するのは難しかったですからねー。
また、ああいう本気の歌声の藤岡くんを舞台で観てみたいなー。

朝海さんの花魁、小紫は、もうとんでもなく綺麗で強くて優しくてかっこよかったです!
あの着物からすっと伸びた首筋とか、まっすぐに相手を見つめる大きなキラキラした目とか、
引き込まれるような美しさ。
そして、言ってることがいちいち本当にかっこいいんですよ!
サイ説得計画の時の唐突なダンスにはびっくりしましたが(^^;)、あの衣装は綺麗だったなー。
真っ白で、ひらひらした袖の内側だけが赤いの。
なんだか雪の中の椿の花みたいだな、って思いました。
Spiさん演じる伊兵衛とのバランスも凄く良くて、大人な魅力でございましたv

大野さんとMizさんのひょっとこおかめコンビをリーダーとした傾奇者のみなさんは、
それぞれに個性的で、見ていてとても楽しかったですv
限られた時間の中で、ちゃんと傾奇者と呼ばれる者たちの覚悟とか悲哀とかも見せてくれたかな。
まあ、在人にひょっとこが斬られちゃったのは、仕方ないんじゃ・・・と思ってしまいましたが。
在人びいきではないけれど、あの状況で笑いを取ろうとされたら、それはイラッとするよねー、と(酷)。
彼には、ああいう方法しかなかったんだ、と思えば納得できなくはないですが。
でも、賢いひょっとこなら、もっと別の手段があったんじゃないかな、とも思ってしまったり(^^;)

この物語の蔦屋重兵衛はイッセー尾形さん。
これまで見た蔦重の中では、一番さらっとした印象だったかな(笑)。
あれだけの大芝居をするなら、もっとギラギラしててもいいかなー、とも思うのですが、
ああいう飄々とした人がやるからすごいのかもしれないな。
ある意味凄い自己的な人なのだけれど、
そういう人だからこそ、在人の何かを揺らがしたのかもしれません。

坂元さんの水枝総裁は、その覚悟によって強く抑え込まれながら、それでも滲み出る人間味に、
ああ、この人はシャラキストなんだなー、となぜかすんなり納得してしまいました。
サイの命に従いながら、サイに“人の心を伝える”という役割を担うという困難な状況の中で、
彼は彼の方法で最善を尽くしていたんだろうなあ、と思いました。
それにしても、1幕のソロの時、
真正面で歌う姿がデーモン閣下に見えてしまったのは私だけでしょうか・・・?(笑)

そして、在人役、中川晃教くん。
サイによって選ばれた最良の受精卵から生み出され、
サイによって人工飼育され(ってプログラムにあったけど???)、
水枝の腹心として、サイの思考を実行する、進化した新人類・・・という存在だったのかな?
白い髪、灰白色(だったかな?)の眼、ひきつったような笑顔。
なんとなーく、ウキョウさま(「SAMURAI7」を思い出してしまいましたよ。
サイを崇め、サイを信頼し、ひたすらにサイの意向に沿うために行動する在人の存在は、
この舞台の中で何とも異質で、だからこそ目を離すことのできませんでした。
なんというか、全ての人が何らかの変化を得ていくこの物語の中で、
彼だけが変わらない、彼だけが変化を拒絶する―――それゆえの異質さ、違和感だったのかもしれません。
歌が少なかったのはちょっと残念だったけど、
そういう異質さを貫いたアッキーには、素直に拍手を贈りたいです。

サイが方針を転換し、「DNA-SHARAKU」の迫害をやめたことで、在人は自ら命を絶ちます。
それは、サイの愛を得られなかったことへの絶望でも、未来への悲観でもなくて、
ただ、サイにとって自分が“いらない存在”となったからなのだろうなあ、と思った。
サイが選んだ受精卵から生まれた、在人。
当然、彼はDNA-SHARAKUを持っていない。
それまでは、そのことこそが彼の存在意義だった。
サイが求める完璧な人間。
でも、サイはDNA-SHARAKUを受容した―――
サイの求めるものを持たない、自分。
本当の意味で異質となった、在人。
それはきっと、在人にとって、自分を抹消する十分すぎるほどの理由だったんだろうなあ。
何万の人を救うために、一つの魂が犠牲になる。
その一つの魂は、写楽のはずだった。
でも、写楽を―――DNA-SHARAKUをサイが必要とした瞬間に、
その一つの魂は在人になった。
―――一つの価値観が変わったときに、
一瞬で、それまで必要とされていたものが、必要ないものになってしまう。
それは、人の世ではよくあることなのかもしれないけど・・・
それでも、有か無かでは推し量ることなどできないのだと。
在人は在人として、その生を全うすべきなのだと。
誰かが言ってあげてほしかった。
誰かが、彼を抱きしめてあげてほしかった。
死ぬことが人で在ることのように片づけてしまうのではなく、
「創造する心」を前に、ただ混乱する子どものように寄る辺ない彼を、抱きしめてあげてほしかった。
なんだか、そんな風に感じてしまったのでした。


うーん、一人一人の背景とかも、もっと深読みしてみたかったなー。
最後の別れのシーンも、凄くさらっとした感じで。
まあ、あれはあれで彼らの関係性にはあっているのかな。
でも、せっかくここまでトンデモ設定なんだから(え)、タイムパラドックスとか完全無視で、
還暦になった柊が連とれもんに会いに行ってハルへの伝言を託すとか、
いくら平均寿命が延びたといっても、90代の連がハルに会えるかどうかわからないから、
れもんを描いた自分の絵の中にそのメッセージを密かに書き込んでおくとか、
柊たちと別れた後のハルと小鳥が家に帰ると、それまでなかった連の絵があって、
そこに柊からのメッセージを見つけるとか、
水枝と小鳥が在人の髪からクローンを作って、大事に大事に育てて、
「DNA-SHARAKU」を持っていても持っていなくても自由に暮らせる世界を作ろうとするとか、
そういう切ないけど幸せなラストシーンも観てみたかった気がします。
・・・って、完全捏造ですけどね(^^;)


この日初日を迎えたばかりの舞台。
長い公演の間に、きっといろんな進化を遂げていくのだと思います。
私は残念ながらもう観る機会がないけれど、
その進化を見届けた方のレポなどを読ませていただくのを、楽しみにしていようと思いますv

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