瓔珞の音

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<<   作成日時 : 2016/03/11 21:27   >>

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5年前と同じ、金曜日の3月11日の夜を迎えました。
普段曜日で動いているので、曜日が同じ、というのは忘れていたはずの記憶がいろいろ蘇ります。
それでも、あの日とは違う、冷たい雨の降る今日は、
あの日とは違う穏やかな時間の流れで過ぎていきました。
忘れることは絶対ないし、忘れるべきではないけれど、
時間という海の中で、記憶はいつの間にか丸みを帯びていくのかもしれません。

どの一日も特別で。
どの一日も日常で。

だから、どの一日も誠実に生きていきたい。
そう、思います。

とりあえず、私の日常ということで、観劇記録を。
うん、こればかりは私の変えられない日常です(笑)。



シーズプレイファクトリー旗揚げ公演
「コウノトリの小さな鞄」

2016.3.6 シアターグリーン BIG TREE THEATER F列10番台

脚本・演出:仲島義侍
出演:小曽根章央、華子、速水剛誌、横田凌一、小澤瑞季、氏家仁子、澤田洋栄、武本剣太郎、河地柚奈、
    相神一美、加藤隼平、香取佑奈、東皓佑、大塚真矢、古藤ジョウジ、酒田速人、霍本晋規、永田祥子、
    渡辺優美、鈴木大樹


というわけで、お友達に誘っていただいて、とある劇団の旗揚げ公演に行ってきました。
主役の小曽根さんが群馬県出身らしいです。
初めての劇団、初めての劇場、そして初めましてな役者さんばかり。
こういうご縁がなければ、多分観ることのなかったお芝居は、
なんとなく懐かしさを感じるテイストと、若者たちの勢いのある元気さと、
年長組が紡ぐ穏やかで深い空間が融合した、素敵な空間でした。

物語は兵庫県豊岡市を舞台に、3つの物語が並び、交わりながら進んでいきます。

妻・紗枝(華子)と共に先輩を頼って引越してきた鞄職人の東間豊(小曽根章央)と、
彼らを受け入れる西村かばん店の一家。
新作の舞台に向けて稽古に励む城崎高校の演劇部の面々。
コウノトリの繁殖に励むコウノトリセンターの職員たち。

彼らは、それぞれに問題を抱えていました。

重すぎる記憶と不妊治療に疲れ切り、心を病んでしまった紗枝と、自分が彼女にできることを探し続ける豊。
とある記憶から役者をやめて裏方に徹する薫(氏家仁子)と、
そんな彼女のために脚本を書き続けるゆかり(小澤瑞季)。
そんな二人を中心に、どこか空回りしてしまう部員たち。
コウノトリにかまけて家庭を顧みない父親と、そんな父親に反抗しながらもコウノトリセンターに就職した息子。

彼らが抱える問題は、それぞれに深刻で、それぞれに異なる重さを持っていました。
その問題に、
時に背を向けて逃げ出し、
溢れる感情をぶつけ、
頑なに耳をふさぎ、
呆然と過去に囚われ、
蹲ったまま動くこともできず、
差し出す手を躊躇いに下ろし、
向き合うことを恐れ、
それでもなお共に在ろうとし―――

それぞれの葛藤の果て、最後に重なり合った彼らの「飛べ!!」という声の響きと、
現実の、あるいは幻想の力強い羽音に、自然に涙が零れました。

小さな劇場の、いつもの観劇とは違う距離感。
手さぐりと試行錯誤と、それを凌駕する一生懸命さの感じられる演技。
高校時代に見た演劇部のお芝居を彷彿とさせるようなテンポや、
音楽に乗せて台詞なしで紡がれていくシーンに感じる懐かしさに、
ちょっとどういうスタンスで観ればいいのか戸惑う時もあったけど、
あの瞬間に集約され、昇華された想いの強さは、純粋な輝きを持って私を貫いた気がします。
うん、観れてよかった。

役者さんのことを少し。

豊役、小曽根さん。
群馬県出身の2.5次元ミュージカル俳優さん、なのだそう。
見た感じはどちらかというと華奢な感じなのに、なんとなくしっかりとした芯というか安定感のある方でした。
甘いのに強さのある声の印象もあるかも。
一生懸命考えながら、ぐるぐる空回りしていた豊。
それは多分、紗枝の選択と、その後の紗枝の葛藤に対して、
どう振る舞えばいいのかわからなかったからなのかな。
でも、わからないことを受け入れて、ただわかろうとするのではなく、
彼女の望むものを探し続けるのではなく、自分は自分の足でしっかりと立ちながら、
最終的に自分のやり方で彼女に寄り添おうと、彼女の持つ荷物を共に持とうとした豊の、
最後のあの優しくて強い笑顔に、ちょっとよろめきました(笑)。

華子さん演じる紗枝は、本当に難しい役と思いました。
というか、彼女の抱える荷物は、本当に重すぎる。
不妊治療が上手くいかないだけ、という最初のミスリードから、中盤に明らかになる彼女の荷物―――
障害を持つお腹の赤ちゃんを、中絶したという、過去。
その事実を知ったときの衝撃、その選択をするまでの苦悩、
その選択をした後の後悔、生むことのできなかった赤ちゃんへの罪悪感、
そしてたぶん、その選択をした自分自身への嫌悪感・・・
先輩でもある西村かばん店の奥さん、かな恵(香取佑奈)にその告白をした後の、
紗枝の虚ろな笑みと、豊の作った大きなカバンを赤ちゃんのように抱え、
あやすようにトントンする手の優しい動きに、
まだ血を流し続ける彼女の中の傷が見えるようで、なんとも言えない気持になりました。

私は、障害を持って生まれた子どもたちに関わる仕事をしています。
胎児診断がなされずに、あるいは生まれるときの問題で障害を持って生きることになった子どもたちと、
そのご家族と沢山の時間を過ごしてきました。
障害を持った子どもたちの家族の苦悩も、葛藤も、悲哀も、絶望も、
希望も、喜びも、幸せも、間近で見てきました。
そして同時に、紗枝と同じ選択をした人たちについても、いろんな話を聞いてきた。
そんな私にとって、かな恵が紗枝に行った言葉・・・「私は産んだと思う」という一言から始まる言葉は、
とても近しくて、非の打ち所がない正論で。
でも、正論が正しいわけではないことを、正論も人を救うことができないことがあることも、私は知っていて。
かな恵の言葉が紗枝には届いていないことが、むしろ彼女を更に追い詰めるものであることが、
痛いほどに感じられました。

最後、豊が作った新しい小さな鞄を持って、紗枝は微笑み何かを乗り越えます。
そのきっかけとなったのが、豊の言葉だったのか、
舞台上で高校生たちが語った言葉だったのかはわかりません。
豊の渡した小さな鞄に入るものを持って、という流れは、
亡くした赤ちゃんの記憶を捨てることなのかな、と最初思いました。
でも、次の瞬間、違う、と感じた。
紗枝は、やっと自分の傍にいてくれた人たちを、本当の意味で見ることができたのだと。
やっと彼らの言葉が彼女に届いたのだと。
豊は、自分の罪を責める存在ではなく、共にそれを持ち、歩んでいく存在だと気づいたのだと。
そう、思いました―――そう、思いたいと、思いました。

二人を見守る西村かばん店の面々の距離感、いい感じでした。
豊の先輩の竜也(加藤隼平)の、まっすぐで正直な在り方の力強さが素敵。
できないことはできない、わからないことはわからない。
でも、傍にいる。ずっと見てる。
それって、もの凄く強力なエールだな、って思う。
竜也とかな恵の息子、翼(東皓佑)は、この物語の中で一番かわいそうな感じだったなあ・・・
紗枝にいきなり怯えられて、拒否られて、めちゃくちゃ傷ついたと思う。
台詞自体は少ないけど、表情とか歩き方とかで、そういう雰囲気がちゃんと感じられました。
そんな風に傷ついて、紗枝と距離を取りながら、
それでも最後、おずおずと伸ばされた紗枝の手を取る男前さに、竜也の息子だなあ、と思いました。
というか、紗枝ってきっと翼くんの初恋だよね?!(笑)
大塚さん演じる河野の、いつも全力全開な笑顔と人との距離の縮め方にほっとしたり、
古藤さん演じる八木さんのいぶし銀な存在感と素晴らしく素敵な声に感嘆したり。
こんなお店が近くにあったら、絶対買いに行くよね!

いぶし銀といえば、コウノトリセンターの佐賀館長な酒田さんも素敵でした。
大事なこと(=コウノトリ)に一生懸命で、家族は付いて来てくれるってなんの根拠もなく突っ走って、
結局息子との距離が開いちゃってたことに気づいて黄昏るちょっとヘタレなおじさまなのですが、
そういう譲れないものがあるという強さが感じられて、
たぶんそれはちゃんと息子に届いていたんだろうな。
息子の鴻太役の霍本さんが、凄く大柄なのに、子どもみたいな頑なさが感じられて、
二人のやり取りは無言のシーンも含めて、とても見ごたえがありました。
カーテンコールでは、霍本さん、凄くかっこよくて頼りがいのある大人な雰囲気だったので、
あれはちゃんと演技だったんだろうなー。
それにしても、物語には出てこなかったけど、
館長の奥さん、凄いしっかりした懐の深い人なんだろうなー、と思ってみたり(笑)。

コウノトリセンターのそのほかの人たちも、それぞれにちゃんとポリシーを持って動いている感じで、
形としては描かれないコウノトリの存在をちゃんと感じられたように思います。
というか、位置的に客席にいた私たちがコウノトリ?(え)

城崎高校演劇部の面々は、若さ弾ける!という感じで楽しかったです。
うんうん、高校演劇ってこういう感じだよねー、と微笑ましくなったりv
来ているTシャツが一人一人違う色なのがわかりやすかったけど、名前までは覚えられず・・・(^^;)
この後の名前、間違ってたらごめんなさい・・・
みんな高校生なのかな?
薫役の氏家さんと、ゆかり役の小澤さんの細やかな演技と、
そのほかのメンバーの力技な感じの演技のギャップに、最初かなり戸惑いました。
え?これって演技なの?それとも素なの?って(笑)。
特に、横田くん演じる健一が稽古のシーンでがーっと棒読みでかっこつけながらがなり立てるシーンは、
真正面だったこともあって、ほんとにどうしようかと思いました・・・
これは笑うシーンなのかな?
でも万が一本気で真面目にやってるんだったら、笑ったら傷つかないかな?
あ、でも目を逸らしても傷つくよね、きっと・・・って、内心で凄い葛藤してました(^^;)
結局我慢できずに笑っちゃったけどねー。
でも、最後の舞台本番のシーンでは、凄く滑らかで自然な演技をみなさんされていたので、
ああ、あれは演技だったんだな、と納得いたしました(笑)。
うん、ほんとにあの薫覚醒!(笑)と、舞台本番のシーンはすごく見ごたえあったし、
この劇中劇、ちゃんと見てみたいな、って思った。
あの鞄を持ったコウノトリが、
紗枝のメタファーなのか、生まれてこれなかった赤ちゃんのメタファーなのかもちょっと気になったな。

演劇部の他の子たち、
澤田くん演じる猛の、いい声で情感豊かな台詞回しとそれを凌駕する動きの多さとか(え)、
武本くん演じる誠の、気弱なのかちゃっかりしてるのかわからない飄々とした雰囲気とか、
河地さん演じるめぐみの、雄弁でわかりやすい視線の強さとか、
相神さん演じるあきの素晴らしい瞬発力とか・・・
若さっていいなあ・・・!って思ったよね(笑)。
そして、そんな若者の中で、速水さん演じる塩田先生の在り方がめちゃくちゃ好みでしたv
空回りしてるように見えながら、しっかり子どもたちを信じて守ってるのが、
ふとした表情とかから感じられて、なんだか気持ちがほんわかしました。


最近暗くて重い舞台ばかり見ていたので、重くはあるけど爽やかで明るい後味の舞台に、
素直に拍手することができました。
カーテンコール、泣いている子もいたなあ。
きっと凄く凄く頑張ったんだよね。
・・・もしかしたら、観客にそういうことを感じさせるのは、商業演劇としてはまだまだなのかもしれないけど、
これが旗揚げ公演な劇団ですもの!
これからきっとどんどん進んでいくんだろうなと思います。
なかなか小劇場には手を出せないけど(生活破綻するからね(^^;))、
またいつか、この劇団の舞台は観てみたいな、と思いました。
そして、豊岡市に行ってみたくなりましたv

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