瓔珞の音

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zoom RSS 回転扉を抜けるとき

<<   作成日時 : 2016/04/25 23:31   >>

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子ども頃、回転扉が苦手でした。
回りつづける透明な扉。
そこに人が入り、そしてまた出ていく、通過点のはずの扉。
でも、絶えず動き続けるその動きの中に一度入ったら、なんだか抜け出せなくなるような気がして。

生と死と愛が回りつづける舞台の上。
虚構のホテルの回転扉を抜けた彼らの未来は、どんなものだったのだろうか。



「グランドホテル」

RED team:成河、伊礼彼方、吉原光夫、真野恵里菜、藤岡正明、
       味方良介、木内健人、大山真志、金すんら、友石竜也、青山航士、杉尾真、新井俊一、
       真瀬はるか、吉田玲菜、天野朋子、岡本華奈、
       湖月わたる、土居裕子、佐山陽規、草刈民代

GREEN team:中川晃教、宮原浩暢、戸井勝海、昆夏美、藤岡正明、
         味方良介、木内健人、大山真志、金すんら、友石竜也、青山航士、杉尾真、新井俊一、
         真瀬はるか、吉田玲菜、天野朋子、岡本華奈、
         湖月わたる、樹里咲穂、光枝明彦、安寿ミラ


1928年、ベルリン。
第一次世界大戦の傷跡を残しながらもその痛みは少しずつ遠くなり、
けれど、再び迫りくる戦争の微かな足音が聞こえ始めている時代。
ベルリンに建つヨーロッパ一高級なホテル―――グランドホテル。
そのホテルに滞在する、あるいはそのホテルで働く人々の3日間を描いたこの有名なミュージカルを、
私は映画でも舞台でも見たことがありませんでした。
群像劇を意味する、グランドホテル形式、という言葉すら知らなかった無知っぷり(^^;)

今回、トム・サザーランドさんが演出した「グランドホテル」が、
だから私にとって初めての「グランドホテル」となったわけですが・・・

いやー、面白かった!!
個人的には群像劇ってそんなに好きなタイプのお芝居ではないのですが、
(一人の人物とか関係性を突き詰めて妄想するのが好きv(笑))
今回は思わずチケット追加しちゃったくらい楽しめました。
もう、見るたびにあの空間の魅力に取りつかれていった感じでした。

煌びやかなセット。
個性も実力も兼ね備えた豪華なキャスト。
色とりどりの楽曲が紡ぎ出す、それぞれの感情。
そのどれもが魅力的でしたが、一番の原因はやはりREDとGREENの2つのチームが存在したことでしょうか。
いわゆるダブルキャストのように、異なる役者さんが同じ演出で物語を紡ぐのではなく、
同じ物語をまるで違う角度から見ているような演出の違いがあり、
そして、それぞれに異なる結末を迎えるのです!

「人生賛歌」と記された、RED。
「恐怖からの渇望、未来への希望」と記されたGREEN。
この原作が記された、1932年の時点での物語を描いた、RED。
第二次世界大戦とその後のベルリンを知った上で描かれた、GREEN。

GREENの東京楽でアッキーが、
「緑を見てから赤を見るのがオツだと言われているみたいで。でも、赤を見るとまた緑が観たくなるらしいです」
というようなことを言っていたのですが、
まさにその無限ループに嵌りそうになりました(笑)。


物語は、グランドホテルの中で終始します。
舞台の中央に一つ置かれた椅子の上のベル。
黒衣の美しい女性―――「死」(湖月わたる)がそのベルを鳴らした瞬間、物語は動き始めます。
オープニングの♪The Grand Parade は圧巻!
20分近い楽曲に乗せて、回りつづける舞台の上、そこに集う人たちの姿が次々に明らかになっていきます。
8回目の引退ツアー公演のためにベルリンを訪れたバレリーナ、エリザヴェータ・グルシンスカヤは、
自らの心身の衰えに直面し、
彼女の付き人であるラファエラは、22年間秘めた想いを胸にひたすらにエリザヴェータを支え、
ハリウッドスターを夢見るタイピストのフリーダは、「ただのフレムシェン」と名乗りながら、
意図せぬ妊娠の事実に怯え、
会社社長であるプライジングは、何とか傾いた会社を立て直そうと、
株主会議を前に合併を望むボストンの会社からの電報を待ち続け、
胸を病み、余命いくばくもない会計士オットー・グリンゲラインは、
人生の最期の時間を過ごすために全ての預金を下ろしてグランドホテルに赴き、
若く美しいガイゲルン男爵は、投資の失敗によりかさんだ借金の返済を迫られながらも、
優雅な生活を送り続け、
隻眼の老人医師は、戦争で負った傷の痛みをモルヒネでごまかしながら、そんな彼らを一人見つめ続け、
彼らをもてなすホテルの従業員たちは、
豪華な暮らしに憧れ嫉妬しながら、日々を生きるために働き続け―――
そして、そんな彼らの中から“誰か”を探す黒衣の女が一人。

目まぐるしく変化する舞台の上、それぞれの人物の抱える望みも、鬱屈も、夢も、絶望も、
全てを描き出すこのオープニングに、
一気に「グランドホテル」に引き込まれたような感覚になりました。
医師の歌声が描きだす、赤い絨毯や香水の香り、シャンデリアの煌めき・・・
そういったものが、鮮やかに感じられる感じ。
同じ音階の中で、短調と長調が自然と混じり合い入れ替わ美しくも不安定な旋律も、
その感覚を増長してくれたように感じます。
このオープニングが届ける情報量はとんでもなくて、見るたびに気づくものがたくさんあって、
できることなら一人ずつロックオンしながら全員分観たくなりました(笑)。

同じ物語を、同じ旋律、同じ歌詞でありながら、REDとGREEN、二つのチームが描くものの違いも鮮やか。
キャストの個性や演じ方、演出の違い、結末の違いという以上に、感覚的な違いに驚きました。
なんて言ったらいいのかな・・・
GREENは、小さな箱の中、時間の狭間に堕ちて、同じ3日間を繰り返す人々の姿を、
そっと覗きこんでいるような感じで、
REDは、リアルな人形劇を観ているような感じ?
GREENは、生身の人間が演じているのに、美しい映画を見ているような印象で、
REDは、体温を感じるほどの生々しさがあるのに、どこか硬質で白々とした印象?
うーん、上手く言えないなあ。

この物語は、誰もが“死”と向かい合っています。
限られた余命という、直接的な“死”と向かい合う者もいれば、
踊れなくなるという、ダンサーとしての“死”に向かい合う者もいる。
“死”の気配を感じながら、その瞬間の享楽を甘受するものもいれば、
新しい命を生み出すための苦しみに、“死”の恐怖を感じている者もいる。
そして、“死”に囚われる者もいれば、
“死”に導かれるように誰かの命を奪う者もいる。

そんな風に“死”と向き合いながら、一つの実際的な命の終わりに立ち会って、
生まれてくる一つの命を受け止めて、生まれ出た一つの命を喜び、
グランドホテルの回転扉を出ていく人たちは、REDとGREEN、それぞれ違う結末を迎えます。

GREENは、響き渡るヒトラーの演説の中、ホテルの従業員たちが旅立つ人々を襲い、奪い、痛めつけます。
最初に観た時は、最前列下手通路わきという席だった上に、
その直前に、溢れる命の素晴らしさを言祝いだ後だっただけに、
目の前で繰り広げられる殺伐とした光景は本当に衝撃的で・・・
けれど、倒れ伏した人々の間を縫って、
赤ん坊を抱いた一人の青年―――藤岡くん演じるエリックが現れます。
西日のような朱さを含んだ夕闇の中、不安そうに赤ん坊を抱きしめる彼に、
奪われ傷つけられた人たちが、コートを、帽子を、鞄を彼に手渡し、彼の背を押すのです。
舞台を降り、客席通路を走り去るエリックの、強い瞳。
それを見送る、アッキー演じるオットーの、夕闇の中微かに、けれど確かに浮かんだ柔らかな笑みに、
ああ、この物語は希望の物語なのだと思いました。
確かに、悲劇的な終わり方であるかもしれない。
けれど、この暗く恐ろしい時代の中で、それでも輝く命を守り、光あふれる未来へと送り出す―――
これは、確かに希望の物語なのだ。
そう思ったら、なんだかもう泣けて泣けて仕方がありませんでした。

で、じゃあ人間賛歌と書かれているREDはどういう結末なんだろう、ととても気になっちゃって。
1週間後に観る予定だったにも関わらず、帰り際に翌日のリピーターチケットを購入してしまいました(^^;)
そして観たREDの結末。
一つの“死”を経て、今を生きている人たちが、それぞれに誰かの手を取って、
明るい笑顔でグランドホテルを旅立っていく。
通路を駆け上がる彼らに、やっぱり通路に出てきたホテル従業員たちが笑顔で白い花びらを降り注ぐ。
―――それは、確かに美しく、明るく、希望に満ち溢れた結末ではありました。
でも、私にはむしろREDの結末の方が危ういものに感じられた。
それは、GREENを観た後だったからかもしれないし、
この後に彼らが向かう大戦という歴史を知っているからかもしれないし、
この物語で一人死んだ男爵が、“死”と共に薄闇の中彼らを見送る姿を見たからかもしれない。
でも、笑顔で走り去る彼らの行く先の見えなさが怖くて・・・
カーテンコールの笑顔ですら白々しく感じられて、GREENとは別の意味で泣きたくなりました(>_<)
観終わってから、Twitterとかで感想を検索してみて、でも、自分と同じ感覚を持った方はいなそうで、
私の感覚って変なのかなあ、とちょっと落ち込んだりもしたのですが、
2度目、REDチームの前楽を観て、なんだかいろいろ腑に落ちた気がします。
終盤、フレムシェンが言うように、人は誰も死に向かっているのだけれど、
死ぬために生きているのではなく、生き抜いた果てに死があるのだと、
そして、その死の先に、手渡されるもの、繋がっていくものがあるのだと、
なんだか、理屈でなく納得できちゃった気がするのです。
そう感じさせる、それまでに丁寧に紡がれた彼らの人生―――命の強さ、命の熱さ、命の輝き。
人形劇のような、とさっき書いたけれど、そういう無機質さが感じられるからこそ、
余計に生々しいまでの命の存在が感じられて、
確かにこれは人生賛歌なのだと、素直にそう思えて、そうしたらやっぱりぽろぽろ泣けてしまったのでした(^^;)

REDの終わりの先にはGREENの終わりがあるのかもしれない。
それとも、全く異なる次元の異なる未来を迎えているのかもしれない。
それでも、どちらもが描いた命の、生きることの輝きは、
それぞれの人物が丁寧に描かれているだけにとても鮮やかだったように思います。

幸いにもそれぞれのチームを複数回観ることができて(でも全然足りないけど(笑))、
物語のカタチとしては、GREENが好きだなあ、と思い、
物語の濃密さとしては、REDにやられた!と思いました。
どうしても二つのチームを比較する形になっちゃうので、
今回どういう風に記録をしようかかなり悩んだのですが、結局こんな形になりました。
自分でも途中で何を書いているかわからなくなったくらい散文的なので、
読んでくださった方にはめちゃくちゃ不親切で申し訳ないのですが、
この舞台から自分が感じたことを、たとえ正解でなくても、今の自分の言葉に残せたのは良かったかな。
とりあえず、明日以降、チームごとのキャストについて記録したいな、と思っています。
うん、書きたいことがいっぱいあるよ!

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