瓔珞の音

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zoom RSS 瓢風の果て

<<   作成日時 : 2016/10/29 20:42   >>

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私が初めて自分でチケットを買って観に行ったのが、この舞台の初演でした。
あれから、長い長い時間が経って。
いつの間にか、あの時の市村さんと、同じ年齢になっていました。

私の初めてのエンジニアの、最後の生き様。
全身全霊で、受け止めてまいりました。



「ミス・サイゴン」

2016.10.15 ソワレ 帝国劇場 1階H列30番台

出演:市村正親、笹本玲奈、上野哲也、上原理央、知念里奈、藤岡正明、池谷祐子、前田武蔵、
   植木達也、加藤貴彦、小林遼介、岡本悠来、杉山有大、西野誠、増山航平、土倉有貴、仙名立宗、
   麻田キョウヤ、大津裕哉、斎藤准一郎、田川景一、藤岡義樹、本多剛幸、大塚たかし、川島大典、
   吉田玲菜、杉ありさ、斉藤綾香、華花、伊宮理恵、吉川恭子、木南清香、青山郁代、大竹尚、
   小山圭太、田村允宏、荒田至法、小川善太郎、江崎里紗


というわけで、「ミス・サイゴン」プレビュー初日を見てきました。
実は、今回の公演で、チケットをとったのはこの1回だけ。
理由はもろもろあるのだけれど・・・
毎公演欠かさず複数回観ていた中で、なんとなくこの物語への向き合い方が、
私の中で拗れてしまっていたことが、一つの大きな原因だったような気がします。
この物語に、どんなふうに向かい合えばいいのかわからなくなっていた。

でも。

今回、プレビュー初日という、今まで経験したことのない緊張感の満ちる劇場で、
あの瞬間のサイゴンに生きる人々を目の当たりにして、
私の中のそんな些細な葛藤は、あっという間に吹き飛ばされてしまったように思います。

そこに、虚構のはずの空間に在ったのは、
儘ならない生々しい想い。
貫く覚悟に満ちた意志。
そこで全てを賭けて生き抜いた、熱い血の通う命。

なんだか瞬きをすることさえ惜しくなるような、濃密な時間がそこにはありました。
なんだかもう、言葉にならなかった。
ただ、そこに生きる彼らの生き様に圧倒され、流す涙の理由さえわからなかった。

特定の誰かの感情に以前よりも寄り添えたわけではない。
疑問だってあるし、納得できない部分だってあるし、受け入れがたい流れもある。
それは以前観た時と全然変わらない。
それでも、私の中で「ミス・サイゴン」という物語が、違う輝きを放ち始めた。
そんな気が、しました。


直後ですらきちんと言葉にできなかったのに、
諸事情でなかなか感想を書くことができなくて、
なんだかもう今更何を書くんだ、という気持ちもあったりします。
でも、役者さんのことだけ、ちょっとずつ。


キム役、笹本玲奈ちゃん。
玲奈ちゃんを観るのは、なんだか凄く久しぶりな気がします。
ちょっと歌い方変えたかな?
張り上げる歌声で感情を表すのではなく、自分の深い部分に落とし込んだ感情が、
彼女の全身から立ち上るような、そんな不思議な感覚がありました。
玲奈ちゃんのキムは、本当に賢いキム。
でも、その賢さと、痛々しいまでの一途さの結果が、あのラストだと思うと、
もっと愚かだったなら。
もっと諦めることが上手かったなら。
彼女にもタムにも、別の未来があったかもしれない。
冷静になって考えれば、やっぱりそんな気持ちになります。
でも、観ている間はそんなこと全然考えなかった。
キムの夢。
キムの恋。
キムの愛。
キムの喜び
キムの絶望。
キムの望み。
キムの覚悟。
全てがあまりに鮮やかで、けれど、どこか侵しがたい静謐さもあって。
何だかもう、息を呑んで見つめるしかできませんでした。

上野くんのクリスは、なんというか本当に等身大。
ベトナムに行ったあの当時のアメリカの若者は、きっとこうだったんじゃないか、と素直に思えました。
キムへの愛情が、偽物だったとは思わない。
でも、二人の立つ足場の不確かさが、本当に辛かった。
♪Sun and Moon では、視覚的にもその不安定さが表現されてたし。
あの階段での二人に、こんなにも危うさを感じたのは初めてだった。
あと、キムとの関係の中で今回気になったのは、宗教間の違い、かなあ。
この物語で、神や祈りを感じることはこれまでも何度もあったし、
それも一つの大きなテーマのなのだと思うけれど、
そのことに向き合わない二人を強く感じたのは初めてでした。
きっかけは、♪世界が終わる夜のように で、
キムがクリスの胸元の何かに気づいて、ふいっと彼から離れた時。
あの時キムが見つけたのは、クリスがつけている十字架のペンダントとか、そんなものだったのかな・・・
なんて勝手に思ってしまいました。
まあ、この辺は誤解もあると思いますが、そういう部分でも、二人の足場の不確かさはあったのかな、と。

知念ちゃんのエレンは、そのまっすぐさというか素直さというか正直さというか・・・
真っ向から人にも自分にも向き合おうとする様子が、凄く好きでした。
キムと遭遇してしまった時、エレンは優位に立つための駆け引きをしてる。
でも、その駆け引きは、キムの一途さで一刀両断されてしまった
その後の♪メイビー の葛藤の生々しさ、クリスにぶつける想いの烈しさ。
そして、それがあったからこそ、クリスはあんなふうに全てを話すことができたのかもしれない、と思いました。
キムとは異なる賢さのあるエレン。
ラストシーン、タムを攫うように抱き上げて抱きしめる、その細い背中。
その背が、何を背負い、何を拒んでいるのか、ふと、不安になったのも事実で。
ああ、この辺りは、きっと繰り返し見たら何か答えを見つけられたのかもしれないなあ。

上原くんのジョンは、良い感じに本人の積み重ねている時間とリンクしているように思いました。
なんというか、人としての厚みが、最初の頃の彼のジョンとは段違いな気がする
大人で頼りがいがあって、でもそこはかとないヘタレ感(笑)に、彼の優しさを感じました。
まあ、彼がヘタレでなかったら、この物語はそもそも成り立たないからね(え)。
前回よりも女の子好き設定はマイルドになったかなー。
でもって、彼の♪ブイドイ には、やっぱり泣けないんだな。
まあそれもまたよし。

池谷さんのジジは、相変わらず素晴らしい。
ジジを主役にスピンオフを作ってもらいたいくらいです。
自己紹介(?)でキムが「夢」と歌った時に振り返った瞬間のジジの表情に、
なんだか無性に泣けてしまった。
それもあってか、♪我が心の夢 は、本当に沁みました。
あと、今回は、ドリームランド以外での在り方にも今回目を引かれたかも。
キムとクリスの結婚式の時。
それから、サイゴン陥落のシーンで、キムとすれ違った時。
あのシーン、アオザイを着ているのはキムだけなんですよね。
その意味とかも、ちょっと深く考えてみたくなりました。

そういえば、サイゴン陥落のシーン、ヘリの音と共に客席に風が吹きました。
事前に情報を全く仕入れていなかったので、ほんとにびっくりした!
あそこに集う人々の、叫びも、涙も、希望も、夢も、未来も、命も、全てを吹き飛ばしてしまう、非情の風。
まるで、その場所に私自身放り込まれたような感じで、一緒になって叫びたくなった。
助けて、と。
置いていかないで、と。
そして、次の瞬間の静寂に、キムと一緒に放心状態になってしまった。
この演出、賛否あるんじゃないかと思うけど、
視覚、聴覚に加えて、肌で感じる演出の臨場感はとんでもないと思います。

藤岡くんのトゥイは、キムへの愛をひしひしと感じました。
執着ではなく、愛。
キムを見つけた瞬間のあのぱっと輝くような笑顔と、
その後、突きつけられた現実に歪む表情の落差に戦慄しました。
藤岡くんと言えば、やはりあの素晴らしい歌声なのだけれど、
トゥイに関しては、敢えてその素晴らしさを封印しているような歌声が、
トゥイの激情の凄まじさを感じさせてくれたように思いました。
なんというか、彼の中では、キムへの愛情は揺るぎないものだったんじゃないかな、と思う。
ベトコンになるのも、全て自分の大切なものを守るため。
そういう意味では、少しタイミングがずれていたら、
トゥイこそが、キムの夢の相手―――自分を守ってくれる相手になったんだと思う。
というか、トゥイとキムは似ているなあ、と思った。
その一途さ、その賢さ、その思い込み、そして、その愛の深さ。
タムが出てきてから、キムに撃たれるまでのシーンは、
その緊迫した空間に圧倒されて、細かな記憶がないのが本当に残念。
死にゆく彼が、キムの腕の中でどんな表情をしていたのか。
彼が最後に伝えた感情がなんだったのか、とても気になりました。

そして、市村さんのエンジニア。
・・・すみません、これこそなんだか言葉にならない。
今回のエンジニアは、初めて観た時のエンジニアに近かったように思います。
市村さん、若返った?!って思ったもの。
上手く表現できないけど、なんというか、これまでに積み重なった夾雑物が全て取り除かれたように思った。
そして、そういうエンジニアを観ることができたことに、なんだかとっても満足してしまったのでした。
細かなこともいろいろ思ったけれど、とにかく、このエンジニアを観れいて良かった。

今回の公演で、市村さんのエンジニアは最後だと聞いています。
まあ、ザザの例もあるから、ほんとかな、と思う部分もありはするのですが(え)、
でも、エンジニアに関しては、誤解を覚悟で書くけれど、スパッと終わりにしてほしいと思う。
だって、それこそが“エンジニア”の生き様だと、思うから。

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