瓔珞の音

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zoom RSS 不可視の楔

<<   作成日時 : 2017/07/29 19:02   >>

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光を弾く黒。
それを囲む夜空のような蒼。
二つの円の中心に揺れる、儚い灯。
その灯を見守り続ける、揺るぎない北辰の強い輝き。
―――天が見守る、人々の物語。


「子午線の祀り」

2017.7.22 マチネ 世田谷パブリックシアター 1階F列20番台

作:木下順二
演出:野村萬斎
音楽:武満徹
出演:野村萬斎、成河、河原崎國太郎、今井朋彦、村田雄浩、若村麻由美、佐々木梅治、 観世葉子、
   小嶋尚樹、星智也、月崎晴夫、金子あい、円地晶子、篠本賢一、内田潤一郎、時田光洋、松浦海之介、
   嵐市太郎、岩崎正寛、浦野真介、駒井健介、西原康彰、神保良介、武田桂、遠山悠介、三原玄也、
   森永友基、宇田川はるか、香織、田村彩絵、吉川依吹


平家物語のなかの、一の谷の合戦直後から、
壇ノ浦における平家滅亡―――平知盛の死までを描いたこの物語。
劇場に入ると、いつもよりも黒い服のスタッフさんが多いなあ、と感じたのですが、
それはキャストのみなさんだったらしく・・・予習も何もしていかなかったので全然気づきませんでした(^^;)
というか、この日は1週間仕事に追われ続けたあとの観劇で、
新幹線で爆睡しても眠気と疲れで体がだるい状態で、いつも以上に視野狭窄な状況でした。
で、席についてみると、黒を基調とした静謐な佇まいのセットの中央に、小さな揺れるキャンドルの灯りが一つ。
―――これは、寝る。今の体調で、この心地よい空間はどうやっても寝る。
そんな妙な確信を持ってしまいました。
で、結果としては、やっぱりかなりの時間うとうとしてしまい(>_<)
いやもう2列目(というか実質最前列)で居眠りとかほんとごめんなさい!
でも、実は凄く不思議なんですが、物語はちゃんと追えていたんですよ。
抗えずに目を閉じて、意識が浮遊しているのに、台詞はとてもクリアに自分の中に届いていて。
さすがに見えていないから役者さんの表情や場面での動きの記憶はないのだけれど(ほんとにすみません!)、
物語に置いていかれる、ということはなかったように思います。
それでも、もちろん情報量は少なかったので、今回はきちんとした記録はできず・・・
印象に残った部分を幾つか、記録しておこうと思います。

物語の始まり方はとても不思議な感じ。
まだ客席のざわめきが残る中、黒いシンプルなドレスの若村さんが現れて、すっと中央の灯りを救い上げた後、
黒い服のキャストのみなさんが、三々五々舞台の上に集まってきます。
思い思いの場所に腰を下ろす人たちがその灯りを見つめていると、
静かに響き始める野村萬斎さん―――知盛の声。
その語りに導かれるようにキャストと一緒に見上げた星々の瞬く天井は、
限られた劇場という空間を透過するような広がりを見せ、
一気にこの閉鎖された空間を別の次元に連れ出して行ったように感じました。
そして、その中央を貫く、一筋の光の帯―――子午線。
その細く鋭い光の中、切り取られたかのようなスモークが、流水紋のようなニュアンスを加えて、
目に見えないはずのそのラインの存在感を、その先に輝く北極星の揺るぎなさを示しているように感じました。

この物語の中では、この子午線を通過した月が導く潮流が、
平家を滅亡に導いた、という描かれ方をしています。
舞台のなかで、子午線が可視化されるのはこの冒頭のシーンだけですが、
眼には見えない概念としての“子午線”は、この物語の最初から最後まで、
彼らの運命を左右する楔のように、舞台の中央を貫き続けていたように感じました。
そのくらい、印象的なシーンだったと、そう思います。

この舞台は、床に描かれた同心円と、舞台奥の空間がとても印象的。
2幕冒頭、舞台の奥に一人座り、平家の滅亡を静かに見つめ続ける若村さん演じる影身の姿は、
彼女が既に現身ではないという事実と相まって、
その世界の溶け込んでいるかのように茫洋として、けれど静かに満ちるような哀切を感じました。
床に描かれた同心円の黒い部分は、多分鏡みたいに周りを映しこんだし照明を弾いたりしていて、
これは後方席ないし2階席で見てみたかったなあ、と思いました。
きっと満天の星の見え方も違っただろうなあ。
そういえば、登場人物が何か決意をしたり、感情が大きく動くときに一際強く輝く星が一つあったのですが、
あれは北極星、ということでいいのかな?

主なセットは可動式の階段なのですが、場面転換で前で黒いセットが前にせり出してくるのが、
人々が闇に呑まれていく、という雰囲気だったのがちょっと怖かったり、
壇ノ浦の戦いでの階段を船に見立てた演出の躍動感が素晴らしかったり、
平氏と源氏で照明の明度が全然違うのが印象的だったり、
(そういう意味では最後の壇ノ浦はまさに源氏のターンなんだろうなあ)
冒頭を受けるかのようなカーテンコールの始まり方にちょっと泣けてしまったりと、
いろいろ思うところはあるんですが、やっぱりきちんと書くには記憶が曖昧だな(^^;)


野村萬斎さん演じる平知盛は、なんというか、とても美しく崩壊して行ったなあ、と。
武将としても人としても、ある意味とても完成した完璧な在り方であった分、
見えない部分での崩壊がどこから始まっていたのかが気になりました。
一の谷の合戦で義経に追い落とされて敗走した時からなのか、
影身を失った時からなのか、
平家の置かれた現実を知ったときからなのか、
それとも、それよりもずっと前からだったのか―――
黒いセットと、色とりどりな甲冑(1幕はみなさん黒い衣裳の上につけている感じでしたが)の中、
白を基調とした衣裳はとても鮮烈で、胴あてに描かれた平家の蝶の紋が美しく。
腰に刷いた太刀の長さと柄の部分の反りに驚きました。
というか、太刀ってあんなふうに佩刀するんですね。
翌日、東京国立博物館で三日月宗近を見てきたのですが、この太刀も柄の反りが特徴的らしく。
あの時代の太刀の形として、こういう感じだったのかなあ。
拵もとても綺麗だったのですが、鯉口を切る(ってこの時代は言わない?)くらいしか抜いてなかった気がする。
刀を抜いての殺陣ってあったかな・・・見落としていたなら残念!

ちょっと話が脱線しましたが(^^;)
萬斎さんの声は、やっぱり独特な響き。
当然のことながら、最初の語りの時、平家物語の地の文(?)を読み上げるとき、
知盛としての言葉で自問するとき、影身に語り掛けるとき、民部のまねをするとき(笑)などなど、
シーンごとに全く違う色を見せてくれるのですが、それでも萬斎さんの声は萬斎さんの声。
知盛の最期を語る声の、どこかに深く沈み込むような、あるいは天高く舞い上がるような、
不思議な解放感が感じられました。

成河さんの義経は、とんでもなくアンバランスだな、と。
天才的なのに、ある部分でとても無垢というか無知というか―――幼い。
彼の中には、兄頼朝に対する切望のようなものがあって、
源氏を勝利に導いて、兄に認めてもらうことこそが、自身の存在価値に直結してるのかな、と思ってみたり。
冒頭の深く落ち着いた声と、自身に満ちた表情が、
勝機を待つ間の焦りや、その焦りを煽るかのような今井さん演じる景時の言動に、
徐々にその余裕をなくしていくにしたがって、
どんどん声が甲高くなり、表情もどこか狂気に囚われているかのような危うさを纏っていくのに、
ちょっとハラハラしてしまいました。
そういえば、成河さんのあの声、凄い久々に聞いた気がする。
初めて成河さんを観た時は、あの声が結構苦手だったのを思い出しました(笑)。
でも、こんな風にいろんな声のトーンの中の一つとして聞くと、凄い効果があるなあ、と思ってみたり。
成河さんの衣裳は、緑を基調とした袖のない陣羽織みたいな感じ。
太刀の拵は赤だったかな?・・・うーんあんなに間近で見たのに(>_<)
衣裳の装飾として赤い太い紐が使われていて、
それが背中で大きな蝶々結びになっているのが可愛かったのですが、
物語が進むにつれて、その結びが彼を捕える重いしがらみのようにも見えてきました。


義経と常に共に在る武蔵坊弁慶役は星さん。
なんとも安定感と包容力のある弁慶でした。
大柄で強そうで、思慮深くて、決して主人より前に出ようとはせず、
基本義経の自由にさせているのだけれど、
いざという時には本当の意味で主人を守り通そうとするような弁慶だな、と思いました。
でも、だからこそこの先彼らがたどる悲劇的な未来の序章のようにも思えました。
それにしても、欲しさんの印象が、今回の弁慶でちょっと変わった気がします。
「トロイラスとクレシダ」のアキレウスのエキセントリックさが刷り込まれてたので(^^;)
そういえば、この弁慶は薙刀は持ってなかったなー。
弁慶と言えば薙刀、なイメージだったのですが。

薙刀といえば、壇ノ浦の戦いの終盤で、松浦さん演じる能登守教経が、大暴れしていました。
巴形薙刀(たぶん)をぶんぶんと振り回して戦う姿は、
直接的な殺陣の少なかったこの舞台の中では異彩を放っていた感じ。
これ以上無駄な戦いはするな的なことを知盛に言われるのですが、
それでも戦わずにはいられなかったその姿に、
知盛とは違った意味での平家へ殉じる在り方をみたように思いました。
河原崎さん演じる宗盛と嵐さん演じる清宗親子(実際にこのお二人、親子なんですね!)が、
入水はしたものの泳ぎが上手で源氏方に熊手で助けられるというかつかまっちゃうところ、
ちょっとコミカルなシーンだったのですが、
帝と女房たちが沈んでいく様の悲劇性や知盛の自害の静謐さと共に、
“平家”という一つの大きな枠組みの滅亡ではなく、
そこに生きる一人一人の人間の生き様を描いているように感じました。

村田さん演じる阿波民部重能は、ちょっと癒し系な印象でした。
前半はちょこっとコミカルパート受け持ちだったっぽいし(笑)。
気持ち的に、知盛や義経よりも寄り添いやすい立ち位置だったのか、
民部がでてくるとちょっとほっとする感じがしました。。
でも、壇ノ浦の戦いのシーンで、独り戦いには加わらず、舞台奥上方でじっと戦いを見つめている姿は、
裏切る機を伺っている狡猾さと共に、
平家の滅亡を冷静に見つめる視線の、影身とは違った温度に、どこか空恐ろしさも感じてしまったり。
ある意味、一番わからない存在だったのかもしれません。


今井さん演じる梶原平三景時は、嫌味な感じなのにめちゃくちゃかっこよかったです!
水色と黒を基調にした衣裳(だったと思う)もお似合いでv
太刀は緑だったかなあ。短刀も腰にさしていた気がします。
この方の声、本当に大好きなので、間近で見ることができて嬉しかったです。
義経との関係性とか、勉強不足で良くわからなかったのだけれど、
頼朝の関心を取り合っている感じ?
「御曹司!」とか言いながら義経を煽ったり、彼の言動に苦々しい表情で物申したり、
そうかと思ったら、先陣を申し出る血気盛んな感じもあったりで、
景時というのは歴史的にどんな人物なのか、ちょっと気になりました。
後で調べてみようかな。

険悪な雰囲気の義経と景時を前に、飄々と彼らをなだめちゃうのが、佐々木さん演じる三浦介義澄。
飄々としつつも、くわせもの感満載なおじいちゃんで、何気にとっても好みでございましたv(笑)
彼の言動に、義経のテンションが上がったり下がったり右往左往するのがまた彼の若さの象徴のようで。
というか、三浦介を前にしたら、景時も若者なんだろうな(笑)。


そのほかもいろいろ思ったことはあったのですが・・・自分的にも不確かなので、ひとまずここまで。
良い舞台だっただけに、万全の体調で見ることができなかったのが、返す返すも残念で仕方ありません。
いつかまた再演されることがあったら、マチソワにはせず(ここ大事)、睡眠不足でない状態で、
またあの別の世界の空の下に生きる彼らの終わりを観てみたいなあ、と思います。

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