またしても、発掘作業・・・

あと一日頑張れば、ミュージカルと歌舞伎デビューな週末です!
明日のプレゼンの準備もすみました。
ちなみにやれと言われたのは昨日です・・・
ま、内輪の会ですからねー。
とりあえず、週末を励みに乗り切る所存ですが、
その前に、やらねばならないことが!
2週間前の記憶を掘り起こして、観劇記録いってみます。


「氷屋来たる」
2007.7.7 マチネ 新国立劇場 小劇場 B1列17番
2007.7.8 ソワレ  新国立劇場 小劇場 B3列3番

出演:中嶋しゅう、宮島健、小田豊、大鷹明良、二瓶鮫一、花王おさむ、久保酎吉、木場勝己、たかお鷹、
    岡本健一、野々村のん、岡寛恵、明星真由美、粟野史浩、市村正親、武岡淳一、伊藤聡


というわけで、久々の舞台の上の市村さんです!
新国立劇場は昨年「OUR HOUSE」を大劇場で観ましたが、小劇場は初めて。
比較的小さめの劇場で、舞台も近いなあ、と思っていたら、
一日目は最前列でした!
二日目も3列目。
どちらもかなりサイドでしたが、上手側と下手側でしたので、
見え方が全然違っていて楽しめました。

というのも、この舞台、登場人物がとても多いんです。
でもって、どの役もとても深い背景があって、
話の流れが特定の人に向かっていても、舞台の上にいる人たちは、
ずーっと「その役」を生きているわけで・・・
どこをに眼をやっても、見ごたえあり!
正面の後ろの方から全体を見てみたかった、という気持ちもありますが、
役者さんに近い位置で、それぞれの表情を見れたのは、とても幸せでした。

物語の舞台は、1912年、NY下町の酒場。
「絶望酒場」、「どん底バー」「カフェ行き止まり」「最低ビヤホール」
そんな風に形容されるこの酒場に集うのは、「夢」を語る行き場のない人たち。
妻を亡くした20年前からずっとこの酒場を出たことのないオーナーのハリー・ホープ(中嶋しゅう)は、

明日には酒場を出て、昔なじみに会いに行く、といいます。
ホープの妻の弟のエド・モジャー(宮島健)は、かつて働いたサーカス団に戻る、といいます。
汚職の罪をかぶせられ(?)免職となった元警部補のパット・マグロイン(小田豊)は、
警察に戻りたい、といいます。
優秀な法学部生だったのに、父の犯罪(かな?)でその道をたぶん自ら閉ざしたウイリー・オーバン(大鷹明良)は、
アルコールに溺れながら、弁護士になることを夢見ます。
かつては黒人専門の賭博場を開いていた洒落者のジョー・モット(二瓶鮫一)は、
また賭博場を開いて、みんなを招待する、といいます。
アルコールに溺れて新聞社を辞めた元特派員のジェイムズ・キャメロン(花王おさむ)は、
明日こそ身なりを整えて新聞社に返り咲く、といいます。
ヨーロッパから流れてきた老革命家のヒューゴー。カルマー(久保酎吉)は、
アルコールに浸された夢の中で、繰り返し革命を語ります。
バーテンのチャック(粟野史浩)と夜の女コーラ(明星真由美)は、
結婚して農場を持つ日を語り合います。
そして、そんな彼らをある意味愛ある眼で見つめるラリー・スレイド(木場勝己)は、
政治的活動から足を洗い、自分は夢など見ない、もう死に向かうだけだと嘯きます。

叶うことのない、いえ、叶える必要のない夢の中で漂う彼らの元に、
2人の異分子が紛れ込みます。

一人は、ラリーのかつての同志であった女の息子、ドン・パリット(岡本健一)。
理由あって身を隠さなければならない彼は、
かつて父親のように慕っていたラリーに、何かを求めてまとわり尽きます。

そしてもう一人は、流れのセールスマンのシオドア・ヒックマン〈ヒッキー〉(市村正親)。
ハリーの誕生日にいつも現れ、酒場の面々に酒を大判振る舞いし、
彼らとともに刹那を歌い、騒ぎ、笑い、最愛の妻の写真を見て泣く、ヒッキー。
けれど、いつもよりも数日遅れて現れたヒッキーは、様子が違いました。
彼らの持つ「夢」を現実にしようと、彼らを説得しはじめたのです。
それこそが、彼らを救い、心の平和をもたらすものだと言って・・・

その「夢」への一歩を出すことがたやすいことは、みんな分かっている。
けれど、同時に、その「夢」が自分自身を偽った、決して叶わないものであることも、分かっている。

だからこその酒。
だからこその気勢。
だからこその、まどろみ。

そんな彼らを優しく(あるいは無関心に?)包み込むシェルターのような酒場の均衡を、
ヒッキーはその滑らかな弁舌で、確実に崩していきます。
痛いほど眩しい朝の光の中、ヒッキーに背中を押されて、彼らは順番に酒場を出て行きます。
朝の散歩へ、かつての職場へ、結婚式へ・・・
ある者は、その顔を引きつらせ、
ある者は、結婚式ではなく決闘の場へ赴くような勢いで、
ある者は、一気に老け込んだ弱々しい面持ちで・・・
そして夕刻。
夢破れた彼らは、言葉もなく再び酒場に集います。

ただ一人、ヒッキーの言葉に乗らず、
冷静な眼で彼を見つめ、非難し、その変化の理由を問い詰めたラリー。
彼の追及に、ヒッキーが語ったのは、最愛の妻の死―――殺したのは・・・


というようなお話です。
いや、正直私にはとーっても難しかったです。
当時のアメリカ社会の現状とか、政治的なことは全然分からないし(いばるな)。
でも、私的にはかなり好みな舞台でした。
淡々と物語りは進んでいくのに、緊張感の緩急があって、飽きなかったし。
物語の終わりは、自分の中で消化するのにとても時間がかかって、
というか、実は今でも消化仕切れていない感じがします。

―――この物語も、狂気と正気の境目が曖昧でした。
というか、狂気と正気がコインの両面のようにころころと変わっていきました。
叶わない夢を見ているのだということを正面から突きつけられた彼らが、
最後に選んだ言い訳は、「狂気に陥った」ヒッキーに付き合ってあげただけ、ということ。
けれど、妻を殺したヒッキーが、そして母を投獄へと追いやったパリットが最後に叫んだ言葉は、
愛情という名の檻の中で育まれ、その檻を引きちぎった狂気ではなく、
抑圧された正直な気持ちの発露であったと、私は感じました。
物語の中の彼らは、それを「狂気」であると言ったけれど。
ただ、ラリーだけは、それが「正気」であることを、
残された彼らが選んだものこそが、「狂気」であることを感じていたのではないかと思います。

うーん・・・書いてたら、さらに良く分からなくなっちゃいました(汗)。
ので、役者さんの感想へ逃げようと思います(笑)。


今回、実は一番目をひかれたのは、パリット役の岡本健一さんでした。
舞台にいるあいだ、ずーっとラリーを見つめているその眼がね、
もの凄く雄弁で、もの凄く暗くて、でも綺麗だったのです。
2日目は下手側で、パリットの真正面ぐらいだったのですが、
ええ、もう目が釘付け(笑)。
上手側や奥で物語の流れ的に重要な芝居をやってるとわかっていても、
ひたすらにラリーを見つめるパリットを、ひたすらに見つめてしまいました(笑)。
パリットの背景や、人物像も好みだったんですよねー。
強すぎる母との確執、罪の意識とそれを肯定したい自分、ラリーへの甘え・・・
あ! もしかして、萌えってこういうことですか?!>上條さん(笑)

で、見つめられ続けるラリー(笑)な木場勝己さんも素晴らしかったです。
存在感、というか迫力がねー。
パリットを怒鳴ったシーンとか、素で怯えました、私(え)。
最後、死へと向かうパリットの背中を、彼の望みどおり押したラリーが、
パリットが身投げする音が聞こえるでの間に見せる表情の変化が、とにかく凄かった。
舞台の上では、他の面々がバカ騒ぎをしているわけですよ。
なのに、ラリーの周りだけ、時間の流れが違うみたいに、別世界でした。

酒場のオーナー、ハリー役の中嶋しゅうさんもダンディでしたねー。
1幕が、酔っ払いなのに、めちゃくちゃかっこよかったと思うのは私だけでしょうか?(笑)
だから、その分、ヒッキーが現れてから、どんどん老け込んでいく姿が衝撃でした。
服装とかもあるのでしょうけど、ほんとに一晩で10歳ぐらい年をとっちゃった感じで、
2幕冒頭なんて、けっこうぎょっとしました。
役者さんって、ほんと凄いなあ、と思いましたよ。

そして、ジミー役の花王おさむさん。
この声、どこかできいたことあるなー、と思っていたら、アルコ伯爵(「Mozalt!」)じゃないですか?!
全然違うんですもの、びっくりです!
細っこいおじいちゃん、という感じでしたが、声の力が違いますねー。
今度の「Mozart!」には出演されないようで、残念です。

あと、また見たい!と思ったのが、コーラ役の明星さん。
役柄的には良くあるタイプの娼婦の役なんだと思うのですが、
はすっぱなのに、懐が深くて男気があって(笑)、でも少女みたいな可愛らしさがありました。
ピアノを弾いて歌うシーンがあるんですけど、とにかく凄いいい声!
繰り返し演奏されたというのもありますが、しばらくその曲が頭を回りました。
「労働者M」や「ロープ」にも出てらしたんですねー。見れなくて残念!

でもって、ヒッキー役の市村さん!
オールバックで背広の市村さんって、ほんとかっこいい・・・v
登場の瞬間に、ばーっと気持ちを持っていかれました。
声がね、もう違うんですよ。
他の役者さんもそれぞれとても個性的な素敵な声をしてらっしゃるんですけど、
市村さんの声というのは、私にはやっぱり特別みたいで(笑)。
コミカルな部分と、シリアスな部分と、激情の部分と、
とてもスムーズに、違和感無く演じられているのはさすがだと思いました。
ヒッキーは、最愛の妻の「果てのない許し」に追い詰められて、
妻と自分が平和になるには、これしかない、と妻を殺してしまうのですが、
その心の動きを語る長い告白は、本当に説得力がありました。
妻を愛する心も、妻を憎み嘲ってしまう心も、
嘘偽りのないヒッキー自身だったのだと、素直にそう思えました。
物語の形式から、ピンで目を惹く主役ではなかったけれど、
市村さんのヒッキーがあったからこそ、この物語はリアルであったのではないかと、思います。


なんだかとっても中途半端になりましたが、
とりあえず書きたいことを書いたので、ここでおしまい!
再演があったら観にいきたい舞台ではありますが、
次にやるときは、もっとクッションのいい椅子の劇場がいいなあ・・・
それが一番の感想な気がします(笑)。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

ぴかちゅう
2007年07月20日 00:30
私の市村さんのヒッキー評からコピペします。
>この長い独白を緊張感を保って聞いていて苦しい内容を暗いだけでなく観客に受け止めてもらう台詞としゃべりきった市村正親はやはりすごい役者だ。彼がこの役を演じたことでどうしようもなく救いも見えない物語にほんの少しだけ逃げ場ができたように思えた。彼の愛嬌あふれる芸風があることで私はこの深刻な独白も耐えられた。
そう、私にとってはある程度、この時代のアメリカの空気がイメージできるだけに、最初から苦しくて苦しくて苦しくて・・・・・・という作品でした。市村さんじゃなくて逃げ場を作ってくれない方がヒッキーだったら?と思うと恐ろしいくらいの作品でした。再演があってもパスすると思います。
演出の栗山さんも芸術監督としての最後の作品だから上演できた作品じゃないかと思ってしまいました。
>コーラ役の明星さん......「ロープ」の明美姫もよかったです。あの明るさがいいですね。一時期、氣志團に惚れこんでメジャーになるまでマネージャーやってたはずです。だから音楽的センスもあるんじゃないでしょうか?!
恭穂@管理人
2007年07月20日 20:42
ぴかちゅうさん、こんばんは!
ヒッキーのあの最後の告白は、本当に迫力でしたよね。
確かに内容は救いがありませんが、
それをぴかちゅうさんがおっしゃるような
「逃げ場」を作って演じたのは、
やはり市村さんの人間味なのかなあ、と思います。
コーラの明星さん、かっこいいですよね!
ちょっと要チェックかな、と思いますv
ぴかちゅう
2007年07月21日 16:58
TB返し&コメントも有難うございますm(_ _)m
>ヒッキーが現れてから、どんどん老け込んでいく.....夢の中に逃げ込んで元気に暮らしていたのが現実に向き合わされた途端にその現実に怯えおののいてしまっている姿なんでしょうね。酒場の人たちの夢の中での姿と現実に向き合わされた時の姿のギャップ!新劇人たちの力量を思い知らされた舞台でした。
恭穂@管理人
2007年07月22日 21:29
ぴかちゅうさん!
今日はほんとうにありがとうございました。
帰ってきたら、ぴかちゅうさんのコメントがあって、
また嬉しくなっちゃいましたv
新劇、というのを意識してみたことはないのですが、
この舞台の役者さんは、お一人お一人が、
とても個性的で、安心して観れる雰囲気でした。
まあ、内容ははらはらどきどきでしたけどね。

この記事へのトラックバック

  • 07/06/19 かなりヘビーだった「氷屋来たる」

    Excerpt: {/star/} 私の贔屓の市村正親がユージン・オニール作・栗山民也の演出の「氷屋来たる」の舞台に立つというチラシを見て即決。「喪服の似合うエレクトラ」がすごくよかったのでこれも期待できるだろうと! .. Weblog: ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記 racked: 2007-07-20 00:18