真夏の白昼夢

能は、1度だけ見たことがあります。
衣装の美しさと夜風に揺れる蝋燭の明かりにうっとりしながら、
日本語のはずなのに、何故こんなに分からないんだろう・・・?と悲しくなりました。
間狂言は、とっても聞き取りやすかったのに。
正統の狂言ではないけれど、野村萬斎の「敦」では、そのきびきびとした動きと、
楽しい言葉遊び、そして幽玄の雰囲気に魅了されました。
が、歌舞伎は観たことがなかったんですよね。
それはどうしてか?

まずは、俳優さんが分からない(え)。
襲名して名前が変わっちゃったりしたら、もうアウト。
そもそも芸能ニュースは見ないですしねー。
そして、「○○屋」の意味が分からない。
え?苗字じゃないの?という感じ(爆)。
更には、演目がまったくわからない。
「道成寺」とか「忠臣蔵」とかは、題材としているものがわかるけど、
どんな演目から観ればいいのか・・・?(汗)
おまけに用語が分からない。
筋書って何ですか?幕見ってなんですか?(あああ)

でも、着物は好きだなあ。
TVで見た玉三郎の体と動きのしなやかさは目を見張るほどだったなあ。
そして、いのうえ歌舞伎、かっこいいなあ。
観劇ブログのみなさんの歌舞伎レポ、面白いなあ。
だけど、何から見ればいいんだろう・・・?

とぐるぐるしていた私の背中を押してくださったのが、ぴかちゅうさんでした。
えーい!とばかりに、チケットをとった私の歌舞伎初体験。
とーっても素敵なものになりました。
ぴかちゅうさん、どうもありがとうございます!!

というわけで、1週間遅れになりましたが、観劇記録いってみます。


七月大歌舞伎「NINAGAWA十二夜」
2007.7.22 昼の部 1階18列25番

出演:市川亀治郎、市川左團次、市川段四郎、市川團蔵、尾上菊五郎、尾上菊之助、尾上松也、
   河原崎権十郎、中村翫雀、中村錦之助、中村時蔵、坂東亀三郎、坂東秀調


平成17年初演のこの演目、蜷川幸雄さんが初めて演出した歌舞伎なのだそうです。
蜷川演出なら見慣れている私には、ほっとする理由のひとつ。
そして、原作はシェイクスピアの「十二夜」。
これなら、大地真央さんが出演したミュージカルも、蜷川さんが演出したストレートプレイも観ています。
ということは、言葉が聞き取れなくても、内容は分かるかも?
こんな弱気な状態で観にいったのですが、そんな心配は全くの杞憂でした!

まず、幕が開いたその瞬間に目に入ったのは、舞台一面の鏡。
歌舞伎座の舞台は、横にとても長いです。
その舞台の端から端までの鏡には、すこし歪んだ形で、客席とフットライトが映っていました。
そして、その鏡の奥から浮かび上がる、大きな満開の桜。
ああ、紛れもない蜷川さんの演出だ・・・!と、そう思いました。

その横長の舞台の上で、回り舞台がちゃくちゃくと物語を進めていきます。
大篠左大臣の桜の庭、荒れ狂う海、蓮花の襖が美しい織笛姫の屋敷の中、
月の光が冴え冴えとした中庭、百合の花が咲き乱れる奥庭・・・
次々と流れていくその美しい光景は、まるで絵巻物を見るような心地にさせてくれました。

そしてその絢爛豪華な舞台の上で、鮮やかな衣装に身を包みながら、
複雑にもつれた恋の糸に絡まれる役者さんたちは、
現実のものとは思えないほど美しくて、一瞬のうちに私を別世界へ連れて行ってくれました。

物語はとっても複雑なので(笑)、こちらをご参照くださいな。
とりあえず役者さんごとの感想を。
役名の()内は、シェイクスピアの原作での名前です。
このネーミングがまたいいんだわ。


*尾上菊之助さん=琵琶姫(ヴァイオラ)、獅子丸(シザーリオ)、斯波主膳之助(セバスチャン)

めちゃくちゃ美しかったです!!

あああ、のっけからハイテンションですみません(汗)。
でも本当にお美しかったんですよー。
立役と女方の声の出し方とか、詳しいことは全然分からないのですけど、
主膳之助のときは本当に凛々しくて、早変わりした琵琶姫は本当に可憐で。
そして、獅子丸として仕える大篠左大臣の前で、
恋する想いが溢れて仕草や声がすっと女性に戻ってしまうところの流れが、
わざとらしくなくとても自然で、でもおかしさもあって、心底凄いなあ、と思いました。
二幕冒頭で獅子丸が舞を舞う場があるのですけど、
滑らかな動きも、ダイナミックな足裁きも、繊細な手の動きも、
すっと姿を決めたときの目線の艶やかさも、ほんとうにうっとりしてしまいました。
とりあえず、私が最初に覚えた歌舞伎俳優さんですv
(あ、市川染五郎は歌舞伎では未見なので)


*尾上菊五郎さん=丸尾坊太夫(マルヴォーリオ)、捨助(フェステ)

主君の織笛姫への恋情と出世欲をネタにからかわれ、かなりひどい扱いを受ける坊太夫。
以前見たミュージカルでは、その余りの扱いのひどさに、
ミュージカルで、喜劇であることはわかっていても、
どうしても不快な気分がぬぐえなかったのですが・・・
道化の捨助と同じ方が演じられたからでしょうか、
尾上菊五郎さん演じる坊太夫は、その嫌味な性格の中にも、
誤解を重ねていく滑稽さの中にも、なんだかとっても飄々としたしなやかさを感じました。
偽の文に踊らされてとんでもない格好をする部分でも、
おかしさの中に悲哀があり、強さの中に脆さがあり、
そして・・・何故だか、かっこよく見えてしまったのですよ。
うーん、不思議です。


*中村錦之助さん=大篠左大臣(オーシーノ公爵)

とーってもかっこよかったです!

またまたテンション高いですね(笑)。
いや、とってもノーブルで、かっこよかったんですよ。
やってることは結構情けない役柄なんですけど、
ああ、このかっこよさだったら、琵琶姫が惚れても仕方ないかなあ、とか思っちゃいました(笑)。
琵琶姫と並んでいると、本当に一枚の絵みたいで・・・かっこよかったなあ・・・


*中村時蔵さん=織笛姫(オリヴィエ)

目を疑うほどに麗しくて可憐でした・・・!!
歌舞伎って、ほんとに凄いです! ミラクルです!!
こんなおじいちゃまが(失礼!)、どうやったらこんな美女に?!
一昨日英会話のレッスンの時に筋書を持っていって先生にお見せしたら、
何度言ってもこのプリンセスがこのおじいちゃまだと信じてくれませんでした。
って、私の英語力が駄目駄目なのか・・・?(泣)
話をもどしまして、もうね、かもし出す雰囲気が美しいんですよ。
舞台に出てこられるだけで、ぱっと場が明るくなる気がするんです。


*市川左團次さん=左大弁洞院鐘道(サー・トービー・ベルチ)

酒呑みないじめっこ(笑)の役なのですけど、全然憎めないんですよ。
そういう演技なのか、もともともお人柄なのか・・・?
思考の流れや欲の向きがとても分かりやすくて、
この役の動き方で、物語の流れ方がずいぶん違っちゃうんだろうなあ、と思いました。


*中村翫雀=右大弁安藤英竹(サー・アンドルー・エーギュチーク)

えーと、とってもおばかで鐘道に利用される役柄なのですが、
そのおばかさ具合が、とっても可愛らしかったです(笑)。
ピンクの衣装がまたお似合いでv
歌舞伎風な台詞だけでなく、一瞬素に戻るような台詞回しも、
歌舞伎初体験の私には、ちょっと嬉しかったり?


*市川亀治郎さん=麻阿(マライア)

実は、一番好きな役でした(笑)。
ミュージカルで鷲尾真知子さんがやられたときも、
利発で可愛くて、でも容赦なくて(え)好きな役だったのですが、
亀治郎さん演じる麻阿は、姉さん女房な感じで、きっぷがよくて、
でもって琵琶姫や織笛姫とは違った凛とした美しさがあって・・・
しかも台詞がとても聞き取りやすかったんですよ!!
この方、「風林火山」で信玄役をされてるんですよね。
うーん、あの武将がこんな美女に!!
またしても歌舞伎のミラクル・・・(笑)


歌舞伎の台詞回しや唄はやっぱり聞き取りにくかったし、
ミュージカルとは違った客席の雰囲気やお店の多さ(笑)にはちょっと戸惑いましたが、
本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。
思わず生写真も買っちゃったよ(笑)。
大好きな原田さんの照明も堪能させていただきましたしv

観劇後お茶をご一緒してくださったぴかちゅうさんに、
歌舞伎座の近くの本屋さんに連れて行っていただきました。
そこで購入したぴかちゅうさんお薦めの本、「菊五郎の色気」。
とても興味深く、面白く読んでいます。
歴代の尾上菊五郎の歴史に歌舞伎の世界の奥深さを感じ、
粋や色気といった言葉の本当の意味を知るような心地になります。
私は人の名前を覚えるのが下手なので、
読んでは戻り、読んでは戻りなのですが、
歌舞伎というのは、もちろん舞台の持つ別世界としての雰囲気も魅力ですが、
演目の歴史や、舞台裏を知ることで、
個々の役者さんの魅力を知ることで、
更に深く楽しめる最高のエンターテイメントなのかもしれないなあ、と思います。

なーんてことを書いてたら、書きながらみていた昨夜の「俳優祭」の録画で、
北千住観音が出てきました。
・・・・・・・・!!!
白雪姫も、お妃も、鏡の精、小鳥も、鹿も、兎も、小人も凄いけど、
観音様のインパクトにノックアウトです!!
凄い!凄いよ歌舞伎!!
やっぱり民衆のためのエンターテイメントだわ!

えーと、でも、次は、ちょっと正統派な演目を観てみたいと思います。
狙いは九月大歌舞伎。
夏休みの観劇の1つに加えられるといいなあ。

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この記事へのコメント

ぴかちゅう
2007年08月01日 00:06
蜷川さんの舞台がお好みであれば、「NINAGAWA十二夜」での歌舞伎デビューはまさにピッタリでしたね。私も千穐楽に観劇したので感想アップしたらTBさせていただきますね。
九月歌舞伎座のおすすめはやはり夜の部でしょうね。玉三郎、團十郎、吉右衛門と3人観ていただけます。日程が決まったらお知らせくださいませ~(^O^)/
恭穂@管理人
2007年08月01日 21:51
ぴかちゅうさん、こんばんは!
蜷川さんの舞台にはなじみがあったので、
初めての分野でも、少し緊張が緩和された気がします(笑)。
薦めてくださって、ありがとうございました!
ぴかちゅうさんの感想も楽しみにしておりますね。
九月歌舞伎座の夜の部、本気で狙っています。
チケットとれるといいのですが・・・頑張ります!
ぴかちゅう
2007年08月03日 01:27
千穐楽の感想がアップできましたのでTBさせていただきましたm(_ _)m
歌舞伎座が建替えになっている時期に菊五郎劇団でシェイクスピアの本場イギリスでの公演を実現して欲しいという提案をぶち上げてしまいました。
蜷川さんの舞台はイギリスでの実績があるのですから、「NINAGAWA十二夜」も菊五郎劇団で本場で上演してほしいです。大絶賛間違いなしだと思います!!
恭穂@管理人
2007年08月03日 21:37
ぴかちゅうさん!

こんばんは。
TBありがとうございます。
これから早速読ませていただきに行きますね。
本場イギリスでの上演、いいですね~。
あの華やかさはきっと受けると思います。
ぴかちゅう
2007年08月10日 22:39
「エクウス」の記事にコメント有難うございましたm(_ _)m
『演劇界』という雑誌が9月号からA4版の歌舞伎専門誌としてリニューアルされて8/4発売になりました(従来はちょっと古めかしいB5版)。いい機会なので『レプリーク』だけでなく一度読んでみていただくと9月に歌舞伎をご覧になるのにいいかもしれません。私も今日ようやく買ってきましたが、特集は「歌舞伎から見える江戸の粋」です。7月の舞台速報で「十二夜」の写真が大きく載ってました。オススメです!!
恭穂@管理人
2007年08月11日 18:45
ぴかちゅうさん!
コメントありがとうございます。
お薦めの「演劇界」、近くの本屋さんには無かったので、
昨日ネット通販しました。
「十二夜」の写真も楽しみですが、
特集、とっても面白そうですねー。
届くのが待ち遠しいですv
また是非いろいろ教えてください!
というか、師匠と呼ばせてください!

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  • 07/07/29 「NINAGAWA十二夜」千穐楽を堪能

    Excerpt: {/hikari_pink/}{/hikari_blue/} 『NINAGAWA十二夜』は初演で一度観て、今回が2度目。蜷川さんの舞台はけっこう濃厚なので、私は滅多に同じ月にリピートはしない。 しかし.. Weblog: ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記 racked: 2007-08-03 01:25