追憶の邂逅

好きな洋画は?と問われたとき、私は3つの映画が思い浮かびます。

「ギルバート・グレイプ」
「ニュー・シネマ パラダイス」
そして、
「リトル・ダンサー」

並べてみると、その共通点がわかるような気がします。

家族の物語であること。
別れの物語であること。
旅立ちの物語であること。

そして、たぶん。

追憶の物語であること。


「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」

2017.8.11 マチネ 赤坂ACTシアター 1階F列10番台

出演:前田晴飛、吉田鋼太郎、島田歌穂、久野綾希子、中河内雅貴、小林正寛、大貫勇輔、古賀瑠、
   夏川あさひ、遠藤美緒、大久保妃織、小野梓、高畠美野、新里藍那、山城力、小野凛音、森山大輔、
   佐々木誠、原慎一郎、竹内晶美、家塚敦子、高橋卓士、丸山泰右、三木麻衣子、大塚たかし、
   辰巳智秋、横沢健司、秋山綾香、加賀谷真聡、橋本好弘、木村晶子、井上花菜、北村毅、羽鳥翔太、
   小島亜莉沙、出口雅子


というわけで、映画「リトル・ダンサー」のミュージカル、「ビリー・エリオット」を観てきました。
開幕から3週間くらいかな?
TVでも特番が組まれていたりして、ビリー役の子たちの見分けが観てないのにつくという不思議な状況で、
でも、その演出や楽曲については、ほとんど情報がないままの観劇だったわけですが・・・
なんというか、個人的にはストプレに近い印象の舞台だったなあ、と思いました。

もちろん、迫力のある、あるいは華やかで楽しい、いかにもミュージカルなナンバーもたくさんあった。
「リトル・ダンサー」のミュージカルだから、ビリーが踊るシーンも、歌うシーンもたくさんあった。
でも、
それぞれのシーンで、私は奏でられる音楽を、彼らの歌声を、ダンスを楽しんだ。
だけど、終わってみると、私の中に残っているのは、
その歌を、ダンスを紡ぎ出した、彼らの“感情”だけだったように思うのです。

ビリー役の前田くんは、なんというか、心の奥の方に熾火があるようなビリーでした。
おばあちゃん思いの優しくて面倒見のいい良い子。
でも、彼の中には、彼自身でさえどうにもできない火種があった。
バレエと出会い、少しずつバレエに魅了されていくビリー。
その歓喜と戸惑い。
細い体をしならせて、常にトップギアで踊っているような印象がありました。
1幕最後の♪怒りのダンス も、2幕のオールダービリーとの♪白鳥の湖 も、♪電気のように も、
彼は、踊りたいから踊るのではなく、踊るしかないから踊っているのだ、と思った。
「踊りたい」という思考のワンクッションを置くことなく、
胸の中の熾火が、火種が、燃え上がり迸るように、彼は踊り出した。
そこには何の不純物もなくて、彼の全てが踊りそのものであるかのようだった。
その苛烈さは、圧倒的な熱量と輝きを持って迸り、
けれど、だからこそその光が創り出す影の深さに戦慄しました。
そして同時に、彼から目を離すことができなかった。
♪電気のように で、側転をするビリーとお父さんがぶつかっちゃったのだけど、
でもって、カーテンコールで吉田さんが「全部自分の責任です!」と土下座してたけど、
(ビリーとマイケルの、あの困惑した表情ときたら・・・それはどうすればいいかわからないよね(^^;))、
きっとあの瞬間、吉田さんのお父さんは、
彼から迸る何かに無意識に引き寄せられていたのではないかな、と思う。
そう納得してしまうくらい、前田くんの放つ輝きは苛烈だったように思います。

最後、ビリーは生まれ育った町に背を向けて旅立っていきます。
時代の中、否応なく変わっていく故郷。
そして、同じように変わっていくであろう自分自身。
それを、ビリーはわかっていた。
わかっていてもなお、彼は歩み出さずにはいられなかった。
客席通路を歩むビリーの凛とした、厳しい表情に目を奪われて、
そしてそんな彼の背中を見つめながら、すっと顔を上げて自転車をこぎ出すマイケルの姿が、
今でも鮮やかに思い浮かびます。

そういえば、映画のラストシーンは、
大きくなったビリーが舞台袖から舞台の光の中に歩み出すシーンでしたね。
ミュージカルでは、大貫くん演じるオールダー・ビリーとビリーの邂逅は、2幕冒頭にありました。
クリスマスパーティーの後、誰もいなくなった集会所で独り踊り出すビリー。
そのビリーに寄り添うように踊り出すオールダー・ビリーとのあのシーンは、
本当に素晴らしく切なくて、美しくて、挑戦的で―――夢のような時間でした。
ビリーを見つめる大貫くんの目や笑顔が、本当に優しくてね。
なんだろう・・・見守るというか、背を押すというか、懐かしむというか・・・
宙を舞うビリーに差し出される手に、なんだか泣きそうになりました。
で、ふと思った。
もしかしたら、舞台の中では描かれていないけれど、この舞台の時間軸は、
オールダー・ビリーの追憶なのかもしれないな、と。
あのシーンは、ビリーが未来を夢想したのではなく、大きくなったビリーの追想なのかも、と。
だからたぶん、ビリーにはオールダー・ビリーは見えていないのではないか、と。
これは、私の思いつきで、全然違っている可能性大なのですけどね(^^;)

というか、この舞台、大貫くん大活躍ですね!
オールダー・ビリー以外にも、いろんな役をやっていて、こっそり大貫くんを探せ状態でした(笑)。
妙に心惹かれるなー、と思ったら、あの牛も大貫くんだったっぽいし(え)。
Wキャストのもう一人の方には、オールダー・ビリーの役名しかなかったのだけど、
この違いは一体なんなのかしら?


お父さん役は吉田さん。
最初にあの方言を聞いたとき(九州弁っぽかったけど、炭坑繋がりなのかしら?)
某朝ドラの時のような怖くて厳しくて横暴で不器用なお父さんなのかな、と思ったのですが、
厳しくて不器用だけど、弱いからこそ強い、と感じられるお父さんでした。
クリスマスパーティーでのあの歌、沁みたなあ・・・
でもって、映画と同じお父さんのとある台詞に、思いっきり泣かされたのでした。

お兄ちゃん役の中河内くん。
やせた?というか若返った??
踊らない中河内くんというのも珍しいなあ、と思いつつ、
お父さん譲りの不器用さと愛情深さとおちゃめさ(笑)を兼ね備えたお兄ちゃんに、
実はこっそり和んでおりましたv
2幕冒頭の緑の衣裳も可愛かったけど(あれ、いつかコイン入れちゃう人いるんじゃないかしら(^^;))、
合否通知が届いたときの、お父さんとお兄ちゃんとおばあちゃんが可愛すぎて!!
合格が分かったときに、歌いだすお父さんとお兄ちゃんがちゃんとハモってたのにびっくりしたり(笑)。
カーテンコールで大貫くんとちょこっと並んで踊る瞬間があった気がしたのだけど、
個人的に嬉しかったですv

おばあちゃん役の久野さん。
ビリーはおばあちゃん似に違いない!と思っちゃうくらい静かに熱い方でした。
おばあちゃんの回想シーンは、凄く綺麗で切なかったなあ。
あの、上手から下手に流れていく動線が、観ていてとても気持ちよかった。
また、その流れの中にぽつんと身を置いているビリーの表情が良くてねー。
出番は少ないけれど、この家族の要と感じられる存在感でした。


ウィルキンソン先生役は、島田さん。
舞台で拝見するのは久しぶりですが、やっぱり素晴らしい歌声!
ビリーの才能に気づく瞬間の表情の変化に釘付けになりました。
素直じゃないというか、強気で毒舌でちょっと斜に構えた感じなのは、
彼女自身の挫折や葛藤があるからなんだろうな。
ビリーに自分の夢を託す愚かしさを知っていながら、それでも何かを託さずにはいられない・・・
そんな複雑さが感じられました。
ビリーのお母さんの手紙を読むシーンも泣けたなあ。
なんだろう・・・あの時のウィルキンソン先生の衝撃ややるせなさを思うと、ちょっと今でも泣けてきます。

子役ちゃんたちはみんなそれぞれ元気いっぱいで、可愛くて、個性的で、
子どもたちのシーンはどこもとっても楽しかったです。
でもやっぱり特筆すべきは古賀くんのマイケルかなあ。
いやもうほんとにめっちゃくちゃ可愛かったです!!
女の子が演じてるのかと一瞬本気で思っちゃいました(笑)。
ビリーとマイケルのタップは、もう心の底からワクワクしちゃいましたよv
マイケルはたぶんLGBTで。
女の子の服を着て、自分を表現しよう!と言いながらいつも笑顔でいる彼が、
あの炭坑の街でどれだけ生きにくく、どれだけ傷つけられ、どれだけ不安に苛まれ、
それでもあんな風に明るい笑顔でビリーを励ましているのか・・・
そんなことを思いながら、でも、本当に天真爛漫な彼の姿に、
ビリーとはまた違った、未来への光が見えて、なんだか凄く和んでしまったのでした。
ビリーからマイケルへの最初で最後のキスも、とっても可愛くて切なかったなあ。

カーテンコールの最後に、ビリーとマイケルが出てきてくれたのですが、
写真OKということで、前方席なのを良いことにしっかり撮らせていただきました(笑)。
いやもう、写真でも二人ともほんとに可愛い!
古賀くんは歌もダンスもとってもお上手だったので、また別の舞台でも拝見できるといいなあ。


初回の観劇で、思いっきり翻弄されて、いろんな方向に感情が降り切れちゃったので、
なんだかたくさんの見落としや誤解がありそうだな・・・
ビリー役は変わってしまいますが、また観に行く予定もあるので、
今度はもっと物語そのものに寄り添えるといいなあ、と思います。
とりあえず、キャストのみなさんが怪我なくこの長期公演を乗り越えられますように・・・

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